2 / 3
1
しおりを挟むさわさわと風邪が彼女の髪を巻き上げた。
ふわふわの彼女の髪を彼女自身は手で抑えつつ。
こちらを振り返った。
そして笑顔で
「......!」
とかつて自分の名前だったものを呼んだ。
――――――――
ギャイギャイと騒ぐ小さな子供達。
主役を今か今かと待ちつつ周りを牽制するご令嬢達。
友達同士で固まるご子息達。
そんな姿に1人の5歳ぐらいの開場の隅っこのほうで俯いているふわふわのプラチナブロンドにアクアマリンの瞳の妖精のように可憐なご令嬢がため息をついていた。
彼女の名前は、エレナリア・シャル・ウェズレイ。ウェズレイ公爵家の次女である。
そして、エレナリアが今いるこの開場は、お城で開かれた子供達だけが集められたお茶会である。
人見知りで大勢の人がいる空間が苦手なエレナリアは、隅っこのほうに隠れこの茶会が終わるのを静かに目立たぬように待っていた。
(はぁ...どうしてこんなお茶会に出てるんだろう...)
人が苦手な彼女が何故このようなお茶会に出ているのかは、数週間前に遡る。
――――――――
数週間前、エレナリアが部屋で本を読んでいる時、彼女の父親から呼び出しがかかった。
そして、彼女が父親の元を訪ねると1枚の封筒を渡された。
「お父様?これは...?」
開けてご覧と言われるがままに開けるとそれは、『子供達のためだけのお茶会の招待状』だった。
「お父様...」
エレナリアは、不安そうに声を上げる。
彼女は、人と接するのが苦手な奥手な性格でこういう類のものは、今まで避けていたのだが、この招待状はそう簡単には、避けれないのだ。
「エル、ごめんな。これだけは、どうしてもお父様も断れないんだ...」
それは、お城で開かれるお茶会の招待状だったのだ。
――――――――
あの日の出来事を思い出していたせいで彼女は、周りが騒がしくなっているのに気づかなかった。
そして、涙目でドレスをぎゅっと掴んでいた彼女の手を誰かが握った。
一瞬遅れて彼女は気づき、
「えっ...?」
と声をあげ視線を上げた。
そこには、漆黒の髪に黄金色の瞳の7歳ぐらいの今まで見たことがない壮絶な美少年が立っていた。
(あ...れ、こ、の子?...どこか、で...?)
そう思った瞬間、
「やっぱり...君なんだな...捕まえた...もう離さない...!」
そう少年かニコッと笑ってそういった瞬間、
「もう...無理...」
彼女の人見知りが上限を超え、彼女は、気を失ってしまった。
最後にエレナリアが見たのは、こちらを驚いたように見つめた黄金の瞳が目に焼き付いていた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
読者の皆様へ
人が苦手要素があまりなかったので手直ししました。次の話はでき次第、早めに投稿します。 リー
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説


もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
婚約者を想うのをやめました
かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。
「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」
最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。
*書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。

王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。

婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。
黒蜜きな粉
恋愛
婚約が決まった翌日、登校してくると机の上に一通の手紙が置いてあった。
差出人は幼馴染。
手紙には絶縁状と書かれている。
手紙の内容は、婚約することを発表するまで自分に黙っていたから傷ついたというもの。
いや、幼馴染だからって何でもかんでも報告しませんよ。
そもそも幼馴染は親友って、そんなことはないと思うのだけど……?
そのうち機嫌を直すだろうと思っていたら、嫌がらせがはじまってしまった。
しかも、婚約者や周囲の友人たちまで巻き込むから大変。
どうやら私の評判を落として婚約を破談にさせたいらしい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる