上 下
9 / 46
原作・悪役令嬢、現在・傍観主希望

07

しおりを挟む
 
 すぅ、と深く息を吸って、ゆっくりと吐き出していく。
 ピクピクと目の端が痙攣する。緊張している自分に苦笑いした。手のひらが汗ばむ。

 ゲームのヴィオレティーナは使い魔を召喚することができなかった。
 あくまでもヒロインの姉であり、ゲーム内では深く説明されることはなかったが、設定資料集には書かれていた、らしい。
 ヴィオラは購入していないためにその理由は分からずじまいだ。

「珍しいですね、ミス・ナイトレイ。緊張しているのですか?」
「……先生、私だって緊張します」

 前の机に座っていたクラスメイトたちに聞こえていたのだろう。クスクスと笑われてしまった。

 第二学年から増える使い魔の授業は、魔法生物から派生した授業内容だ。
 魔法使いにとって使い魔とは一心同体。一生を共に過ごすパートナーで、成人した魔法使いのそばには必ず魔法生物の姿がある。

 第三学年の生徒のそばにも、すでに魔法生物の姿があり、下級生たちは憧れの念を抱くものだ。

 やれるだけ、やろう。

 先生が用意した魔法陣の前に立ち、早る鼓動を落ち着かせようと深呼吸をする。
 ――短く息を吐いて、詠唱をする。

「影となり、写し身となるモノ。金わわもたらし、銀を授ける。星を総て、天を覆う。――"現れなさい"」

 陣に魔力が奪われていく。光を放ち、教室中が白く覆われた。

 次に目を開けた時、みゅう、と小さく鳴く生き物に目を瞬かせる。
 キラキラと輝くつるりとした鱗に覆われた体。背中から生えた翼。長いしっぽはトカゲのよう。

「どっ……ドラゴンの幼体!?」

 先生の声が広い教室に響き渡った。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

彼はもう終わりです。

豆狸
恋愛
悪夢は、終わらせなくてはいけません。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

【完結】悪役令嬢エヴァンジェリンは静かに死にたい

小達出みかん
恋愛
私は、悪役令嬢。ヒロインの代わりに死ぬ役どころ。 エヴァンジェリンはそうわきまえて、冷たい婚約者のどんな扱いにも耐え、死ぬ日のためにもくもくとやるべき事をこなしていた。 しかし、ヒロインを虐めたと濡れ衣を着せられ、「やっていません」と初めて婚約者に歯向かったその日から、物語の歯車が狂いだす。 ――ヒロインの身代わりに死ぬ予定の悪役令嬢だったのに、愛されキャラにジョブチェンしちゃったみたい(無自覚)でなかなか死ねない! 幸薄令嬢のお話です。 安心してください、ハピエンです――

溺愛されたのは私の親友

hana
恋愛
結婚二年。 私と夫の仲は冷え切っていた。 頻発に外出する夫の後をつけてみると、そこには親友の姿があった。

【完結】公爵令嬢はただ静かにお茶が飲みたい

珊瑚
恋愛
穏やかな午後の中庭。 美味しいお茶とお菓子を堪能しながら他の令嬢や夫人たちと談笑していたシルヴィア。 そこに乱入してきたのはーー

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

処理中です...