魔拳のデイドリーマー

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第20章 双月の霊廟

第450話 クロエとモニカ

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「……そうか、ミナト・キャドリーユのところに、『タランテラ』の者達がな……」

「敵の本拠地で正体が露見してより、1人も欠けることなくそこにたどり着けたことは、僥倖と言えましょう。各員の容体も、ミナト殿によれば、安定しており、問題はないとのことです」

 ここは、ネスティア王国王都『ネフリム』……その中心部にある、王城の一室。

 そこで、王国軍大将、イーサ・コールガインから報告を受け取っている、ネスティア王国国王、アーバレオン・ネストラクタスは、今しがたイーサが印刷して持ってきた、ミナトからの『メール』という名の手紙に目を通しつつ、ふぅ、と息をついた。

「彼にはまた借りができてしまったな……近いうちに使者を送らねばなるまい。アクィラ、私の方で礼状を用意するゆえ、使者と、適当な贈答品の選定を進めてくれ」

「心得ました、陛下」

「ドレークは騎士団の情報部門に通達を。イーサら軍部と連携して、もう間もなく持ち帰られるであろう情報の解析と、それを踏まえたかの国への対策を再度検討せよ」

「「承知」」

 急にもたらされた報告にも動じず、てきぱきと指示を出していく。
 そこは昔取った杵柄、元騎士団所属という肩書と、そこで培った経験は、今なお国王の中で健在であることを思わせる光景だった。

「……しかし、最近のあの国はますますきな臭くなってきている……『タランテラ』が持ち帰った情報の内容いかんでは……最悪の事態も想定せねばならんのかもしれんな」

「お言葉ですが、そう結論付けるのは早すぎるかと。確かに不穏な動きが目立ちますが、大規模に軍部を動かして何かをしようとしているような気配まではありません」

 呟くように言った国王を、イーサがいさめるように言うが、

「だが、警戒は必要だろう。元々あの国は、周辺国との協調などかなぐり捨てた軍事主義国家だ……今は大人しくしていても、根柢のところでその危険性は変わっていない。数十年経とうとな」

 危惧するところを淡々と述べる国王。
 それについては、イーサも、ドレークも、アクィラもよくわかっている。というより、ある程度以上、国家間の軍事に関する知識を備えている者であれば、当たり前に持っている知識だ。

 アルマンド大陸『6大国』の1つにして、最近名を改めた『ニアキュドラ』ができる前までは、最も新興の国であった、大陸北部の大国……『チラノース帝国』。
 
 6大国全体で、満場一致で『問題児』『厄介な国』という評価をつけられている国である。



 大陸北部には元々、ゆくゆくは大陸全体に覇を唱えんとする……よく言えば野心的、悪く言えば無謀で傲慢な考え方を持った、とある軍事主義国家があった。

 その国は、他の大国ほどではないにせよ、そう標榜するだけの力をもち、長い年月を周辺国との戦いに費やし、侵略と領土拡張を進めて来た。
 時に戦で攻め落とし、時に力をちらつかせた外交で吸収し……紆余曲折の末に、数十年前、その国を核として、最後に残った2つの国家が統合されてできたのが『チラノース帝国』である。
 
 それ以来、周辺の小国を吸収することはあったものの、さすがに『大国』にまで成長した後、軍事主義らしい戦争外交は鳴りを潜めている。
 それは、国是が軟化した……などという理由ではもちろんない。これ以上急激に領土を拡大し続ければ、当地や整備が追い付かなくなるし、大陸に残っている他の国は、どれも強大極まりない『大国』と、その傘下の国ばかりであり、簡単に手出しはできなくなったがためだ。

 リスクとリターンが釣り合わない。下手をすれば、負けるのは自分達かもしれず、今まで積み上げて来た全てを失ってしまいかねない。

 加えて、彼らが国を構える大陸北部からは、地形的な理由で他の国に対して攻め込みづらい、というのも大きい。

 『チラノース帝国』と国境を接している国は2つ、あるいは3つ。西の『ネスティア王国』と、東の『フロギュリア連邦』。そして、ここを国とカウントするならばであるが……大陸中央部の独立自治区『ローザンパーク』である。

 ネスティアとの国境には、危険度AAの『暗黒山脈』が広がっており、軍隊でも簡単に全滅してしまうほどに危険な魔物が跋扈しているため、おいそれと通ることはできない。

 フロギュリア側も同様である。『アイスマウンテン』という意見区域に加え、氷雪吹きすさぶ気候までもが障害となり、ここも簡単には通れない。

 そしてもっとも通貨困難なのは、ローザンパークであろう。他の2つよりも地形という点ではいくらかマシだが、そこに居を構えている山賊たちが、その地形を巧みに使って迎え撃ってくるため、ここを占領することも、ただ通り抜けることも至難となっていた。
 そこにさらに、最近はミナトが住み着いて環境をいじってしまったことで、『ローザンパーク』、特に『キャッツコロニー』周辺の区域は、大陸でも屈指の危険度を誇る地獄と化している。ランク『測定不能』の2体が番人を務めるその土地には、敵対する者は入れば生きては帰れない。

 そんな環境ゆえに、元々のところから国の方針自体は変わっていないものの、おいそれと外国に手を伸ばせない。ゆえに、今はかの国は大人しくしているのだ。

 だがそれは、裏を返せば、それらの条件さえクリアすれば、あの国は再び、他国を侵略して己が領地を増やすべく、大陸に戦火をまき散らしかねない、ということでもある。

 ゆえに、周辺国……ネスティア、フロギュリア、そして直接国境を接していないジャスニアやニアキュドラもまた結託して、あの国を注視し、問題行動が起こらないようにしていた。
 なお、残る6大国であるシャラムスカは、危険視はしつつも、どちらかと言えば傍観に近い立場を保っている。仮に戦争が起こっても、どこにも、どちらにも加担はしない、と。

「あの国も、それがわからないほど無能なわけではない。今も同じように、4か国によって危険視され、監視されていることを理解しているはずだ。それでもなお、ここ最近は我ら他国を刺激しかねないような怪しい動きが随所にみられるということは……」

「他国への侵略を思いとどまっている現状を打破する目途がついた可能性がある……ですね?」

「あまり考えたくない可能性ではあるがな。ともあれ、これ以上はここで我々がいくら、考えても予想の域を出ない。『タランテラ』の帰還と、彼女らが持ち帰る情報を待っての協議になるな。その上で最悪のケースになった場合は……」

「歴史が再び繰り返し、戦乱の時代がやってくる……というのはぞっとしませんな。承知しました、以下な事態になっていても対応できるよう、準備を進めさせます」

「頼む。それとイーサよ、『タランテラ』を迎えに行く日取りなどの調整はお前に一任する。現状、ミナト殿と最も効率よく連絡を取る手段を持っているのは、お前だからな。一切を任せるゆえ、迅速にことを運んでくれ」

「承知いたしました」


 ☆☆☆


『とまあ、そのようなことになったゆえ……準備が出来次第、ということで、『タランテラ』の者達の帰還について進めたいと思っておる。こちらは基本的に、いつでも予定は確保できるようにしてあるゆえ、そちらで調整ができたら連絡をもらいたいのじゃが』

「なるほど……こっちも別に、今んとこ近々で何か予定もないんで大丈夫ですよ。なんなら明日でも。全員、治療はひと段落してますからね」

 今、イーサさんとPCの機能であるテレビ電話で話して、今後の日取りを決めている所だ。

 どうやらきちんとあっちでも話になって、速やかにマリーベル達『タランテラ』を迎える用意を整えているらしい。仕事が早いな。

 基本的に彼女達の帰還は、僕らが送り届ける形になる。

 この『キャッツコロニー』の周辺、精鋭揃えた軍隊でも簡単に全滅するくらいに物騒な環境だからな……ネスティア側から『迎えに来る』っていう選択肢が取れないんだよね。
 突破するには、少なくともAAAくらいの戦闘能力を持ってないと、普通にその辺歩いてる恐竜とかその他巨大生物(いずれも食用)に食われて死ぬし、特にそれが敵意を持って侵入してきてる場合は、ビート配下の昆虫軍団や、ネールちゃん管理下の魔物達によって食い殺される。

 ドレーク兄さんとかアクィラ姉さんなら楽勝だろうけど、その2人はそもそも僕が『身内』認定してるので、そんな苦労してきてもらう必要はないし……結局のところ、僕が『来てもいいよ』と認めてる相手であれば、僕の方から迎えをよこしたり、送り届けたりした方がいいのだ。

 なので今回も、『ナイトライナー』か何かの移動手段を用意して、こちらで彼女達『タランテラ』をネスティア王国に送り届ける形になる。

 その日程もだいぶ早くに来そうだな。準備さえできれば、明日とか明後日……か。
 
『そうじゃな、ならば明日で頼む。こちらもなるべく早く情報が欲しいゆえにな』

 はい、明日に決まりました。
 なら、移動手段は速度重視で……やっぱり『ナイトライナー』かな。いや、今回改造した『オルトヘイム号』でもいいか。乗り心地はこっちの方がいいし……怪我人とか病み上がりだからな。

『じゃが、明日となると……贈答品の選定が間に合うやら、そこだけが懸念じゃな。アクィラに任せておるんじゃが……』

「あ、そういうのはいつでもいいですよ。言ってもらえれば取りに行きますし……いくらなんでもスケジュール急ですからね。……にしても、さっきはまた物騒なこと言ってましたね……そんなに不穏なんですか? あの北の国の現状」

『何とも言えん、というのが現状じゃよ。それをもう1歩2歩踏み込んで理解するためにも、『タランテラ』の連中が持ち帰った情報が必要じゃ。その内容いかんでは……先程の話通り、少々騒がしくなるかもしれん。国のみならず……この大陸がな』

「そうなったら……いやそうなる前に、こっちにも何かしらのちょっかいが降って来そうですよね……はぁ、やだやだ。どっかの秘密結社もなんか物騒なことしでかそうとしてるとこなのに、巻き込まないで欲しいって話ですよ……」

『その辺を鑑みるような連中ではないからのう……この上で何じゃが、恐らくお主の予想通り、近々あの国からそちらへの接触があるじゃろう。スパイ活動を働いた『タランテラ』の連中を引き渡せ、とな』

「一昨日来い、つっときますんで安心してください。というか、その頃には彼女達はそっちにもう届いてて、正真正銘いませんけどね、ここには」

 というより、あの国の連中では……ここ『カオスガーデン』まではこれないだろうから、窓口として『ローザンパーク』の方にまた手紙が届くことだろう。イオ兄さんに連絡しとかないとな。

 何度も言うように、ここ『キャッツコロニー』には、周辺の超危険区域を突破できる実力がないと足を運ぶことはできない。なので当然、他国から伝令とか使者が来るなんてことがそもそも無理なのである。連絡手段がない。

 ここへの連絡手段は、僕が信頼できる面子に渡している『スマホ』やPCを使うか、『リビングメール』による連絡に限られる。
 僕の身内か、あるいは交流のある相手であれば、それらのいずれかは渡しているので、ネスティアを始めとした友好的な国からは、ここに連絡する手段はいくつもきちんとある。

 ただ、チラノースには当然そんなもん渡してないので、必然的に連中は、自分達が来れる範囲で、僕に渡りをつけられる場所に来るわけだ。

 ルートは大きく分けて2つ、冒険者ギルドを通すか……ローザンパークを通すか、だ。
 どっちで来るかはわからないが、国家の機密あれこれに関わりそうなら、手続きの段階で多くの人の目に留まる、ギルドを介した連絡はないだろう。たぶん、ローザンパークに来る。

 もっともその頃にはとっくに、彼女達はネスティアに帰ってるわけだが。

『ちなみに、その『タランテラ』は今は?』

「あー……タイミング悪く、今丁度検査中でして。やってる最中に着信入ったのに気づいたんで、検査をネリドラ……僕の助手に任せて、僕だけこっちに抜けて来たんですよ」

『なんと……それは確かにタイミングが悪かったのう、すまなんだ』

「もう5~6分もあれば終わりますけど、待ちますか? テレビ電話でなら、彼女達の無事も直接……って言っていいのかわかりませんけど、確認できますよ?」

『いや、折角の申し出じゃが遠慮する。この後すぐに予定があっての、発たねばならん。次に会うのは明日の午後3時……あ奴らを送り届けてもらった時、ということとしよう』

「なるほど、わかりました。彼女達にもそう伝えますね」

『頼む。ではな』

 そんな感じで、イーサさんとの通信は終了。急な予定ではあるけど、明日には『タランテラ』の皆をネスティアに届けることになった。

 その数分後、無事に全員分の―― 一番重傷だったモニカちゃんを含む――メディカルチェックが終わり、全員もう問題なし、という結果だった。よかったよかった。
 
 丁度終わったところで、全員が揃っていたので、呼び止めてさっきのことを話す。

 毎回恒例のマリーベルの色仕掛けトーク(本気かネタかわからんので反応に困る)をさらりと流した上で、明日、ネスティアまで送っていく旨を告げる。
 皆、驚いてたけど……モニカちゃん以外はすぐに調子を取り戻して、了解した旨と、お礼を言ってもらえた。切り替え早いな。

 唯一、モニカちゃんは……なんというか、他の面々に比べれば、まだまだ僕の『否常識』になれてないからかな……『ゲストハウス』の設備の1つ1つにもおっかなびっくりしてるし、今も、明日いきなりネスティアまで送る、って言われて戸惑ってた。

 ここからネスティアまでの距離を考えれば、早馬でもどれだけかかるかだもんな。飛行タイプの召喚獣でも1日じゃ無理だろう。
 ま、僕なら半日もいらないけど。明日、身をもって体感してもらうけど。

 サクヤの時も思ったけど、こういう風に僕の作ったオーバーテクノロジーの数々に驚いてもらえるのって……言っちゃ悪いけど面白いし楽しいんだよな。
 そしてその上で、喜んでもらえれば……重ねて嬉しい。

 最初に話した時は、緊張気味だったせいもあるかもしれないけど、どこか真面目で、堅苦しい印象がある子だったな……最初の頃のギーナちゃんと同じか、それよりも、って感じで。
 『タランテラ』の中じゃ、一番の新人だって話だし……そのせいかも。まだ、仕事中の上手な力の抜き方や、息抜きの仕方がわかってない、的な感じ。職場になれてない新入社員というか……バイト1日目の新人というか……上手い例えが思い浮かばないな。

 ……そういや、ギーナちゃん元気かな?
 大陸に帰ってきてすぐにネスティアに戻っちゃったからな……色々やることがあるとかで。遠征の報告とかだとは思うが……何かを決心したみたいな表情にも見えたのが少し気になる。

 ……ああ、それと……モニカちゃんに関してだが、微妙に気になってることが1つ。

 こないだクロエも言ってたけど……やっぱりというか、なんか……クロエとモニカちゃんの間の空気って奴が……どうにも微妙なようだ。

 一回、2人が偶然、廊下ですれ違う所に出くわしたことがある(というか、僕が診察のためにモニカちゃんと一緒に歩いてた時に、偶然クロエとすれ違った)んだが……

 その時は、2人とも一瞬は同じように、驚いた表情になって……その後、クロエが気まずそうに視線をそらし、モニカちゃんは対照的に、キッと睨みつけるような表情になったっけ。
 ……ただ、その更に一瞬後に……今度は2人とも、どこか悲しそうな表情になって……

「……気になる……けど、聞いちゃまずいよな……」

「何が気になるの?」

「いや、それはだからクロエとモニカちゃんが……って、おわ!? クロエ!?」

 なんだか前にも似たようなことがあったような展開っ!?

 無意識につぶやいていた独り言に変死が返ってきたと思ったら……今まさに考えていた張本人であるクロエが、いつの間にか後ろに立っていた。
 ま、毎度毎度、こういうお約束な展開の時に他人の接近に気づけない僕はホントに何なんだ……

 そのクロエは、僕が思わず答えてしまった『クロエとモニカちゃんが……』という言葉に、一瞬ドキッとしたような表情になり……しかしすぐに、ちょっと寂し気な表情になった。

「あー……私とモニカのこと、ね。やっぱり気になるよね。空気悪いし……ごめん、ミナト」

「あ、いや、別にそんな……謝るとかは全然いいんだけど……うん、ごめん。正直気にはなってた……あ、でもホントに詮索とかする気はないからさ」

「……そっか、ありがと。うん……だと助かるな。正直……あんまり他人に話していいことでも、話したいようなことでもなくてね……」

 そう、ちょっとホッとした様子でクロエは言った。

「あ、それでねミナト……ちょっと頼みがあって探してたんだ」

「頼み? 何?」

「えっとさ……今まさに話題にしてた、モニカ達をネフリムに送る時のことなんだけど……明日出発で明日中に届けるってことは、『ナイトライナー』か『オルトヘイム号』でしょ? その運転……私、パスさせてもらえないかな、って、頼もうと思ってたんだ」

 成程。
 基本、クロエには僕が作った乗り物のオペレーター兼パイロットをお願いしてるからな。明日、『タランテラ』を送る時も、特に何も考えず、彼女に頼もうかと思ってた……浅慮だな。

「あー……気まずいから?」

「うん。それもあるし……万が一にも集中できなくて、操作ミスとかしちゃうのが不安、っていうのもある。正直……私、モニカとこうして再会して……しかも、あの子が『タランテラ』の所属にまでなってるって知って……自分が思ってるより動揺してたみたいでさ」

「なるほど……まあ、そういうことなら構わないよ。安全上の問題もあるし」

「ありがとうミナト。埋め合わせは今度、何かの形でするから」

「いいよそんなの。休暇だと思ってゆっくり休んで」

 クロエにはそう伝えて、シフトから外すことを了解して別れた。明日は……僕が運転するか。

 ……しかし……ホント何があったんだか。
 てっきり最初は、何か喧嘩でもしたのか、程度に思ってたんだけど……実家がどうのこうの言ってた気もする。

 ……実家……クロエの実家、か……

 ……そういえば、クロエと初めて出会ったのって、『ラグナドラス』で……彼女、無実の罪で収監されてたんだよな……。その時に確か、不思議に思ったことが1つあったっけ。
 彼女は冤罪で逮捕された時に、何で彼女の実家は何も抗議とかしないで、まるで見捨てるみたいにしたんだろう……って。
 
 シルドル家……だったかな。裏稼業を摘発されて、その逆恨みでクロエを陥れた悪徳貴族。今はもうぶっ潰されてるけど……その家が、偽の証拠とかを揃えて彼女を陥れた。
 そんなことになったら、普通は、貴族の家ともなれば……その実家が、娘を守るために何か言って来てもよさそうなもんだ。大切な娘なんだから……それこそ、多少強引にでも。

 加えて、そのシルドル家は『子爵』であり、クロエのフランク家は『伯爵』……貴族位も上なんだから、その気になれば真っ向から対抗することだってできそうなもんだ。

 けど実際は、助けるどころか、それに何も言おうとしないで、クロエはそのまま捕まったらしい。

 ナナやアリスも不思議がってたっけ……それとも何か、関係あるのかな……?

 いつかそれについても、知る機会とか……来るんだろうか?



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