[R-18] BL作家見習い「花園乱華」♡ＢＬライフは甘やかに

第二章 デビューに向けて！

【４】ＢＬレシピで甘やかに世界を目指せ！

　レシピ本のために毎日、男子校ツアーをしている私は、きっとＢＬ作家の鑑だ。授業の合間の十分間の休憩時間には、女子トイレの個室に籠ってスマホに撮り溜めたサッカー部の甘やかカップルを愛でながら、ＢＬ小説レシピ本「花園乱華の甘やかＢＬクッキング（仮題）」のレシピ開発の構想を練りこんで、いる。

　一階の理科室の隣りの女子トイレは人口密度が小さい。

「理科室のガイコツとか怖いよね」
「あのガイコツ、夜に女子トイレに行くんだって」
「きゃー怖い！」

　想像でしかないけど、ぬるい小娘たちの考えなんかたかが知れて、いる。どうせこんな小学生じみた理由だろう。ま、そんな幼稚な女どものお陰で、この花園乱華さまが個室でゆったりとＢＬ三昧なのだから、少しは感謝してやってもいいかも知れないけど。

　チャイムが鳴った。
　私は、階段を甘やかに駆けあがって教室に飛びこんだ。次の授業は英語だ。まったくつまらない。日本の英語教育は役に立たない。留学とかしたら一年で誰でもペラペラになれるって言うじゃない？　大学まで十年やっても話せるようにならないんだもん。馬鹿馬鹿しくて勉強する気も起こらない。

　いかにもこれから授業を始めますと言いたげなマジメ腐った表情で先生が入ってきた。仕方なしに英会話のテキストを広げる。イギリス出身のネイティブの先生は、来日して三十年近く棲みついているイギリスのオバサン先生だ。これも英語の授業が役に立たないポイントだよね。イケメンのすらりとした高身長の、美形の、ギリシア彫刻のような、たくましい攻め様に相応しいセクシーボイスの甘い言葉で愛を囁くような、フランス人のジェントルマンだったら、最高の作品のネタになるとゆうのに。

　　　♡  ♡  ♡
「ボン・ジュール、ピエール」
　華奈多かなたは、留学生に思い切って話しかけた。
「ボン・ジュール、カルダン」
　ピエールは、はっとした表情になった。
「ソーリー、ソーリー。フレンチジョークだよ。ピエール・カルダンって、言ってみただけ。君は今日からぼくのカルダンだよ」
　奏奈多は何のことかわからない。伝家の宝刀「ザ・ジャパニーズ・スマイル」で微笑み返すだけだ。
「ピエール？　んんっ！　うぐぐっ！」
　ピエールが突然、フレンチ・キスをした。本場のフレンチ・キスは、甘やかに奏奈多を魅了した。
（ああ、ピエール！　美味しい……）
　ピエールの舌は、ふんわりと焼かれたフレンチ・トーストのような舌触りで、それでいて甘やかで、奏奈多はいつまでも味わいたいと思った。

　今日のレシピは甘やかＢＬトーストだよ！　では材料です。
　ピエール（一枚）フランスのバゲットがおすすめです。
　その他の材料は、卵とミルクです。
　フランス・パンに卵とミルクを混ぜたものを塗って焼くだけなので簡単です。前の日から袋に入れて浸して冷蔵庫に入れておくと、朝すぐに食べれることができて便利で時短できます！
　　　♡  ♡  ♡

　またＢＬレシピができた。私って天才かも。フランス語だったら、ちょっと勉強しただけでカッコよく話せることができれるような気がする。フランス語が学べる高校ってあるよね。これって日本の英語教育が何の意味もないからで、それでフランス語に切り替えたんだろうなって思う。

　そうだ！
　さすが世界を目指す花園乱華だ。ＢＬレシピの世界版を書けばいいことに、私は気付いてしまったのだ。世界各国で翻訳されたときに、自分の国の料理があったら嬉しいよね。

　情熱バージョンだったら、思いつくのはイタリアとかスペインとかあるけど、ベニスの船乗りと闘牛士の恋物語とか激しそうで萌える。どっちが受けちゃんなのかって審議が必要だけど。

　イギリスは飯マズだから脇役扱いでいいんじゃないかな。食べ物って大事。同じ英語でもアメリカはハンバーガーとかステーキとかワイルドな料理があるから、ちょっと悪い感じのコワモテ攻め様のイメージかも。アメリカ英語だったら妄想しながら勉強できるのにな。

　世界のＢＬレシピ、いいかも。