魔拳のデイドリーマー

osho

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第22章 双黒の魔拳

第511話 修行と夢と幻想と現実

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Side.エルク

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「……えっと……お姉様? 大丈夫?」

「……大丈夫に、見える?」

「正直見えない。てか、ついこないだもこんなことあったような……」

「あったどころか、ここ最近はほぼ毎日こうなってるわよ……訓練後はね」

 いつもと違う所があるとすれば、今日はミナトが一緒じゃない訓練だったんだけど……それ相応にハードな内容をこなしたのは変わらないので、しっかり私達、疲れてる。

 そして同時に、かなりハードな……人によっては、数週間前の自分では、到底こなせないようなレベルの訓練にも対応できるようになっている……なってしまっているがゆえの、精神的な疲れ、みたいなのも混ざってるのよね。

 これもひとえに、ミナトのせいというべきか、おかげというべきか……
 強くなれてるのはホントなんだけど、それに伴う精神的な疲れがさ、何度も言うけど……うん。

 あいつの無茶苦茶ぶりにもなれたと思ってたんだけど……ここにきて暴走っぷりが酷いわ。

 しかも、その原因が……つい最近、他ならぬ私が発したとある言葉が原因だと考えると……うう……胃痛が。

 すかさずターニャが持ってきてくれた飲み物を胃に流し込む。美味しい上に栄養価が高く、胃に優しい成分も含まれているアイスティーのおかげで、痛みも気分もだいぶマシになった。

「前々から聞こうかなーって思ってたんだけど……そんなにきついの? ミナトさんの修行」

「きついわよ、そりゃ……内容もそうだけど、私達今……」

 そこで、はぁ、とため息をつくついでに一拍置いて、



「実質、1日あたり70時間くらい修行してるからね」



「……ごめんお姉様、ちょっと何言ってるかわかんない」

 でしょうね。


 ☆☆☆


 きっかけはこないだ、リリンさんの呼び出しで、私とミナトがエレノアさんのお家にお邪魔させてもらった時のこと。

 いつの間にやら『若返りの薬』なんてものの作成を進めていた――しかも実用化のめどが立ちつつあるらしい――ミナトに対して、ちょっと注意する感じで言った言葉というか、やりとりなんだけど……



「あのさあミナト……また、今更になってこういうこと言うのもどうかと思いつつ、あえて言わせてもらうんだけどさあ……」

「うん、何? エルク」

「あんた、またちょっと最近、前まであった悪癖が戻ってきたというか、悪化して来てない? 現実と妄想の区別がつかなくなってきてるって言うか、妄想でとどめておくべきものを次々現実にしちゃってるっていうか……」

「それは……でも、自分で言うのもなんだけど、今更でしょ」

「開き直るな! だからさ、そのー……若返りの薬なんて、あるはずもないものでもあるけど、それ以前にあっちゃいけないレベルでしょ。できても現実に作っちゃダメだろとか思わないのかなー……どう考えてもそんなの、100%厄介事の種になるじゃない」

 不老不死だの若返りだのってのは、古今東西、多くの人が夢見た大願。特に、時の権力者や、金持ちなんかは……そんなものあるはずないとはわかっていても、可能性があるなら、探し求めてやまなかったであろう幻想だ。

 古代文明の遺産の中には、不老だの不死だのまではいかなくても、寿命を延ばす効能がある秘薬が存在したらしい。それが発見された際は、その奪い合いで大国同士が戦争になったことまであると聞いたことがある。……何百年も昔のことだそうだけどね。

 そんなものを作ったとなれば、権力者や金持ちはこぞって欲しがるでしょうね……いくらお金を積んででも、どんな手段を使ってでも、手に入れようとする。
 ミナトからそれを買おうとするか、ミナト自身を召し抱えて作らせようとするか、ミナトを脅して作らせようとするか……

 時と場合によっては、それこそ人質でも無実の罪でも、何でもやってそれを手にしようとするでしょうし……けど、そういうことをした瞬間にミナトはそいつを敵認定するのよね。

 最悪、国が亡ぶレベルの大ごとにもなりかねない。自分や、自分の大切なもの……私達とかを守るためなら、ミナトは平気でそのくらいのことをやる。やった。2年くらい前に。

 全く、それが嫌ならそんなもん、思いついても作らなきゃいいのに……トラブルを呼び込むことが、火を見るよりも明らかなんだからさ。
 ミナトはもちろん、その師匠のクローナさんや、お義母さんだって、権力者絡みのトラブルは大嫌いなんだから。

「ははは……それを言われるとまあ、返す言葉もないかな……。でも最近特に、そういうのを作るのが楽しくてさぁ……何て言うの? 頭の中にあるイメージを外に吐き出さずにはいられないっていうか……やれそうなんだからやらない理由がない、的な……」

「ないことないでしょ……全くもう。最近特にそうだけど、本格的にあんた、空想と現実の区別つかなくなってきてるというか……つける気がなくなって来ちゃってるわね……」

 ……思い返せば、こいつはもともとそれが持病だったわね。それこそ、私と出会った頃から……こいつにとっては、『グラドエルの樹海』から旅立って、外の世界に出た直後から。

 世間知らずなのに加えて、こいつ自身はその頃からあまりに強くて、自分の力で、やりたいことをほぼほぼ何でもできた。
 そのせいで、現実に現実味を見いだせず、空想との境界や認識があいまいになる……そう、確か『現実乖離症候群』って言うんだって、こいつが自分で言ってたっけ。

「方向性は違うけど、あんたのその適当な性格のせいで、私やシェリーは、あんたと出会った当初は随分苦労させられたんですけどねえ……」

「そ、それを言われると……」

 今となっては蒸し返すつもりもないし、色々と棚に上げて話している部分は大きい。
 けど、事実でもあるし……お説教には便利だから言わせてもらいましょうか。

 こっちにとっては大きな恩に感じることを、『大したことないことだから』ってしれっと施してくるようなことをしたり。
 『自分なんかが女の子にもてるはずがない』って勝手に決めつけて、シェリーの、軽い感じではあるけど、彼女としては正真正銘本気だった好意に気づかなかったり。

 ミナトの、幻想と現実の区別がつかなくなる病気『現実乖離症候群』には……本当に色々と苦労させられ……いや、そうか。ミナトの場合はこう言った方がいいかもね。



「全くもう、あんたって人は……いつまでたっても『デイドリーマー』なんだから」



 デイドリーマー。

 単語そのままの意味は、『夢想家』とか『夢見がちな奴』という、皮肉るような使い方をされるもの。現実的ではない、実現できないようなことを大真面目に考えている、『昼間から夢を見ている』者を現す言葉。

 そして、それをもじって、かつてアイリーンさんが、現役時代のお義母さん……リリン・キャドリーユをからかって言った言葉でもある。

 かつて彼女は、周りがどれだけ『無理だ』『甘い』と思うようなことであっても、それを自分の力で実現してみせた。
 妄想を、空想を、現実にしてしまっていた。

 ミナトやお義母さんにとっての『デイドリーマー』は……空想と現実の区別がつかないだけでなく、それをつける必要がない者。空想も全て力技で現実にしてしまえる者なのだ。

 強すぎる、優秀過ぎるがゆえに、空想と現実の区別をつけられない。それは、ミナトにとって長所でもあり、短所でもある。
 私達は、そのおかげで助けられたことも多々あったけど、苦労させられたこともあった。さっき言った、自意識過小(誤字にあらず)みたいにね。

 そう指摘した瞬間、ミナトはばつが悪そうにしてたんだけど……次の瞬間、はっと何かに気づいたような表情になった。

「……そっか、空想、妄想……あるいは、願望……それと、現実の境界を取っ払う……」

「? ミナト?」

「そうだ、思えば最初から……規模や方向性は違うけど、ずっと僕がやってたことじゃないか。僕自身がやりたいことをやりたいようにやった……大したことじゃないと思うことは気にしないで、そうじゃないと思うことは最初から考えもせず……他人から見ればどれだけ『否常識』に見えることでも、気にせずやってきた。それをすごいとも思わずに、僕にしてみればやりたいからやっただけ……そうだ、いつもどおりそれでいいんだ」

「え、ちょ、ミナト……早口で何言って……怖……」

「振り切ったつもりで引きずってた。解放されたつもりで縛られてた。現実を、限界を、気にしなくてもいい境界線を……! なまじ色々勉強して賢くなったり、いろんな付き合いや立場や、主義主張、思考に正義感……そういったものを考えすぎて、一番大事にしてたものを忘れてたんだ……気にしなくてもいい限界を気にして、その枠内で精いっぱいやろうと、『他者強化』だの『ザ・デイドリーマー』だの……あーもう、随分遠回りしちゃったなあ!」

 そしてミナトは、勢いよく振り返ると同時に、私の肩をガシッとつかんだ。
 びっくりする私に、そしてこう言ったのだ。


「ちょっと僕……自重を捨ててみるよ」

「これ以上!?」


 ☆☆☆

 
 結論から言えば、ミナトは本当に自重を捨てた。
 それも、明らかに捨てちゃいけないレベルの自重も……あるいは、捨てることをそもそも思いつかないであろうレベルの自重すらも捨てた。

 以前は、自分が『デイドリーマー』であることを気にして、気に病んでいたミナト。

 しかし、ここにきて逆行した。

 あえて『デイドリーマー』として、思考・発想・行動全てをぶっちぎらせ始めた。
 初期のミナト以上に、現実と幻想の区別を気にしなくなった。ホントに本気で、自分がやりたいようにだけ突っ走り始めた。

 そして何より……本当に修行の中で、『幻想と現実の境界を取っ払う』ことをやらかした。あくまで言葉の上での例えに過ぎなかったそれを、ある1つの発想で修行メニューに組み込んだのだ。

 結果として、私達の修行は……ミナト自身のそれも巻き込んで凄まじくハードになり……しかし、それに見合った、あるいはそれ以上の効果を叩き出し始めた。

 疲労感は3倍になったけど、成長速度は10倍か、あるいはもっとかも……。

 それを聞いて笑顔が引きつっているターニャだけど、それでも興味が勝ったのか、

「ぐ、具体的には、どんな……?」

「……今までは、『スライムタイル』から発生させた人口の魔物を相手に、ミナトが供給する『魔粒子』のおかげで、強化された上に魔力無限、使い放題で戦い続ける修行だったんだけどね?」

「うんうん」

「それ自体は今も変わってないの。時間も、内容も。ただ……それを『修行の仕上げ』に行うようになったの」

「……うん? えっと、『仕上げ』って……それとは別な修行を先にやってから、ってこと? でもお姉様、今言った修行を時間を変えずにやってるなら、別の修行なんていつやって……」

「……夜、寝てる間よ」

「……へ?」

「ほら、ミナトってさ……種族的には人間だけど、同時に『夢魔サキュバス』でもあるでしょ? だからさ、種族特有の『夢を操る能力』を使えるのよ」

 ミナトの、そしてお義母さんの種族である『夢魔サキュバス』は、本来、女しかいない種族だ。そのため、他種族の男、ないし雄を誘惑し、交わって子供を作る。
 そして、自分や相手の、寝ている間の夢を操る能力を持つ。

 ミナトの場合は、突然変異だかで、男でありながら『夢魔サキュバス』の力を持っていて……この『夢の操作』についても、姉であるディアさんとシエラさんに鍛えられて、ある程度できるようになっているらしい。

 で、だ。
 ミナトはそれを……修行に組み込みやがったのよ。

 夜、寝てる間に体は休ませておいて……しかし、精神は休ませない。夢の中で修行するの。

 私達全員の夢をリンクさせて、夢の中の、ミナトが作った世界……『幻想空間』って呼んでいる場所に、意識だけを連れてくる。
 そしてそこで、現実ではできない修行をこれでもかってくらいに実践していくんだけど……その内容が、なんか、もう……酷い。

 まず第一に……『幻想空間』は、読んで字のごとく、幻想の空間だ。現実じゃないから、現実にはできないようなことも平気でできる。

 例えば、危なくて訓練では使えないような武器や魔法を、気にせず思う存分、最大火力でぷっぱなしたりとか……明らかに相手が死ぬ威力の攻撃を織り込んで、実戦同様の戦い方でやり合ったりとか……ね。
 極端な話、現実なら致命傷レベルの傷だろうが、首と胴体が泣き別れになろうが、体が跡形もなく木っ端微塵になろうが、『現実じゃないからセーフ』ってなる。

 クロエがよく、『オルトヘイム号』なんかの、乗り込んで操縦するタイプの兵器を訓練する時に使ってる『シミュレーター』とやらがあるらしいんだけど、ミナト曰く、それと似たようなものだと考えればいいそうだ。
 限りなく現実に近いシチュエーションで、ケガも死も気にせず訓練できるだけだって。

 加えて、『幻想空間』では、創造者であるミナトが全てのルールだ。ミナトの力の及ぶ範囲内であれば、本当に何でもありの世界、といっていい。

 『スライムタイル』でも作り出せないような凶悪な魔物をいくらでも作り出せるし、なんならミナトの想像一つでそれを強化したり、逆に弱体化したり、あるいは、現実と全く違う能力を持たせることすらできる。
 『色違いとか亜種系も出すね』とか言って、本来なら火炎ブレスを吐いてくるはずの『ドラゴン』が、吹雪のブレスを吐き出してきたり……海の中を泳ぐ『シーサーペント』がマグマの中を泳いで現れたり……しかもご丁寧に体の色変えたり、設定が無駄に細かくて丁寧。

 それに合わせて、バトルフィールドもミナトが自由自在に変える。それはもう、普段修行してる『スタジアム』での変化が可愛いものに思えるくらいに、色々変える。

 溶岩が流れる火山地帯、吹雪が吹きすさぶ雪と氷の大地、見通せないほど木々が茂っている森……時には、雲海を見下ろせるほどの高地や、トラップ満載の古代遺跡、さらには……重力が強くて体が異様に重くなる戦場や、なんかよくわからない、現実味のないデザインの戦場?もあった。
 何かブツブツ『アクションゲーム』とか『ステージギミック』とか言ってた気がしたけど……よくわかんなかったわね。

 あとヤバいのが……ミナト自身が考えたオリジナルの魔物を登場させてくることだ。

 現実には存在しない魔物なので、当然、創造者であるミナト以外全員にとって初見なわけで……しかもそういうのに限って、見た目からはわからない、思いもよらない戦闘手段を持ってたりして……控えめに言っても地獄だったわ。

 ミナトがよく作ってるような、金属のゴーレムみたいな構造のドラゴンとか獣。
 メカ何とか、ロボット何とか、とか言ってた気がする。

 サイズとしては人間と同じくらいしかないのに、やたら頑丈で強い『怪人』とでも呼ぶようなのも出て来た。色々な能力を持ってて、それに対応するのも大変だったわ。
 その『怪人』より少し簡単なデザインの、数頼みのザコ敵(戦闘員、とか何とか)と一緒に現れることも多くて……連携が厄介だったってわけでもないけど、数が多くて手間ではあった。

 あと、どう考えても1人2人で相手するような奴じゃない、巨大すぎる敵とか。龍に獣、人型、虫型、植物……あとなんかよくわからないものまで色々。
 デカい上に異形すぎてどう表現していいのかわからず、『怪獣』と言うしかないようなものもいたわね……

 で、一番厄介と言うか面倒くさいのが、倒したと思ったらその瞬間復活して、そればかりか別な形態に変化するタイプの敵。
 ちょうどミナトが使う『強化変身』みたいな感じでさ。なんか普通サイズの人型っぽい奴が、変身した後には巨大な化け物になったりとか、何でもありだったもんなあ……しかもそのたびに強くなったり、有効な戦術も違っちゃうもんだから、頭も体も休める暇がなくて……

 よくこんなに考えつくな、ってくらいにバリエーション豊かで、とにかう色んな場所で色んな敵と、もう数えるのも億劫なくらいに戦ったわね……。

 挙句の果てによ? ミナトの奴、その修行に使う『幻想空間』の時間を捻じ曲げて……通常より時間の流れを遅くしたの。

 どういうことかというと、大体私達の睡眠時間って、平均で8時間前後くらいなのよね?
 疲れてる日は早く寝ることもあるし、逆にその……夜に疲れることした結果、寝るのが遅くなることもあるんだけど……ええいターニャ、食いつくな。

 ともかく、まあだいたい8時間くらいは寝るのよ。私達。
 けどミナトは、その8時間の睡眠のうち、6時間半を『幻想空間』での修行に費やすの。
 一応、一時間半は普通に寝かせてくれるわ。精神的な療養?のために。

 で、残り6時間半はね……現実では6時間半なんだけど、『幻想空間』ではその10倍、65時間になるの。現実と『幻想空間』で、時間の流れ方が違うのよ。
 しかも、『幻想空間』ではあくまでキーになるのは精神力だけ。魔力も体力も無限、ケガもすぐに治って、死んでも生き返れる。不眠不休で動けるから、65時間ぶっ続けで戦い続ける。

 それに加えて、現実では夢の中で学んだことを現実の体で最終確認する形で5~6時間修行するから……合計、実質1日70時間の修行、ってわけ。

 オマケに……なんか、気のせいじゃなければ、ごく一部、夢が夢じゃなくなってる気がする。

 『幻想空間』での修行は、実際に体を動かしてるわけじゃないから、肉体が鍛えられたりすることはない。そりゃ当然よね、イメージトレーニングだけで筋肉がつくはずないもの。

 ……ないはずなんだけど、どうもそれが覆り始めててさあ……。

 ほんのちょっとずつなんだけど、夢で鍛えた通りの動きができるように体が鍛えられてきたりしてて……腕力や耐久力、敏捷性なんかが、寝て起きた後に成長してることが結構あって……

 しかも、魔力まで増えたりしてるっぽいのよ……。
 通常、魔力の量って、生まれつきの才能による部分が大半を占めるから、努力して増やすってことがなかなか難しいのよね。長期にわたって鍛錬を続ければ、多少増えるらしいけど……それでも、才能の限界を超えて劇的に改善されるってことはまずないの。

 なかったはずなの。
 最近、あるけど。

 ……予想はつくわ。多分……ここぞとばかりに『ザ・デイドリーマー』が仕事してるのよ。
 
 多分だけど、ミナトも予想してなかったんじゃないからしらね。こうまで的確に『ザ・デイドリーマー』が発動して、私達のパワーアップを強力に後押ししてくれるなんてさ。

 まあ……大変だけど、本当に身にはなってる修行なのよ。1日1日、わかりやすすぎるくらいに、自分達が強くなっていってるのを自覚できる。
 だから私達も……来るとわかってる災厄を前にしてるわけだし、全力で頑張るわ。これからもね。

 ……言っちゃなんだけど、コレはチャンスでもあるもの。
 私達と、ミナトとの間に存在する……大きすぎる差を詰めるための。

 チーム『邪香猫』の中では、戦力としてはぶっちぎりでミナトがトップにいる。そこに、シェリーやナナ、セレナさんやサクヤ、あとはアルバなんかも続く。

 けれど、その間には……いつの間にか、かなり大きな差ができてたのよね。

 シェリー達ですら、ミナトと同次元の戦いにはとてもついていけないまでに差がある。
 現に、この間の『シャラムスカ皇国』の騒動の時は、『ダモクレス財団』の幹部を相手に、シェリーとセレナさんは、2人がかりでも防戦一方だった。

 ミナトも、最初は苦戦してたみたいだったけど、『エクリプスジョーカー』になってからは、2人同時に相手にして押し込んでたらしいし……直接それを見てたシェリー曰く、そのまま戦ってたら勝てたんじゃないか、って。

 アイツが『否常識』に強いのは、今に始まったことじゃない。
 それでも、私達だって……アイツに、アイツ1人に先を行ってほしいわけじゃない。一緒に戦いたい、って思いは、いつだってあったのよ。

 この修行は、それを現実に……そうよ、私達の思いすらも、幻想から現実にしてしまえる、絶好の機会なの。
 だから、少し苦しいくらいどうってことない。やってやるわ、とことんね。



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