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闇堕ちイベントとか求めてないです!
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しおりを挟む「お姉さま!」と小鳥の囀りが遠のいていく。ホッと息を吐き出した。
スヴェンの言葉を借りるならば、わたしに構うよりの、メインキャラたちと乳繰り合っていればいいのに。できればハッピーエンドを目指して欲しい。
図書室で自習中、ちょうどスヴェンが席を外している間の出来事だ。
メインキャラその一とその二と共に図書室にやってきた妹は、ヴィオラの姿を見つけるや否やダイヤモンドの如く瞳を煌かせて突進してきた。
図書室ではお静かに、と書かれた貼紙に則り小声で「お姉さま! 会いたかったわ!」と生き別れの姉妹さながらの表情で抱きつこうとしてきた。
身代わり呪文と目隠し呪文でさっさと図書室の奥へ逃げ、妹が出て行ったのを見計らって勉強していた場所へ戻れば、待っていたのはメインキャラその一のジュキアだった。
「あんた、なんでそんなにアリスのことを避けるんだ」
「あの子がトラブルメーカーだからよ」
決まりきった言葉だ。
「妹だろ。家族だろ。どうしてそうまでして避ける必要があるんだよ。アリスが、悲しんでるんだぞ!」
響いた声に眉を顰める。図書室は私語厳禁だというのに。
妹が悲しんでいるからなんだ。妹と、あの子と関わってしまっては、明日には我が身が滅んでいるかもしれないんだ。
可愛い妹だから、と関わるつもりはない。だって悪役令嬢になんてなりたくないんだもの!
多少なりとも、情はある。だからこそ、なおさら関わりたくなかった。
「――妹で、家族だからよ。寂しい、悲しい、と顔を歪めるあの子は可哀想でしょうね。でも、あの子はわたしから全てを奪っていくわ。両親からの愛、初恋の人、優しい親友――あの子はこの世界の主人公なのよ」
声を荒げそうになる激情を押さえ込む。語尾が震え、握り締めた手のひらに爪が刺さる。
「あの子といると、わたしは醜い感情に駆られるの。悪役になんてなりたくない……! 妹を憎みたくないの!」
心の叫びだった。
思いもしない言葉に、ジュキアは言葉を失い、視線をさ迷わせる。
ぎゅ、と胸もとを握り締め、悲哀に満ちた表情のヴィオラを見ていられなかった。
ヴィオレティーナの妹へのコンプレックス、強い劣情が胸の内を焦がす。
初めは、トラブルメーカーすぎる妹に嫌気が差して。次に、愛される妹に絶望して。そして、そんな妹に嫉妬してしまう自分自身に嫌悪した。
ヴィオラの大半を占めるのは前世の記憶、または別人の記憶だ。これらを思い出してからは ヴィオレティーナは今のヴィオラに近い形となり、悪役令嬢としてのヴィオレティーナから一度遠のいた。
けれど。
ゲームとしてのシナリオが始まると、修正力というのか、ゲームのヴィオレティーナに感情を引き摺られるようになった。
原作とは違う、ユリアがヴィオラの友人として横に並んでくれていたおかげか、気持ちも多少和らいでいたのに。結局、ユリアも妹に奪られてしまった。
「そんな、自分勝手な我が儘だろ!」
「じゃあどうしろって言うの!? わたしは、嫉妬に駆られた悪魔になんてなりたくないわッ」
「はぁい、ストップ。まったく、ちょっと席を外しただけでこうだ」
「スヴェン……スヴェン……!」
わざと足音を立ててやってきた彼が、ヒーローに見えた。
「僕のお姫様を虐めないでおくれよ、後輩君」
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