[R-18] 奴隷のレッスン:騎士団所属の末っ子王子は、イケメン奴隷に身も心も奪われる

山葉らわん

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第四章 土用波

4 眠れる奴隷

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 エークが礼拝室に残ると云ったので、ノモクはひとり部屋に戻ることにした。食堂に立寄って、使用人に朝のお祈りが済んだことを伝え、そこで教えてもらった部屋に戻る近道である渡り廊下を歩いた。
 窓ごしに風に揺れる樹々の枝が見えた。近づいて外の様子を窺うと、薄く濁ったような雲の筋肉が空一面を覆っている。エークの云うように雨が降りそうだ。ノモクは部屋へ急いだ。ふしぎなことに、部屋に着くまで誰にも会わなかった。
 部屋は、昨夜の一部始終がそのまま残っているような空気感に包まれていた。ノモクはカーテンを開け、換気用の小窓を開けた。曇り空の陰鬱な明かりが部屋に注ぎ、湿った海風が部屋を犯す。ノモクは部屋のランプの幾つかに火を灯し、旅行鞄から乾燥させた花びらを取りだして床にまいた。これで少しはマシになるだろう。
 こうしてひとまずの取り繕いを済ませ、ノモクは壁際の長椅子に腰を下ろした。胸のかくしから砂糖菓子の包みと拷問の手引き書を取り出して小机のうえに置き、それから礼拝用の上衣を脱いで顔をあげた。
 視線の先に天蓋に覆われた寝台がひっそりと眠っている。エシフはどうしているだろう。ノモクは立上って寝台に歩み寄ろうとした。しかし、まだすべきことが残っていた。床には拷問道具が散らばっている。土いろをした魔法陣の絨毯も敷かれたままだった。
 ノモクは急いで拷問道具を拾い集め、魔方陣の絨毯と一緒にフットベンチのなかに隠した。
「エシフ、起きているかい?」
 ベッドの右側に回り、カーテンをほんの少し開けてから、こう声をかけた。
 返事はなかった。
 ノモクは寝台へ歩みよった。天蓋をほんの少しだけ持ちあげ、寝台に辷りこむ。果たしてエシフは、ノモクが部屋を出たときのまま、仰向けに寝ていた。
「エシフ、起きて」ノモクは、エシフの左肩をそっと揺すった。「もうすぐ食事が運ばれてくるんだ。一緒に食べようよ」
 無反応だった。
 砂糖菓子の効き目が強すぎたのだろうか。ノモクは心配になって、エシフの左胸に右耳を宛て、そっと目を閉じた。心臓は動いている。ちから強い鼓動がノモクの耳を通して全身に広がる。硬く弾力のある胸板から発せられる温もりが、ノモクの頬にじんわりと馴染んでゆく。気づけば、左手がエシフの右胸のうえに置かれていた。
「ああ、エシフ……」
 ノモクは、エシフの肉の温もりと感触を味わった。そのたくましい胸に頬ずりをし、手のひらを辷らせた。ときどき指の先にそこだけちがう肌の硬さを感じる。何だろうと顔をあげてそこに目を遣ると、親指の腹が乳暈に触れていた。ノモクはその中心にある乳首のうえに人差し指を置いた。
 そのとき、エシフが目の前で披露した女との交わりが思い起こされた。エシフの指と舌が、女の乳首を掘り起こし、真珠のような形を作ったのだった。あれは女の乳首だったが、男もそうなるのだろうか。
 ノモクは指の腹で右の乳首を撫で、左の乳首を乳暈ごと口に含んで舌先を這わせた。ほどなくして指の腹に硬い肉の粒を感じ、同時にエシフの肌の味が口のなかに広がった。
 ――あなたはエシフの誘惑に打ち勝ちました……。
 脳裏でエークの言葉がくり返された。
 ノモクは、ハッとして愛撫をやめた。
 エシフは眠ったままだった。
 ノモクは、行き場を失った左手を宙で泳がせたまま、もう一度左胸に耳を宛てた。目を閉じて耳を澄ますと、鼓動はさっきと変わらず堂々としたちから強さを保っていた。
 反対にノモクの心臓は早鐘を打っている。息も荒くなっている。エシフの肉體に魅せられ、夢見心地でうっとりとした気分になっているのが自分でもわかった。
 ノモクは夢から覚めなければと目を開いた。エシフのペニスが目の前にあった。それは長大だった。屹立して腹に張りつくように雄々しく横たわり、剥き出しの尖端は臍の位置より手前にあった。宙を泳いでいた左手は、自然とそこへ伸びた。
 ――あなたはエシフの誘惑に打ち勝ちました……。
 脳裏でエークのあの言葉がふたたびくり返された。
 しかしノモクはエシフのペニスを握った。迷いも躊躇いもなかった。ただ好奇と畏敬があるだけだった。
 腹に戻ろうとする抵抗を指に感じながら、ノモクはエシフのペニスを起きあがらせた。
「ああ、エシフ。君はなんて……」
 その先は言葉を失った。
 たくましいエシフの胸に頬を寄せたままノモクが見つめているのは、豊饒の性毛をつんざいて神々しくそびえ立つしゅろうだった。
 ノモクはそこへ顔を寄せた。そしてエシフのペニスを頬に宛て、漆黒の毛氈に鼻を埋めてそこに焚きしめられた潮の香を吸いこんだ。
 ――あなたはエシフの誘惑に打ち勝ちました……。
 エークの言葉が、最後通告のようにくり返された。それは、昨夜この部屋で縛められたエシフが目を覚ましたときのように、ノモクがエシフのペニスに口吻くちづけをし、異教徒のしるしを口に含もうと思い立った、ちょうどそのときだった。
 ひょっとするとあの拷問の手引き書に、眠らされた奴隷を目覚めさせる方法が書いてあるのでは? 我に返ったノモクはエシフのペニスをそっと寝かせると寝台に放置されていたエシフの腰布を拾いあげ、そのうえに掛けた。
「エシフ、君に辱めを与えなくてもすむようにするからね」
 ノモクは、眠りつづけるエシフに声を掛けて寝台を降りた。
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