魔拳のデイドリーマー

osho

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第23章 幻の英雄

第562話 モノマネリサイタル?

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 ……どうやら、皆と分断されてしまったらしい。

 今さっき襲来した『麒麟』の力で、僕と、おそらくは母さんが――『麒麟』は2匹いたし、それぞれ僕と母さんめがけて突っ込んできてたからな――それぞれ別な場所に飛ばされてしまったと思われる。
 残りの皆は、まだあの城の前にいるんだろうか。

 けれど、仮に僕と母さんがいなくなったとしても、『女楼蜘蛛』5人を含む粒ぞろいのメンバーがあそこには残ってる。

 もしかしたら僕らを待ってるかもしれないけど、逆に怒って速攻カチコミかける可能性もあるし……結局その攻撃を防げるわけではない気が……いやまて、そうか。

 あの城を最初に隠していた『何か』……あれをぶっ壊せるのは、僕と母さんだけだ。
 ならば、僕と母さんを隔離してからあらためてアレを張りなおしてしまえば、そこにあることがわかっていても、エルク達は手出しできなくなる。……なるほど、そういう作戦か。

 なら僕と母さんがやるべきことは、今目の前に立ちはだかっている障害をさっさと蹴散らし、一刻も早くエルク達に合流することだ。

 ……それはわかってるんだが、その……この光景はそもそも何なんだよ?

 今僕の目の前に立ちはだかっているのは……一緒にワープしてきたと思しき、バスクである。

 こいつ1人であれば、正直話にもならない。
 戦闘能力においてウェスカー以下なのは知ってるし、なんなら僕じゃなくても、義姉さんやシェリー、ナナとかサクヤでも普通に勝てると思う。
 油断さえしなければ、今ならエルクでも割といい線行けると思う。

 そのくらいに僕らは強くなった。もちろん、僕なら割とガチで瞬殺できると思う。
 ……僕が予想もしなかったような、トンでもない能力とか持ってなければ、だけど。

 …………そして、持ってたけど。

 何を? トンでも能力を。

 目の前の光景が、それを物語っている。

 そんなことを考えながら、僕はうしろに飛びのいて……ウェスカーが振るってきた、僕の首を刈り取る軌道の剣の一閃をかわす。

 その反撃で裏拳を打ち込んで、剣を折る。
 パキィン、と乾いた音を立てて、剣は半ばからきれいに折れ……しかし次の瞬間には、その折れた部分を補うように、光でできた刀身が現れてその代わりになる。

 飛び退りながら、連続で光の斬撃を飛ばしてくるウェスカー。
 それを全部拳で撃ち落としながら強行突破し、拳を叩き込もうとして……しかし転移で逃げられる。

 数十m先にまでその身を一瞬で移動させていたウェスカーは、一瞬で周囲に複数の魔法陣を展開し、そのうちの一つから極太のレーザービームが放たれてこちらに襲い掛かった。
 ……ああこれ、さっき僕らが城に入ろうとしたタイミングできた奴だ……こいつが撃ってたのか。

 それをさっきと同じように素手で受け止めて……しかしその間に、別な魔法陣から出てきたドラゴンと大蛇……おそらくは『召喚獣』であろうそれらが襲ってくる。

 鋭い牙を見せて噛みついてくるそいつらを、僕はひらりとかわし……まず、大蛇の方に掌底を一発、ばしんと叩き込む。

 単なる掌底じゃなく、水の魔力を載せて放たれたそれは……大蛇の体内の水分を伝わって、その衝撃を全身に伝播させた。
 言ってみれば、体の端から端まで極大威力の衝撃波が内側から暴れまわったようなもんである。
 これにはひとたまりもなく、大蛇は内部から爆散。

 それに一瞬遅れて、ドラゴンの方は……開かれた口が閉じられる前に、その下あごをがしっとつかんで、思いっきり振り回す。

 しっかり遠心力も載せて高速で2~3回振り回したのち、前後不覚に陥ったと思しきドラゴンを……

「返す」

 ウェスカーの方にぶん投げる。
 そしてそれを追うように僕も飛び、大質量の鈍器として使ったドラゴンをよけて飛び上がったウェスカーの逃げた先に跳躍。

 空中で一回転しながら、電撃を充填した右足を、かかと落としでたたきつけ……しかし、それも読んでいたのか、当たる寸前で転移されて逃げられた。

 行き場を失った電圧はそのままそこで放電され、その余波を食らってドラゴンは消し炭に。

 やはり『召喚獣』だったんだろう。2匹の死体はそのまますーっと消えていき、しかし本体であるウェスカーは涼しい顔をして別な場所に着地…………まあ、そろそろ説明しようか。

 さっきから僕は戦っている相手を『ウェスカー』と呼んでいるけど、これは別にバスクを言い間違えたとかそういうんじゃない。本当に、ウェスカーと戦っているのだ。

 僕の目の前にいるのは、その顔はもちろん、短めの茶髪といい、額につけているゴーグルといい、白黒のロングコートといい、まっすぐな剣といい……ウェスカーそのものである。
 使う多彩な魔法……召喚術にレーザービーム、光の剣……どれもこれもあいつが使ってきたものそのものだ。

 しかもなんなら、魔力の質まであいつと同じ……何から何までウェスカーそのものだ。

 けど、言うまでもなくそんなことはありえない。ウェスカーは……僕がこの手で殺した。
 『サンセスタ島』で、きちんととどめを刺した。生きているはずがない。……なんなら、死んだ後ちょっと軽く魂の状態のあいつと会話までしたんだから。

 というか実際、こいつはウェスカーに見えるけど……ウェスカーじゃない。間違いなく。
 生きているはずがないとか、それ以前に……

 と、そこまで考えたところで……目の前に立っているウェスカーの姿が一瞬ぶれた。

 次の瞬間、その姿はがらりとかわっていて……黒髪にテンガロンハットの、バスクのそれになっていた。

 つまりそういうことだ。
 今まで僕が戦っていたウェスカーは……この男、バスクが化けていたのである。

 しかもどういうわけか、技や魔法、魔力の質までまるっとコピーして。

 いやほんと……どういうカラクリだ? 単なる幻術やモノマネなんかじゃ絶対ありえない……それこそ、こいつらが色々やってる改造手術の類でだって無理だと思う。

 一瞬考えたんだよ。目の前でバスクの姿がウェスカーのそれに切り替わって、ウェスカーの力を使って攻撃してきたときに……『クローンや改造手術で人物を再現することまでできるのか!?』って。
 けど、そんなことできるなら、もっと他の面子も……ハイロックやリュウベエあたりを量産して手駒にしてるだろうし……違うと思った。

 何より……これは僕が、アドリアナ母さん由来の『霊媒師シャーマン』の力を通して感じたことなんだけど……感じ取れる魂の力が、これもウェスカーそのものだったのだ。
 いや、微妙に違うというか、薄い、ないし弱い感じはしたんだけど……それでも、魂を見て『誰た』って考えたら『ウェスカーだ』って判断できてしまいそうなくらいには、そうだった。

 マジでわからない。こいつ、いったい何をした?

「わけがわからない、って顔だね、ミナト君。ウェスカーが『わかりやすい』って言ってたけど……なるひど、実際にこうして見てみると、その通りだなって思うよ」

「そういうお前はさっぱりわからないね……今の、いったい何?」

「おや? 意外だなあ、わかんないかい? てっきり初見でバレると思ったんだけどねえ」

「いや、初見で知りもしない……技術なのか能力なのか知らないけど、言い当てられるわけないでしょうが。……まあ、わざわざ説明してくれるとも思ってないけど」

「ま、命かかった戦いの最中だからねえ……それならそうだな、当ててみなよ……死ぬ前にね!」

 その直後、またバスクの姿がぶれて……今度はハイロックに変わった。
 同時に装備も、ハイロックが着ていた軍服に変わり……直後、消えたかと思うほどの速さで地面を蹴ってこちらの懐に飛び込んでくる。

 そして、タイミング的に攻撃も防御もしづらい絶妙な位置・角度を狙った蹴り。

 とっさにこっちは頭突きでそれを迎撃しつつ、放たれた足をつかみ取って投げ飛ばすなりへし折るなりしようとするも、それより早く足を切り返して空中に舞うハイロック(バスク)。

 そのまま飛び蹴りからのコンボに移行。
 全部殴って相殺し、今度こそこちらの反撃の蹴りを叩き込む。

 しかし、察知されて素早くガードされる。
 あたりはしたものの、衝撃の大部分を殺された感覚。そのままその反動を利用してハイロックは後ろに離脱……したかと思ったら、また姿がぶれる。

 そんで今度はリュウベエかよ! しかも、あいつの使ってた刀まで再現して、追撃に来ようとしてた僕の首元めがけて大きく振りぬく。
 とっさにバックステップでかわすも、なんか呪いか何かのこもった風みたいな斬撃が四方八方にばらまかれた。それも別に防げたし、呪い?も効かなかったけど。

 そしてさらに踏み込んできたリュウベエ(バスク)。
 猛烈な勢いで縦横無尽に大太刀を振るい、僕を切り刻もうとしてくる。

 それも僕の動体視力と防御力なら、傷一つ追わずに全てさばける範囲だけど……そうしながらも、僕はさっきから余計に混乱させられていた。

(ハイロックにリュウベエまで……技のキレも威力もほぼ同じだ。模倣って感じがしない。かといって、全く同じってわけでもない気がする……ホントに一体何が起こってんだ!?)

 最初のウェスカーの時から感じてたことだけど……ハイロックの拳も蹴りも、リュウベエの斬撃も、素人の物真似でできる範囲を明らかに超えている。
 回数は少ないとはいえ、直接戦った相手だ。よくわかる。

 しかも、姿が変わるたびに服装も、リュウベエに至っては武器まで再現してるんだもんな……。

 よしんばバスクがこんな特技を持っていたんだとして、姿は幻術でそう見せかけているんだとしてもだ。
 魔力や魂の質までこんな風に変幻自在に変えられるなんて、どう考えてもおかしい。

 加えて、さっき攻撃を当てた際の感触……あれは、前にハイロックと戦ったときとかなり近かった。幻じゃない、本当に肉体がハイロックのそれになっている。
 
 それに、リュウベエから感じるこの嫌な感じ……これ『瘴気』だろ。
 ヤマト皇国での『妖怪大戦争』の時に戦場でさんざん苦労させられた、カムロ達が使ってたやつ。確かにリュウベエもコレ使ってたけど、こんなものまで使えるってどんな仕組みだ? 魂といい、まるで本当に本人がよみがえってこうして……

(……というか、魂って……何でそんなとこまで模倣してんだ?)

 ふと思った。

 肉体や技術、魔法や武器はまあいい。
 魔力も……まあ、本人の技とかを再現するんであれば、戦闘能力その他の際限の忠実性を高めるのなら……よしとしよう。

 けど……何でこいつ、『魂』の感覚まで模倣するんだ?

 率直に言って、意味がない。技や肉体をどうやってかコピーできるなら、戦闘に用いる分にはそれだけで十分なはずだ。
 極端な話、『魂』なんて部分は、戦闘能力には直接的には関係ないんだから。

 それこそ、『魂』に関わりのある力を使って戦うとか、そういうことをするんでもない限り。



 ……つまり、そういうことか?


 
 バスクのこのコピー能力は、技や肉体だけでなく、魔力や魂まで模倣できてしまう技術……ではなく、
 それらを模倣することが必須である、あるいは、結果的に模倣することとなる技術?

 ……僕の知る中で、『魂』に関わる能力を有している種族、ないし存在と言えば、それは……

 疑念を確信に変えるため、僕は加速してリュウベエ(バスク)の懐に飛び込み、勢いそのままに肘鉄をみぞおちに打ち込む。
 鋭く入ったその一撃で一瞬動きが止まり――やはりどついた感覚もリュウベエだ――その一瞬の間に、感覚を最大限まで強化して、その内側を探る。

 ものの一瞬で復活したリュウベエにそのまま離れて離脱されてしまったけど、その一瞬で十分だった。
 その一瞬で、わかった。こいつが、何をしているのか。

 ……なるほどね、これなら確かに……僕に『初見で見破られるかも』って思っても仕方ない。
 何せ、思いっきり僕が持っている力に関わりのあるそれを使っていたんだから。
 ……僕にはこんな真似はできないけどさ。

「……あらら、これは見破られちゃったかな?」

 リュウベエの姿のまま、バスクの口調で言うとちょっと違和感があるな。

 どうやら、バスクも今の一瞬で何が起こったか、何をされたか理解したらしい。
 僕の反応を見てか、あるいは……感覚的にわかったのかは知らんけど。

「バスク、お前―――





 ―――霊媒師シャーマンだったの?」





 バスクの体内……その奥の奥、魂の領域に手を伸ばした。
 そこで感じ取れたのは……1つの体の中に、複数の魂が取り込まれているという、とんでもない状況だった。

 中心部に、ひときわ強い魂があった。おそらくは、あれがバスク自身の魂。
 そしてその周囲に、無数の魂……の、欠片みたいなものが、ツギハギみたいな形で繋ぎ合わさっていた。そして、そのうちの1つは……ウェスカーの魂(の、破片)だった。

 また別な魂で、妙に活性化して力を放っているものがあった。……感覚的に、あれが今、バスクが化けている、リュウベエの魂だろう。

 信じられない話だけど……よくわかった。
 バスクは、こいつは……他人の魂の破片を取り込んで、それを媒介に『霊媒師』の力を使うことで……その魂の持ち主の力を再現できるんだ。技も、魔力も、肉体までも。

 魂への干渉で、そこまでのことができるなんて、聞いたことない。
 どっちかっていえば、あくまで精神的な領分になるであろうその力で、どうして直接的ないし即物的な、肉体にまで影響を……ああ、そうか。そっちは別系統だ。

「『霊媒師』の力で、魂から魔力や技をインストールして再現する。それと同時に、DNAみたいなものを読み取って肉体も再現……けど、そっちは霊媒師の力だけじゃないな。おそらくだけど……お前も体、いじられてるだろ」

「おー、バレる時は一瞬だなあ、さすがの洞察力。……まあ、いんすとーるとか、でぃーえぬえーとか、よくわからん専門用語もあったけど」

 おかしそうに笑いながら、バスクは元の姿……バスク自身のそれに戻る。

「ご明察。俺はもともと『霊媒師』の血筋でね? 他人の魂の破片からその者の力を読み取って、技や魔力を再現できるんだ。幻術や変装と組み合わせると、潜入や暗躍にはめっぽう使える力なんだよね。もちろん戦闘にも使えるけど、そこまで実用性はなかったな」

 言いながら、バスクはバスクの姿のまま、ウェスカーの魔法を使う。折れた剣から延びる、光の刃。
 しかしそれは、さっきまで見ていた同じ技と比べると、どうも弱弱しかった。

「本人の技をほぼ完璧に再現できる。けど、その技は本人の肉体、本人の魔力に最適化されているがために、俺自身がそれを同じように使うのは難しいんだ。場合によっちゃ、技の負荷や反動でこっちの体がイカれそうになったり、そもそも再現できなかったりする。種族的適性の問題でね?」

 まあ、当たり前の話だ。

 例えば、『翼人』という種族がいるけど……彼らは翼を使って飛ぶ以外にも、翼に魔力を込めてまき散らして煙幕代わりにしたり、手裏剣みたいに敵に飛ばして攻撃できる。
 しかし、そもそも翼がない種族がその模倣をするなんてのは……無理な話である。

 他人の技を本当の意味で完璧に模倣しようと思ったら、それこそ肉体ごと模倣する必要がある。

 ……それを、やったわけだ。こいつは。

 おそらく、改造手術で自分の肉体を、様々な種族の肉体に変化させられるような形に作り替えたんだろう。そのもとになるデータは、技や魔力の情報と一緒に魂から引っ張ってくる。
 ウェスカーの魂を使えば、体がウェスカーの肉体を再現する。
 ハイロックの魂を使えばハイロックの、リュウベエの魂ならリュウベエの肉体を。

 それを設計図にしてとはいえ、これだけ素早く体構造そのものを作り替えられる肉体を作るなんて……予想以上にとんでもないな、『ダモクレス』の技術は。

「といってもまあ、これだけのことができるようになったのは、ごく最近になってからなんだけどね……むしろ、どうにか君達の襲撃に、慣らしも含めて間に合ったって感じだよ。まさか、いくらミナト君達でも、こんなところまで追ってくるとは思わなかったからねえ。総裁も驚いてたよ。そんなに俺達のことが邪魔だったかい?」

「まあ、否定はしないけど……うちの母さんがこの『渡り星』のことをダンジョン扱いしてさ、行ってみたい、冒険してみたいって言うもんだから」

「……ええと、挑発か何かかな? それとも、こっちの戦意をくじくためのブラフ的な?」

「どんな返事が欲しい?」

「できればそうだと言ってほしいけど……いや、よそうかこの話題。なんだかいい予感がしない」

 懸命である。

 思わずシリアスな空気がぶっ壊れそうになってしまったけど、まあいいとして……よし、タネは割れた。
 こいつがどんな仕組みでこんな物騒なモノマネリサイタルをやってるのかはわかった。それなら……そのつもりでこっちも戦おう。

 なにせ、ウェスカーにせよハイロックにせよリュウベエにせよ、そろいもそろって僕らに一度負けてる面子なわけだし。
 状況に合わせてシャッフルしていろいろな技を使ってくるのは……厄介と言えば厄介だけど、やりようはいくらでもある。

 ……と、僕が考えるであろうことも敵は恐らく想定している、と思っておくべきだな。慢心はよくない。
 今言った通り、どの力にせよ一度は負けた相手だ。しかも、手の内もある程度知ってる。馬鹿正直に力押しで勝てるなんて思っちゃいないはずだ。1個か2個くらいは、何か切り札的なのを用意してるだろう。その想定でこっちも動こう。

 例えば……僕らが戦ったことのない相手の力を使ってくるとか。

 『魂の欠片』さえあれば、このコピー能力が使えるんだとすれば……極端な話、バスクがあったことがなくても、組織としての行動でそれを回収・保管しているものがあれば、それを使って模倣することもできるだろう。
 それこそ、あの、未だに種族その他もろもろがわからないダモクレス財団総裁・バイラスが、そういうのをキープしていてもおかしくは……うん、油断できないな。

 ……って、ほーら言ってるそばからなんか姿が変わりましたよっと。
 見覚え無いな……あれ、でも特徴に一致する奴は知ってるぞ。

 龍の鱗に爪に翼、強靭そうな肉体……そして、女性。
 ……ええ、その能力性別まで変わんの? 

「敵とはいえ顔見知りが目の前でいきなり性転換したんだけど僕どんな目でお前のこと見ればいい?」

「深く考えないでくれると嬉しい」

 声も女の声だ……ああ、なんか微妙な気分になる。

 ……気を取り直して。

 ええとたしか、ダモクレス財団の最高幹部……プラセリエル、だっけ? 僕は直接は見たことないはずだけども。
 たしか、アイリーンさんに消し飛ばされたんだっけ。

 それだけ聞くと雑魚っぽく思えるけど、タマモさんが相当苦戦したって聞いてるし、油断はしない方がいいだろう。

 さて、それじゃあ続きを始めようか……と、その前に。

「ところでバスク、ちょっと聞いてもいい、」

「うん、何だい?」

「お前多分だけど、僕だけじゃなく母さんもさらったよね。そっちには誰が行ってるの?」

「おや、心配かい?」

「まあ、一応。もちろん、僕が心配するのなんておこがましい話だとはおもってるけどね」

「まあ、確かにねえ……総裁も、『勝とうと思っちゃいけない次元の相手』だって言ってたからね。でもまあ、そうも言ってられない状況だし……きちんと強い奴が行ってるよ? まあ、正直勝てるかどうかは望み薄だけど……」

 にやりと笑って、

「……負けもしないだろうとは思ってるよ、個人的には」

 ふーん……さよかい。
 一体、誰が……どんな奴が相手をしてるんだろう?



 ☆☆☆


 
 ほぼ同時刻。
 同じく『渡り星』の……また、別な場所にて。

「……どんな状況よ、コレ!? あとあなた達誰!? 何!? コワイ!」



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