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4巻
4-2
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険悪だった雰囲気を全部なあなあにした、僕の千手観音キャッチの後。
これ以上騒ぎが大きくなっても誰も得しないから、ってことで、商人は赤い宝石を回収して、その場はお手打ちになった。
窃盗犯の少年は棚に激突して気絶したらしく、そのまま最後まで意識は戻らなかった。まあ、商人との話はついたので、問題はない。
なんとその『お手打ち』の交渉をしたのは、青髪の青年だった。
しかも、自分から進んで。ホントにどこまでもお人好しというか、ご苦労様というか。
そしてその間、後ろに控える仲間二人が、ずっと威圧的な視線を商人に飛ばしていた。
最終的に商人も、許したってよりは面倒くさくなったって感じだったし。
その過程で、彼ら……おせっかい三人組の名前も聞くことができた。
「まずは、お礼を言っておくよ。あの子と……」
「リュート! こんな人に、お礼なんて言うこと……」
「いいんだよアニー。あの時助けてもらったんだから。あの子と僕を守ってくれて、ありがとう」
アニーというらしい女の子を右手で制し、青い髪の青年……リュートと名乗った彼は、ぺこりと僕に向かって一礼した。
一方の左手は、僕を突き飛ばそうとして失敗した時に出来たらしい頭のこぶを押さえていた。
ぶつかったのに僕が動かなかった、ってことは……青年もといリュートは、柱か何かに自分から突撃したに等しい。しかも、頭から。
彼の後ろにいるアニーが怒っている理由はそこにあったりする。僕のせいでリュートが怪我をした、と。
いや、まあ確かに悪かったけども……それにしたって、彼女から感じる敵意が尋常じゃない。
で、残る一人……黒髪ぼさぼさの男は――。
「確かにな。ま、そこの男が気に入らないってのはアニーと同感だが……リュートを助けてくれたのは事実だ。あんまりギャーギャー言うな」
「けどギド!」
名前は、ギド。
やはりというか、リュートの仲間で……あ、僕のことを気に入らないのは一緒なのね。
何でこんなに敵視されてんのかな、僕?
今この場にいるのは、僕とエルク、合流したザリーとシェリーさん。それにリュート、アニー、ギドの三人だ。
まあ、顔見知りではないので、話すことがあるわけでもない。偶然ちょっとしたトラブルに巻き込まれただけだし。
なのでさっきの、リュートが僕に「ありがとう」って言ったことで解散……と、思ったんだけど、何だか妙な展開になろうとしていた。
「……ちょっと、聞いていいかな? ミナト、だっけ?」
「ん?」
初対面でいきなり呼び捨てにされたけど(そもそも名乗った覚えは……ああ、エルクが呼んでるのを聞いてたのか)、まあ別に気にしない。そういう人もいるだろうし。
リュートは少し言いづらそうな、しかし言わなければならないと決意しているような、なんとも難しい表情で口を開いた。
「さっきの手さばきや、ぶつかった時の頑丈さから見て思ったんだけど、ミナトって実はすごく強いんじゃない?」
……え、いきなり何、その質問。意図は?
「いや、そんな自慢するほどじゃないけど……まあ、冒険者をやってるわけだから、それなりに腕に自信はあるけどさ」
とりあえず当たり障りのないよう答える僕。
「やっぱり……」
「で、それがどうかしたの?」
するとリュートは、一拍置いてからこう言った。
「教えてほしい。どうしてミナトは、あの子を助けなかったんだ?」
……はい?
えーと、『あの子』っていうと、商人に蹴られてたあの少年?
「そうだよ。君の実力なら、簡単に助けられてたはずだよね? ひょっとしたら……僕なんかよりも要領よく、早く。どうしてそうしなかったんだ?」
そう問いかけてくるリュートの目は、どこまでも真っ直ぐ……真っ直ぐすぎるほどに真っ直ぐ。そんな目で、僕を見つめていた。
「えーっと、その……下手に手を出すと、面倒に巻き込まれそうだったから、かな?」
そう言うと、なぜかリュートははっとして、ショックを受けたような表情になる。
アニーとギドは『やっぱりか』とでも言いたげに……これまたなぜか、さげすむように見てくる。
え、何? 何で?
やがてフリーズから回復したリュートは、むっとした顔付きとなった。
「どうして助けないんだ!? そうするだけの力があるのに……何で!?」
「え、ちょ、いきなり何!?」
「『何』じゃないよ! 目の前で苦しんでる子供がいるのに、そしてその子を助けるだけの力があるのに、どうして何もしようとしないんだ! そんなのおかしいだろう!?」
ずいっとこっちに顔を寄せて、というか体ごと僕に迫って、結構な大声でそう主張するリュートの目には……義憤? みたいなものが強く見て取れた。
そのままリュートはこう語った。
盗みを働いた少年も、確かに悪いんだろう。リュートの介入後も、しつこく商品を奪おうとしていたし。それでも、まだ未成熟で体が頑丈じゃない小さな子供を、大の大人があんな風に何度も暴行していいはずがない。
盗みを働いたことを責めるなら、もっと他にやりようがあるじゃないか、と。
取り押さえるのに力ずくになるのはしかたないとしても、いきなりあんな暴力的な制裁をしていいはずがない、ということらしい。
なるほど、言いたいことはわかる。
甘い、と言わざるを得ない部分も多々あれど、大人の腕力で暴力を振るわれれば、深刻な怪我をしてしまうかもしれないわけだし。
……でも何でその抗議が、暴行を加えた商人本人だけじゃなく、僕にまで来るの?
僕がそう言うと、それに答えたのは、すっかり実直&熱弁キャラという印象が僕の中で固まったリュートではなく、その一歩後ろでやや高圧的な態度を取っているアニー。
「はぁ!? そんなの決まってるじゃない! 目の前で子供がいじめられてたら、助けるのが当然でしょうが! あんた達は何で何もしないのよ!?」
いきなり、がーっと噛み付くようにまくし立てた彼女の勢いに、思わず気圧されてしまう。
こ、こっちも、リュートに負けないくらい予測不能な……。
「いじめる奴も悪いけど、それを見て見ぬ振りする奴も悪い、って聞いたことあるでしょ! 苦しんでる子供を見て何もしないなんて、常識を疑うわね!」
「全くだ。頭の中どうなってんだって話だよな」
アニーの横に仁王立ちしている、ギドまでも加わってそんなことを。
な、なんだろうコレ? 何だか、妙な展開になってきた……ような……?
どうもこの三人……僕が、あの子が苛められている現場を見ても何もしなかったことがお気に召さないらしい。とくに、アニーとギドはあからさまに敵意丸出し。
いや、僕だってあの光景は見てて気持ちいいもんじゃなかったし、どうにかしたいとは思ってたよ? 別に、どうなってもいいや、とは思ってなかった。
だから、まあ、警備兵呼んで仲裁してもらおうかな、と思ったところに、彼ら三人が乱入してきたわけで。
決して、そのまま暴行が続くのをよしとしてたわけじゃないんだけども……。
彼らは、僕らの戸惑いの表情なんかも無視。
すると、罵声すらも混じったその一方的な説教に、さすがに腹が立ったのか……口達者なエルクが一歩前に出た。
「でも、それで私達まで面倒事に巻き込まれちゃったら災難じゃない。あんたらの言うことはもっともだけど、それを考えれば、慎重になってしかるべきでしょ?」
僕らの中で、とくに気が短いのが彼女だったりするから、さすがに頭にきたんだろうか。
対するは、アニー。はっ、と吐き捨てるように言って、エルクを蔑視する。
「何あんた? 自分達だけよければいいってわけ? 罪のないいたいけな子供が酷い目に遭ってようと、自分が痛くなければ別になんでもないってわけね、ホント最低」
「そこまでは言ってないでしょ? ただ、私達にまで面倒が及ぶかもしれないのに考えもせず介入しろっていう言い分も、無茶があるって言いたいだけよ」
「どこが無茶なのよ? あんな芸当ができる力量があるくせに。それに、正しい行いには少なからず向かい風が伴うものだっていうのは常識でしょ? リュートはいつも言ってるわ。そして……それでも構わず、弱者を助けてる」
「そうだ。力がなくて手が出せねえってんならともかく、お前らは力があるのにやろうとしねえ……ただの卑怯な臆病者だ。リュートを見習いやがれ、コイツは一度だって逃げたことはねえ」
ギドも加わって、引き合いに出したリュートを褒めて、僕らを罵倒。
当のリュートはと言うと、少し複雑そうな表情をしているものの、『恥じることはない』とでも言うように、こっちを真っ直ぐ見すえている。
「……ご立派ね」
「ええ、あんた達なんかじゃ到底及ばないのよ、リュートにはね。うらやましい?」
「別に。私達には私達の考え方があるもの。あなた達のリーダーさんのやり方や価値観を否定するつもりはないけど、こっちもこっちのやり方を変えるつもりはないわ」
「っ……これだけ言ってまだわからないの!? いつまでそんな自己中心的な考え方で、助けを求める誰かに背を向け続けようっていうのよ!?」
「だからって、行く先々で面倒を全部引き受けて慈善活動なんてできるわけないでしょ? 聞くけどあんたら、明らかに不利益を被るのが確実な奉仕活動に、参加しろって他人に押しつけられるの?」
「当たり前でしょ!? 人と人が助け合うのは当然のことだもの。勇気を持って隣の人に、何が大切かをきちんと説けば、より多くの人が救われるんだから!」
「……あ、そ。じゃあ、その人達がそういうことに巻き込まれたくなくて、その『大切』な奉仕活動に参加すると必要な自分の財産が損なわれるから、参加しない、っていう立場を明確にしてても?」
「同じことを何度言わせるのよ!? 説得するに決まってるでしょ! 時間もお金も、リュートのように正しい目的に使わなきゃ、自分の品位を損ねるだけなの。人と人の助け合いや慈善の精神以上に大切なことなんてないって、どうしてわからないの?」
さも当然のように、『人は自分が損をしてでも、困っている人を助けるべきだ』と、熱く語るアニー。もはや、こっちの言い分を聞く気ゼロである。
「目の前に困ってる人がいて、自分には腕力なり財力なり、その人を助けるだけの力がある。だったら、助けてあげるのが当然でしょう? 多少自分が損をしたって、それで誰かが助かるなら、普通に考えてそれが道徳的、良心的な人間のあるべき姿よ! 逆にそれができない、いちいち見返りを求めるような人は、絶対に間違ってるわ!」
熱弁。
はぁ、とそこでエルクがため息をついたのを見て、どうやら論破したと思ったのか、にやりとその顔に笑みが浮かぶ。
……エルクのそのため息が、論破された悔しさではなく、諦めや呆れであると、彼女は微塵も考えられないんだろう。
その後も、自分達の価値観や良心に沿った見方で、彼らはガミガミ言い続けたけども、そこで僕やエルクが首を縦に振ったりすることはない。
結局、コレじゃ埒が明かないと判断したザリーが落としどころを見つけて、『はい今日はこれまで、解散!』と場を収めてくれるまで口げんかは続いた。
……いやそもそも、なんで、こんなことになったんだっけ……?
☆☆☆
別れてから数分後。
ザリーから聞かされたのは、あのリュート達がどういう連中なのかという情報だった。
「『ブルージャスティス』? 何、その……かっこいい名前を付けようとして失敗したみたいなやつ」
「うん、まあ、成功か失敗かは個人のセンスによると思うけど……それがあのリュート君達が所属している、っていうか、三人で組んでるチームの名前なんだよ。さっき思い出した」
「やっぱりあの三人、チームだったのね」
得心がいったように言うシェリーさん。僕とエルクも大体同じ感想だ。
あの様子だと、リーダーはリュートだろう。後の二人は、まずリュートありきみたいな感じで話してたし。
で、ザリーが続けることには……今、いろんな意味で急激に有名になってきているチームらしい。
ザリーは懐から取り出した手帳をつらつら読み上げる。どこから仕入れたのか知らないが、リュート達の情報もあるのか。
「まあ予想はついてると思うけど、リーダーはランクBのリュート・ファンゴール君。それと、仲間……さっきいた二人ね。ランクCのアニー・レビアスちゃんに、ランクBのギド・タジャック君。合計三人のチームで、結構な実力者なんだけど……」
……けど?
「さっき見たとおり、リーダーのリュート君を中心に、メンバー全員、正義感みたいなのが過剰にあってね。弱者救済を目的にいろんな人、いろんなところにしょっちゅうケンカを売るらしいんだ。だから、その筋じゃ評判最悪」
「ケンカ……確かに、だれかれ構わず売ってそうね」
「最近じゃ、護衛してる商隊が貧しい村に差し掛かったとき、炊き出しのために食料や資材を提供しろって言い出したり、またある時は奴隷商人に……ああもちろん、合法なやつね? かわいそうだから解放しろとか食って掛かったってさ。だから今じゃ、商人の間では、過激なモラル遵守主義者として、ブラックリスト入りってわけ」
「……姉さんも知ってるかな?」
「知ってると思うよ? マルラス商会が提携してる商会の中に、奴隷商もいたはずだし……マルラス商会もトラブルがあったかもね。基本彼ら、誰に対しても考え方を押しつけるから」
聞いてるだけだとただのお人好しだけど、肌で体感するとあの面倒さっていうか、強引さがよくわかる。だから、あんまし笑えない。
確かに、それぞれの価値観や営利追求を第一の目的に置いてる『商人』からしたら……人の道=ボランティアみたいな考え方のリュート達は、うっとうしいことこの上ないだろう。
まさに水と油のように相性は最悪だ。
そして厄介なのは、どっちも間違ってるとは言えないところだよなあ……商人が利潤を追求するのは当然だから、そこに文句なんか言えない。
それにリュート達の行いも、不幸な人に手を差し伸べてるんだから、確実に救済されてる人はいるわけだ。それを考えれば、迷惑なだけでもない。
何にしても……これ以上彼らとは関わらないほうがいい、な。お互いのために。
……なんてことを言ったらフラグだろうか?
第二話 意外な展開
『合同訓練合宿』当日。
ギルドで指定された場所に僕ら……いつもの四人と一羽が着くと、そこにはすでに、数十人の冒険者がいた。
ごついのもいればヒョロいのもいる。
武器も様々、剣とか杖とか。斧や槍なんて人も。
若い人がやっぱり多いけども、更なる高みを目指したい老若男女……ランクにして、D~F程度の冒険者達がたくさん。
Cランクも一部ながらいるみたいだけども。
「……ま、さすがにAやBはいないみたいね」
「ははは、そりゃそうでしょ。シェリーさんやミナト君は、むしろ指導する側でしょ」
「あんたも人のこと言えないけどね」
思い思いの言葉を口にする、シェリーさん、ザリー、それにエルク。
ちなみにエルクもCランクであり、この場においては上から数えたほうが早い戦闘力を誇っている。そこんとこよろしく。
そんな中で僕は、あちこちから飛んでくる視線に、ややうんざりしてため息をついた。
なんというか……何度味わっても、完全には慣れるもんじゃないな、こういうのは。
根が小心者だからか、こういう露骨に感情の籠もった視線は嫌いだ。
このウォルカでは、Aランクである僕やシェリーさんは、やや自画自賛ながら結構な有名人なので……注目度が高くなってしまう。
多分この中の何人かは、Aランクの僕らがこの場に来てることを、冷やかしか何かのように思ってるんだろう。
……やっぱし疎外感はあるなあ。
そもそも僕ら四人は、誰一人『訓練合宿』の最適ランクだっていうD~Fに属してないから、明らかにアウェーな気がする。
しかし、それがわかっていながらも……僕は、姉さんの『きっと得るものがあるから』という勧めもあって、真面目に参加するつもりでいる。
また他の三人も、それぞれの思惑を持って参加しているようだ。
エルクは、今までの訓練の成果を試す意味で。
ザリーは、最近いろいろと話題になっている、もしくはなりそうな冒険者を手っ取り早く間近で観察できるかも、っていう、いかにもこいつらしい目的。
シェリーさんは、出会いを求めて……物騒な意味での出会い、だけど。
ただ、僕とエルクの予想&ザリーの情報だと、そんな彼女の戦闘意欲を満足させてくれそうな生贄……もとい人材はここにはいないだろうとのこと。
そしてその分の欲求不満が、僕に来る可能性があるらしい。おいおい……。
僕の肩のアルバは、魔法の見学&学習のためだ。
初心者用ならほとんどの魔法は習得したアルバだけども、その総仕上げとしての参加だ。
そんな感じで、それぞれの思惑を胸に、僕らは冒険者ギルド主催の『合同訓練合宿』に参加した。
☆☆☆
まず一日目。
集合時間をもって受付が締め切られた後、さっそく最初の訓練メニューが言い渡された。
といってもそれは、訓練というよりも体力測定に近い。
筋力、持久力、敏捷性、魔力の検査が、午前中いっぱい使って行われた。
測り方も意外と普通で、ただの百メートル走とか、ひたすら走る持久走とか、バーベルみたいなのを持ち上げるベンチプレスもどきとか、指定された地点を素早く跳び回る反復横跳びっぽいやつとか、いろいろ。
あとは、マジックアイテムみたいなのを使って計測する魔力測定なんかもあったな。
終了後すぐに、手書きの測定結果が全員に配布された。
一応それらの結果を目安にして、各自のトレーニングの目標とか、模擬戦の相手を決めるらしい。
『筋力』『持久力』『敏捷性』『魔力』の四項目共通の評価点は、冒険者ランクと大体同じ感じで、FからSS。
ま、基本初心者のためのものだから、いつもはそんな上の評価なんてなかなか出ないみたいだけど。
……今までは、だけど。
例えば、エルク。
筋力:D 持久力:C 敏捷性:B 魔力:C
常人が限界まで努力した場合の限界値がCであることを考えると、かなり高めな能力。エルク自身、まだまだ発展途上なわけだし。
とくに敏捷性のBは、明らかに才能がある証拠だからなあ。
ザリーに聞いたところ、この評価なら『訓練合宿』への参加が有意義か否かのギリギリのラインらしい。
そのザリーはというと……。
筋力:C 持久力:B 敏捷性:A 魔力:B
全体的にエルクの一回り上、って感じのステータス。
そして結論をはっきり言えば、この訓練に参加する必要はもはやない。
ザリーは冒険者としてのキャリアが長く、さらに諜報専門として特殊な能力もあるし、さほど不思議じゃないけど。
それにしても、敏捷性Aはすごい。
ただ、上には上がいる。
汗もほとんどかくことなく、全ての項目を検査し終えたシェリーさん。顔を引きつらせた係の人に書いてもらった評価を見せてもらう。
筋力:A 持久力:AA 敏捷性:A 魔力:AA
さすが冒険者ランクA。それも、B寄りではなくAAに近い「ランクA」というだけはある。
魔力の高さは種族としての特性だ。ネガエルフだと知られて騒ぎになるとまずいから、一応測定の時には手加減したらしい。これでも。
もちろんこの訓練に参加する必要など皆無。
え、僕? 僕は、そのー……。
筋力:- 持久力:- 敏捷性:- 魔力:-
備考:君は測るだけムダだからじっとしてなさい。アイリーン・ジェミーナより。
ギルドマスターこと、アイリーンさん直筆らしい、そんな紙を渡されて……参加すらさせてもらえなかった。ちょっとさびしかった。
☆☆☆
これ以上騒ぎが大きくなっても誰も得しないから、ってことで、商人は赤い宝石を回収して、その場はお手打ちになった。
窃盗犯の少年は棚に激突して気絶したらしく、そのまま最後まで意識は戻らなかった。まあ、商人との話はついたので、問題はない。
なんとその『お手打ち』の交渉をしたのは、青髪の青年だった。
しかも、自分から進んで。ホントにどこまでもお人好しというか、ご苦労様というか。
そしてその間、後ろに控える仲間二人が、ずっと威圧的な視線を商人に飛ばしていた。
最終的に商人も、許したってよりは面倒くさくなったって感じだったし。
その過程で、彼ら……おせっかい三人組の名前も聞くことができた。
「まずは、お礼を言っておくよ。あの子と……」
「リュート! こんな人に、お礼なんて言うこと……」
「いいんだよアニー。あの時助けてもらったんだから。あの子と僕を守ってくれて、ありがとう」
アニーというらしい女の子を右手で制し、青い髪の青年……リュートと名乗った彼は、ぺこりと僕に向かって一礼した。
一方の左手は、僕を突き飛ばそうとして失敗した時に出来たらしい頭のこぶを押さえていた。
ぶつかったのに僕が動かなかった、ってことは……青年もといリュートは、柱か何かに自分から突撃したに等しい。しかも、頭から。
彼の後ろにいるアニーが怒っている理由はそこにあったりする。僕のせいでリュートが怪我をした、と。
いや、まあ確かに悪かったけども……それにしたって、彼女から感じる敵意が尋常じゃない。
で、残る一人……黒髪ぼさぼさの男は――。
「確かにな。ま、そこの男が気に入らないってのはアニーと同感だが……リュートを助けてくれたのは事実だ。あんまりギャーギャー言うな」
「けどギド!」
名前は、ギド。
やはりというか、リュートの仲間で……あ、僕のことを気に入らないのは一緒なのね。
何でこんなに敵視されてんのかな、僕?
今この場にいるのは、僕とエルク、合流したザリーとシェリーさん。それにリュート、アニー、ギドの三人だ。
まあ、顔見知りではないので、話すことがあるわけでもない。偶然ちょっとしたトラブルに巻き込まれただけだし。
なのでさっきの、リュートが僕に「ありがとう」って言ったことで解散……と、思ったんだけど、何だか妙な展開になろうとしていた。
「……ちょっと、聞いていいかな? ミナト、だっけ?」
「ん?」
初対面でいきなり呼び捨てにされたけど(そもそも名乗った覚えは……ああ、エルクが呼んでるのを聞いてたのか)、まあ別に気にしない。そういう人もいるだろうし。
リュートは少し言いづらそうな、しかし言わなければならないと決意しているような、なんとも難しい表情で口を開いた。
「さっきの手さばきや、ぶつかった時の頑丈さから見て思ったんだけど、ミナトって実はすごく強いんじゃない?」
……え、いきなり何、その質問。意図は?
「いや、そんな自慢するほどじゃないけど……まあ、冒険者をやってるわけだから、それなりに腕に自信はあるけどさ」
とりあえず当たり障りのないよう答える僕。
「やっぱり……」
「で、それがどうかしたの?」
するとリュートは、一拍置いてからこう言った。
「教えてほしい。どうしてミナトは、あの子を助けなかったんだ?」
……はい?
えーと、『あの子』っていうと、商人に蹴られてたあの少年?
「そうだよ。君の実力なら、簡単に助けられてたはずだよね? ひょっとしたら……僕なんかよりも要領よく、早く。どうしてそうしなかったんだ?」
そう問いかけてくるリュートの目は、どこまでも真っ直ぐ……真っ直ぐすぎるほどに真っ直ぐ。そんな目で、僕を見つめていた。
「えーっと、その……下手に手を出すと、面倒に巻き込まれそうだったから、かな?」
そう言うと、なぜかリュートははっとして、ショックを受けたような表情になる。
アニーとギドは『やっぱりか』とでも言いたげに……これまたなぜか、さげすむように見てくる。
え、何? 何で?
やがてフリーズから回復したリュートは、むっとした顔付きとなった。
「どうして助けないんだ!? そうするだけの力があるのに……何で!?」
「え、ちょ、いきなり何!?」
「『何』じゃないよ! 目の前で苦しんでる子供がいるのに、そしてその子を助けるだけの力があるのに、どうして何もしようとしないんだ! そんなのおかしいだろう!?」
ずいっとこっちに顔を寄せて、というか体ごと僕に迫って、結構な大声でそう主張するリュートの目には……義憤? みたいなものが強く見て取れた。
そのままリュートはこう語った。
盗みを働いた少年も、確かに悪いんだろう。リュートの介入後も、しつこく商品を奪おうとしていたし。それでも、まだ未成熟で体が頑丈じゃない小さな子供を、大の大人があんな風に何度も暴行していいはずがない。
盗みを働いたことを責めるなら、もっと他にやりようがあるじゃないか、と。
取り押さえるのに力ずくになるのはしかたないとしても、いきなりあんな暴力的な制裁をしていいはずがない、ということらしい。
なるほど、言いたいことはわかる。
甘い、と言わざるを得ない部分も多々あれど、大人の腕力で暴力を振るわれれば、深刻な怪我をしてしまうかもしれないわけだし。
……でも何でその抗議が、暴行を加えた商人本人だけじゃなく、僕にまで来るの?
僕がそう言うと、それに答えたのは、すっかり実直&熱弁キャラという印象が僕の中で固まったリュートではなく、その一歩後ろでやや高圧的な態度を取っているアニー。
「はぁ!? そんなの決まってるじゃない! 目の前で子供がいじめられてたら、助けるのが当然でしょうが! あんた達は何で何もしないのよ!?」
いきなり、がーっと噛み付くようにまくし立てた彼女の勢いに、思わず気圧されてしまう。
こ、こっちも、リュートに負けないくらい予測不能な……。
「いじめる奴も悪いけど、それを見て見ぬ振りする奴も悪い、って聞いたことあるでしょ! 苦しんでる子供を見て何もしないなんて、常識を疑うわね!」
「全くだ。頭の中どうなってんだって話だよな」
アニーの横に仁王立ちしている、ギドまでも加わってそんなことを。
な、なんだろうコレ? 何だか、妙な展開になってきた……ような……?
どうもこの三人……僕が、あの子が苛められている現場を見ても何もしなかったことがお気に召さないらしい。とくに、アニーとギドはあからさまに敵意丸出し。
いや、僕だってあの光景は見てて気持ちいいもんじゃなかったし、どうにかしたいとは思ってたよ? 別に、どうなってもいいや、とは思ってなかった。
だから、まあ、警備兵呼んで仲裁してもらおうかな、と思ったところに、彼ら三人が乱入してきたわけで。
決して、そのまま暴行が続くのをよしとしてたわけじゃないんだけども……。
彼らは、僕らの戸惑いの表情なんかも無視。
すると、罵声すらも混じったその一方的な説教に、さすがに腹が立ったのか……口達者なエルクが一歩前に出た。
「でも、それで私達まで面倒事に巻き込まれちゃったら災難じゃない。あんたらの言うことはもっともだけど、それを考えれば、慎重になってしかるべきでしょ?」
僕らの中で、とくに気が短いのが彼女だったりするから、さすがに頭にきたんだろうか。
対するは、アニー。はっ、と吐き捨てるように言って、エルクを蔑視する。
「何あんた? 自分達だけよければいいってわけ? 罪のないいたいけな子供が酷い目に遭ってようと、自分が痛くなければ別になんでもないってわけね、ホント最低」
「そこまでは言ってないでしょ? ただ、私達にまで面倒が及ぶかもしれないのに考えもせず介入しろっていう言い分も、無茶があるって言いたいだけよ」
「どこが無茶なのよ? あんな芸当ができる力量があるくせに。それに、正しい行いには少なからず向かい風が伴うものだっていうのは常識でしょ? リュートはいつも言ってるわ。そして……それでも構わず、弱者を助けてる」
「そうだ。力がなくて手が出せねえってんならともかく、お前らは力があるのにやろうとしねえ……ただの卑怯な臆病者だ。リュートを見習いやがれ、コイツは一度だって逃げたことはねえ」
ギドも加わって、引き合いに出したリュートを褒めて、僕らを罵倒。
当のリュートはと言うと、少し複雑そうな表情をしているものの、『恥じることはない』とでも言うように、こっちを真っ直ぐ見すえている。
「……ご立派ね」
「ええ、あんた達なんかじゃ到底及ばないのよ、リュートにはね。うらやましい?」
「別に。私達には私達の考え方があるもの。あなた達のリーダーさんのやり方や価値観を否定するつもりはないけど、こっちもこっちのやり方を変えるつもりはないわ」
「っ……これだけ言ってまだわからないの!? いつまでそんな自己中心的な考え方で、助けを求める誰かに背を向け続けようっていうのよ!?」
「だからって、行く先々で面倒を全部引き受けて慈善活動なんてできるわけないでしょ? 聞くけどあんたら、明らかに不利益を被るのが確実な奉仕活動に、参加しろって他人に押しつけられるの?」
「当たり前でしょ!? 人と人が助け合うのは当然のことだもの。勇気を持って隣の人に、何が大切かをきちんと説けば、より多くの人が救われるんだから!」
「……あ、そ。じゃあ、その人達がそういうことに巻き込まれたくなくて、その『大切』な奉仕活動に参加すると必要な自分の財産が損なわれるから、参加しない、っていう立場を明確にしてても?」
「同じことを何度言わせるのよ!? 説得するに決まってるでしょ! 時間もお金も、リュートのように正しい目的に使わなきゃ、自分の品位を損ねるだけなの。人と人の助け合いや慈善の精神以上に大切なことなんてないって、どうしてわからないの?」
さも当然のように、『人は自分が損をしてでも、困っている人を助けるべきだ』と、熱く語るアニー。もはや、こっちの言い分を聞く気ゼロである。
「目の前に困ってる人がいて、自分には腕力なり財力なり、その人を助けるだけの力がある。だったら、助けてあげるのが当然でしょう? 多少自分が損をしたって、それで誰かが助かるなら、普通に考えてそれが道徳的、良心的な人間のあるべき姿よ! 逆にそれができない、いちいち見返りを求めるような人は、絶対に間違ってるわ!」
熱弁。
はぁ、とそこでエルクがため息をついたのを見て、どうやら論破したと思ったのか、にやりとその顔に笑みが浮かぶ。
……エルクのそのため息が、論破された悔しさではなく、諦めや呆れであると、彼女は微塵も考えられないんだろう。
その後も、自分達の価値観や良心に沿った見方で、彼らはガミガミ言い続けたけども、そこで僕やエルクが首を縦に振ったりすることはない。
結局、コレじゃ埒が明かないと判断したザリーが落としどころを見つけて、『はい今日はこれまで、解散!』と場を収めてくれるまで口げんかは続いた。
……いやそもそも、なんで、こんなことになったんだっけ……?
☆☆☆
別れてから数分後。
ザリーから聞かされたのは、あのリュート達がどういう連中なのかという情報だった。
「『ブルージャスティス』? 何、その……かっこいい名前を付けようとして失敗したみたいなやつ」
「うん、まあ、成功か失敗かは個人のセンスによると思うけど……それがあのリュート君達が所属している、っていうか、三人で組んでるチームの名前なんだよ。さっき思い出した」
「やっぱりあの三人、チームだったのね」
得心がいったように言うシェリーさん。僕とエルクも大体同じ感想だ。
あの様子だと、リーダーはリュートだろう。後の二人は、まずリュートありきみたいな感じで話してたし。
で、ザリーが続けることには……今、いろんな意味で急激に有名になってきているチームらしい。
ザリーは懐から取り出した手帳をつらつら読み上げる。どこから仕入れたのか知らないが、リュート達の情報もあるのか。
「まあ予想はついてると思うけど、リーダーはランクBのリュート・ファンゴール君。それと、仲間……さっきいた二人ね。ランクCのアニー・レビアスちゃんに、ランクBのギド・タジャック君。合計三人のチームで、結構な実力者なんだけど……」
……けど?
「さっき見たとおり、リーダーのリュート君を中心に、メンバー全員、正義感みたいなのが過剰にあってね。弱者救済を目的にいろんな人、いろんなところにしょっちゅうケンカを売るらしいんだ。だから、その筋じゃ評判最悪」
「ケンカ……確かに、だれかれ構わず売ってそうね」
「最近じゃ、護衛してる商隊が貧しい村に差し掛かったとき、炊き出しのために食料や資材を提供しろって言い出したり、またある時は奴隷商人に……ああもちろん、合法なやつね? かわいそうだから解放しろとか食って掛かったってさ。だから今じゃ、商人の間では、過激なモラル遵守主義者として、ブラックリスト入りってわけ」
「……姉さんも知ってるかな?」
「知ってると思うよ? マルラス商会が提携してる商会の中に、奴隷商もいたはずだし……マルラス商会もトラブルがあったかもね。基本彼ら、誰に対しても考え方を押しつけるから」
聞いてるだけだとただのお人好しだけど、肌で体感するとあの面倒さっていうか、強引さがよくわかる。だから、あんまし笑えない。
確かに、それぞれの価値観や営利追求を第一の目的に置いてる『商人』からしたら……人の道=ボランティアみたいな考え方のリュート達は、うっとうしいことこの上ないだろう。
まさに水と油のように相性は最悪だ。
そして厄介なのは、どっちも間違ってるとは言えないところだよなあ……商人が利潤を追求するのは当然だから、そこに文句なんか言えない。
それにリュート達の行いも、不幸な人に手を差し伸べてるんだから、確実に救済されてる人はいるわけだ。それを考えれば、迷惑なだけでもない。
何にしても……これ以上彼らとは関わらないほうがいい、な。お互いのために。
……なんてことを言ったらフラグだろうか?
第二話 意外な展開
『合同訓練合宿』当日。
ギルドで指定された場所に僕ら……いつもの四人と一羽が着くと、そこにはすでに、数十人の冒険者がいた。
ごついのもいればヒョロいのもいる。
武器も様々、剣とか杖とか。斧や槍なんて人も。
若い人がやっぱり多いけども、更なる高みを目指したい老若男女……ランクにして、D~F程度の冒険者達がたくさん。
Cランクも一部ながらいるみたいだけども。
「……ま、さすがにAやBはいないみたいね」
「ははは、そりゃそうでしょ。シェリーさんやミナト君は、むしろ指導する側でしょ」
「あんたも人のこと言えないけどね」
思い思いの言葉を口にする、シェリーさん、ザリー、それにエルク。
ちなみにエルクもCランクであり、この場においては上から数えたほうが早い戦闘力を誇っている。そこんとこよろしく。
そんな中で僕は、あちこちから飛んでくる視線に、ややうんざりしてため息をついた。
なんというか……何度味わっても、完全には慣れるもんじゃないな、こういうのは。
根が小心者だからか、こういう露骨に感情の籠もった視線は嫌いだ。
このウォルカでは、Aランクである僕やシェリーさんは、やや自画自賛ながら結構な有名人なので……注目度が高くなってしまう。
多分この中の何人かは、Aランクの僕らがこの場に来てることを、冷やかしか何かのように思ってるんだろう。
……やっぱし疎外感はあるなあ。
そもそも僕ら四人は、誰一人『訓練合宿』の最適ランクだっていうD~Fに属してないから、明らかにアウェーな気がする。
しかし、それがわかっていながらも……僕は、姉さんの『きっと得るものがあるから』という勧めもあって、真面目に参加するつもりでいる。
また他の三人も、それぞれの思惑を持って参加しているようだ。
エルクは、今までの訓練の成果を試す意味で。
ザリーは、最近いろいろと話題になっている、もしくはなりそうな冒険者を手っ取り早く間近で観察できるかも、っていう、いかにもこいつらしい目的。
シェリーさんは、出会いを求めて……物騒な意味での出会い、だけど。
ただ、僕とエルクの予想&ザリーの情報だと、そんな彼女の戦闘意欲を満足させてくれそうな生贄……もとい人材はここにはいないだろうとのこと。
そしてその分の欲求不満が、僕に来る可能性があるらしい。おいおい……。
僕の肩のアルバは、魔法の見学&学習のためだ。
初心者用ならほとんどの魔法は習得したアルバだけども、その総仕上げとしての参加だ。
そんな感じで、それぞれの思惑を胸に、僕らは冒険者ギルド主催の『合同訓練合宿』に参加した。
☆☆☆
まず一日目。
集合時間をもって受付が締め切られた後、さっそく最初の訓練メニューが言い渡された。
といってもそれは、訓練というよりも体力測定に近い。
筋力、持久力、敏捷性、魔力の検査が、午前中いっぱい使って行われた。
測り方も意外と普通で、ただの百メートル走とか、ひたすら走る持久走とか、バーベルみたいなのを持ち上げるベンチプレスもどきとか、指定された地点を素早く跳び回る反復横跳びっぽいやつとか、いろいろ。
あとは、マジックアイテムみたいなのを使って計測する魔力測定なんかもあったな。
終了後すぐに、手書きの測定結果が全員に配布された。
一応それらの結果を目安にして、各自のトレーニングの目標とか、模擬戦の相手を決めるらしい。
『筋力』『持久力』『敏捷性』『魔力』の四項目共通の評価点は、冒険者ランクと大体同じ感じで、FからSS。
ま、基本初心者のためのものだから、いつもはそんな上の評価なんてなかなか出ないみたいだけど。
……今までは、だけど。
例えば、エルク。
筋力:D 持久力:C 敏捷性:B 魔力:C
常人が限界まで努力した場合の限界値がCであることを考えると、かなり高めな能力。エルク自身、まだまだ発展途上なわけだし。
とくに敏捷性のBは、明らかに才能がある証拠だからなあ。
ザリーに聞いたところ、この評価なら『訓練合宿』への参加が有意義か否かのギリギリのラインらしい。
そのザリーはというと……。
筋力:C 持久力:B 敏捷性:A 魔力:B
全体的にエルクの一回り上、って感じのステータス。
そして結論をはっきり言えば、この訓練に参加する必要はもはやない。
ザリーは冒険者としてのキャリアが長く、さらに諜報専門として特殊な能力もあるし、さほど不思議じゃないけど。
それにしても、敏捷性Aはすごい。
ただ、上には上がいる。
汗もほとんどかくことなく、全ての項目を検査し終えたシェリーさん。顔を引きつらせた係の人に書いてもらった評価を見せてもらう。
筋力:A 持久力:AA 敏捷性:A 魔力:AA
さすが冒険者ランクA。それも、B寄りではなくAAに近い「ランクA」というだけはある。
魔力の高さは種族としての特性だ。ネガエルフだと知られて騒ぎになるとまずいから、一応測定の時には手加減したらしい。これでも。
もちろんこの訓練に参加する必要など皆無。
え、僕? 僕は、そのー……。
筋力:- 持久力:- 敏捷性:- 魔力:-
備考:君は測るだけムダだからじっとしてなさい。アイリーン・ジェミーナより。
ギルドマスターこと、アイリーンさん直筆らしい、そんな紙を渡されて……参加すらさせてもらえなかった。ちょっとさびしかった。
☆☆☆
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