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第四章 土用波
1 目覚め【絡み:エシフxノモク】
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風が鳴っている。
むせかえるような海の匂いのなかで、ノモクは目覚めた。素裸かで、同じく素裸かで仰向けに寝ているエシフに、覆いかぶさるようにして抱きついている。寝台は、天蓋の幕に囲われていた。
耳許では心臓の鼓動が、穏やかで規則的なリズムを刻んでいる。頬に密着した厚い胸板が、エシフの微かな寝息と俱に上下する。エシフは眠っていた。
エシフは背が高いので、ノモクの全身がエシフの素肌に触れている。筋肉質の肉體の細部までを、ノモクは総て感じとっていた。展げられた両脚は、エシフのたくましい両脚を外側から挟むように絡みつき、腰の位置では、ペニスとペニスが重なりあっている。
エシフのペニスは、熱を持ち、巨大なまでに屹立していた。まるでそこだけが目覚めているようだった。
ノモクは、起きあがることもできないほど疲れ果てていた。砂糖菓子を使った賭けのせいだった。児戯にも等しい単なる遊びだと思っていたが、それは剣合わせの訓練よりも激しいものだった。
みっつ目の砂糖菓子のとき、ノモクは自分から舌を差しだした。こうなれば、エシフは自分の唇に砂糖菓子を挟むしかない。唇が重なりあった瞬間にエシフの口のなかに舌を押しこめば、エシフに砂糖菓子を食べさせることができる。
「王子、何かの作戦ですか?」
ノモクは何も応えず、目を閉じて、エシフの唇を待った。
唇と唇が重なりあった。
ノモクは、舌先を素早く動かしてエシフの唇を割った。するとエシフが動きをとめた。ノモクはその一瞬の隙をついて、エシフの口のなかに舌を辷りこませた。
エシフが咽喉の奥で軽く呻いた。ノモクの奇襲攻撃に驚いたようだった。ノモクは、ついで両腕をエシフの頸に絡め、ほぼ同時に両脚をエシフの腰に巻きつけた。突然しがみつかれて、エシフはバランスを崩しそうになったが、かろうじて両肘でノモクの重みを支えようとした。
ノモクは舌を動かして、エシフの口のなかを探った。うえの歯の裏を舌で隅々までなぞり、さらに唇をぐいっと押しあてて、舌を咽喉の奥に進めた。しかしエシフは舌を引っ込めていたのか、どれだけ動かしてもエシフの舌に触れることはなかった。そればかりか、砂糖菓子を探りあてることはできなかった。
ノモクは焦った。時間が経つにつれて、息苦しくなった。顔を左右に傾けるたびに鼻と鼻が擦れあう。いつの間にかエシフは両肘の力を抜いて素肌と素肌を密着させ、腰を揺らしていた。ペニス同士が擦れあうばかりか、エシフの巨きな陰嚢がノモクの陰嚢を包みこみ、腰の律動にあわせて睾丸がぶつかりあう。それは、焼石が叩きつけられるような感覚がした。
やがて成熟した男の汗の匂いが寝台に広がりはじめる頃には、ノモクはすっかりエシフの為すがままになっていた。頸に絡めた両手は緩やかに解かれ、手首を交叉させられ、エシフの片手がそれをノモクの頭のうえでしっかりと押さえつけている。さらにエシフはもう片方の手を、ノモクの後頭部に差しいれて固定している。
ノモクは、自分が奴隷となってエシフと同じように縛りつけられているような気分になった。しかしそれは恐ろしい拷問ではなかった。官能的な肉體の交わりだった。
突然エシフが腰の動きを止め、唇を離した。
「エシフ……。さ、砂糖菓子は、どこ?」ノモクは呼吸を取りもどしながら云った。「それとも、君が、もう食べちゃったの?」
エシフがもう一度唇を重ねてきたのは、この直後だった。彼は、ノモクの口のなかに舌を挿しいれてきた。這入ってきたと思った瞬間、舌先は咽喉の奥まで到達していた。
ノモクは、エシフのペニスが口に辷りこんできたのかと思った。咥えさせられたあのペニスと同じような熱を持ち、弾力があり、太さがあった。ノモクは、凝っとして動かないエシフの舌を懸命に吸った。
エシフが腰を揺らし、ノモクもまた同じように腰を揺らした。押しよせる快感を解き放ちたかったが、精はすでに枯渇しているので射精したくても出来ない。これがエシフがノモクに与える拷問であった。
ノモクの全身が痙攣した。
エシフがノモクから降りた。巨軀の左側をしたにして横向きに寝て、たくましい左腕をノモクの頸のしたに差しこんで枕にし、右手でノモクの胸を撫でまわした。
「ねえ、エシフ。砂糖菓子は?」
「ここです」エシフは胸を愛撫する手をとめて、飾り棚に腕を伸ばした。「さあ、王子。もうひと口どうぞ」ノモクの口許に砂糖菓子を近づけた。
「ずるいよ、エシフ!」ノモクは、ようよう半身を起こし、エシフの指から砂糖菓子を取った。「こんどは僕が君のうえに乗るよ。君のほうが重いし、ちからが強いから僕がしたじゃ、勝てっこないもの」
「仰せのとおりに」
エシフが仰向けになった。
こうしてノモクは、エシフの腰のうえに跨ったのだった。
エシフの体温、エシフの素肌、エシフの放つ潮の香。ノモクはしばらくのあいだ、この奇妙な心地好さにまどろんでいた。ようやく暗がりに目が慣れたので、顔をあげて、エシフの様子を窺った。エシフは顎を突き出し、咽喉仏をあらわにしていた。両腕は持ちあげられ、雄々しい毛を蓄えた腋窩が曝されている。両手首は交叉され、エシフの腰布で括りつけられていた。
「エシフ、ごめんね。今、解いてあげるから」
ノモクは素早く腰布を解いた。両腕を楽な位置に戻してあげようと、両手首を掴んでエシフに跨ったまま後ろに下がった。
「あ」
ノモクは低声をあげた。尻の谷間にエシフのペニスが辷りこんだのだ。弾力のある異教徒の徴が、肛門にぴったりとあたっている。
驚きのあまり、ノモクは掴んでいたエシフの両手首を離してしまった。両腕がだらりと寝台のうえに落ちる。そのとき、エシフの指先がノモクの乳首に触れ、すっと擦った。ノモクは思わず仰け反った。エシフの尖端が、ノモクの肛門を、つん、と突いた。
「うっ」
湯屋での出来事がノモクの脳裏に蘇った。エシフの指がノモクを貫き、なかで蠢いて、射精に導いたのだった。あの指の束よりも、エシフのペニスははるかに長大だ。もしこれが這入ってきたら……。ノモクは身震いをした。
遠くから聖堂の鐘の音がした。お祈りの時間だ。早く着替えて礼拝室に行かなければならない。
しかし、ノモクは好奇心に抗えなかった。エシフのペニスを指で支えて肛門に宛てがい、恐る恐る尻を揺すった。しばらくするとペニスの尖端から生温かいものが滲みでて、肛門をしっとりと濡らした。なおも続けると、肛門が潤み、蕩けるような感覚がした。ノモクは、このまま腰を沈めたらどうなるだろうかと想像した。
そのときだった。
部屋の扉が三度ノックされ、外から「王子、お目覚めでしょうか?」と声がした。
エークの声だった。朝までノモクのために祈りを捧げると云っていた若い修道士が、部屋を訪ねてきたのだった。
むせかえるような海の匂いのなかで、ノモクは目覚めた。素裸かで、同じく素裸かで仰向けに寝ているエシフに、覆いかぶさるようにして抱きついている。寝台は、天蓋の幕に囲われていた。
耳許では心臓の鼓動が、穏やかで規則的なリズムを刻んでいる。頬に密着した厚い胸板が、エシフの微かな寝息と俱に上下する。エシフは眠っていた。
エシフは背が高いので、ノモクの全身がエシフの素肌に触れている。筋肉質の肉體の細部までを、ノモクは総て感じとっていた。展げられた両脚は、エシフのたくましい両脚を外側から挟むように絡みつき、腰の位置では、ペニスとペニスが重なりあっている。
エシフのペニスは、熱を持ち、巨大なまでに屹立していた。まるでそこだけが目覚めているようだった。
ノモクは、起きあがることもできないほど疲れ果てていた。砂糖菓子を使った賭けのせいだった。児戯にも等しい単なる遊びだと思っていたが、それは剣合わせの訓練よりも激しいものだった。
みっつ目の砂糖菓子のとき、ノモクは自分から舌を差しだした。こうなれば、エシフは自分の唇に砂糖菓子を挟むしかない。唇が重なりあった瞬間にエシフの口のなかに舌を押しこめば、エシフに砂糖菓子を食べさせることができる。
「王子、何かの作戦ですか?」
ノモクは何も応えず、目を閉じて、エシフの唇を待った。
唇と唇が重なりあった。
ノモクは、舌先を素早く動かしてエシフの唇を割った。するとエシフが動きをとめた。ノモクはその一瞬の隙をついて、エシフの口のなかに舌を辷りこませた。
エシフが咽喉の奥で軽く呻いた。ノモクの奇襲攻撃に驚いたようだった。ノモクは、ついで両腕をエシフの頸に絡め、ほぼ同時に両脚をエシフの腰に巻きつけた。突然しがみつかれて、エシフはバランスを崩しそうになったが、かろうじて両肘でノモクの重みを支えようとした。
ノモクは舌を動かして、エシフの口のなかを探った。うえの歯の裏を舌で隅々までなぞり、さらに唇をぐいっと押しあてて、舌を咽喉の奥に進めた。しかしエシフは舌を引っ込めていたのか、どれだけ動かしてもエシフの舌に触れることはなかった。そればかりか、砂糖菓子を探りあてることはできなかった。
ノモクは焦った。時間が経つにつれて、息苦しくなった。顔を左右に傾けるたびに鼻と鼻が擦れあう。いつの間にかエシフは両肘の力を抜いて素肌と素肌を密着させ、腰を揺らしていた。ペニス同士が擦れあうばかりか、エシフの巨きな陰嚢がノモクの陰嚢を包みこみ、腰の律動にあわせて睾丸がぶつかりあう。それは、焼石が叩きつけられるような感覚がした。
やがて成熟した男の汗の匂いが寝台に広がりはじめる頃には、ノモクはすっかりエシフの為すがままになっていた。頸に絡めた両手は緩やかに解かれ、手首を交叉させられ、エシフの片手がそれをノモクの頭のうえでしっかりと押さえつけている。さらにエシフはもう片方の手を、ノモクの後頭部に差しいれて固定している。
ノモクは、自分が奴隷となってエシフと同じように縛りつけられているような気分になった。しかしそれは恐ろしい拷問ではなかった。官能的な肉體の交わりだった。
突然エシフが腰の動きを止め、唇を離した。
「エシフ……。さ、砂糖菓子は、どこ?」ノモクは呼吸を取りもどしながら云った。「それとも、君が、もう食べちゃったの?」
エシフがもう一度唇を重ねてきたのは、この直後だった。彼は、ノモクの口のなかに舌を挿しいれてきた。這入ってきたと思った瞬間、舌先は咽喉の奥まで到達していた。
ノモクは、エシフのペニスが口に辷りこんできたのかと思った。咥えさせられたあのペニスと同じような熱を持ち、弾力があり、太さがあった。ノモクは、凝っとして動かないエシフの舌を懸命に吸った。
エシフが腰を揺らし、ノモクもまた同じように腰を揺らした。押しよせる快感を解き放ちたかったが、精はすでに枯渇しているので射精したくても出来ない。これがエシフがノモクに与える拷問であった。
ノモクの全身が痙攣した。
エシフがノモクから降りた。巨軀の左側をしたにして横向きに寝て、たくましい左腕をノモクの頸のしたに差しこんで枕にし、右手でノモクの胸を撫でまわした。
「ねえ、エシフ。砂糖菓子は?」
「ここです」エシフは胸を愛撫する手をとめて、飾り棚に腕を伸ばした。「さあ、王子。もうひと口どうぞ」ノモクの口許に砂糖菓子を近づけた。
「ずるいよ、エシフ!」ノモクは、ようよう半身を起こし、エシフの指から砂糖菓子を取った。「こんどは僕が君のうえに乗るよ。君のほうが重いし、ちからが強いから僕がしたじゃ、勝てっこないもの」
「仰せのとおりに」
エシフが仰向けになった。
こうしてノモクは、エシフの腰のうえに跨ったのだった。
エシフの体温、エシフの素肌、エシフの放つ潮の香。ノモクはしばらくのあいだ、この奇妙な心地好さにまどろんでいた。ようやく暗がりに目が慣れたので、顔をあげて、エシフの様子を窺った。エシフは顎を突き出し、咽喉仏をあらわにしていた。両腕は持ちあげられ、雄々しい毛を蓄えた腋窩が曝されている。両手首は交叉され、エシフの腰布で括りつけられていた。
「エシフ、ごめんね。今、解いてあげるから」
ノモクは素早く腰布を解いた。両腕を楽な位置に戻してあげようと、両手首を掴んでエシフに跨ったまま後ろに下がった。
「あ」
ノモクは低声をあげた。尻の谷間にエシフのペニスが辷りこんだのだ。弾力のある異教徒の徴が、肛門にぴったりとあたっている。
驚きのあまり、ノモクは掴んでいたエシフの両手首を離してしまった。両腕がだらりと寝台のうえに落ちる。そのとき、エシフの指先がノモクの乳首に触れ、すっと擦った。ノモクは思わず仰け反った。エシフの尖端が、ノモクの肛門を、つん、と突いた。
「うっ」
湯屋での出来事がノモクの脳裏に蘇った。エシフの指がノモクを貫き、なかで蠢いて、射精に導いたのだった。あの指の束よりも、エシフのペニスははるかに長大だ。もしこれが這入ってきたら……。ノモクは身震いをした。
遠くから聖堂の鐘の音がした。お祈りの時間だ。早く着替えて礼拝室に行かなければならない。
しかし、ノモクは好奇心に抗えなかった。エシフのペニスを指で支えて肛門に宛てがい、恐る恐る尻を揺すった。しばらくするとペニスの尖端から生温かいものが滲みでて、肛門をしっとりと濡らした。なおも続けると、肛門が潤み、蕩けるような感覚がした。ノモクは、このまま腰を沈めたらどうなるだろうかと想像した。
そのときだった。
部屋の扉が三度ノックされ、外から「王子、お目覚めでしょうか?」と声がした。
エークの声だった。朝までノモクのために祈りを捧げると云っていた若い修道士が、部屋を訪ねてきたのだった。
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