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悪役聖女の末路

獣の時間

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 身体が火照って全身の性感帯の感度が上がっている。柔らかな枕を抱き締め丸まっても感じ過ぎて生理的な涙が止まらない。

 さみしい…。人肌が恋しい。誰でもいいから触れてほしい。汚くて嫌なのに口が開いて涎が止めなく出てくる。

 ぃやだ…、いやだっ…。そんな自分を否定したくてぶんぶんと首を振る動きも感じてしまう。こんなの私じゃない。【聖女】としても許されない醜態なのに…。

 「ん…っ、っひぃ…。ぃ、や……っ」

 もう枕がべとべとで気持ち悪い。今すぐこの呪いを解きたいと思うのに、もう一人の私が『』を欲している。
 せがむ私にもう嫌だと言うほどに熱い口吸いをして、圧倒的な力の前に捩じ伏せて蕩けさせてほしい。

 私の意識が落ちるまで存分に己の欲のまま使い捨てて欲しい。私を道具としてでもいいから壊れるまで犯されたい…。

 身体はどうしようもないほど切なくて、心もそれに引き連られる。このままじゃ駄目だ。いつか限界を迎えて一線を超えてしまう。

 最悪の想像に閣下に助けを求めに行こうとも考えが過ったがこんな状態で外に出るなんて無理だ。

 今は神官も出払っていて就寝を迎えた深夜。異変に気づいて閣下が駆けつけてくれるのは早くても朝になる。それまで持ち堪えられるか…。

 絶望しかない。このままだと外で護衛する騎士でも手当たり次第誘惑しそうだ。
 いや、実際にするのだろう。こんな生殺しに近い状態で気絶も許されないのだから。

 それが呪いを解決できないとは分かっていても、今は早くこの欲情から身を解放したい。

 これが神力を持たない一般市民であれば一瞬で理性が崩壊するだろう。此処まで耐えていることが凄いのか、それでもあと数分も持たないことを私はハッキリと自覚していた。

 「は~ー…っ、はーっ…ッツぅっ…」
 あれから何時間経っただろうか。いや、何分も経っていなかもしれない…。

 最初の抵抗意識は切り落とされ快感をそのままに受け入れているせいで頬が紅潮し、鳥肌なのかぶるぶると身体全体で震える。

 はやく、はやく楽になりたい。もういっそ…。
 のそりと身体を動かしては、僅かな振動に甘い絶頂をきたす。

 「ぁあ…ッ゛ツ、んん゛ぅっ…?!」 

 いくら我慢しても広い部屋には矯声がよく響く。あと、あとちょっと…。この頃には理性が焼き切れ、本能のままに歓喜に満ながらあと数cmの距離まで扉の前まで歩いていた。

 私がさっきまで歩いていた道のりにはその跡を残すかのようにビッショリと涎がついている。その光景にすら興奮を感じてしまったのだから末期だろう。

 や、やっと…! もう一歩でこの苦しみから解放される。自分では想像も出いないほど光悦とした無様な様で、必死の思いで、ガクガクに震える足を踏み出そうとした…、そのとき。

 「こぉら、駄目でしょ」

 後ろから私より遥かに背の高い男が私をすっぽりと収めて取っ手にかけようとしていた手を扉に挟んで押さえた。

 「ひぃぁっ…ぁあ゛ッツ???」

 かくいう私はうなじを奥深くまで噛みつかれたせいか『喰われる』、という認識が今まで溜まっていた生殺しの性感に火をつけみっともなくその場で中イきをしてしまった。

 息を吐くことでさらに余韻に浸る私を視姦する男は、私を捕らえる手を決して緩めようとしない。

 「やっ…、やぁあ…ッツ。…っゃ、はなし、てっ…。らくろ…っ」

 呂律(ろれつ)がろくに回らず、触れたところからこしょぐったさが走る。チリチリと電流が回るかのように、自分でも無自覚なうちにぴくぴくと身体が跳ねている。
 
 「可愛い。可愛いね、シル」
 さっきまで跡がくっきりと残るぐらいうなじをガッチリと噛んでいた獰猛さはどこへやら、今度は甘えるように身体中に唇が触れる。

 その拙いながらも的確な刺激が立っているのも限界だった私の腰をぬかした。ずるりと下がり落ちる私をラクロスはキスし続けながらもベッドまで運ぶ。

 「おねがっ…。やめっ…、ぃやらぁ、らく、っぁ…っ」

 理性が焼き切れ正気を失った私はえぐっ、えぐっと本格的に泣き始め抵抗にもならない抵抗で上に覆い被さったラクロスを押す。

 「シル、かわい…。泣き顔とか、反則過ぎ」

 いつものふざけた調子もなくて、今ラクロスに残っているのは『雄』の自我だけ。ダメ、このままじゃ【聖女】じゃなくなってしまう!

 「あっ…っ、あぁっ! らくっ…、おねが」

 足に手を這わせたラクロスの頭を必死になって押し返す。だんだんと秘所に近づいていき、その度に微少にもイってしまう。

 この状態が続けばイき狂ってしまう。どうにか懇願して止めさせたい、そんな思いが通じたのかギリギリのところでラクロスは手を止めた。

 「ふーん…。そんなに俺は嫌?」
 「っん…、nっ、ぅ…。ぃ、ぃやっ…!」

 近くにあった枕で顔を隠して拒絶の言葉を口にすると遂にラクロスは私を解放してくれた。そのまま興ざめして帰ってくれるかと思いきや、またじっとして動かない。

 ただ私の醜態を観察している。私もラクロスが中途半場に期待させたせいで余計熱は溜まり、ラクロスの視線が更に火をつけた。
 
 「シルは可愛い。いつもの取り澄ました顔が、こんなぐっちゃぐちゃになるのを知ってるのは俺だけだよな?」

 枕を取り上げられ目線を強制的に合わせられる。恥ずかしい、だけどそれ以上に目の前のこの雄が欲しい。オモチャに夢中になるかのように涎まみれの口に指を突っ込んではかき回し内側から侵食していく。

 ラクロスが私を解放する気がないことは分かった。どうせこのまま焦らして焦らして、理性が完全に崩壊したとき縋らせる魂胆だろう。

 だけど私は最後まで抗うと決めたのだ。どうにかして目線を反らそうとするも背後から顎を強く握られ動かせない。

 更にはもう片方の手で股を大っぴらに広げられる。今まで内閉じにし、なるべく刺激を与えないようにしていたこともあってか、突然外気に触れた箇所から洪水が起こる。

 「ぁア…ッ、いやっ、いやぁあ…!」

 録に力も入らない身体を無理やり動かそうと奮闘するが神力が使い物にならない状態で自分より三つも年上の男の腕力には敵わない。

 「ぅう゛ぅぅう…っ、らくっ、らくろす…zっ!」
 「あはは、【聖女】が台無しじゃん。ほぉら、泣かないで」

 私の顔の至るところにキスをして慰めるけど泣かすことをやっている張本人はラクロスだ。

 「やぁっ…、あ…っ、…ぁつ! イっ、ぐっ…ッツ!」 

 耳など弱い箇所を集中的に攻められ、肝心な箇所は焦らされ続けた身体は、盛大にイってしまった。

 こんな醜態をラクロスに見られたとなると今後二度とまともに顔なんか見られはしない。長い余韻に浸りつつ、自分の情けなさに涙が出る。

 だけどそんな感情は全て知ったことかと、身体は熱がぶり返す。ラクロスとの出会いから五年。

 当初は私とほとんど身長は変わらなかったのに、今では顔一つ分ほどの差ができて体格もやせ形ながら筋肉がしっかりとついた『雄』になっている。

 当然手だって大きい。そんな雄みを感じる手でずっと生足を掴まれているものだからずっと極限状態のようなものだ。

 「もうびちゃびちゃだ。見て、糸引いてる」

 つーっ…、とシーツに流れた愛液を指で絡めては遊ばれる。私よりずっと長い、『男の人』の手に釘つけにされる。

 「シル、つらい?」
 「んんぅ…っ、っらいぃ……っ」

 絶対に分かって聞いてるのに…。子どものように泣きじゃくるなんて、もう理性はほぼ崩壊しているも等しい。
 じゃなきゃこんな砂糖を煮詰めた甘ったるい声など出すはずがない。

 「それじゃぁ、俺にどうして欲しい?」
 「…ぁっ、いっぱいほしっ…。らくろすっ、ほしぃ」

 これ以上ないほど喜色満面の顔で、ラフの袖を泣いて縋る私を見ているこの光景は、端から見れば異常極まりない。

 「ふぅん…、そっかぁ。じゃぁ、あげないっ」

 それまで掴んでいた私の足から手を離して、私を支えていた身体も後ろに下がる。

 「やっ…、なんで…ぇっ」

 やっと解放してくれる、その一心で頑張ったのに当の本人はその気持ちを楽しそうに笑いながら踏みにじった。

 「だって散々俺のこと避けてたでじゃん。それで都合のいいときだけ利用するなんて、虫がいいと思わない?」
 「ごめっ…、ごめんなさぁ…っ。…っも、もうむりなの…ぉっ」

 支えがなくなったせいでもう座り直すことさえできず、ずりずりと這い上がりながらラクロスに縋りつく。ラクロスはそんな私をただ見るだけで、絶対にその手を貸そうとはしない。

 「本当にごめんなさいって思ってる? 別に俺じゃなくてもいいもんね。さっきも外にいる護衛に手ぇ出そうとしてたし」
 「っぅう゛…、ゆるして…ぇっ」
 「やだ。ちゃんと『セイシンセイイ』ごめんなさい、して?」

 身体が溶けそうだ。熱が溜まりに溜まってもう制御がつかないほど暴れている。こんなときに唯一の救いがラクロスだなんて最悪過ぎた。今までを振り変えれば、鬱憤晴らしとしか思っていないのだろう。

 どうせこの男は私がどれだけ謝ろうと機嫌良くなるだけで絶対に私を解放してはくれない。こんな不毛なやり取りをするぐらいなら、とそのままベッドの端まで身体を引きずる。

 「は? ねぇ、何してんの?」

 クラく、重い声が私を支配しようとするがもうラフの言葉には反応しないと決めたのだ。

 だから振り切って力の抜けた身体をベッドから落とす。もう立つ力など残っていないのたからこのまま引きずって扉まで目指す他ない。

 「ねぇってば…。シル、そんなに俺に殺されたい?」

 いつになく真剣な声が背後から聞こえる。それでも耳を貸さずただゴールを目指して進む。

 ラクロスはその場で大きく溜め息を吐き、次の瞬間ゾッとするほどの殺意が私を包んだ。

 めっきり動かなくなった私にゆっくりと近づいてくる。それだけで既に恐怖だ。さっきまで惨めにも縋っていた相手を、今では逃げたいと思うだなんて。

 ガクガクと大袈裟に震える私を、さっきまでの笑顔を消したラクロスが掴む。扉まであと半分の距離だった。

 「…っい、ゃ。らくろすっ…、はなし」
 「ホントさぁ、一回痛い目見ないとわかんない?」

 抵抗という抵抗もできずに、足首を引きずられベッドに戻される。こんな扱い、屈辱以外の何物でもないのに…。

 乱暴にベッドに放り投げられ、恐怖からかヘッドボードに逃げる。じりじりと威圧混じりに詰め寄るラクロス。

 ついに追い詰められ覆い被すように逃げ場をなくされ、もう逃げられないと絶望の涙をこぼす私を数秒眺めたラクロスは…。

 「…はぁ。分かった。シルからキスしてくれるなら全部許すから」

 まるで譲歩した心優しい人なんて雰囲気を醸し出しているのに、私を殺す鎌を抱えているのはラクロスだ。どうせ今この熱から逃れる術はこの男だけで、それ以上もそれ以下もない。

 だから私は唯一の救いの糸だと思い込み、結局ラクロスの思うままに動いてしまった。

 「ん…っ、ぁうっ…。ふぁ、っ…。んん゛ぅう?!」

 身長差からかラクロスの服を頼りに這い上がり、ようゆく口と口を会わせることができた。
 上手く焦点が合わないせいか小鳥がつばむような拙い口吸いだけど、ラクロスは機嫌を直しさらに私の口内を貪った。

 双方の唾液が絡まり、垂れていく。私は力が抜けてしまっていたからラクロスが片腕で支えたまま、熱い口づけを交わした。息が苦しくなっても止めてはくれなくて、下腹部の刻印が熱くなるだけだった。

 ようやく口が離れたときには、軽い甘イきで痙攣(けいれん)していた。

 「…っん、はぁ。あぁ~あ。もう完全に発情しきった雌じゃん。清廉潔白の聖女様じゃなかったの?」
 「…ぁっ、ハーッ…ハー…ッツ」

 シルクの髪が目に垂れかかる。こうやって嘲るような言葉でさえ、私を興奮させてしまう材料にしかならない。
 美味しそうな獲物として完全にデキあがった私の身体を堪能するように絡めとる。

 柔肌を果実を噛み砕くように貪る。色香に満ちた矯声が部屋には響き、脳に直接快感が走る、、

 「ぁ、っあ…! ぃ、っぁ…、ぁぁああ゛ぁ?…ッツ?!」

 言葉という言葉が完全になくなり、残ったのは獣の叫び。私は艶やかにもラクロスの首に腕を回し与えられる快感を余すことなく受け入れた。

 私がイき狂うごとにラクロスも余裕をなくし、服を脱ぎ捨てた。細身でありながら雄々しくも腹は割れ、苛ついた様はまさしく雌を喰らう上位の『雄』だ。

 それから私達は、時が経つのを忘れてお互いを喰らい合った。白肌に赤い所有印がまばかれ、何度も何度も貪られ、意識が飛んだ後も犯され続けた。
 
 空っぽで干からびたカップに水が満たされ、溢れ、壊れるまで…。

 
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