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第八章 寝台の画
1 寝台の画【絡み:シュード(=エシフ)xイェロード(=ノモク)】
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シュードがこう云ったつぎの瞬間、イェロードの背筋にざざっと波が立った。
「ひぃっ……あああ——」
「おまえは実に可愛い声で泣く」
シュードの人差し指と中指が、イェロードの剥けあがった丸みを、そのくびれの下の溝に沿って挟んでいる。さらに親指がイェロードの丸みの表面を、その腹でゆっくりと捏ねまわす。
シュードが、くくく、と笑って、
「もっと泣かせてやろう」
「はうっ! あ、あ、あ……」
親指の動きが止まるやいなや、こんどは人差し指と中指が動きはじめた。二指は前後に行き来して、くびれの下の溝をこすりたてた。むず痒さがペニスを包みこみ、それが快感となって全身に広がってゆく。
「これしきのことで根をあげていては、女たちを悦ばせることはできないぞ」指を動かしつづけながらシュードが云った。「それとも俺を悦ばせたいのか、イェロード?」
イェロードは喘ぎながらシュードの指技を全身で味わっていた。「ねえ、シュード……くぅっ……いっ……」
尻の奥が空っぽになったような感覚だ。イェロードは、今すぐここを塞ぎたいと、身を捩らせながら腰を泛せようとした。
「ほう。自分から快楽を求めるとは……」シュードが感心したように呟き、イェロードのペニスを握りなおした。こんどは手筒ですっぽりとその全体を包みこむ。「さあ、思う存分愉しむがいい」
シュードの手は肉厚でそして温かい。手慰みの心得があるらしく、その手筒の締めつけは緩くもなく、きつくもない。イェロードはそろりそろりと腰を振りはじめた。
「あっ……ふ……んんっ……」
「そういえば、おまえは自分でやるのを拒んでいたな」シュードが加勢して、手筒をゆるゆると前後に動かす。「おまえの手ではない。俺の手だ。遠慮はいらぬ。思う存分愉しめ」
シュードの手に導かれて吐精するまで、自慰は穢れた行為だ、とイェロードは考えていた。しかしその考えは間違いだったらしい。自慰は男に産まれたものだけが識ることのできる、男だけの祝福だ。イェロードは、シュードからそれを学んだ。
「あっ……あ、あ、あっ……あぁぁぁ——」
シュードの手筒がイェロードのペニスにしっくりと馴染み、祝福を与えつづける。イェロードは腰を大きく揺すりたてた。
「おまえは俺を欲しがっていた。はじめて出逢ったときから——そうだったな? 晩餐会でおまえにグーフラトを供したときからだ」
「ち、異うよ……あっ……んんっ……」
「腰布のなかを気にしていたではないか。忘れたとは云わせないぞ」
「ぼ、ぼくは……あああ……」
「鞭の柄は、偽の第七王子に呉れてやった。おまえは他に欲しいものがあるのだろう? さあ、云ってみろ。何が望みだ?」
ペニスは十分にシュードの手筒を愉しんでいる。けれども尻の奥が疼いてたまらない。ここも満たしたい。けれどもシュードはそこにペニスを挿れてくれようとはしない。すでにそこは硬く、熱く、大きくなっているというのに。
イェロードは堪りかねて身を起こした。こちらから誘うしかないようだった。「ねえ……シュ、シュード……」
「イェロード?」
シュードは何か云おうとしたが、そこへイェロードが唇を重ねて黙らせた。彼はシュードの上唇と下唇のあいだに舌先をすばしこく疾らせて、半開きの口をさらに開けてもらおうとした。するとシュードの口が願ったとおりにゆっくりと開き、彼の舌がイェロードの舌を押しもどした。
「んんっ……むぅっ……ふ、ああ……」
シュードの肉厚な舌がイェロードの口のなかに辷りこんだ。シュードはその舌をイェロードの舌に絡ませてイェロードを味わい尽くそうとし、イェロードにも同じように彼の舌を味わわせた。
——ここも……海の味がする……。シュードは……海の神なんだ……。
その舌技にイェロードは恍惚とした気分になって全身のちからを抜いた。糸の切れたマリオネットのようにイェロードの右手がシュードのペニスから離れ、左手がシュードの首からほどけた。
「イェロード、寝台の上だ。道具は常に勃たせておけ」
シュードは、イェロードのペニスを愛撫しつづけながらその巨軀を動かして、もう片方の膝もイェロードの両脚のあいだにもぐりこませ、左右に大きく破りひろげた。
——こうすれば、シュードが、ぼくのお尻を見てくれる……。
イェロードは左右の膝裏を両手で抱え、顔を起こすと、
「ねえ、シュード……」
と云ってシュードを見つめた。
シュードは、イェロードのペニスから愛撫の手を放すと、身を起こした。両膝をついて爪先立ちになり、左右の踵に尻を乗せた恰好で腰を落ちつかせた。
——ああ、シュード……。なんて美しいんだ!
天蓋の閉じられた薄暗闇のなか、寝台の飾り棚に置かれたランプに照らされて、シュードの裸身がくっきりと泛びあがっている。それは、いつ見ても、見れば見るほど、イェロードが見識っている騎士団の男たちの裸身とは異なっていた。ローエやナコシュの裸身のように獣のような、むさ苦しい、夥しい毛に覆われてはいない。シュードの体毛は艶やかで、あるべきところにあって、その裸身を若々しく、たくましく、雄々しく飾りたてている。
イェロードは、その美しい裸身の中心にあって、シュードの、海の神が宿った、隆々としたペニスに息をのんだ。
———ぼくのなかに……早く……。
シュードがイェロードの腰を両手で抱え、ぐいっと引きあげて膝の上に乗せた。大きな両手で尻の双丘をつかみ、左右に破りひらく。
「いい眺めだ、イェロード。おまえは、実に画になる」シュードは、しばらくイェロードの姿を見ていたが、やがてクスッと鼻を鳴らした。「この館で十年近く寝台の画を観てきたが、これほど淫らで美しいものは、はじめてだ」
おまえも観ろと云うかのように、シュードが顎を一度しゃくりあげた。
——寝台の画だって?
イェロードは顔を後ろに反らせ、自分が夕食の画となって飾られていた壁の額縁に目を遣った。
そして言葉を失った。
額縁のなかに大きな鏡がはめ込まれていた。それは寝台の上を映すように斜めに傾いていて、シュードとイェロードの裸身を一枚の画に描いていた。
「イェロード、これが寝台の画だ」
「ひぃっ……あああ——」
「おまえは実に可愛い声で泣く」
シュードの人差し指と中指が、イェロードの剥けあがった丸みを、そのくびれの下の溝に沿って挟んでいる。さらに親指がイェロードの丸みの表面を、その腹でゆっくりと捏ねまわす。
シュードが、くくく、と笑って、
「もっと泣かせてやろう」
「はうっ! あ、あ、あ……」
親指の動きが止まるやいなや、こんどは人差し指と中指が動きはじめた。二指は前後に行き来して、くびれの下の溝をこすりたてた。むず痒さがペニスを包みこみ、それが快感となって全身に広がってゆく。
「これしきのことで根をあげていては、女たちを悦ばせることはできないぞ」指を動かしつづけながらシュードが云った。「それとも俺を悦ばせたいのか、イェロード?」
イェロードは喘ぎながらシュードの指技を全身で味わっていた。「ねえ、シュード……くぅっ……いっ……」
尻の奥が空っぽになったような感覚だ。イェロードは、今すぐここを塞ぎたいと、身を捩らせながら腰を泛せようとした。
「ほう。自分から快楽を求めるとは……」シュードが感心したように呟き、イェロードのペニスを握りなおした。こんどは手筒ですっぽりとその全体を包みこむ。「さあ、思う存分愉しむがいい」
シュードの手は肉厚でそして温かい。手慰みの心得があるらしく、その手筒の締めつけは緩くもなく、きつくもない。イェロードはそろりそろりと腰を振りはじめた。
「あっ……ふ……んんっ……」
「そういえば、おまえは自分でやるのを拒んでいたな」シュードが加勢して、手筒をゆるゆると前後に動かす。「おまえの手ではない。俺の手だ。遠慮はいらぬ。思う存分愉しめ」
シュードの手に導かれて吐精するまで、自慰は穢れた行為だ、とイェロードは考えていた。しかしその考えは間違いだったらしい。自慰は男に産まれたものだけが識ることのできる、男だけの祝福だ。イェロードは、シュードからそれを学んだ。
「あっ……あ、あ、あっ……あぁぁぁ——」
シュードの手筒がイェロードのペニスにしっくりと馴染み、祝福を与えつづける。イェロードは腰を大きく揺すりたてた。
「おまえは俺を欲しがっていた。はじめて出逢ったときから——そうだったな? 晩餐会でおまえにグーフラトを供したときからだ」
「ち、異うよ……あっ……んんっ……」
「腰布のなかを気にしていたではないか。忘れたとは云わせないぞ」
「ぼ、ぼくは……あああ……」
「鞭の柄は、偽の第七王子に呉れてやった。おまえは他に欲しいものがあるのだろう? さあ、云ってみろ。何が望みだ?」
ペニスは十分にシュードの手筒を愉しんでいる。けれども尻の奥が疼いてたまらない。ここも満たしたい。けれどもシュードはそこにペニスを挿れてくれようとはしない。すでにそこは硬く、熱く、大きくなっているというのに。
イェロードは堪りかねて身を起こした。こちらから誘うしかないようだった。「ねえ……シュ、シュード……」
「イェロード?」
シュードは何か云おうとしたが、そこへイェロードが唇を重ねて黙らせた。彼はシュードの上唇と下唇のあいだに舌先をすばしこく疾らせて、半開きの口をさらに開けてもらおうとした。するとシュードの口が願ったとおりにゆっくりと開き、彼の舌がイェロードの舌を押しもどした。
「んんっ……むぅっ……ふ、ああ……」
シュードの肉厚な舌がイェロードの口のなかに辷りこんだ。シュードはその舌をイェロードの舌に絡ませてイェロードを味わい尽くそうとし、イェロードにも同じように彼の舌を味わわせた。
——ここも……海の味がする……。シュードは……海の神なんだ……。
その舌技にイェロードは恍惚とした気分になって全身のちからを抜いた。糸の切れたマリオネットのようにイェロードの右手がシュードのペニスから離れ、左手がシュードの首からほどけた。
「イェロード、寝台の上だ。道具は常に勃たせておけ」
シュードは、イェロードのペニスを愛撫しつづけながらその巨軀を動かして、もう片方の膝もイェロードの両脚のあいだにもぐりこませ、左右に大きく破りひろげた。
——こうすれば、シュードが、ぼくのお尻を見てくれる……。
イェロードは左右の膝裏を両手で抱え、顔を起こすと、
「ねえ、シュード……」
と云ってシュードを見つめた。
シュードは、イェロードのペニスから愛撫の手を放すと、身を起こした。両膝をついて爪先立ちになり、左右の踵に尻を乗せた恰好で腰を落ちつかせた。
——ああ、シュード……。なんて美しいんだ!
天蓋の閉じられた薄暗闇のなか、寝台の飾り棚に置かれたランプに照らされて、シュードの裸身がくっきりと泛びあがっている。それは、いつ見ても、見れば見るほど、イェロードが見識っている騎士団の男たちの裸身とは異なっていた。ローエやナコシュの裸身のように獣のような、むさ苦しい、夥しい毛に覆われてはいない。シュードの体毛は艶やかで、あるべきところにあって、その裸身を若々しく、たくましく、雄々しく飾りたてている。
イェロードは、その美しい裸身の中心にあって、シュードの、海の神が宿った、隆々としたペニスに息をのんだ。
———ぼくのなかに……早く……。
シュードがイェロードの腰を両手で抱え、ぐいっと引きあげて膝の上に乗せた。大きな両手で尻の双丘をつかみ、左右に破りひらく。
「いい眺めだ、イェロード。おまえは、実に画になる」シュードは、しばらくイェロードの姿を見ていたが、やがてクスッと鼻を鳴らした。「この館で十年近く寝台の画を観てきたが、これほど淫らで美しいものは、はじめてだ」
おまえも観ろと云うかのように、シュードが顎を一度しゃくりあげた。
——寝台の画だって?
イェロードは顔を後ろに反らせ、自分が夕食の画となって飾られていた壁の額縁に目を遣った。
そして言葉を失った。
額縁のなかに大きな鏡がはめ込まれていた。それは寝台の上を映すように斜めに傾いていて、シュードとイェロードの裸身を一枚の画に描いていた。
「イェロード、これが寝台の画だ」
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