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第九章 帆舟を出す夜
1 身支度を整える
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「身を清めてやろう」
とシュードが云って、寝台の上でぐったりとしているイェロードからペニスをずるりと引きぬいた。息を整えようとしているイェロードをそのまま横抱きにして寝台から降り、ひと続きになっている湯屋へと向かう。
抱えあげられたイェロードは、湯屋の扉を開けようとするシュードを見上げて、
「お湯は?」
「ある」イェロードを抱えたままシュードは湯屋の扉を開いた。「この部屋の湯屋は、釜戸で湯を沸かす必要がない」
湯屋のなかは、すでに湯気がもうもうと立ちこめていた。
シュードが、ふふっ、と笑う。「おまえの部屋より豪華だと思わないか?」
「え……?」
イェロードは周囲をゆっくり見まわした。四方の壁は真っ白で、優秀な芸術家が彫ったと思われる見事な装飾がなされている。四隅の大きな柱にレリーフされている裸婦の像、おおよそ湯屋には必要ないと思われる壺や剣といった調度品の数々。中央には円形の洗身台があり、その表面のどこから湧き出ているのかわからないが、湯が漣を立てて四方八方に広がり、縁から流れ落ちている。
シュードはその洗身台までイェロードを運んだ。
「あ!」
イェロードが叫んだ。洗身台に上がったとき、尻に湯の愛撫を感じたのだ。湯はまるで舌のようにイェロードの尻の谷間を舐めまわす。イェロードは両手を腰の横について両膝を立て、尻を置くべき位置を探りはじめた。
さっきまでシュードのペニスを咥えこんでいた尻の孔がじんわりと温められて、さらに柔らかく溶けていくような感触がある。イェロードがちからを抜くと、湯が尻の奥にそっと忍びいった。
「あっ……ああ……」
イェロードは心地よい場所を見つけるとそこに尻を押しつけた。
「イェロード、気に入ったか?」
シュードが洗身台に上がってきた。いつの間にか小さな壺を手にしている。からだを洗うのに使う香油の匂いが漂う。
——あんなにたくさん!
冷遇されていたので王族の身だしなみに必要なものでさえ、満足に用意してもらえなかった。イェロードは、乳母アイラムが薬草のしぼり汁や煮出した汁を加えて香油の量を増やしてくれていたのを思い出した。彼女は嵩増しした香油を小瓶に分けながら、『貴重なものですから、こうして大事に使うのですよ』とイェロードに云った。
シュードは、その香油を惜しげもなく頭からかぶり、全身に塗りひろげた。そしてイェロードの後ろに周ると、イェロードの背中を香油の手で撫ではじめた。
肉厚の手が背中を這いまわる。やがてその手が腰へと降りてゆきながら、片方の手は突然イェロードの胸へと向きを変え、もう片方の手は尻の谷間へ潜りこんだ。だが触れているだけで愛撫を始めようとはしない。
「エボーイ・オワノニーカム」とシュードが耳許で囁いた。
「シュ、シュード……」
イェロードは身を捩らせながら応えた。
シュードの手指が動きはじめた。胸をまさぐり、尻の孔を指で広げて湯を奥へと誘う。イェロードは目を閉じた。
——気持ちいいけれど、もったいない。せっかくのシュードの匂いが落ちてしまう……。
しばらくしてシュードが云った。
「イェロード、上を見ろ」
「え……?」
天井には男と女の画が描かれていた。そこでは一糸まとわぬ複数の男女が淫蕩の限りをつくしている。仰向けに寝た客人は、この画を眺めながら、世話係の奴隷たちに洗わせるのだろう。
シュードがイェロードの前に周った。イェロードは背中を倒して仰向けになると、膝裏を手で抱え、破り展いた尻をシュードの前に差しだした。イェロードは天井の乱行図に目を向ける。そしてシュードが這入ってくるのを待つ。両脚のあいだにシュードが寄ってくる気配がした。
腹に滴り落ちた香油は、腹の中心にほんの少し削られた、イェロードの慎ましい臍をじんわりと温めた。
「あ……」
イェロードは思わず声を洩らした。するとシュードがイェロードの手を膝裏からほどき、イェロードの両脚を持ちあげて両肩にかけた。イェロードの緩んだ肛門に異教徒の徴が触れている。
——天井の画よりも、シュードとぼくの画のほうがずっと美しいはずだ!
イェロードは腰を揺すってシュードを誘った。尻の入口はすっかり開いていて、いつでもシュードを迎える準備ができている。
シュードは、イェロードの尻のなかにペニスの先をほんの少し潜らせて、それ以上、腰を進めようとはしない。その代わりに香油を腹から胸へと塗りひろげはじめた。
「隅々まで洗ってやろう」シュードが云った。「おまえは寝ているだけでいい」
シュードの手が、恐ろしく長い時間をかけて、じわじわと腹から胸へ動いてゆく。イェロードの腰が持ちあがり、それにつられてシュードのペニスが少しずつ尻のなかに這入ってくる。イェロードは焦ったさを覚えた。
——早く……寝台のときみたいに……。
イェロードはシュードの腰に両手を回そうとした。しかしシュードにその手を取られてしまった。シュードは、両手首をイェロードの頭の上で重ねると、片手で押さえつけた。
「寝ているだけでいいと云ったはずだ」
こう云ってシュードは、もう片方の手で香油を塗りひろげた。イェロードが腰を揺すって誘おうとするけれども、シュードは這入ってこようとはしない。
——シュードの匂いが消えてゆく!
この洗身台に上がったとき、寝台と同じようにシュードと交われると思っていた。しかしイェロードをうつ伏せに寝かせたときも、シュードは尻の谷間にペニスを挟みこむだけで何もしなかった。
——どうしてなんだろう?
香油が塗られ、最後に湯をたっぷりと掛けられた。
その後、浴槽に浸かったときも、シュードは後ろから抱えるだけで何もしてこなかった。湯から上がると、大布でイェロードのからだを拭いて——それでお終いだった。
寝室に戻ると、シュードがクローゼットを開けた。
「シュード……?」
シュードが取り出したのは修道服だった。修道服は、信心深い客人のためにクローゼットに準備されていて、サイズも大中小と揃っている。シュードはいちばん大きな修道服をさっと身にまとった。
——シュードは異教徒のはずでは?
イェロードは、ますますわからないことだらけだ。
するとシュードが、
「おまえも着ろ」
と云って修道服を一式取って寝台に投げやった。「これから出かける。良いものを見せてやろう」
とシュードが云って、寝台の上でぐったりとしているイェロードからペニスをずるりと引きぬいた。息を整えようとしているイェロードをそのまま横抱きにして寝台から降り、ひと続きになっている湯屋へと向かう。
抱えあげられたイェロードは、湯屋の扉を開けようとするシュードを見上げて、
「お湯は?」
「ある」イェロードを抱えたままシュードは湯屋の扉を開いた。「この部屋の湯屋は、釜戸で湯を沸かす必要がない」
湯屋のなかは、すでに湯気がもうもうと立ちこめていた。
シュードが、ふふっ、と笑う。「おまえの部屋より豪華だと思わないか?」
「え……?」
イェロードは周囲をゆっくり見まわした。四方の壁は真っ白で、優秀な芸術家が彫ったと思われる見事な装飾がなされている。四隅の大きな柱にレリーフされている裸婦の像、おおよそ湯屋には必要ないと思われる壺や剣といった調度品の数々。中央には円形の洗身台があり、その表面のどこから湧き出ているのかわからないが、湯が漣を立てて四方八方に広がり、縁から流れ落ちている。
シュードはその洗身台までイェロードを運んだ。
「あ!」
イェロードが叫んだ。洗身台に上がったとき、尻に湯の愛撫を感じたのだ。湯はまるで舌のようにイェロードの尻の谷間を舐めまわす。イェロードは両手を腰の横について両膝を立て、尻を置くべき位置を探りはじめた。
さっきまでシュードのペニスを咥えこんでいた尻の孔がじんわりと温められて、さらに柔らかく溶けていくような感触がある。イェロードがちからを抜くと、湯が尻の奥にそっと忍びいった。
「あっ……ああ……」
イェロードは心地よい場所を見つけるとそこに尻を押しつけた。
「イェロード、気に入ったか?」
シュードが洗身台に上がってきた。いつの間にか小さな壺を手にしている。からだを洗うのに使う香油の匂いが漂う。
——あんなにたくさん!
冷遇されていたので王族の身だしなみに必要なものでさえ、満足に用意してもらえなかった。イェロードは、乳母アイラムが薬草のしぼり汁や煮出した汁を加えて香油の量を増やしてくれていたのを思い出した。彼女は嵩増しした香油を小瓶に分けながら、『貴重なものですから、こうして大事に使うのですよ』とイェロードに云った。
シュードは、その香油を惜しげもなく頭からかぶり、全身に塗りひろげた。そしてイェロードの後ろに周ると、イェロードの背中を香油の手で撫ではじめた。
肉厚の手が背中を這いまわる。やがてその手が腰へと降りてゆきながら、片方の手は突然イェロードの胸へと向きを変え、もう片方の手は尻の谷間へ潜りこんだ。だが触れているだけで愛撫を始めようとはしない。
「エボーイ・オワノニーカム」とシュードが耳許で囁いた。
「シュ、シュード……」
イェロードは身を捩らせながら応えた。
シュードの手指が動きはじめた。胸をまさぐり、尻の孔を指で広げて湯を奥へと誘う。イェロードは目を閉じた。
——気持ちいいけれど、もったいない。せっかくのシュードの匂いが落ちてしまう……。
しばらくしてシュードが云った。
「イェロード、上を見ろ」
「え……?」
天井には男と女の画が描かれていた。そこでは一糸まとわぬ複数の男女が淫蕩の限りをつくしている。仰向けに寝た客人は、この画を眺めながら、世話係の奴隷たちに洗わせるのだろう。
シュードがイェロードの前に周った。イェロードは背中を倒して仰向けになると、膝裏を手で抱え、破り展いた尻をシュードの前に差しだした。イェロードは天井の乱行図に目を向ける。そしてシュードが這入ってくるのを待つ。両脚のあいだにシュードが寄ってくる気配がした。
腹に滴り落ちた香油は、腹の中心にほんの少し削られた、イェロードの慎ましい臍をじんわりと温めた。
「あ……」
イェロードは思わず声を洩らした。するとシュードがイェロードの手を膝裏からほどき、イェロードの両脚を持ちあげて両肩にかけた。イェロードの緩んだ肛門に異教徒の徴が触れている。
——天井の画よりも、シュードとぼくの画のほうがずっと美しいはずだ!
イェロードは腰を揺すってシュードを誘った。尻の入口はすっかり開いていて、いつでもシュードを迎える準備ができている。
シュードは、イェロードの尻のなかにペニスの先をほんの少し潜らせて、それ以上、腰を進めようとはしない。その代わりに香油を腹から胸へと塗りひろげはじめた。
「隅々まで洗ってやろう」シュードが云った。「おまえは寝ているだけでいい」
シュードの手が、恐ろしく長い時間をかけて、じわじわと腹から胸へ動いてゆく。イェロードの腰が持ちあがり、それにつられてシュードのペニスが少しずつ尻のなかに這入ってくる。イェロードは焦ったさを覚えた。
——早く……寝台のときみたいに……。
イェロードはシュードの腰に両手を回そうとした。しかしシュードにその手を取られてしまった。シュードは、両手首をイェロードの頭の上で重ねると、片手で押さえつけた。
「寝ているだけでいいと云ったはずだ」
こう云ってシュードは、もう片方の手で香油を塗りひろげた。イェロードが腰を揺すって誘おうとするけれども、シュードは這入ってこようとはしない。
——シュードの匂いが消えてゆく!
この洗身台に上がったとき、寝台と同じようにシュードと交われると思っていた。しかしイェロードをうつ伏せに寝かせたときも、シュードは尻の谷間にペニスを挟みこむだけで何もしなかった。
——どうしてなんだろう?
香油が塗られ、最後に湯をたっぷりと掛けられた。
その後、浴槽に浸かったときも、シュードは後ろから抱えるだけで何もしてこなかった。湯から上がると、大布でイェロードのからだを拭いて——それでお終いだった。
寝室に戻ると、シュードがクローゼットを開けた。
「シュード……?」
シュードが取り出したのは修道服だった。修道服は、信心深い客人のためにクローゼットに準備されていて、サイズも大中小と揃っている。シュードはいちばん大きな修道服をさっと身にまとった。
——シュードは異教徒のはずでは?
イェロードは、ますますわからないことだらけだ。
するとシュードが、
「おまえも着ろ」
と云って修道服を一式取って寝台に投げやった。「これから出かける。良いものを見せてやろう」
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