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第六章 ぼくの名は——イェロード
10 奴隷の証明
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男奴隷たちが騒ついた。引き下がれそうにない雰囲気だ。
「ここで?」イェロードは訊いた。
「ああ、そうだ」ソルブは落ち着きはらった口調で応えた。「シュードの道を見せてやれ」
少年奴隷がイェロードの肩を叩いて急かした。「さあ、早く。ぼくらはもう見ているけど、皆んなも見たがっているよ。鞭を抜くの手伝ってあげるから」
イェロードは、仰向けになって両膝を立てた。ソルブと少年奴隷が二手に岐れて膝裏を抱え、左右に展げる。男奴隷たちが、尻の前に群がった。
「これがシュードの……?」
「本当に尻のなかに収まっているのか?」
「イェロード、早く見せてくれ」
男奴隷たちは口々に云った。それが過度な反応でないことは、イェロードにも容易に理解できた。彼らはただ驚いているのだ。自分がシュードと交わったこと。そしてその証が尻のなかにあることを。
イェロードは、太腿の裏から両手を回してシュードの尻尾を掴んだ。
「あ……ああっ……」
尻のちからを抜こうとする。頭のなかではわかっているが、からだが云うことを聞かない。イェロードのペニスがびくんと震える。その拍子にガラスの小瓶が揺れて、鈴のような涼しい音を鳴らせた。
するとソルブの手がイェロードのペニスを包み込んだ。イェロードは、あっ、と声をあげて腰を泛かせる。ソルブがイェロードのペニスをゆったりと扱きながら、
「皆んなに見られて悦んでいるのか?」
と訊いた。
「あ……あ……ふ、ふぅ……」
誰もが固唾を飲んでイェロードを見ている。イェロードは恥ずかしくて堪らなかった。しかし同時にこれをやり遂げなければと思った。
「……あっあっあっ……はうっ!」
ずるり。
ずるり。
少しずつ鞭の柄が引き出されてゆく。
イェロードは固く目を閉じて、尻に意識を集中させた。鞭の柄はすでに、その根元が手で掴めるほどまでに出ている。イェロードは、根元に手を移した。
——このくらいのこと……恥ずかしくなんかない……。
イェロードはシュードを思った。
初めて出会ったとき——あのときはエシフと呼ばれていた——、シュードは極々小さな腰布を着させられていた。そのせいでペニスも尻もほとんど丸見えの状態だった。けれどもシュードは、その辱めを跳ね返すほどに堂々としていた。それだけではない。余興として大勢の人たちの目の前で、女奴隷と交わることさえやってのけた……。
——あの辱めに比べたら……。ぼくはただ横に寝て、裸かを見せているだけだ……。
ずるっ。
ずるずるっ。
男奴隷たちの声が、鷗たちの唄のように遠くから聴こえてくる。
「まだ出てくるぞ」
「前に来たアルカスとかいう隣国の王子は、この半分もいかなかったらしいぜ」
「大したもんだ」
こうした声は、実際には野卑な囃し立てのようなものであったが、今のイェロードには心からの称賛のように響いた。
あとひと息だ。残すは、シュードの異教徒の徴を象った、あのプラムのようなふくらみだけ。イェロードは呼吸を整えた。
括れの部分が肛門の肉の輪っかに引っかかる。引いては戻し、引いては戻しをくり返す。鞭の柄を引くたびに肉の輪っかが大きく広げられ、こんもりとせりあがる。
「あああ……ああっ……」
肉の輪っかから全身に快感が疾る。じんじんとした響きが、尻の奥から背筋を一気に疾って脳天に達する。からだじゅうから汗が噴き出し、内腿がぴくぴくと震える。呼吸も荒くなり、堪らず身を捩らせる。
ソルブが野太い声で云った。
「さあ、イェロード。一気に抜くんだ」
「……ふぅ、ふぅ……くっ……ああっ——」
鞭の柄がすぽんと抜けた。ぱっくりと開いた尻の唇が地下のひんやりとした空気に触れて、きゅっと窄まった。しかし息を荒げているせいで顔の唇からは十分に呼吸のできないイェロードのために、尻の唇がそこからも呼吸をするかのように大きく開いた。
「ほう——」
男奴隷たちの上げた歓声が、地下の壁に海鳴りのように低く反響した。それは、もう野卑な囃し立てなどではなかった。イェロードが、シュードのペニスを象った鞭の柄を、根元まで完全に尻のなかに収めていたことに対する歓声だった。シュードの、あの長大でふと太しいペニスの彫像と、それを飲みこんだイェロードの尻の孔が、彼らを驚かせたのだった。
「これがシュードの道か……」
「おい、退いてくれ。よく見えないじゃないか」
「ひとりずつ交代で見ようぜ」
男奴隷たちはこう云って、代わる代わるイェロードの尻の前に屈み込み、シュードの作った道がそこにあるのを確認してため息を吐いた。彼らは、シュードの鞭の柄をすっぽりと飲みこんだ尻の孔を、おそらくは、はじめて目にするのだった。ふぅ、と尻の孔に息を吹き込む者がいた。すると海風が洞窟に流れ込むときの、轟という音が鳴った。それを聞いて、男奴隷たちはますます驚嘆した。
イェロードは、何か自分が崇高なことを成し遂げたような気持ちになった。男奴隷たちが、待ち望んでいた存在の到来を祝うようにイェロードを歓迎し、褒め称えている。自分がノモクだったときに男奴隷のエシフに憧れていたように、イェロードとなった今、自分は男奴隷たちの羨望の的となっていたのだった。
——ああ、シュード……。
イェロードの目から、一条の涙が溢れて流れおちた。
「ここで?」イェロードは訊いた。
「ああ、そうだ」ソルブは落ち着きはらった口調で応えた。「シュードの道を見せてやれ」
少年奴隷がイェロードの肩を叩いて急かした。「さあ、早く。ぼくらはもう見ているけど、皆んなも見たがっているよ。鞭を抜くの手伝ってあげるから」
イェロードは、仰向けになって両膝を立てた。ソルブと少年奴隷が二手に岐れて膝裏を抱え、左右に展げる。男奴隷たちが、尻の前に群がった。
「これがシュードの……?」
「本当に尻のなかに収まっているのか?」
「イェロード、早く見せてくれ」
男奴隷たちは口々に云った。それが過度な反応でないことは、イェロードにも容易に理解できた。彼らはただ驚いているのだ。自分がシュードと交わったこと。そしてその証が尻のなかにあることを。
イェロードは、太腿の裏から両手を回してシュードの尻尾を掴んだ。
「あ……ああっ……」
尻のちからを抜こうとする。頭のなかではわかっているが、からだが云うことを聞かない。イェロードのペニスがびくんと震える。その拍子にガラスの小瓶が揺れて、鈴のような涼しい音を鳴らせた。
するとソルブの手がイェロードのペニスを包み込んだ。イェロードは、あっ、と声をあげて腰を泛かせる。ソルブがイェロードのペニスをゆったりと扱きながら、
「皆んなに見られて悦んでいるのか?」
と訊いた。
「あ……あ……ふ、ふぅ……」
誰もが固唾を飲んでイェロードを見ている。イェロードは恥ずかしくて堪らなかった。しかし同時にこれをやり遂げなければと思った。
「……あっあっあっ……はうっ!」
ずるり。
ずるり。
少しずつ鞭の柄が引き出されてゆく。
イェロードは固く目を閉じて、尻に意識を集中させた。鞭の柄はすでに、その根元が手で掴めるほどまでに出ている。イェロードは、根元に手を移した。
——このくらいのこと……恥ずかしくなんかない……。
イェロードはシュードを思った。
初めて出会ったとき——あのときはエシフと呼ばれていた——、シュードは極々小さな腰布を着させられていた。そのせいでペニスも尻もほとんど丸見えの状態だった。けれどもシュードは、その辱めを跳ね返すほどに堂々としていた。それだけではない。余興として大勢の人たちの目の前で、女奴隷と交わることさえやってのけた……。
——あの辱めに比べたら……。ぼくはただ横に寝て、裸かを見せているだけだ……。
ずるっ。
ずるずるっ。
男奴隷たちの声が、鷗たちの唄のように遠くから聴こえてくる。
「まだ出てくるぞ」
「前に来たアルカスとかいう隣国の王子は、この半分もいかなかったらしいぜ」
「大したもんだ」
こうした声は、実際には野卑な囃し立てのようなものであったが、今のイェロードには心からの称賛のように響いた。
あとひと息だ。残すは、シュードの異教徒の徴を象った、あのプラムのようなふくらみだけ。イェロードは呼吸を整えた。
括れの部分が肛門の肉の輪っかに引っかかる。引いては戻し、引いては戻しをくり返す。鞭の柄を引くたびに肉の輪っかが大きく広げられ、こんもりとせりあがる。
「あああ……ああっ……」
肉の輪っかから全身に快感が疾る。じんじんとした響きが、尻の奥から背筋を一気に疾って脳天に達する。からだじゅうから汗が噴き出し、内腿がぴくぴくと震える。呼吸も荒くなり、堪らず身を捩らせる。
ソルブが野太い声で云った。
「さあ、イェロード。一気に抜くんだ」
「……ふぅ、ふぅ……くっ……ああっ——」
鞭の柄がすぽんと抜けた。ぱっくりと開いた尻の唇が地下のひんやりとした空気に触れて、きゅっと窄まった。しかし息を荒げているせいで顔の唇からは十分に呼吸のできないイェロードのために、尻の唇がそこからも呼吸をするかのように大きく開いた。
「ほう——」
男奴隷たちの上げた歓声が、地下の壁に海鳴りのように低く反響した。それは、もう野卑な囃し立てなどではなかった。イェロードが、シュードのペニスを象った鞭の柄を、根元まで完全に尻のなかに収めていたことに対する歓声だった。シュードの、あの長大でふと太しいペニスの彫像と、それを飲みこんだイェロードの尻の孔が、彼らを驚かせたのだった。
「これがシュードの道か……」
「おい、退いてくれ。よく見えないじゃないか」
「ひとりずつ交代で見ようぜ」
男奴隷たちはこう云って、代わる代わるイェロードの尻の前に屈み込み、シュードの作った道がそこにあるのを確認してため息を吐いた。彼らは、シュードの鞭の柄をすっぽりと飲みこんだ尻の孔を、おそらくは、はじめて目にするのだった。ふぅ、と尻の孔に息を吹き込む者がいた。すると海風が洞窟に流れ込むときの、轟という音が鳴った。それを聞いて、男奴隷たちはますます驚嘆した。
イェロードは、何か自分が崇高なことを成し遂げたような気持ちになった。男奴隷たちが、待ち望んでいた存在の到来を祝うようにイェロードを歓迎し、褒め称えている。自分がノモクだったときに男奴隷のエシフに憧れていたように、イェロードとなった今、自分は男奴隷たちの羨望の的となっていたのだった。
——ああ、シュード……。
イェロードの目から、一条の涙が溢れて流れおちた。
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