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第九章 帆舟を出す夜
9 砂糖菓子の秘密
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「どうされました、坊ちゃん?」
アイラムが訊いた。
イェロードは思い出していた。砂糖菓子を口にしたことを。そればかりか、シュードの手によって尻の孔にも埋めこまれたことを。そしてシュードと烈しい肉の交わりを持ったことを。しかしアイラムを心配させてはいけない。辛うじてこう云った。「あれを食べた館の人たちが、みんなおかしくなって……」
「それでは、毒の効果をご覧になったのですね?」アイラムが重ねて訊いた。イェロードが頷くと、続けてこう云った。「色事で国を支配することがゼーゲンの目的なのです。そして淫婦サーダが側妃になったその日から、アラディーム国は乱れはじめました。街の至る所に娼館が建ちならび、そればかりか春をひさぐ女たちが通りに溢れ、それはそれは……」
「騎士団に入るのもアイラムは反対していたよね。だからだったんだ」
「もちろん、騎士団の男たちが坊ちゃんを娼館に連れてゆくなどということはないでしょうが……」
イェロードの頭にナコシュの顔が泛んだ。彼は、ギーフと修道士エークとともに海の藻屑となって消えた。色に溺れた者たちの哀れな末路だった。
「ぼく、父と母に認めてもらおうと思って騎士団に入ったんだ。でも母だと思っていたのがサーダだったのなら、はじめから意味がなかったんだね」
「ですが……」とここで言葉を一度切って、アイラムがイェロードの手を取った。そして微笑みながら云った。「坊ちゃんがゼーゲンの毒牙にかからず、騎士団で逞しくなられたのは幸いでした。お小さいころは病弱で、薬草を飲ませない日はありませんでしたから」
イェロードはアイラムに笑顔を見せて、
「今のぼくなら、アイラムを負ぶって、どこまでも疾ることだってできるよ」
「まあ、お頼もしいこと」
また角を右に曲がった。行く手の先に薄っすらと階段が見える。ふたりはそこまで歩き、そして階段を昇りはじめた。
昇りながらイェロードは考えた。砂糖菓子を食べたけれども、ギーフたちのように誰彼構わず交わりたいという気持ちにはならなかった。ただシュードの肉体だけ欲していた。最初に彼を見たときから目が離せなかったのは確かだが、それは男としての理想の姿だったからだ。
——そうか! そうだったんだ!
口移しの砂糖菓子にはシュードの甘苦い唾液が含まれていた。尻に埋めこまれた砂糖菓子は、シュードの放つ熱い精で溶かされた。そして尻のなかで砂糖菓子と精をかき混ぜるシュードの長大で隆々としたペニス。イェロードは尻の孔ばかりでなく、口にそれを頬張り、潮の香がするシュードの精を飲みこんだ。どう考えてみても、イェロードが受けいれたシュードのすべてに、アイラムの薬草のような効果があったとしか思えない。
——シュードが、ぼくを繋ぎとめてくれていたんだ。ぼくが交わるのは、シュードひとりだけであるように!
尻の奥が疼く。けれどシュードはここにはいない。イェロードは、石でも棒切れでも、なんでもいいからシュードのペニスの代わりに尻の孔に挿しこんで、掻きまわしたいと思った。
アイラムが訊いた。
イェロードは思い出していた。砂糖菓子を口にしたことを。そればかりか、シュードの手によって尻の孔にも埋めこまれたことを。そしてシュードと烈しい肉の交わりを持ったことを。しかしアイラムを心配させてはいけない。辛うじてこう云った。「あれを食べた館の人たちが、みんなおかしくなって……」
「それでは、毒の効果をご覧になったのですね?」アイラムが重ねて訊いた。イェロードが頷くと、続けてこう云った。「色事で国を支配することがゼーゲンの目的なのです。そして淫婦サーダが側妃になったその日から、アラディーム国は乱れはじめました。街の至る所に娼館が建ちならび、そればかりか春をひさぐ女たちが通りに溢れ、それはそれは……」
「騎士団に入るのもアイラムは反対していたよね。だからだったんだ」
「もちろん、騎士団の男たちが坊ちゃんを娼館に連れてゆくなどということはないでしょうが……」
イェロードの頭にナコシュの顔が泛んだ。彼は、ギーフと修道士エークとともに海の藻屑となって消えた。色に溺れた者たちの哀れな末路だった。
「ぼく、父と母に認めてもらおうと思って騎士団に入ったんだ。でも母だと思っていたのがサーダだったのなら、はじめから意味がなかったんだね」
「ですが……」とここで言葉を一度切って、アイラムがイェロードの手を取った。そして微笑みながら云った。「坊ちゃんがゼーゲンの毒牙にかからず、騎士団で逞しくなられたのは幸いでした。お小さいころは病弱で、薬草を飲ませない日はありませんでしたから」
イェロードはアイラムに笑顔を見せて、
「今のぼくなら、アイラムを負ぶって、どこまでも疾ることだってできるよ」
「まあ、お頼もしいこと」
また角を右に曲がった。行く手の先に薄っすらと階段が見える。ふたりはそこまで歩き、そして階段を昇りはじめた。
昇りながらイェロードは考えた。砂糖菓子を食べたけれども、ギーフたちのように誰彼構わず交わりたいという気持ちにはならなかった。ただシュードの肉体だけ欲していた。最初に彼を見たときから目が離せなかったのは確かだが、それは男としての理想の姿だったからだ。
——そうか! そうだったんだ!
口移しの砂糖菓子にはシュードの甘苦い唾液が含まれていた。尻に埋めこまれた砂糖菓子は、シュードの放つ熱い精で溶かされた。そして尻のなかで砂糖菓子と精をかき混ぜるシュードの長大で隆々としたペニス。イェロードは尻の孔ばかりでなく、口にそれを頬張り、潮の香がするシュードの精を飲みこんだ。どう考えてみても、イェロードが受けいれたシュードのすべてに、アイラムの薬草のような効果があったとしか思えない。
——シュードが、ぼくを繋ぎとめてくれていたんだ。ぼくが交わるのは、シュードひとりだけであるように!
尻の奥が疼く。けれどシュードはここにはいない。イェロードは、石でも棒切れでも、なんでもいいからシュードのペニスの代わりに尻の孔に挿しこんで、掻きまわしたいと思った。
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