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第1章

第4話

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 ジゼルに言われた通り『ステータスオープン』と声に出すと、俺の前にゲームのステータス画面のようなものが現れた。

 どういう形かというと、B5用紙サイズの半透明の下敷きのような感じだ。
 それが俺の前の空中に浮いている──というか、固定されている。

 胸より少し低いぐらいの高さにあって、ほどよい角度で斜めになっている。
 俺が見たり、操作したりするのにちょうどいい具合だ。

 ちなみに表示内容は、こんな感じ。


【名 前】 アラカワ リョウタ
【属 性】 水
【武 器】 弓
【レベル】 1
【経験値】 0/10
【H P】 10/10
【M P】 5/5
【 力 】 5
【耐久力】 5
【素早さ】 5
【魔 力】 5
【スキル】 弓術1、ヒールウォーター
【S P】 0
【武 器】 なし
【防 具】 平民の衣服(防御力0)
【補助1】 なし
【補助2】 なし
【攻撃力】 2
【防御力】 0



 うん、これはやはりゲームだな。
 それもロールプレイングゲームってやつだ。

 細かい数値などに関しては今見てもしょうがない気がするので、おいおい見ていくことにする。

 ちなみに操作しやすそうな位置にあるなと思って触ってみたら、予想通り、タブレットと同じ要領で操作できるようだ。

 適当に弄っていくと、今度はジゼルのステータスが表示された。


【名 前】 ジゼル
【属 性】 火
【武 器】 片手剣
【レベル】 1
【経験値】 0/10
【H P】 12/12
【M P】 5/5
【 力 】 5
【耐久力】 6
【素早さ】 4
【魔 力】 5
【スキル】 片手剣術1、ファイアボルト
【S P】 0
【武 器】 見習い騎士の剣(攻撃力3)
【防 具】 見習い騎士の鎧(防御力1)
【補助1】 見習い騎士の盾(防御力1)
【補助2】 なし
【攻撃力】 6
【防御力】 2


 ステータスは俺と似たり寄ったりに見えるが、少し装備がいいのかもしれない。
 ちょっと羨ましい。

 なお、ステータス表示の右上にあった×印をタップすると、ステータス画面はポッと音を鳴らして消え去った。

「ジゼル、このステータスっていうのは、俺たち王の候補者と騎士だけが持っているものなのか? それともこの世界の住人は全員持っている?」

「全員持っています。ちなみに一般人のステータスは、【力】【耐久力】【素早さ】【魔力】がすべて3程度ですね」

 なるほど。
 ということは、俺もジゼルも現段階では、一般人と大差がないぐらいか。

 モンスターの強さは分からないが、多分この雰囲気だと、ちょっと強いモンスターに遭遇したら負けてしまいそうな気がする。
 力を得たぜヒャッホーと言って、無双できる感じではなさそうだ。

 というか、そもそも俺は武器を持っていないんだよな。

 最初は素手で戦えってことだろうか。
 それともジゼルを前に立てて戦わせるのが正解ってことか?

 そんなことを考えていると、ジゼルが声をかけてきた。

「ところで王様、ちょっといいですか?」

「ん、なんだ」

「王様に手に取ってほしいものがあります。こちらなんですが」

 ジゼルが示した先には、木箱が三つ置かれていた。
 少女騎士は木箱の横に立って、俺に促してくる。

「どうぞこちらをお開けください。王のために用意されたアイテムです」

 俺は言われるままに、木箱を開けていく。

 三つの木箱にはそれぞれ、小型の弓矢、少し上等そうな衣服、数十枚の金貨らしきものが入っていた。

 ほうほう、なんとなく分かる気がするぞ。
 これは初期装備ってやつだな。

 なんだ、武器もちゃんとあるじゃないか。
 まあ王のアイテムというにはしょぼい気はするが、この辺はお約束だな。

 そうして俺がそれらのアイテムを手にしようとすると──

 シュンッ!
 なんと、箱の中にあった道具類が一瞬だけ光り輝いたかと思うと、全部消え去ってしまった。

 おぉっと……?

 だがそれに関しては、ジゼルが説明してくれる。

「王の所有物と認められたアイテムは、王のアイテムストレージに自動的に収納されるんです。ステータス画面から操作できるので、よければ確認してみてください」

 言われたとおりに再びステータスを呼び出し、ボードをなんとなく操作してアイテム画面を引き出す。

 するとアイテム画面には、【狩人の弓矢】【上流市民の衣服】の二つが表示され、さらにさっきまで「0ゴールド」だった「所持金」の欄には、今は「50ゴールド」と表記されていた。

 さらにポチポチと適当に操作していくと、【狩人の弓矢】と【上流市民の衣服】を「装備」することができた。

 結果、俺のステータスはこんな風に変わった。


【武 器】 なし→狩人の弓矢(攻撃力3)
【防 具】 平民の衣服(防御力0)→上流市民の衣服(防御力1)
【攻撃力】 2→6
【防御力】 0→1


 強さ的には、だいぶマシになった感じがする。

 なお「装備」をしたら、俺が身に着けている衣服が瞬時に変化し、さらに腰のベルトのホルダーに弓が、背中には矢の入った筒が現れた。
 すごい。

 細かい部分でちょっと気になったのは、攻撃力3の弓矢を装備したのに、実際の攻撃力が4上がったことだ。
 これはジゼルに聞いたところ、俺が持っている【弓術】というスキルの効果によるものらしい。

 ちなみにジゼルは、そんな俺のステータス画面の操作を興味深そうにのぞき込み、ぽつりとつぶやく。

「それにしても王様、すごいですね。ボクが何も教えていないのに、ステータス画面を完全に使いこなしてます」

「あー、まあな。俺たちの世界にあった道具と、使い方が似てるんだよ。っていうか神々とやらが、そういう風に作ったんじゃないか?」

「そうかもしれません。でも、さすが王様です」

 何が「さすが」なのか分からないが、褒められて悪い気はしない。
 ジゼルは本当に尊敬している様子で、バカにしているような雰囲気もないしな。

 それはそうと──

「なあジゼル。その敬語とか、『王様』とかいう呼び方もやめないか? なんかむず痒いんだが」

「えっ……ダ、ダメですか? ごめんなさい! 王様からのご命令とあれば、変えますけど……」

「いや、ダメってことはないんだが……。ちなみに俺は荒川良太って名前だから、荒川さんとか、良太さんとかで全然いいぞ」

「はい、リョウタ様ですね。そのお名前は、ボクの胸にしっかりと刻み込みました。──でも、えぇっと……もし王様にお許しいただけるなら、ボクとしては王様ってお呼びした方が、しっくりくるんですけど……」

「まあ、別にそれでも俺は困らないから、ジゼルがそのほうがいいなら構わないけど」

「本当ですか!? ありがとうございます王様! こんなボクのわがままを聞いてくれるなんて、王様はやっぱり心が広いお方です! ボクは王様に仕えることができて幸せです!」

「いや、そう褒められるような事を言った覚えもないんだが……」

 なんか調子狂うなぁ……。
 元の世界ではこんなによいしょされたことがない俺なので、どうにも決まりが悪い。

 まあでも、そのうち慣れるのかもな。
 せっかくだから、素直にいい気分になっておくか。

「じゃあジゼル、準備はこのぐらいで大丈夫か? そろそろ表に出てみたいんだが」

「はい、そうですね。あとは魔法の使い方とかもお教えしないとですけど、それはここを出てからのほうがやりやすいでしょうし。あと──」

 ジゼルは、てててっと俺の前に回り込んでくる。
 そしてにっこり笑顔で、こう言ってきた。

「あらためて。これからお願いしますね、王様♪」

「おう。こっちこそよろしくな、ジゼル」

 俺は目の前の小動物チックな少女の頭を、軽くなでてみる。
 なんかこう、ついそうしたくなる可愛らしさがジゼルにはあるのだ。

 するとジゼルは、「にゃはっ」と笑って嬉しそうにした。

 やっべー、可愛い。
 これは嵌ってしまいそうだ。

 キングスゲーム──これはヤバいゲームに招待されてしまったようだ。
 神々とやらに感謝をしておくことにしよう。
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