[R-18] 奴隷のレッスン:騎士団所属の末っ子王子は、イケメン奴隷に身も心も奪われる

山葉らわん

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第九章 帆舟を出す夜

2 聖水の効き目

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 イェロードが修道服に身を包んだとき、部屋の扉が三度ノックされた。
「どうやら、邪魔が入ったようだな」
 と呟いてシュードが扉へ向かった。
「イェロード、頭巾で顔を隠しておけ」
「は、はい……」
 正体がバレてはいけない。イェロードは慌てて頭巾を深く被り、シュードの背後にまわって頭を下げた。
 扉が開けられた。
「ああ、修道士様でしたか」男の声がした。「ギーフ様のお部屋はこちらで……」
「さようでございます」
 深い響きのある声でシュードが答えた。その口調は聖職者そのものだった。
「であれば——」別の男の声がした。「どうして修道士様たちがこのお部屋におられるのでしょうか?」
 シュードが答えた。「ギーフ様がお忍びでお出かけのあいだ、この部屋をお守りしているのでございます」
「お忍びですと?」また別の男の声がした。「こんな時間にいったいどちらへ……」
 シュードは少しばかり云いにくそうに、
「護衛のナコシュ殿とご一緒に夜の市場へ……」
 とだけ答え、その続きを濁した。
 イェロードは、このやり取りを頭巾の隙間からそっとうかがっていた。
 ——みんな王都から来たみたいだけど、何があったんだろう?
 顔馴染みの騎士たちが三人、扉の向こうに立っていたのだった。
 ややあって、三人のうちいちばん年上の騎士が云った。「ナコシュですと?」
「さようでございます」
 三人はすぐさま事情を飲みこんだらしく、ほぼ同時に乾いた笑いを洩らした。
「ところで——」シュードがその笑いの余波なごりを引きとった。「ギーフ様がお戻りになるまで、こちらでお待ちになりますか?」そして少し後ろに下がって、三人のために道を開けた。
 いちばん年上の騎士が云った。「よろしいのでしょうか?」
「ご用があって、いらしたものとお見受けしますが……」
 シュードに勧められるまま、三人の騎士たちは部屋へ入り、窓際に据えてある客人用のテーブル席についた。
 イェロードは、彼らに顔を見られないように頭巾を深く被り、なるべく目立たぬようシュードのそばに立った。
 ——これから出かけるって云ってたけど、シュードはどうするつもりなんだろう?
 イェロードは、シュードの裾をそっと引っ張った。
 シュードはイェロードの顔をチラリと見て、それから客人に語りかけた。「あいにく聖水しかございませんが……」
 水差しと水杯がテーブルの上に置かれた。
「聖水?」
 とひとりが云い、ついでもうひとりが、
「聖水とは、なんと貴重なものを……」
 と遠慮するそぶりを見せた。
 シュードは、いちばん年上の騎士に云った。「ご存知のとおり、オシヤクは温泉が出ることで有名でございます」
「うむ。そうでしたな」
「その温泉水に祈りを捧げたものが、この聖水なのです。ご遠慮なくお飲みください」シュードは水杯のひとつひとつに聖水を注いだ。「ご領主様からも、まずはこの聖水でもてなすようにと云いつかっておりますゆえ」
 三人は大きく頷き、
「ローエ様のご好意とあれば——」
「ここはありがたく頂戴するのがよいかと」
「そのようだな」
 と口々に云い、聖水を一気に飲み干した。
 ——沈黙が流れた。
 水杯をテーブルに置くや否や、三人がそのまま固まって動かなくなったのだ。
 シュードが、ふふっ、と笑った。「イェロード、余興がひとつ増えたようだぞ」
「え」
「よく見ておけ」
 シュードは三人を放置したまま寝台のほうへ向かい、フットベンチの蓋を開いて拷問道具をいくつか取り出して寝台の上に放り投げ、そしてまた三人のところへ戻ってきた。
「シュード……?」
「安心しろ。あれを使うのは、おまえではない」
 シュードは三人の顔の前で両手を三度打ちあわせた。「せっかくオシヤクにいらしたのですから、思う存分、お楽しみください」
 三人が立上がった。ぞろぞろと寝台のほうへと歩いてゆく。寝台の傍らで立止まり、先を争うように脱ぎ、あっという間に全裸になると、我先にと寝台に上がった。
「ここはオシヤクでございます……」シュードが儀式めいた口調で云った。「さあ、どうぞ」
 いちばん年上の騎士が、いちばん年下の騎士を、もうひとり騎士の助けを借りながら縄で縛りあげ、そして鞭を打ちはじめた。
「え……?」
 イェロードは目を丸くした。王都での彼らは、こんなことをするような男たちではない。しかし三人はイェロードの見ている前で淫らな行為に酔いしれている。鞭を打つ男、それを手伝う男、そして鞭を打たれる男。彼らは皆、ペニスを屹立させていた。
 シュードが、くくっ、と笑った。「オシヤクの聖水は実に効き目が好い……」
 寝台の上では、三人の男たちが淫蕩の限りを尽くしている。
 年長の男が、縛られた男の尻をペニスで貫きながら云った。「オシヤクでいちばんの性奴隷を……ここへ連れてきてくれまいか……」
「女奴隷でございましょうか?」シュードが白々しく訊いた。
「いや、男だ。男奴隷でいちばんのやつだ」
 そこへ年長者の傍らで膝立ちになり、彼の乳暈を舐めまわしていた男が割りこんだ。「修道士様にそのようなお願いをしては……」
 シュードは、しばらくおいてから、
「それでは呼んでまいりましょう」
 と云った。そして三人が脱ぎ散らかした衣服のなかから何かを拾いあげ、イェロードに目配せをした。部屋を出るぞ、という合図だった。
 寝台の上で交わりあう男たちを残し、イェロードはシュードについて行った。
 廊下を少し歩いたところでシュードが立止った。「王都で何かあったようだな」
「え?」
「さっき文を拾った」シュードは懐から文の束を取りだした。「ひとつはローエ宛、もうひとつは、おまえ宛ではない——」
 イェロードは首を傾げた。
「ギーフ宛のものだ」
 と云って、シュードはギーフ宛の文にざっと目を通した。「やはりな……。思ったとおりだ」
「何が書いてあるの?」イェロードは文に手を伸ばそうとした。
 しかしシュードはその文をさっと折りたたんで懐に戻した。
「シュード?」
 シュードがふたたび歩きだした。「今夜は、おまえに見せてやるものがいくつもあるぞ。まずは、おまえの部屋からだ」
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