殺伐とした別世界に、変態なる国家が現れり リメイク版

ELDIAN

文字の大きさ
上 下
6 / 7
——国難の始まり——

第四話:landing. And witness. (上陸。そして目撃)

しおりを挟む

 _ネオ・クレセント・シティ港


 埠頭横の階段を駆け上がる青と白の兵士達。彼らはあっという間に上へと登り切ると、即座に周囲警戒を開始する。
 彼らにとって一番の脅威は魔術師。単体での戦闘能力は高くはないものの、集まって攻撃でもされたら兵士は一瞬でお陀仏だ。それは船団であっても変わらない。死ぬことを防ぐためにも、目の前の街で物色するためにも、彼らは万全を期して警戒を行う。
 続いて隊長のクテスが上がると、先行していた兵士より報告を受ける。

 「隊長、周囲に敵らしきものは確認できません!」

 「ご苦労だ!どうやら奴ら、怯えて出てこないみたいだな……!」

 彼は勝手な妄想を口に出し、手に持つ魔導式ライフルを地面に置き肩に背負っていた袋の中から通信魔石を取り出す。
 それを口元に近づけ、はっきりとした声で報告を行う。

 「クテスだ。いつでも上陸できるぞ!」

 彼がそう言い数秒後、今度は船団あちら側から荒い音声で返事が届く。

 『ガッ…かった。お前…はその…ま待機せよ』

 「わかった!待機を続ける!」

 クテスは再度魔石を袋の中に戻し、魔導式ライフルを持ち直す。

 「それにしても隊長……この地面……」

 頃合いを見計らい、その場にいる誰もが疑問に持っていたことを兵士の一人が発言する。

 「継ぎ目も何もない……レンガでも石でもないのに……」

 一同が小さく頷く。確かに、彼らが立つ地面は今まで見たどの舗装道路の材質でもなく、加えて均一な面で構成されている。靴のかかとで蹴ってみれば、強度も確保しているようだった。
 一度とてつもなく巨大な石を切り出したのかとも思ったが、どうやら表面はザラザラとしているようで、一層疑問が深まる。

 「ま、それもこの国デルタニウス王国を占領すれば手に入る!まずは蛮族の掃討といこうじゃないか!」

 「まぁ……それもそうですね」

 そんな彼らを他所《よそ》に、揚陸船は次々と港内部へと侵入。その辺りの小舟を蹴散らし埠頭の一角へと船を着け、細長い木製の板が下される。そこからは続々と……我々から見れば——そう。鞍《くら》を背負った生命体が現れる。その数——約μ'40騎。
 それらは皆一様に青と白を基調とした兵士により縄で引かれ、板を通り地上へと降り立ったところで専属の魔獣騎兵が騎乗する。
 彼らが遠路はるばるここまで連れてきた生命体の名前はエクセリキィΕ ξ έ λ ι ξ η。我が帝国の機動戦の主役、大型肉食系魔獣・・だ。特徴的なのは何と言ってもその速さと持久性で、総合的に見れば、馬を大きく上回る。

 「健闘を祈りますッ!無理はしないで下さいね!」

 エクセリキィの飼育員であろう者は、魔獣騎兵の一人にはっきりとした声で戦果の期待を込めた口調で声をかける。

 「あぁ!」

 一方の魔獣騎兵も笑顔で答えると手綱を持ち、この場から向こうの街めがけてあっという間に走り去る。

 「そろそろ良さそうだな……行くか!」

 歩兵であるクテスらも、全魔獣騎兵が街へと向かったことを確認した時点で行動を開始した。


 _市内


 市内沿岸部から着々と爆発の手が迫り来る中、土埃が充満する道路を、白黒のパトカーがヘッドライトを付け、走行していた。

 「……了解。これより現在港に急行する。オーバー」

 警部のクレインは通信を終了し無線機を置く。
 つい先ほど本部からの通信が届いた。内容は至ってシンプル。”沿岸部に急行し、首謀者を捕縛せよ”だった。未確認の情報らしいが、どうやら港にあの木造船舶が錨を下ろしたらしい。

 「にしても酷い有り様ですね……」

 隣の席に座る巡査のジューンは暗い声で呟く。

 「あぁ……」

 道路のあちこちに放置車両が点在し、建物は爆発でボロボロになり、爆発により生み出された炎は周囲を燃やし、その煙は空高くまで立ち上っている。根元には大小多数の瓦礫が転がり、そして、中には人の形をした……。それが何なのか、わざわざ言う必要はないだろう。

 「噂じゃ中華連邦《C F》の攻撃だとか言われてますけど……どうなんですかね」

 「それは俺にもわからんさ。だが……」

 クレインはショットガンに赤色のショットシェル12Gaugeを装填しながら、確信に満ちた表情でジューンに顔を向ける。

 「こいつが役に立つことだけは確かだな」

 ガシャァン…………

 彼がそう言ったと同時に、車両前方から何かが潰れるような音が響く。
 どうせ瓦礫が放置車両の上に落ちたのだろうと考える。が、それは立て続けに何度も、さらにこちらに近づいてくるようにも聞こえる。

 「……警部」

 車内に電気駆動特有の音が響く中、ジューンは小さな声でクレインの方を向く。

 「……あぁ」

 クレインもこの音に違和感を抱いたのか、そっとパトカーの自動運転をストップ。路上で停止させる。

 「武器の安全装置セーフティは解除しておけ。念のためだ」

 「了解」

 クレインとジューンは素早い手つきでドアを開けると、道路脇の放置車両へと身を潜めた。
 その間も相変わらず、何かを潰すような音は断続的に響いている。

 「うーむ……よく見えないな……」

 「どうにも土埃が邪魔ですね……」

 後少しで見えそうなんだがなぁ、と呟くと目を細め——彼はその、この世のものとは思えないソレを見てしまう。

 「ッ!!!」

 クレインは一瞬ではあったものの、その姿に恐怖を感じた。

 ガッ!ガシャァンッ!ガッ!

 そりゃそうだ。彼が見たのは特徴的、且《か》つ発達した2つの脚。そして、小さな前腕。加えて鱗に包まれ、発達した頭部……その生物。シルエットだけ見ても、それはすぐに分かった。
 ……ヴェロキラプトル・・・・・・・・。ソレに酷似した生物と、その上に乗る誰か・・が、まるで前時代に存在した、騎兵のような様相でこちらに向けて高速で向かってきているなど、誰が想像できただろうか?


______
 恐竜ってロマンいっぱいよね。
 今回、執筆頑張った(こなみ。
 なんだかんだで戦闘は次回に引き伸ばされました。作者の気まぐれでs——ごめんなさい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ロマン兵器乱用国家、異世界でもロマン兵器を乱用する模様

ELDIAN
SF
 パラレルワールドの地球における2356年、その世界でトップクラスの国力を誇るエルディアン共和国は突如として原因不明の事態に見舞われる。衛星通信の途絶により国家の行政機関や民間企業に障害が発生。一瞬にして栄光の毎日から暗黒の日に転落する。事態を重く見た政府は非常事態であると仮定した上で海軍や空軍を南北東西あらゆる方面へと派遣するのだった。  この日、エルディアン共和国は異世界に転移した。  本作品は架空兵器や現在開発中&過去に試作段階で終わった&ペーパープラン&架空兵器が多少性能などを変更されて登場します。またアマチュア程度の知識しかないので、間違った表現などが出現する可能性があります。もし不可解な点がありましたら、作者に教えてあげてください。 ⚠︎軍内部や国の幹部らの会話などはほとんど想像で書かれています。 現在投稿中のサイト 小説家になろう様 ハーメルン様 カクヨム様 アルファポリス様 ピクシブ様 リクエストや感想等気軽にお寄せください。コメントやレビュー等していただけると中の人が狂喜します。

絶世のディプロマット

一陣茜
SF
惑星連合平和維持局調停課に所属するスペース・ディプロマット(宇宙外交官)レイ・アウダークス。彼女の業務は、惑星同士の衝突を防ぐべく、双方の間に介入し、円満に和解させる。 レイの初仕事は、軍事アンドロイド産業の発展を望む惑星ストリゴイと、墓石が土地を圧迫し、財政難に陥っている惑星レムレスの星間戦争を未然に防ぐーーという任務。 レイは自身の護衛官に任じた凄腕の青年剣士、円城九太郎とともに惑星間の調停に赴く。 ※本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件、地名などとは一切関係ありません。

未来への転送

廣瀬純一
SF
未来に転送された男女の体が入れ替わる話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

『星屑の狭間で』(チャレンジ・ミッション編)

トーマス・ライカー
SF
 政・官・財・民・公・軍に拠って構成された複合巨大組織『運営推進委員会』が、超大規模なバーチャル体感サバイバル仮想空間・艦対戦ゲーム大会『サバイバル・スペースバトルシップ』を企画・企図し、準備して開催に及んだ。  そのゲーム大会の1部を『運営推進委員会』にて一席を占める、ネット配信メディア・カンパニー『トゥーウェイ・データ・ネット・ストリーム・ステーション』社が、配信リアル・ライヴ・バラエティー・ショウ『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』として、順次に公開している。  アドル・エルクを含む20人は艦長役として選ばれ、それぞれがスタッフ・クルーを男女の芸能人の中から選抜して、軽巡宙艦に搭乗して操り、ゲーム大会で奮闘する模様を撮影されて、配信リアル・ライヴ・バラエティー・ショウ『サバイバル・スペースバトルシップ・キャプテン・アンド・クルー』の中で出演者のコメント付きで紹介されている。  『運営推進本部』は、1ヶ月に1〜2回の頻度でチャレンジ・ミッションを発表し、それへの参加を強く推奨している。  【『ディファイアント』共闘同盟】は基本方針として、総てのチャレンジ・ミッションには参加すると定めている。  本作はチャレンジ・ミッションに参加し、ミッションクリアを目指して奮闘する彼らを描く…スピンオフ・オムニバス・シリーズです。  『特別解説…1…』  この物語は三人称一元視点で綴られます。一元視点は主人公アドル・エルクのものであるが、主人公のいない場面に於いては、それぞれの場面に登場する人物の視点に遷移します。 まず主人公アドル・エルクは一般人のサラリーマンであるが、本人も自覚しない優れた先見性・強い洞察力・強い先読みの力・素晴らしい集中力・暖かい包容力を持ち、それによって確信した事案に於ける行動は早く・速く、的確で適切です。本人にも聴こえているあだ名は『先読みのアドル・エルク』と言う。 追記  以下に列挙しますものらの基本原則動作原理に付きましては『ゲーム内一般技術基本原則動作原理設定』と言う事で、ブラックボックスとさせて頂きます。 ご了承下さい。 インパルス・パワードライブ パッシブセンサー アクティブセンサー 光学迷彩 アンチ・センサージェル ミラージュ・コロイド ディフレクター・シールド フォース・フィールド では、これより物語は始まります。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?

俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。 この他、 「新訳 零戦戦記」 「総統戦記」もよろしくお願いします。

年下の地球人に脅されています

KUMANOMORI(くまのもり)
SF
 鵲盧杞(かささぎ ろき)は中学生の息子を育てるシングルマザーの宇宙人だ。  盧杞は、息子の玄有(けんゆう)を普通の地球人として育てなければいけないと思っている。  ある日、盧杞は後輩の社員・谷牧奨馬から、見覚えのないセクハラを訴えられる。  セクハラの件を不問にするかわりに、「自分と付き合って欲しい」という谷牧だったが、盧杞は元夫以外の地球人に興味がない。  さらに、盧杞は旅立ちの時期が近づいていて・・・    シュール系宇宙人ノベル。

処理中です...