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第五章 寝台の神話
4 祝福の口吻(くちづけ)【絡み:エシフxノモク】
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ノモクがこれから始まることを想像して、ごくりと唾を飲みこんだ直後だった。エシフが彼の腰布を拾いあげた。ノモクがそれを目にしたつぎの瞬間には、両手首が交叉され腰布が巻きつけられていた。
あっという間の出来事だった。
エシフは慣れた手つきで縛りあげると、ノモクの両腕を頭のうえにもたげさせ、腰布の両端を飾り棚の中央にある鉄の輪にくぐらせて結びつけた。
「脚も縛りましょうか?」エシフが太い声で訊いた。
ノモクは恐怖で声が出なかった。ただ頭を横に振るのがやっとだった。両脚を閉じなければと気づいたときには、しかし太腿のあいだにエシフが太い膝を辷りこませていた。
「エシフ……。いやだ……」ノモクは懇願した。両脚が膝で折られる。エシフの両腕に支えられた腰がゆっくりと持ちあげられる。「あっ……あっ……」エシフの厚い胸板に腰が支えられる。ノモクは頭を横に振った。エシフの両手によって尻がふたつに割り展げられる。「ああっ……エシフ……」
「もっと明るいところで見たいものですね」エシフの目が、尻の谷間にぽつんと置かれた肉の蕾に注がれている。「カーテンを開けましょう」
エシフが腕を伸ばして紐を引きおろした。天蓋のカーテンが左右に開く。
エシフはノモクの姿勢をもとに戻して寝台から降り、ランプに火を灯すと、それを手に戻ってきて、寝台の頭側の壁に掛けた。そしてもう一度、ノモクの腰をすくいあげ、両手でノモクの尻をふたつに割った。
「わたしは、この可憐な花のなかに這入っていたのですね」
ノモクは恥じの部分を見られたくなくて身を捩らせた。しかし無駄な抵抗だった。エシフがシーツのうえに溢れていた砂糖菓子をひとつ、そこへ埋めこんだ。
ノモクはうめき声を上げた。腰の奥が次第に熱くなってくる。まるで火種を尻の孔から挿しこまれ、それが腰の奥でちろちろと燃えているような感じだった。
エシフは、ノモクのようすをしばらく見下ろし、それからゆっくりとノモクの腰を降ろした。すでにノモクは、あられも無い姿で悶えている。彼は両膝を立てる力も無く、しどけなく両脚を展げ、その央のぺニスを屹立させていた。
エシフが云った。
「祝福の口吻をしてさしあげましょう」そして身を屈めながら顔を降ろしてゆく。「あなたがわたしにしたように、この肌のすべてに」ノモクの顔を覗きこむ。「さあ、わたしの名を呼ぶのです。あなたの神の名を」
「エシ、フ」
ノモクは目を閉じた。唇にエシフの唇が触れるのを感じた。軽い口吻だ。しかも、やわらかい花びらがそっと乗ったような感触だった。
唇が離れた。
「女と口吻を交わしたことは?」
「あいさつ代わりの口吻なら」
エシフは何も云わず、もう一度唇を重ねてきた。
これは……。エシフの唇はとてもやわらかくて、ノモクはその感触にすっかり酔いしれてしまった。エシフはたくましい肉體を持っていて、あの長大なペニスに至っては、硬く燃えるような熱を発していた。けれどもエシフの唇は、やわらかく、人肌の温もりがある。こんなことってあるだろうか。エシフが唇をそっと動かした。つぎは……。下唇をエシフの唇がはさんだ。やさしく引っぱられる。閉じていた唇がほんの少し開かれる。
「あっ」
突然、エシフの唇が離れた。もう少し口吻の感触を味わいたいと思っていたのに……。
「エボーイ・オワノニーカム」厳かな声が降りてきた。
「エシフ……」ノモクは、その名を口にした。
「おまえに祝福を授けよう」
唇と唇が重なりあった。エシフの唇が少し開き、ノモクの閉じた唇をエシフの舌が割る。ノモクは祝福を受けるために唇のちからを抜いた。エシフの舌は、まずノモクの上歯の裏をゆっくりとなぞった。右から左に、そして左から右に……。ノモクは焦ったくなって、自分から舌を伸ばした。早く祝福を。
エシフの舌先が、ようやくノモクの舌先に触れたので、ノモクは顔をもっと近づけようとした。上背があり強靭な肉體のエシフ。勇敢な漁師、美しい奴隷、そして男のなかの男。そんな彼が、ノモクの神となって祝福の口吻を授けてくれている。
ノモクは両手が縛られているのがもどかしかった。その見事な裸身にすがりつきたい、隅々に手を触れたい、と思った。もう、男同士で、などという恐れはなかった。
エシフの唇が呼吸のためにほんの一瞬だけ離れ、また口吻が始まった。ノモクは唇を大きく展いてエシフを迎えいれた。エシフの舌がやわらかく絡みついてきて、ノモクは天に導かれるような心地がした。
これが本当の口吻なんだ……。ノモクは、ゼーゲンに授けられた祝福の口吻を、記憶から消してしまいたいと思った。あれは頬への口吻だった。祭服を着ていた。けれどもゼーゲンから祝福を受けるたびに身も心もこわばるのを感じていた。あれは神への畏敬から来るものだと納得していた。しかしそうでは無かった。
エシフの舌が、ノモクの舌をやさしく愛撫する。それにあわせてエシフが少しずつ裸身を降ろしてきた。潮の香がノモクのうえに降りそそぐ。ノモクは両脚をエシフの腰に巻きつけた。ペニスとペニスが重なりあう。唇への口吻、祭服のない素裸かの抱擁。これこそが本当の口吻なのだ。
ノモクは腰を揺らして、ペニスとペニスをこすりあわせた。はじめは小波のようにそっと揺らしていたが、気づけば荒波のように大きくうねらせていた。腰の奥に快楽の源泉のようなものがあって、それがノモクのペニスに熱く沸るものを送りだそうとして……。
そのときだった。
エシフが口吻をやめ、受けとめていたあの肉體の重みが消えた。ノモクは、ぼんやりと目を開けた。顔を起こすと、膝と膝のあいだでエシフが膝立ちになっていた。エシフのペニスが鐘楼のように聳え立っている。ずっしりと重たそうな睾丸が、陰嚢のなかで左右交互に上下する。
「エボーイ・オワノニーカム」
「……エシフ」
「わたしのすることを受けとれと云ったはずだ」
「あ……」
エシフは、もう性奴隷ではなかった。
あっという間の出来事だった。
エシフは慣れた手つきで縛りあげると、ノモクの両腕を頭のうえにもたげさせ、腰布の両端を飾り棚の中央にある鉄の輪にくぐらせて結びつけた。
「脚も縛りましょうか?」エシフが太い声で訊いた。
ノモクは恐怖で声が出なかった。ただ頭を横に振るのがやっとだった。両脚を閉じなければと気づいたときには、しかし太腿のあいだにエシフが太い膝を辷りこませていた。
「エシフ……。いやだ……」ノモクは懇願した。両脚が膝で折られる。エシフの両腕に支えられた腰がゆっくりと持ちあげられる。「あっ……あっ……」エシフの厚い胸板に腰が支えられる。ノモクは頭を横に振った。エシフの両手によって尻がふたつに割り展げられる。「ああっ……エシフ……」
「もっと明るいところで見たいものですね」エシフの目が、尻の谷間にぽつんと置かれた肉の蕾に注がれている。「カーテンを開けましょう」
エシフが腕を伸ばして紐を引きおろした。天蓋のカーテンが左右に開く。
エシフはノモクの姿勢をもとに戻して寝台から降り、ランプに火を灯すと、それを手に戻ってきて、寝台の頭側の壁に掛けた。そしてもう一度、ノモクの腰をすくいあげ、両手でノモクの尻をふたつに割った。
「わたしは、この可憐な花のなかに這入っていたのですね」
ノモクは恥じの部分を見られたくなくて身を捩らせた。しかし無駄な抵抗だった。エシフがシーツのうえに溢れていた砂糖菓子をひとつ、そこへ埋めこんだ。
ノモクはうめき声を上げた。腰の奥が次第に熱くなってくる。まるで火種を尻の孔から挿しこまれ、それが腰の奥でちろちろと燃えているような感じだった。
エシフは、ノモクのようすをしばらく見下ろし、それからゆっくりとノモクの腰を降ろした。すでにノモクは、あられも無い姿で悶えている。彼は両膝を立てる力も無く、しどけなく両脚を展げ、その央のぺニスを屹立させていた。
エシフが云った。
「祝福の口吻をしてさしあげましょう」そして身を屈めながら顔を降ろしてゆく。「あなたがわたしにしたように、この肌のすべてに」ノモクの顔を覗きこむ。「さあ、わたしの名を呼ぶのです。あなたの神の名を」
「エシ、フ」
ノモクは目を閉じた。唇にエシフの唇が触れるのを感じた。軽い口吻だ。しかも、やわらかい花びらがそっと乗ったような感触だった。
唇が離れた。
「女と口吻を交わしたことは?」
「あいさつ代わりの口吻なら」
エシフは何も云わず、もう一度唇を重ねてきた。
これは……。エシフの唇はとてもやわらかくて、ノモクはその感触にすっかり酔いしれてしまった。エシフはたくましい肉體を持っていて、あの長大なペニスに至っては、硬く燃えるような熱を発していた。けれどもエシフの唇は、やわらかく、人肌の温もりがある。こんなことってあるだろうか。エシフが唇をそっと動かした。つぎは……。下唇をエシフの唇がはさんだ。やさしく引っぱられる。閉じていた唇がほんの少し開かれる。
「あっ」
突然、エシフの唇が離れた。もう少し口吻の感触を味わいたいと思っていたのに……。
「エボーイ・オワノニーカム」厳かな声が降りてきた。
「エシフ……」ノモクは、その名を口にした。
「おまえに祝福を授けよう」
唇と唇が重なりあった。エシフの唇が少し開き、ノモクの閉じた唇をエシフの舌が割る。ノモクは祝福を受けるために唇のちからを抜いた。エシフの舌は、まずノモクの上歯の裏をゆっくりとなぞった。右から左に、そして左から右に……。ノモクは焦ったくなって、自分から舌を伸ばした。早く祝福を。
エシフの舌先が、ようやくノモクの舌先に触れたので、ノモクは顔をもっと近づけようとした。上背があり強靭な肉體のエシフ。勇敢な漁師、美しい奴隷、そして男のなかの男。そんな彼が、ノモクの神となって祝福の口吻を授けてくれている。
ノモクは両手が縛られているのがもどかしかった。その見事な裸身にすがりつきたい、隅々に手を触れたい、と思った。もう、男同士で、などという恐れはなかった。
エシフの唇が呼吸のためにほんの一瞬だけ離れ、また口吻が始まった。ノモクは唇を大きく展いてエシフを迎えいれた。エシフの舌がやわらかく絡みついてきて、ノモクは天に導かれるような心地がした。
これが本当の口吻なんだ……。ノモクは、ゼーゲンに授けられた祝福の口吻を、記憶から消してしまいたいと思った。あれは頬への口吻だった。祭服を着ていた。けれどもゼーゲンから祝福を受けるたびに身も心もこわばるのを感じていた。あれは神への畏敬から来るものだと納得していた。しかしそうでは無かった。
エシフの舌が、ノモクの舌をやさしく愛撫する。それにあわせてエシフが少しずつ裸身を降ろしてきた。潮の香がノモクのうえに降りそそぐ。ノモクは両脚をエシフの腰に巻きつけた。ペニスとペニスが重なりあう。唇への口吻、祭服のない素裸かの抱擁。これこそが本当の口吻なのだ。
ノモクは腰を揺らして、ペニスとペニスをこすりあわせた。はじめは小波のようにそっと揺らしていたが、気づけば荒波のように大きくうねらせていた。腰の奥に快楽の源泉のようなものがあって、それがノモクのペニスに熱く沸るものを送りだそうとして……。
そのときだった。
エシフが口吻をやめ、受けとめていたあの肉體の重みが消えた。ノモクは、ぼんやりと目を開けた。顔を起こすと、膝と膝のあいだでエシフが膝立ちになっていた。エシフのペニスが鐘楼のように聳え立っている。ずっしりと重たそうな睾丸が、陰嚢のなかで左右交互に上下する。
「エボーイ・オワノニーカム」
「……エシフ」
「わたしのすることを受けとれと云ったはずだ」
「あ……」
エシフは、もう性奴隷ではなかった。
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