64 / 117
思惑(しわく)は交わる
ケーキの評価【悪役令嬢視点】
しおりを挟む
「…ふぅ。やっと全員の挨拶が済みましたね」
「あぁ。よくやった、エディス」
事前に名前と顔、爵位だけは頭に叩き込んだとはいえ貴族の会話は想像の何倍も疲れた。こういう時は糖分(とうぶん)が必須(ひっす)なんだけど、もうそろそろかな…。
時計を見ていると丁度時間通りに新たな料理が運ばれてきた。今度は今までのようなファストフードではなく、本格的な一流シェフ顔負けのデザートの品々である。
まだ社交界に出回っていないデザインのケーキに興味を示しながらも遠慮(えんりょ)する貴族の人達に、お手本となって私が一つ手に取る。それは私が一番好きなチーズケーキだ。
濃厚でしっとりとして、食感も下地がサクサクとして楽しめる一品である。お父様も食べ慣れているからか日頃からよく食(しょく)すモンブランを手にとって口に含んだ。
甘味(かんみ)が嫌いと噂のお父様がケーキを手に取ったのだから興味を惹(ひ)かれた何人かの貴族が同じく手を伸ばす。ふふっ、一度手に取ったらもう戻れないわよ。
「…なんとっ?! これは見事な」
「一体どのようなレシピなんだ…。いや、シェフは誰だ?!」
「ほんんりと甘く、後味も素晴らしい。是非シェフを雇いたいものだ」
よしッ!!!、と心の中でしっかりガッツポーズをしながら予想取り反応に小躍(こおど)りでもしそうな勢いだ。
「これは、本当に美味しいね」
ベリア公爵はチーズケーキを選んだのか、一口食べるとピコンと可愛らしい反応が見れた。全く持ってもう…、良い宣伝塔(せんでんとう)である!
「あぁ。俺はこのフルーツケーキというのが気に入ったぞ!」
「私はチーズケーキというものかな。濃厚でいて食べやすい。デザインもシンプルで美しいじゃないか」
公爵方にも気に入って頂けたようで何よりだ。この五つに絞(しぼ)って良かった。どれだけ美味しくても受け入れられない人は一定数いるから分類して最終的に選抜(せんばつ)された精鋭(せいえい)らだ。
作り親としても鼻が高いばかりである。まぁレシピは実際私が作ったわけじゃないからあんまり自慢はできないけどね。
好みは分かれたものの十分に楽しんで頂けたようだし、個人的に質問に来る人も多かった。
「エディス様、これらのレシピは一体どこで手に入れられたのですか?」
「もしよろしければ私どもにもご教授させて頂きたいのですが」
「申し訳ございません。これらは全て私の商会で以後取引する商品の試作品(しさくひん)でありまして、まだ公開はしていない品々ですの。もしお気に召してくださったのであれば、商会を通して取引に応じてください」
笑顔を崩さずさり気なく商会のアピールをする。事前契約で販売数を固定したいし、何より社交界で今後流行るものに目がない夫人方の競売(きょうばい)には注目が集まる。
社交界で基盤(きばん)を作るためには彼女らに出来る限り好印象を与えておく方が良い。その為には取引先にも十分厳選しておかないと、間違って敵対勢力同士で取引してしまえば大打撃である。
「おぉ…、なんとっ。早速契約に向けて取り掛かる準備をして参ります」
「エディス様は商売の才が多様でいらっしゃるのですね。私の今度のお茶会に是非ご参加頂けませんか?」
反応は上々(じょうじょう)のようで、後に貴婦人方(きふじんがた)から何件かお茶会への招待を頂けた。
「ありがとう存じます。ですがまだ商会の方が慌ただしくて、落ち着いたらまた声を掛けさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「もちろんです。お待ちしておりますね」
貴婦人と別れ、目的も完遂(かんすい)できたことでルンルンな気持ちで次のデザートに手を伸ばす。
モグモグと令嬢らしからぬ口いっぱいにほうばっているとじっ…と視線を感じた。それも真上から…。
「あぁ。よくやった、エディス」
事前に名前と顔、爵位だけは頭に叩き込んだとはいえ貴族の会話は想像の何倍も疲れた。こういう時は糖分(とうぶん)が必須(ひっす)なんだけど、もうそろそろかな…。
時計を見ていると丁度時間通りに新たな料理が運ばれてきた。今度は今までのようなファストフードではなく、本格的な一流シェフ顔負けのデザートの品々である。
まだ社交界に出回っていないデザインのケーキに興味を示しながらも遠慮(えんりょ)する貴族の人達に、お手本となって私が一つ手に取る。それは私が一番好きなチーズケーキだ。
濃厚でしっとりとして、食感も下地がサクサクとして楽しめる一品である。お父様も食べ慣れているからか日頃からよく食(しょく)すモンブランを手にとって口に含んだ。
甘味(かんみ)が嫌いと噂のお父様がケーキを手に取ったのだから興味を惹(ひ)かれた何人かの貴族が同じく手を伸ばす。ふふっ、一度手に取ったらもう戻れないわよ。
「…なんとっ?! これは見事な」
「一体どのようなレシピなんだ…。いや、シェフは誰だ?!」
「ほんんりと甘く、後味も素晴らしい。是非シェフを雇いたいものだ」
よしッ!!!、と心の中でしっかりガッツポーズをしながら予想取り反応に小躍(こおど)りでもしそうな勢いだ。
「これは、本当に美味しいね」
ベリア公爵はチーズケーキを選んだのか、一口食べるとピコンと可愛らしい反応が見れた。全く持ってもう…、良い宣伝塔(せんでんとう)である!
「あぁ。俺はこのフルーツケーキというのが気に入ったぞ!」
「私はチーズケーキというものかな。濃厚でいて食べやすい。デザインもシンプルで美しいじゃないか」
公爵方にも気に入って頂けたようで何よりだ。この五つに絞(しぼ)って良かった。どれだけ美味しくても受け入れられない人は一定数いるから分類して最終的に選抜(せんばつ)された精鋭(せいえい)らだ。
作り親としても鼻が高いばかりである。まぁレシピは実際私が作ったわけじゃないからあんまり自慢はできないけどね。
好みは分かれたものの十分に楽しんで頂けたようだし、個人的に質問に来る人も多かった。
「エディス様、これらのレシピは一体どこで手に入れられたのですか?」
「もしよろしければ私どもにもご教授させて頂きたいのですが」
「申し訳ございません。これらは全て私の商会で以後取引する商品の試作品(しさくひん)でありまして、まだ公開はしていない品々ですの。もしお気に召してくださったのであれば、商会を通して取引に応じてください」
笑顔を崩さずさり気なく商会のアピールをする。事前契約で販売数を固定したいし、何より社交界で今後流行るものに目がない夫人方の競売(きょうばい)には注目が集まる。
社交界で基盤(きばん)を作るためには彼女らに出来る限り好印象を与えておく方が良い。その為には取引先にも十分厳選しておかないと、間違って敵対勢力同士で取引してしまえば大打撃である。
「おぉ…、なんとっ。早速契約に向けて取り掛かる準備をして参ります」
「エディス様は商売の才が多様でいらっしゃるのですね。私の今度のお茶会に是非ご参加頂けませんか?」
反応は上々(じょうじょう)のようで、後に貴婦人方(きふじんがた)から何件かお茶会への招待を頂けた。
「ありがとう存じます。ですがまだ商会の方が慌ただしくて、落ち着いたらまた声を掛けさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「もちろんです。お待ちしておりますね」
貴婦人と別れ、目的も完遂(かんすい)できたことでルンルンな気持ちで次のデザートに手を伸ばす。
モグモグと令嬢らしからぬ口いっぱいにほうばっているとじっ…と視線を感じた。それも真上から…。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
☆レグルス戦記☆
naturalsoft
ファンタジー
僕は気付くと記憶を失っていた。
名前以外思い出せない僕の目の前に、美しい女神様が現れた。
「私は神の一柱、【ミネルヴァ】と言います。現在、邪神により世界が混沌しています。勇者レグルスよ。邪神の力となっている大陸の戦争を止めて邪神の野望を打ち砕いて下さい」
こうして僕は【神剣ダインスレイヴ】を渡され戦禍へと身を投じて行くことになる。
「私もお前の横に並んで戦うわ。一緒に夢を叶えましょう!絶対に死なせないから」
そして、戦友となるジャンヌ・ダルクと出逢い、肩を並べて戦うのだった。
テーマは【王道】戦記
※地図は専用ソフトを使い自作です。
※一部の挿絵は有料版のイラストを使わせて頂いております。
(レグルスとジャンヌは作者が作ったオリジナルです)
素材提供
『背景素材屋さんみにくる』
『ふわふわにゃんこ』
『森の奥の隠れ里』
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【R18】純情聖女と護衛騎士〜聖なるおっぱいで太くて硬いものを挟むお仕事です〜
河津ミネ
恋愛
フウリ(23)は『眠り姫』と呼ばれる、もうすぐ引退の決まっている聖女だ。
身体に現れた聖紋から聖水晶に癒しの力を与え続けて13年、そろそろ聖女としての力も衰えてきたので引退後は悠々自適の生活をする予定だ。
フウリ付きの聖騎士キース(18)とはもう8年の付き合いでお別れするのが少しさみしいな……と思いつつ日課のお昼寝をしていると、なんだか胸のあたりに違和感が。
目を開けるとキースがフウリの白く豊満なおっぱいを見つめながらあやしい動きをしていて――!?
【R18】少年のフリした聖女は触手にアンアン喘がされ、ついでに後ろで想い人もアンアンしています
アマンダ
恋愛
女神さまからのご命令により、男のフリして聖女として召喚されたミコトは、世界を救う旅の途中、ダンジョン内のエロモンスターの餌食となる。
想い人の獣人騎士と共に。
彼の運命の番いに選ばれなかった聖女は必死で快楽を堪えようと耐えるが、その姿を見た獣人騎士が……?
連載中の『世界のピンチが救われるまで本能に従ってはいけません!!〜少年聖女と獣人騎士の攻防戦〜』のR18ver.となっています!本編を見なくてもわかるようになっています。前後編です!!
ご好評につき続編『触手に犯される少年聖女を見て興奮した俺はヒトとして獣人として最低です』もUPしましたのでよかったらお読みください!!
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる