432 / 611
第19章 妖怪大戦争と全てを蝕む闇
第432話 決戦を見据えて
しおりを挟む早朝に、変態――改め、レイドと俺は一緒に魔術塔へと向かった。
そこに向かう途中。心の中でずっと変態と呼んでいたせいで、ついついそう言ってしまったのだ。
すると、レイドは道のど真ん中で膝を付き。動かなくなった。
通行人がめちゃめちゃこっちを見てコソコソしてるし、終いには『あれって、ハートシア様じゃね?』みたいな声も聞こえてきて……レイドは凄い注目の的になっていた。
遂には、俺の方を見ながら『あの人が原因なのかな?』 とか言われ始めたので、慌ててレイドと呼びまくったら何事もなかったように動き出した。
確かにそう言った俺も悪かったけどさ、流石にこれは無いだろうとクッソ呆れたわ。
△▼△▼△▼△▼
「へ~。よく、変た――コホン、レイドが行ってたの知ってたけど……ここが魔術塔だったんだ? 普通のカフェかと思ってた」
そう、ごくごく普通のカフェにしか見えない。
俺が輝石の時に、レイドが頻繁に足を運んでいたところなのだが。
知り合いのような人に、資料のようなものを受け取って。それに目を通し、一言二言その相手に話していただけだったから、あまり気にもしていなかった。
「ああ、表向きはな。今日はこの奥に用がある」
「ん……? スタッフルーム?」
従業員入り口のような扉の前に、俺達は止まっていた。
すげ~! 大きな組織の本部って、こういうふうに隠されてるもんなんだな~。
「お待ち下さい」
レイドがその取っ手を掴んだ時に、後ろから声を掛けられた。
「……なんだ?」
「ハートシア様、その隣の方はどなたでしょう? 関係者以外はご入室出来ないことを……。勿論、ご存知ですよね?」
従業員らしき男が、こちらに歩み寄って来ていた。
うわ~なんか、感じ悪いな。
言っていることは確かに正しいけど。この従業員は、あからさまに小馬鹿にするような態度を取っていたのだ。
「今、何が起こっているのか分かっているだろう? それを解決することの出来る者だ」
「さあ? ハートシア様が何をおっしゃっているのか……。とにかく、関係者以外は立ち入り禁止ですよ~?」
え? こいつ、何様?
レイドは、魔術塔の人達に救われたとか言ってたけど……マジでか?
そんなこと、してくれそうに見えね~けど?
「ああっ! そうか!! 風のうわさで聞きましたよ? ハートシア様は、輝石に愛を囁くようになりボケが始まったとかなんとか……。まあ、確かに。お年ですからね~?」
ブッチン!!
「俺、レイドのパートナーだから! はい、すっげー関係者!」
「ぎゃぁああーーーーーーっ!!?」
あ、ヤベ、吹っ飛ばしちまった。
「あ~~……。あれ、どうしよ……ぐえっ!!」
「ヤマダっ!!!」
何故だか、レイドにギュウギュウと絞め技を食らう。
「うぐ、苦し……っ! 苦しいんだけど!?」
「ああ、すまない! あまりにも、ヤマダが可愛いことを言うから……。そうか、妻、か」
「はぁ?」
ニコニコ輝くような笑みを浮かべているレイドを、俺は呆然と見上げた。
は? 妻……?? なんで、『パートナー』から『妻』に脳内変換してんの? 仕事の相棒、みたいな意味で言ったんだけど? ……にしても、ボケたや年だとかって言われた本人がなんで怒らねーんだ。
未だ、絞め殺すレベルで抱きついてくるレイドに『妻、違うわボケ!』(レイドは、まったく聞こえていない様子)と言って必死に剥がそうと踠いていたら、ひっくり返った従業員とたまたま目が合い。化け物を見るような目をされて怯えられた。
なんか、ムカついたから睨み付けると。悲鳴を上げられ、逃げられた。は? 失礼じゃね?
それから、へばりつくレイドを何とか引き剥がし。
俺達は、その扉の中へと入った――――。
0
お気に入りに追加
8,536
あなたにおすすめの小説

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。