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第六章 ぼくの名は——イェロード
7 壁の向う側
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エークと別れ、角を右に曲がったところで、イェロードはとうとう崩れ落ちてしまった。もうこれ以上歩けそうにない。尻のなかが疼き、精を洩らしそうになっている。睾丸は張りつめ、ペニスは戦慄いていた。内股が震え、ガラスの小瓶がガチャガチャと鳴った。
ソルブがイェロードを抱えあげ、
「楽にしてやろう」
と云い、すぐ近くにあった奴隷用の通用口まで運んでいった。奴隷たちは、急ぎの際には館内じゅうにある通用口を使って移動している。あとを追ってきた少年奴隷がその通用口を開けた。
地下へ続く階段が現れた。三人はそこを降りていった。なかは暗く冷んやりとしていて、灯りとては壁の隙間から洩れてくる光だけだった。
階段を降りきったところでソルブが云った。「さあ、イェロード。そこの壁に両手をつけ」
イェロードは、ふうふうと喘ぎながら従った。
少年奴隷が背後に立った。尻からエシフの鞭の柄を抜き、そしてペニスと睾丸に巻きつけられていた革紐をほどいた。彼はイェロードに、
「何があっても凝っとしているんだよ」
となだめるように声を掛け、屹立したペニスと張りつめた睾丸をやさしく揉みほぐした。
「あうっ……あ、ああ——」
イェロードはくぐもった声を頭巾のなかで上げ、壁に凭れかかった。
ソルブが云った。「この壁の向うには、女の使用人たちの秘密の小部屋があるんだ」
秘密の小部屋……?
少年奴隷の愛撫の手が離れ、ついでソルブがイェロードの背後に立った。ソルブは、イェロードの股間と壁のあいだにある小窓のようなものを引き開けた。そしてイェロードの両手首を掴んで吊りあげ、両脚を展かせて高さを調節すると、後ろから全身をぐっと押しつけてイェロードのペニスと睾丸を、壁の向うに送りこんだ。
な、何が始まるの……?
イェロードは生唾をゴクリと飲みこんだ。
ソルブが耳許で囁いた。「安心しろ。誰もおまえが王子だとは思わない」
イェロードは少しずつ状況がわかってきた。この館で働く女の使用人たちは——ある者は気まぐれに、またある者はひとときの休息に——壁の向うの秘密の小部屋にふらりと降りてきて、運が良ければこうして男奴隷の性器を楽しんでいるのだろう。淫らな国の、淫らな女たちの、淫らなたしなみとして。
気づけば少年奴隷も、少し離れたところで壁の小窓に腰を押しつけていた。
ソルブが落ち着き払った口調で云った。「この上には衣装部屋がある。そこで働いている女の使用人たちを覚えているか? そのなかの誰かがこっそり降りてきて、ここでしっぽり楽しむというわけだ。この館には、こうした秘密の小部屋がいくつもある。女たちがいる部屋の凡てにな」
いろを好むローエらしく、女の使用人たちは、その誰もが容姿に恵まれていた。可憐な女、清楚な女、魅惑的な女——しかも彼女たちは皆、それなりの身分の、良家の子女たちだ。そのなかでも衣装部屋の女たちは、誰もが認める美女揃いだった。
「家政婦長じゃなければ誰でも好いや。ねえ、イェロード。そうだろう?」少年奴隷がイェロードに顔を向けて微笑んだ。「さあ、どっちが先に来るかな?」
イェロードは怖くなった。「衣装部屋なら、お針子だっているよね?」ソルブの顔を見上げる。
ソルブは、ふっ、と笑って、
「厨房の下にも秘密の小部屋があるぞ」
と云った。
イェロードは怯えた目でソルブを見た。
ソルブは淡々と続けた。「男奴隷を傷つけたら、その女には死が与えられることになっている。その昔、サーダという女の使用人が男奴隷のものを鋏で切りおとし、罰として海に投げ入れられたそうだ」
イェロードは目を固く閉じて額を壁に押しつけた。神に祈りたいと思った。しかし祈りを捧げるべき神は……。
ソルブの話は続く。
「俺も向う側に行ったことはないし、ここから向う側を覗きこんだこともないが、どうやらこの小窓のところだけ、秘密の小部屋の壁が深く抉れているらしい。なぜこう思うかと云うとだな——」
つぎの瞬間、イェロードのペニスの尖端が、生温かく湿ったものに包まれた。
「うっ……んんっ……くうっ……」
ぬめぬめとしたものが、剥きあげられたばかりの異教徒の徴にまとわりつく。イェロードの背筋を甘い痺れが疾った。思わず腰を引きそうになったが、ソルブに後ろから押さえつけられているので動けない。
「始まったようだな」ソルブが息を潜めて云った。「さあ、女を悦ばせてやれ。それが俺たち男奴隷の仕事だ」
イェロードは少年奴隷のほうを見た。腰を巧みに上下左右に動かしている。壁の向うにいる女を揶揄っているようだった。
少年奴隷が腰をひょいと引いた。屹立したペニスが小窓からすっと抜けた。すると白く細い手が壁の向うからぬっと伸びてきて、少年奴隷のペニスにその指を絡みつかせた。指は巧みに動き、少年奴隷は腰を揺らしてそれに応えた。やがて女の手は少年奴隷のペニスを逆手に握りしめ、ゆるゆると扱きたてながら壁の奥へと引きいれた。
少年奴隷は壁に腰を押しつけて、
「イェロード、こうするんだよ」
と云うが早いか、恍惚とした表情を泛べた。眉根を寄せ、目を閉じ、口をだらしなく開けて吐息を洩らす。
ソルブがそれを窘めた。「壁の向うの女を悦ばせろ」
そのひと言で、少年奴隷の顔つきが変わった。壁さえなければ、女を跪かせて奉仕させている若い男といった光景だ。
「イェロード、よく見ろ。おまえもあのようにするんだ」ソルブが腰を動かしはじめた。円を描きながらゆっくりと右回りと左回りをくり返す。イェロードの尻の谷間に、腰布越しではあるけれども、屹立したペニスが触れた。
「ん……っ……はあっ……」
誘い腰のお陰か、新たな刺戟が壁の向うから与えられた。陰嚢が、何かやわらかな道具で、さわさわと撫でられている。婦人用の羽飾りか何かだろう。その羽のように軽やかな感触が、陰嚢の表面を這いまわる。陰嚢の裏側を縦に疾る縫い目が何度も撫でられた。
泥濘に包まれたイェロードのペニスがいっそう熱り勃った。
「あっ……ん……っ……あぁっ……」
屹立したペニスが吸われ、張りつめた睾丸がくすぐられる。
ソルブが耳許に囁いた。「イェロード、おまえは今日、精を何度吐いたか覚えているか?」
イェロードはイヤイヤをするように顔を左右に振った。それよりも展げられた内股がひくついている。あの時が近づいていた。
「——これで四度目になるはずだ」ソルブが続けた。「王子の正体は、淫らな男だったわけだ」
「ち……が……っ……んっ……あ……」
「おまえには男娼の素質がある」
「……あっあっあっ……あぁっ!」
イェロードのなかで何かが弾けた。絶望のなかで彼は、腰の奥で堰き止められていたものが、ペニスのなかを、海嘯のように押しあがってくるのを感じた。
迸る——と思った。
ソルブがイェロードを抱えあげ、
「楽にしてやろう」
と云い、すぐ近くにあった奴隷用の通用口まで運んでいった。奴隷たちは、急ぎの際には館内じゅうにある通用口を使って移動している。あとを追ってきた少年奴隷がその通用口を開けた。
地下へ続く階段が現れた。三人はそこを降りていった。なかは暗く冷んやりとしていて、灯りとては壁の隙間から洩れてくる光だけだった。
階段を降りきったところでソルブが云った。「さあ、イェロード。そこの壁に両手をつけ」
イェロードは、ふうふうと喘ぎながら従った。
少年奴隷が背後に立った。尻からエシフの鞭の柄を抜き、そしてペニスと睾丸に巻きつけられていた革紐をほどいた。彼はイェロードに、
「何があっても凝っとしているんだよ」
となだめるように声を掛け、屹立したペニスと張りつめた睾丸をやさしく揉みほぐした。
「あうっ……あ、ああ——」
イェロードはくぐもった声を頭巾のなかで上げ、壁に凭れかかった。
ソルブが云った。「この壁の向うには、女の使用人たちの秘密の小部屋があるんだ」
秘密の小部屋……?
少年奴隷の愛撫の手が離れ、ついでソルブがイェロードの背後に立った。ソルブは、イェロードの股間と壁のあいだにある小窓のようなものを引き開けた。そしてイェロードの両手首を掴んで吊りあげ、両脚を展かせて高さを調節すると、後ろから全身をぐっと押しつけてイェロードのペニスと睾丸を、壁の向うに送りこんだ。
な、何が始まるの……?
イェロードは生唾をゴクリと飲みこんだ。
ソルブが耳許で囁いた。「安心しろ。誰もおまえが王子だとは思わない」
イェロードは少しずつ状況がわかってきた。この館で働く女の使用人たちは——ある者は気まぐれに、またある者はひとときの休息に——壁の向うの秘密の小部屋にふらりと降りてきて、運が良ければこうして男奴隷の性器を楽しんでいるのだろう。淫らな国の、淫らな女たちの、淫らなたしなみとして。
気づけば少年奴隷も、少し離れたところで壁の小窓に腰を押しつけていた。
ソルブが落ち着き払った口調で云った。「この上には衣装部屋がある。そこで働いている女の使用人たちを覚えているか? そのなかの誰かがこっそり降りてきて、ここでしっぽり楽しむというわけだ。この館には、こうした秘密の小部屋がいくつもある。女たちがいる部屋の凡てにな」
いろを好むローエらしく、女の使用人たちは、その誰もが容姿に恵まれていた。可憐な女、清楚な女、魅惑的な女——しかも彼女たちは皆、それなりの身分の、良家の子女たちだ。そのなかでも衣装部屋の女たちは、誰もが認める美女揃いだった。
「家政婦長じゃなければ誰でも好いや。ねえ、イェロード。そうだろう?」少年奴隷がイェロードに顔を向けて微笑んだ。「さあ、どっちが先に来るかな?」
イェロードは怖くなった。「衣装部屋なら、お針子だっているよね?」ソルブの顔を見上げる。
ソルブは、ふっ、と笑って、
「厨房の下にも秘密の小部屋があるぞ」
と云った。
イェロードは怯えた目でソルブを見た。
ソルブは淡々と続けた。「男奴隷を傷つけたら、その女には死が与えられることになっている。その昔、サーダという女の使用人が男奴隷のものを鋏で切りおとし、罰として海に投げ入れられたそうだ」
イェロードは目を固く閉じて額を壁に押しつけた。神に祈りたいと思った。しかし祈りを捧げるべき神は……。
ソルブの話は続く。
「俺も向う側に行ったことはないし、ここから向う側を覗きこんだこともないが、どうやらこの小窓のところだけ、秘密の小部屋の壁が深く抉れているらしい。なぜこう思うかと云うとだな——」
つぎの瞬間、イェロードのペニスの尖端が、生温かく湿ったものに包まれた。
「うっ……んんっ……くうっ……」
ぬめぬめとしたものが、剥きあげられたばかりの異教徒の徴にまとわりつく。イェロードの背筋を甘い痺れが疾った。思わず腰を引きそうになったが、ソルブに後ろから押さえつけられているので動けない。
「始まったようだな」ソルブが息を潜めて云った。「さあ、女を悦ばせてやれ。それが俺たち男奴隷の仕事だ」
イェロードは少年奴隷のほうを見た。腰を巧みに上下左右に動かしている。壁の向うにいる女を揶揄っているようだった。
少年奴隷が腰をひょいと引いた。屹立したペニスが小窓からすっと抜けた。すると白く細い手が壁の向うからぬっと伸びてきて、少年奴隷のペニスにその指を絡みつかせた。指は巧みに動き、少年奴隷は腰を揺らしてそれに応えた。やがて女の手は少年奴隷のペニスを逆手に握りしめ、ゆるゆると扱きたてながら壁の奥へと引きいれた。
少年奴隷は壁に腰を押しつけて、
「イェロード、こうするんだよ」
と云うが早いか、恍惚とした表情を泛べた。眉根を寄せ、目を閉じ、口をだらしなく開けて吐息を洩らす。
ソルブがそれを窘めた。「壁の向うの女を悦ばせろ」
そのひと言で、少年奴隷の顔つきが変わった。壁さえなければ、女を跪かせて奉仕させている若い男といった光景だ。
「イェロード、よく見ろ。おまえもあのようにするんだ」ソルブが腰を動かしはじめた。円を描きながらゆっくりと右回りと左回りをくり返す。イェロードの尻の谷間に、腰布越しではあるけれども、屹立したペニスが触れた。
「ん……っ……はあっ……」
誘い腰のお陰か、新たな刺戟が壁の向うから与えられた。陰嚢が、何かやわらかな道具で、さわさわと撫でられている。婦人用の羽飾りか何かだろう。その羽のように軽やかな感触が、陰嚢の表面を這いまわる。陰嚢の裏側を縦に疾る縫い目が何度も撫でられた。
泥濘に包まれたイェロードのペニスがいっそう熱り勃った。
「あっ……ん……っ……あぁっ……」
屹立したペニスが吸われ、張りつめた睾丸がくすぐられる。
ソルブが耳許に囁いた。「イェロード、おまえは今日、精を何度吐いたか覚えているか?」
イェロードはイヤイヤをするように顔を左右に振った。それよりも展げられた内股がひくついている。あの時が近づいていた。
「——これで四度目になるはずだ」ソルブが続けた。「王子の正体は、淫らな男だったわけだ」
「ち……が……っ……んっ……あ……」
「おまえには男娼の素質がある」
「……あっあっあっ……あぁっ!」
イェロードのなかで何かが弾けた。絶望のなかで彼は、腰の奥で堰き止められていたものが、ペニスのなかを、海嘯のように押しあがってくるのを感じた。
迸る——と思った。
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