25 / 93
第三章 海の習い
6 薬草の使い方【絡み:エシフxノモク】
しおりを挟む
湯屋はもうもうと湯気が立っていた。三隅に置かれたランプが、ノモクとエシフの裸身をやわらかく照らしている。この湯気と灯りのおかげでノモクは素裸かでいることの羞恥を感じずにいられた。
ノモクは湯船に手を入れて湯加減を確かめると、籠に準備しておいた薬草を泛べた。手で湯をかき混ぜながら、
「ちょっと待ってね。すぐに準備できるから。薬湯だよ。傷口を柔らかく包んでくれるから痛くないんだ」
背後にはエシフが奴隷坐りで静かに控えている。呼吸の音も聴こえない。耳にするのは、湯をかき混ぜる音だけだ。
ノモクは迷っていた。先にエシフに湯をかけてあげるべきか、それとも先ず自分を濡らしている寝台の穢れを洗い流すべきか。考えながら湯をかき混ぜる。薬草の清々しい匂いと生々しい精の匂いが、ノモクの鼻孔を刺激しはじめる。そのうちに薬湯の準備ができた。ノモクは湯を汲もうと湯船に身を乗り出した。
エシフが動く気配がした。
「王子、流して差しあげましょう」
エシフの右手が伸びてきて、柄杓の柄を掴んだ。ノモクは身を固くした。背中はエシフの胸と腹に、中腰の脚元はエシフの両膝のあいだにすっぽりと包まれた。
ノモクは思わず尻餅をつき、エシフの膝のうえに両手を置いた。
エシフは柄杓を引きうけると、
「王子、力を抜いて楽にしてください」
柄杓の湯が胸にかけられた。エシフの左手が、まだ薄いノモクの胸を丹念に磨くように左右に辷る。右の乳首をエシフの指がさっと擦った。ノモクは、思わず声をあげて仰け反った。
エシフはノモクを抱きとめ、肌をぴたりと密着させたまま薬湯を汲んだ。
「エシフ、これは君のためのお湯だよ」ノモクの声は震えていた。
「ここは、あなたのための湯屋です」
二杯目の薬湯がノモクに注がれた。肉厚の手が胸と臍のあいだを何度も往復する。エシフの長く無骨な指先が、ノモクのペニスに触れるか触れないかのところまで、下りてはまた上がってゆく。とろとろとした柔らかい湯が、エシフの手の動きによってノモクの下半身にかき集められた。それはまだ蘖のような幼い性毛を濡らし、そして白百合の蕾のようなペニスを舐めるように這い、その先端から露の集まりとなって滴りおちた。
ノモクは目前にある湯船の縁に両手を伸ばした。それから立上ろうとして、
「エシフ、もう大丈夫。こんどは君の番だよ」
「まだ洗っていないところがあります、王子」
エシフは離れようとするノモクをそっと引きよせた。ノモクはエシフの肩に頸を預けた。両目が自然に閉じられた。
薬湯を汲む音がする。
ノモクはこれから起こることを予期して息を飲み込んだ。さらさらと薬湯がかけられる。果たして、薬湯がノモクの素裸かの面を流れおちるのとほぼ同時に、エシフの手のひらが胸から腹へ、そして腹からペニスへと辷りおちた。
「エシフ!」
ノモクは声をあげた。ペニスがびくんと震える。まるでエシフの手を待ちかまえていたかのように……。
「わたしを清めてくださったお礼です」エシフは、ノモクのペニスを慰撫した。「陶器のようになめらかで美しい肌をなさっておられる」
「だめだよ。そこは汚れているから……」
「わたしにおまかせください。汚れを落として差しあげます」
エシフはノモクのペニスに手指を絡ませ、巧みに動かした。
ノモクは、得体の知れない心地よさに身を委ねた。柄杓がそっと置かれ、もう片方の手が慰撫に加わった。エシフの手のなかで、ノモクのペニスが段々と形を変えてゆく。ふくらみ、固くなり、そして屹立した。
ノモクは眉根を寄せ、唇を噛んで、頭を左右に振った。エシフの手の動きはそれでも続いた。
「恥ずかしいことではありません。男は皆、こうなるのです」
ペニスが痛い。特に破れそうなくらいにふくらみ切った先端に痛みが集中している。その痛みは、焦ったい疼きとなってノモクを苦しめた。解き放ちたい。この鎧を脱いでしまいたい。しかしそれは、異教徒の徴を刻みつけるのと同じことを意味している。ノモクは呻きつづけた。
「王子、お辛いのですね」エシフが耳朶を噛まんばかりに口を近づけた。「今すぐ楽にして差しあげましょう」
エシフはノモクを横抱きにして広い洗身台に上がった。そこは低い仕切りがあるだけで湯船とほとんどひと続きになっている。中央には湯切りのための溝が、やや余裕を持った幅で、縦に一本刻まれている。
エシフは、ノモクを仰向けに寝かせると、木枕を頸のしたに差しいれ、自分は洗身台から下りた。ノモクは顔をあげた。見るとエシフが籠のなかの薬草をひとつひとつ手に取って何かを確認していた。
「ねえ、エシフ。君は薬草に詳しいの?」
股間を押さえながらノモクは訊いた。
「わたしの国にも同じ薬草がありました」エシフは選びとった薬草を桶に入れて洗身台のうえに置くと、湯船のところに戻った。「同じ使い方をするのかはわかりませんが」
エシフはこう云い添えると、湯船のまえで両脚を折って坐り、両目を閉じた。瞑想するかのようにしばらく凝っとしたのち、柄杓に湯を汲んで、三度、頭から湯を被った。それは厳かな儀式の始まりのようだった。
「さあ、王子。始めますよ」
エシフがゆっくりと立上った。
「始めるって何を?」
ノモクの問いにエシフは答えなかった。その代わりに室内のランプをふたつ消した。残りのひとつを手に洗身台に上がり、それを天井を疾る梁に引っかけた。
エシフはその裸身をさっと明るく輝かせたかと思うと、ランプの灯だけを天井に残してすっと沈んだ。ノモクは顔をあげてもう一度訊いた。
「ねえ、エシフ。何をしようとしているの?」
エシフはノモクの両脚を割り展き、その央に辷りこんだ。腰を掴んで持ちあげ、自分に引きよせると、桶から手のひらの形をしたアウィーシャクの葉を取りだした。
「わたしの国に伝わる男のための儀式です」エシフはノモクの顔を見据えた。「さあ、手を離してください」
ノモクは、呪文にかけられたようにエシフの言葉に従った。
ノモクは湯船に手を入れて湯加減を確かめると、籠に準備しておいた薬草を泛べた。手で湯をかき混ぜながら、
「ちょっと待ってね。すぐに準備できるから。薬湯だよ。傷口を柔らかく包んでくれるから痛くないんだ」
背後にはエシフが奴隷坐りで静かに控えている。呼吸の音も聴こえない。耳にするのは、湯をかき混ぜる音だけだ。
ノモクは迷っていた。先にエシフに湯をかけてあげるべきか、それとも先ず自分を濡らしている寝台の穢れを洗い流すべきか。考えながら湯をかき混ぜる。薬草の清々しい匂いと生々しい精の匂いが、ノモクの鼻孔を刺激しはじめる。そのうちに薬湯の準備ができた。ノモクは湯を汲もうと湯船に身を乗り出した。
エシフが動く気配がした。
「王子、流して差しあげましょう」
エシフの右手が伸びてきて、柄杓の柄を掴んだ。ノモクは身を固くした。背中はエシフの胸と腹に、中腰の脚元はエシフの両膝のあいだにすっぽりと包まれた。
ノモクは思わず尻餅をつき、エシフの膝のうえに両手を置いた。
エシフは柄杓を引きうけると、
「王子、力を抜いて楽にしてください」
柄杓の湯が胸にかけられた。エシフの左手が、まだ薄いノモクの胸を丹念に磨くように左右に辷る。右の乳首をエシフの指がさっと擦った。ノモクは、思わず声をあげて仰け反った。
エシフはノモクを抱きとめ、肌をぴたりと密着させたまま薬湯を汲んだ。
「エシフ、これは君のためのお湯だよ」ノモクの声は震えていた。
「ここは、あなたのための湯屋です」
二杯目の薬湯がノモクに注がれた。肉厚の手が胸と臍のあいだを何度も往復する。エシフの長く無骨な指先が、ノモクのペニスに触れるか触れないかのところまで、下りてはまた上がってゆく。とろとろとした柔らかい湯が、エシフの手の動きによってノモクの下半身にかき集められた。それはまだ蘖のような幼い性毛を濡らし、そして白百合の蕾のようなペニスを舐めるように這い、その先端から露の集まりとなって滴りおちた。
ノモクは目前にある湯船の縁に両手を伸ばした。それから立上ろうとして、
「エシフ、もう大丈夫。こんどは君の番だよ」
「まだ洗っていないところがあります、王子」
エシフは離れようとするノモクをそっと引きよせた。ノモクはエシフの肩に頸を預けた。両目が自然に閉じられた。
薬湯を汲む音がする。
ノモクはこれから起こることを予期して息を飲み込んだ。さらさらと薬湯がかけられる。果たして、薬湯がノモクの素裸かの面を流れおちるのとほぼ同時に、エシフの手のひらが胸から腹へ、そして腹からペニスへと辷りおちた。
「エシフ!」
ノモクは声をあげた。ペニスがびくんと震える。まるでエシフの手を待ちかまえていたかのように……。
「わたしを清めてくださったお礼です」エシフは、ノモクのペニスを慰撫した。「陶器のようになめらかで美しい肌をなさっておられる」
「だめだよ。そこは汚れているから……」
「わたしにおまかせください。汚れを落として差しあげます」
エシフはノモクのペニスに手指を絡ませ、巧みに動かした。
ノモクは、得体の知れない心地よさに身を委ねた。柄杓がそっと置かれ、もう片方の手が慰撫に加わった。エシフの手のなかで、ノモクのペニスが段々と形を変えてゆく。ふくらみ、固くなり、そして屹立した。
ノモクは眉根を寄せ、唇を噛んで、頭を左右に振った。エシフの手の動きはそれでも続いた。
「恥ずかしいことではありません。男は皆、こうなるのです」
ペニスが痛い。特に破れそうなくらいにふくらみ切った先端に痛みが集中している。その痛みは、焦ったい疼きとなってノモクを苦しめた。解き放ちたい。この鎧を脱いでしまいたい。しかしそれは、異教徒の徴を刻みつけるのと同じことを意味している。ノモクは呻きつづけた。
「王子、お辛いのですね」エシフが耳朶を噛まんばかりに口を近づけた。「今すぐ楽にして差しあげましょう」
エシフはノモクを横抱きにして広い洗身台に上がった。そこは低い仕切りがあるだけで湯船とほとんどひと続きになっている。中央には湯切りのための溝が、やや余裕を持った幅で、縦に一本刻まれている。
エシフは、ノモクを仰向けに寝かせると、木枕を頸のしたに差しいれ、自分は洗身台から下りた。ノモクは顔をあげた。見るとエシフが籠のなかの薬草をひとつひとつ手に取って何かを確認していた。
「ねえ、エシフ。君は薬草に詳しいの?」
股間を押さえながらノモクは訊いた。
「わたしの国にも同じ薬草がありました」エシフは選びとった薬草を桶に入れて洗身台のうえに置くと、湯船のところに戻った。「同じ使い方をするのかはわかりませんが」
エシフはこう云い添えると、湯船のまえで両脚を折って坐り、両目を閉じた。瞑想するかのようにしばらく凝っとしたのち、柄杓に湯を汲んで、三度、頭から湯を被った。それは厳かな儀式の始まりのようだった。
「さあ、王子。始めますよ」
エシフがゆっくりと立上った。
「始めるって何を?」
ノモクの問いにエシフは答えなかった。その代わりに室内のランプをふたつ消した。残りのひとつを手に洗身台に上がり、それを天井を疾る梁に引っかけた。
エシフはその裸身をさっと明るく輝かせたかと思うと、ランプの灯だけを天井に残してすっと沈んだ。ノモクは顔をあげてもう一度訊いた。
「ねえ、エシフ。何をしようとしているの?」
エシフはノモクの両脚を割り展き、その央に辷りこんだ。腰を掴んで持ちあげ、自分に引きよせると、桶から手のひらの形をしたアウィーシャクの葉を取りだした。
「わたしの国に伝わる男のための儀式です」エシフはノモクの顔を見据えた。「さあ、手を離してください」
ノモクは、呪文にかけられたようにエシフの言葉に従った。
10
お気に入りに追加
168
あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

禁断の祈祷室
土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。
アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。
それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。
救済のために神は神官を抱くのか。
それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。
神×神官の許された神秘的な夜の話。
※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)


【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる