殺伐とした別世界に、突如として変態なる国家が並行世界より来たる

ELDIAN

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始めようか、戦争を ー敵地侵攻編ー

第38話:破壊の宴(5) v0.0

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 「やったぞぉ!」

 第一次迎撃部隊戦闘後に到着した奇襲部隊である第二次迎撃部隊60騎の発射した火球が敵未確認飛行物体に見事直撃、徐々に高度を落としているのを見て士気は最高潮に達して居た。

 「この調子で・・・」

 バゴォォォォォンッ!

 突如として竜兵隊たちが爆散する。

 「い、いったい何が起きたッ!?」

 バゴォォォォォンッ!

 又しても竜兵が爆音とともに爆散した。どこからともなくやって来る死の恐怖に、竜兵たちは汗水を流す。

 「て、敵はどこから攻撃しているんだ!?」

 竜兵隊たちの間に動揺が広がり、編隊が乱れ変態機動を取る竜兵が続出し始めた。

 「く、くそっ!全騎散開!敵を捜索しろ!」

 次々と竜兵たちが変態機動を取る中、第二次迎撃部隊の隊長は思考を張り巡らせる。

 「あのデカブツの攻撃じゃ・・・ないよな?」

 降下の最中にデカブツを凝視する。が、攻撃をしたような痕跡は見つからない。ならいったいどこから攻撃されているのか。

 「・・・ッ!?まさか上か!?」

 隊長は勢いよく顔を上に向けて凝視する。

 「ま・・・まさかな・・・」

 この第五文明大陸においてジルニトラよりも高く飛べる竜種はあの帝国以外存在しない。そう。絶対にそうなのだ。

 「・・・は!?」

 だが現実は違った。

 「ぜ、全騎降下!て、敵は上にいるぞ!」

 自分たちよりも遥か上に、それは居た。白い線を引く無数の何かが。隊長はとっさに魔導電信機を手に取り、味方騎たちに伝える。

 『そんなわけないだろ!俺たちはこの第五文明大陸においてあの帝国を除けば唯一高空を飛べるんだ!』

 魔導電信機越しに部下の怒鳴る声が伝わる。結局自分たちの優位性を信じて疑わない帝国最強信者たちは高空にとどまり、数少ないまともな竜兵たちのみが降下した。

 「せめて死なないでほしいが・・・」

 隊長の儚い願いは、無駄に終わる。遥か上を飛ぶ何かが降下、白い尾をひく光の矢を放ったかと思えば、次々と竜兵たちの居た場所に爆発が発生する。

 『う、うわぁぁぁぁぁぁ!』

 『お、おい!そっちに行ったぞ!』

 『む、無理だ!避けれうわぁぁぁぁぁぁぁ』

 魔導電信機越しに帝国最強信者たちの悲鳴怒号その他諸々が響く中、隊長は何もできずに居た。周りを見渡せばはじめ60騎も居た竜兵たちはわずか30騎にまで数を減らしている。これ以上の迎撃は、性能差を考えても遥かに困難なこととなるのは目に見える。隊長は魔導電信機を手に取ると、司令部に指示を求める。

 「司令部、こちら第二迎撃部隊。敵新型兵器の攻撃により被害甚大、指示を願う」

 しばらくして、司令部より返答が返って来る。

 『了解。第二迎撃部隊は各基地に帰投後編成を組み直し再度攻撃を続行せよ』

 「・・・は?今なんと・・・」

 隊長は何かの聞き間違いかと思い、司令部からの指示を聞き直す。

 『・・・繰り返す、各基地に帰投後編成を組み直し再度攻撃を続行。以上』

 司令部はそれだけ言うと、一方的に回線を切る。

 「く・・・くそッ!奴らはメンツのことばかり考えているのかッ!?」

 隊長は魔導電信機を放り投げ、すでにはるか遠方を飛行している未確認飛行物体を睨みつけると基地への帰路に着いた。


_帝都、市街地


 「な・・・なんだあれは・・・」

 宿の窓から突如として帝都上空で勃発した空中戦の一部始終を見ていたある国の技術士官は自分の目を疑った。見たことのない新兵器に次々と落とされていくダーダネルス帝国の主力竜ジルニトラたち。そしてあの巨大な飛行物体。そのどれもが、彼の脳裏に焼き付いて居た。

 「ま・・・まずい。このままでは母国は負けてしまう・・・」

 彼はそう言うと、手荷物をまとめてそそくさと宿から出て行った。


_帝都上空、スカラベ0-1


 「く、くそ・・・」

 スカラベ0-1は降下することによりなんとか火災の鎮火に成功していた。が、燃料その他諸々が大量に漏れ出しておりもはや本国に戻るための燃料はとうになくなって、残りのエンジンを駆使しなんとか飛んでいるに過ぎない。

 「機長・・・どうしますか?」

 「そうだな・・・」

 機長は必死に考える。

 「可動翼は生きているか?」

 副操縦士に尋ねる。

 「はい・・・なんとか」

 副操縦士はそう言うと、操縦桿を動かしてみせる。どうやらどうにか動かせる、程度だが生きているらしい。

 「よし、爆弾はそこらへんに放り込んどけ。機首を反転させて上陸地点に向かうぞ」

 「了解」

 数十発の爆弾を適当にその辺りにあった山に投棄し終えると、敵からの攻撃に怯えながらスカラベ0-1の乗るUBV-20はのそのそとした動きで帝都を迂回し、護衛機を伴わず単独で上陸地点へと向かった。


_数分後、スカラベ部隊


 隊長機であるスカラベ0-1が落伍したこの部隊では、急遽スカラベ0-2が指揮を執っていた。

 「目標地点まで残り数キロを切りました」

 副操縦士は第一目標の帝都防衛基地までの距離を伝える。

 「わかった」

 機長はそう言うと、静かに無線を手に取る。

 「全機投弾準備」

 『・・・了解』

 少しばかり静かな時間が続く。

 「・・・うるさいのが居なくなって、せいぜいした、と言えばいいんですかね」

 副操縦士が心配そうな口調で言う。

 「ま・・・それもそうだな」

 「・・・あの人たち、大丈夫なんでしょうかね」

 「さらっとあいつ、フラグ建ててたけど・・・ま、へし折ってくれるんじゃないか?」

 機長は彼らのことをあまり心配して居ないのか、さらっと言い切った。

 「・・・お、そろそろですよ」

 副操縦士が爆撃照準器を覗いて言う。

 「わかった」

 司令部からの連絡で翼下懸架と、主翼内の爆弾倉で合わせて80発の500キロ爆弾を、各機10発ずつ落とす手筈になっている。

 「爆撃進路よーし・・・投下!」

 副操縦士の掛け声とともに、スカラベ0-2~1-0から10発ずつ500キロ爆弾が投下される。

 「さ、次の目標に向かうぞ」

 「了解」

 スカラベ0-2率いるスカラベ部隊とその護衛変態機たちは次なる獲物を求めて進路を北に取った。


_真下、第三帝都防衛基地


 最新の蟲舎などが多数立ち並ぶここ、第三帝都防衛基地では突然の来訪者に対する迎撃で慌ただしくなっていた。

 「・・・お?どっかに飛んでいくぞ」

 その合間、偶然はるか高空を飛行するいくつもの未確認飛行物体を発見した基地要員の一人はそれをまじまじと見つめていた。

 「ま、あんな高さからじゃ何もできないだろうけど」

 基地要員はそう呟くと、丁寧に整備された草木の一つも生えて居ない土づくりの滑走路上で作業を始める。

 ジルニトラの弱点として滑走距離が長いと言うものがある。そのため平地でなければ運用するのが難しく、こうやってきちんと整備された竜用の滑走路が作られることは珍しい。そんな基地に転属した基地要員は高い誇りを持ち毎日出勤していた。

 「さて・・今日はっと・・・」

 だが終わりは、突然訪れた。
 
 ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウ...

 「うん?」

 基地要員が謎の風切り音を耳にし、上を向いた直後だった。

 ドッ...

 「ん?」

 突如として上から降ってきた大きな黒い塊が基地要員の足元に現れる。

 「なんだこれ?」

 基地要員は興味津々でそれに近づいた___瞬間だった。

 ドッガァァァァァァァァァァァァンッ!

 基地要員の足元に落ちた黒い物体___500キロ爆弾は地面に接した数秒後、信管が作動し滑走路上で大爆発を起こし大きな黒煙と、砂塵を巻き上がらせた。そしてそれが1つだけではなく、連鎖的に、いくつもいくつも基地の中で発生する。ある爆弾は竜舎を、またある爆弾は多数の兵士が眠って居た最中の兵舎を、粉微塵のごとく吹っ飛ばした。

 爆発が収まった時、そこに残ったのは基地をかたどっていたレンガなどの構造物、そして、人や巨蟲、竜の鮮血や臓物、肉塊のみだった。

 この日、ダーーダネルス帝国は工業地帯のほとんどと帝都防衛施設を失い、継戦能力を大きく削がれる結果となってしまった。
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