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第六章 ぼくの名は——イェロード
6 修道士エークの秘密
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湯屋から部屋に戻ったとき、イェロードは姿見に映った自分の姿をちらりと見て、背筋が凍る思いをした。
確かに誰が見てもノモクだとはわからないだろう。白かった肌は浅黒くなり、清らかだったペニスはその尖端に異教徒の徴が刻まれ、灰を塗したかのように黒みを帯びている。ノモクは端くれとは云え、王族の一員だった。しかしその面影はない。すっかり奴隷のひとりになっていた。
イェロードは身震いした。立っていられなくなって、そのまま床にへたり込んでしまう。左右からソルブと少年奴隷がイェロードを抱えあげた。彼らはイェロードの腕をそれぞれ肩に掛け、膝裏を支え持って両脚を大きく展かせた。肛門が顕になった。それは綻びかけた真紅の薔薇のように見えた。
「これでわかっただろう。イェロード、おまえはもうノモクではない」背後に立ったシュードが指を三本束ねて肛門を撫でさすった。「わたしがおまえにエシフと呼ばれていたときなら、こう云っただろう」肛門に三指を捩じこんで掻きまわす。「王子、あなたを悦ばせることができて光栄です、とな」
イェロードはそれを聞いて、よりいっそう昂った。快楽に身を委ね、腰をうねらせる。股間にぶら下げたガラスの小瓶がぶつかりあって、涼やかな音を立てた。
少年奴隷が感慨深げに云った。「自分から腰を振っているなんて……」
「去年ここに来たアルカス王子よりも、快楽に素直なようだ」ソルブが云った。
「そのようだな」シュードが指を肛門から抜いた。「ほら。俺を欲しがって、下の唇をぱくぱくさせているじゃないか」
——ぼくは、どうしてこうなっちゃったんだろう……。
騎士になって国王である父と女王である母に、そして兄や姉たちに認めてもらおうと、これまでどんな冷遇にも耐えてきた。しかし、この国が性に乱れていることを識った今、それにどれほどの意味があるのかわからない。ここオシヤクでエシフと出会い、その美しい肉體を見た——。そうだった。あのときから凡てが変わりはじめたのだった。
シュードが扉のところへ行き、閂を外した。
ソルブと少年奴隷が抱えていたイェロードを下ろし、そして立たせた。イェロードは、前からソルブに手を引かれ、後ろから少年奴隷に背中を押されながら、扉のほうへ歩いていった。股間のガラスの小瓶が小気味よく鳴った。
「ああ、ゼーゲンにこれを」シュードが白濁液の詰まったガラスの小瓶をソルブに手渡した。「これで肉入りスープがもらえる。まさか第七王子の精だとは思うまい」
シュードが扉を開けかけて閉じた。「鞭はどこだ?」
少年奴隷があの鞭を手渡した。シュードはイェロードに扉に両手をつくように命じた。ソルブと少年奴隷が左右からイェロードの尻を割りひらき、シュードが鞭の柄をゆっくりと尻の孔に挿入した。
「精を漏らさぬよう気をつけて歩くんだな」尻尾を撫でながらシュードが云った。
ようやく扉が開けられた。
シュードは部屋に残り、ソルブと少年奴隷がイェロードと倶に廊下に出た。
三人は、先頭にソルブ、つぎにイェロード、その後ろに少年奴隷の順に並び、礼拝室へ続く廊下を進んだ。イェロードはソルブの肩に両手を、少年奴隷はイェロードの肩に両手を置いている。頭巾を深々とかぶり、前後からソルブと少年奴隷に挟まれているお陰で——股間を隠すことは出来なかったが——イェロードはさほど羞恥心を覚えずにすんだ。
——お願い、ソルブ。もっとゆっくり歩いて……。
歩みを進めるたびに尻のなかで鞭の柄が蠢き、甘やかな痺れを与えつづける。イェロードは、そろそろと歩くのがやっとだった。内股気味に歩けば、尻が大きく左右に揺れて、鞭の柄が尻のなかを、いっそう大きく搔きまわす。両脚を広げて歩けば、鞭を落とさないように肛門をきつく窄めるちからがペニスにも伝わり、その中心に鉄の棒が差しこまれたような気分になる。尻の奥にひそむ泉から、精がこんこんと湧きだしそうになっていた。
これ以上、歩けないとイェロードが絶望しかけたとき、前を歩くソルブが不意に立止まった。ソルブと少年奴隷はさっと壁に背をつけると、膝を折ってしゃがみこんで踵に尻を乗せ、両手を腰の後ろで組んだ。奴隷がする待機の姿勢だ。イェロードもすぐさまふたりを真似て、同じ姿勢を取った。三人は頭を下げて、凝っと時が過ぎるのを待った。
修道士エークの声が聞こえた。「あら。見かけない奴隷ね」しかし口調が異っていた。
「新しく来た者です。今朝、奴隷市場からご領主様が——」ソルブは動じることなくそこまで応え、その先は口を噤んだ。
「おやまあ。ローエ様のお見立てねえ……」
エークがイェロードの前でしゃがんだ。頭巾の隙間からエークの脚元が覗かれる。正体がばれはしないだろうか。イェロードは身を固めた。エークの手がすうっと伸びてきて、ガラスの小瓶を指先で弾き、チリンチリンと鳴らした。
エークが云った。「四つん這いになって、わたしに尻を向けなさい」
イェロードは言葉がわからないふりをした。するとエークはイェロードの尻に手をまわして抓った。「言葉がわからないの? 尻を見せなさいって云ってるのよ」
イェロードはぎこちなく動いて四つん這いになった。
「大人しくしてなさい」エークは尻尾の根元をつかんで一気に引きぬいた。「これは……ああ、エシフの鞭!」
そのときイェロードは、くぐもった声を洩らした。背筋を疾るゾクゾクした感覚と展ききった尻の孔を見られる羞恥を、なんとか堪えようとしたが、それが出来なかったのだ。イェロードは四つん這いのまま、ぶるぶると尻を震わせた。
「今朝、来たばかりで、もうエシフの鞭を飲みこむなんて——」エークは鞭の柄を肛門に戻し挿れながら云った。「男娼館でのお披露目の日には、客の前でエシフと交わらせるのも一興かしらね」
鞭の柄が戻された。
イェロードは、ふたたび待機の姿勢を取った。
「ところで、あなたたち。どこへ行こうとしていたの?」エークが訊いた。
ソルブがイェロードの精液が詰まったガラスの小瓶をエークに見せた。「これをゼーゲン様にお届けにあがろうと」
「まあ。あの坊やったら、まだエシフを拷問に掛けていたのね」エークはソルブの手からガラスの小瓶を取りあげた。
「はい。王子に呼ばれたときに預かりました」ソルブは平然と嘘をついた。「それがみっつ目とのことです」
エークが鼻を、ふんっ、と鳴らした。「これはわたしが預かります。あなたたちは厨房に行きなさい。厨房に新しい料理人が来ているの。それで家政婦長がお毒見役を探しているみたいよ」
確かに誰が見てもノモクだとはわからないだろう。白かった肌は浅黒くなり、清らかだったペニスはその尖端に異教徒の徴が刻まれ、灰を塗したかのように黒みを帯びている。ノモクは端くれとは云え、王族の一員だった。しかしその面影はない。すっかり奴隷のひとりになっていた。
イェロードは身震いした。立っていられなくなって、そのまま床にへたり込んでしまう。左右からソルブと少年奴隷がイェロードを抱えあげた。彼らはイェロードの腕をそれぞれ肩に掛け、膝裏を支え持って両脚を大きく展かせた。肛門が顕になった。それは綻びかけた真紅の薔薇のように見えた。
「これでわかっただろう。イェロード、おまえはもうノモクではない」背後に立ったシュードが指を三本束ねて肛門を撫でさすった。「わたしがおまえにエシフと呼ばれていたときなら、こう云っただろう」肛門に三指を捩じこんで掻きまわす。「王子、あなたを悦ばせることができて光栄です、とな」
イェロードはそれを聞いて、よりいっそう昂った。快楽に身を委ね、腰をうねらせる。股間にぶら下げたガラスの小瓶がぶつかりあって、涼やかな音を立てた。
少年奴隷が感慨深げに云った。「自分から腰を振っているなんて……」
「去年ここに来たアルカス王子よりも、快楽に素直なようだ」ソルブが云った。
「そのようだな」シュードが指を肛門から抜いた。「ほら。俺を欲しがって、下の唇をぱくぱくさせているじゃないか」
——ぼくは、どうしてこうなっちゃったんだろう……。
騎士になって国王である父と女王である母に、そして兄や姉たちに認めてもらおうと、これまでどんな冷遇にも耐えてきた。しかし、この国が性に乱れていることを識った今、それにどれほどの意味があるのかわからない。ここオシヤクでエシフと出会い、その美しい肉體を見た——。そうだった。あのときから凡てが変わりはじめたのだった。
シュードが扉のところへ行き、閂を外した。
ソルブと少年奴隷が抱えていたイェロードを下ろし、そして立たせた。イェロードは、前からソルブに手を引かれ、後ろから少年奴隷に背中を押されながら、扉のほうへ歩いていった。股間のガラスの小瓶が小気味よく鳴った。
「ああ、ゼーゲンにこれを」シュードが白濁液の詰まったガラスの小瓶をソルブに手渡した。「これで肉入りスープがもらえる。まさか第七王子の精だとは思うまい」
シュードが扉を開けかけて閉じた。「鞭はどこだ?」
少年奴隷があの鞭を手渡した。シュードはイェロードに扉に両手をつくように命じた。ソルブと少年奴隷が左右からイェロードの尻を割りひらき、シュードが鞭の柄をゆっくりと尻の孔に挿入した。
「精を漏らさぬよう気をつけて歩くんだな」尻尾を撫でながらシュードが云った。
ようやく扉が開けられた。
シュードは部屋に残り、ソルブと少年奴隷がイェロードと倶に廊下に出た。
三人は、先頭にソルブ、つぎにイェロード、その後ろに少年奴隷の順に並び、礼拝室へ続く廊下を進んだ。イェロードはソルブの肩に両手を、少年奴隷はイェロードの肩に両手を置いている。頭巾を深々とかぶり、前後からソルブと少年奴隷に挟まれているお陰で——股間を隠すことは出来なかったが——イェロードはさほど羞恥心を覚えずにすんだ。
——お願い、ソルブ。もっとゆっくり歩いて……。
歩みを進めるたびに尻のなかで鞭の柄が蠢き、甘やかな痺れを与えつづける。イェロードは、そろそろと歩くのがやっとだった。内股気味に歩けば、尻が大きく左右に揺れて、鞭の柄が尻のなかを、いっそう大きく搔きまわす。両脚を広げて歩けば、鞭を落とさないように肛門をきつく窄めるちからがペニスにも伝わり、その中心に鉄の棒が差しこまれたような気分になる。尻の奥にひそむ泉から、精がこんこんと湧きだしそうになっていた。
これ以上、歩けないとイェロードが絶望しかけたとき、前を歩くソルブが不意に立止まった。ソルブと少年奴隷はさっと壁に背をつけると、膝を折ってしゃがみこんで踵に尻を乗せ、両手を腰の後ろで組んだ。奴隷がする待機の姿勢だ。イェロードもすぐさまふたりを真似て、同じ姿勢を取った。三人は頭を下げて、凝っと時が過ぎるのを待った。
修道士エークの声が聞こえた。「あら。見かけない奴隷ね」しかし口調が異っていた。
「新しく来た者です。今朝、奴隷市場からご領主様が——」ソルブは動じることなくそこまで応え、その先は口を噤んだ。
「おやまあ。ローエ様のお見立てねえ……」
エークがイェロードの前でしゃがんだ。頭巾の隙間からエークの脚元が覗かれる。正体がばれはしないだろうか。イェロードは身を固めた。エークの手がすうっと伸びてきて、ガラスの小瓶を指先で弾き、チリンチリンと鳴らした。
エークが云った。「四つん這いになって、わたしに尻を向けなさい」
イェロードは言葉がわからないふりをした。するとエークはイェロードの尻に手をまわして抓った。「言葉がわからないの? 尻を見せなさいって云ってるのよ」
イェロードはぎこちなく動いて四つん這いになった。
「大人しくしてなさい」エークは尻尾の根元をつかんで一気に引きぬいた。「これは……ああ、エシフの鞭!」
そのときイェロードは、くぐもった声を洩らした。背筋を疾るゾクゾクした感覚と展ききった尻の孔を見られる羞恥を、なんとか堪えようとしたが、それが出来なかったのだ。イェロードは四つん這いのまま、ぶるぶると尻を震わせた。
「今朝、来たばかりで、もうエシフの鞭を飲みこむなんて——」エークは鞭の柄を肛門に戻し挿れながら云った。「男娼館でのお披露目の日には、客の前でエシフと交わらせるのも一興かしらね」
鞭の柄が戻された。
イェロードは、ふたたび待機の姿勢を取った。
「ところで、あなたたち。どこへ行こうとしていたの?」エークが訊いた。
ソルブがイェロードの精液が詰まったガラスの小瓶をエークに見せた。「これをゼーゲン様にお届けにあがろうと」
「まあ。あの坊やったら、まだエシフを拷問に掛けていたのね」エークはソルブの手からガラスの小瓶を取りあげた。
「はい。王子に呼ばれたときに預かりました」ソルブは平然と嘘をついた。「それがみっつ目とのことです」
エークが鼻を、ふんっ、と鳴らした。「これはわたしが預かります。あなたたちは厨房に行きなさい。厨房に新しい料理人が来ているの。それで家政婦長がお毒見役を探しているみたいよ」
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