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第二章 海鳴り
3 朝のデザート
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部屋に戻る廊下が、どこまでも続いていれば。礼拝室をあとにしたときから、ノモクは不都合な現実に直面していた。素裸かのソルブが、ノモクを待っているのだ。それも暗い湯屋のなかではなく、朝陽に明るく照らされた部屋のなかでだ。
少しだけ扉を開けて、隙間から腰布を渡してあげよう。ノモクは部屋の扉の前でこう考えて腰布を袖から取りだしてから、木札の鍵を受け口に差しこんだ。
扉をそっと開けて顔だけ覗きこむと、ソルブがノモクに背を向けて、正面の窓辺に立っていた。部屋の片付けを了えて束の間の休息をとっているのだろう。彼は、日光浴をするように両手を窓枠の上部につけて大きく伸びをしている。全身の体毛が朝陽を受けて、金いろの輪廓を輝かせた。
その光りに包まれた彼の肉体は、エシフほど大柄ではなかったが、均整のとれた美しいものだったので、ノモクは思わず見惚れてしまい、もう一度声をかけるのを忘れてしまった。それからソルブは心持ち前屈みになって顔を下ろし、しばらくそのままでいた。やがて彼のたくましい右腕が窓枠から離れ、手がゆっくりと肉体の中心部へと運ばれた。
まさか!
そのまさかだった。右腕が大胆に動きはじめた。くつろいでいた両脚が肩幅に広げられた。しっかりと踏ん張っているので、それが尻の双丘に深く抉られたようなへこみを作った。腰が円を描くように緩やかに揺れる。窓枠をつかむ左腕の筋肉が泛きあがり、かすかな震えを見せる。
見てはいけない。ノモクが気付かれないように扉を閉めようとした拍子に、ギィギィと軋む音が立った。ソルブの全身がその音にびくりと反応し、動きをとめた。ノモクは、まだ開いている隙間から腰布を部屋に辷りこませて扉を閉じた。一瞬だけ、ふり返ったソルブの顔が見えたような気がした。
ノモクは頃合いを見計らって、おそるおそる扉を開いた。両目を閉じ、下を向いて部屋に這入ると、くるりと回って、すかさず閂を掛けた。目を開けて、ゆっくりとふり返ると、腰布が床に落ちていた。
「王子、お赦しを……」
腰布の先でソルブが両脚を折って床に跪き、両手を腰の後ろに回してこうべを垂れていた。巨きくなった異教徒のペニスがノモクの目の前に姿を現した。ノモクは慌てて腰布を拾いあげ、ソルブの腰に掛けてあげた。
「ソルブ、ぼく、あっちを向いているからね。それから部屋の片付け、ありがとう。少し休んだらどうだい? 司祭様がお菓子を下さったんだよ」
ノモクはベッドサイドのテーブルにお菓子の包みを置いて、窓辺に立った。湯屋の方を見ると、交代の時間だろうか、誰も居なかった。
「私に罰を与えてください」ソルブが落ちつきはらった口調で云った。
「罰だなんて……。男なら皆、ひとりのときにすることなんだよね? それを邪魔したのは、ぼくのほうだよ」ノモクは背を向けたままで云った。『男なら皆、ひとりのときにする』。身代わりのギーフの口癖だった。
「ですが……」ソルブが立上る気配がした。「ノモク王子、ここはあなたのお部屋です」
ソルブは、ノモクの背後に近づいて、ノモクの右手をそっと取った。
ノモクはゆっくりとふり向いてソルブの顔を見た。「ソルブ、これはぼくと君の秘密にしよう。ぼくは何も見なかった。君もこの部屋で何もしなかった」ソルブを安心させようと、差しだされた手を両手で握りかえした。
「どうか。今、ここで罰を……」
ソルブはノモクの両手を屹立したペニスに導き、包みこませた。ソルブのそれは、太く、熱く、そして力強く脈を打っている。
罰だって? 一体、どうしたら……。
気づけばソルブに導かれ、寝台のうえにあがっていた。ソルブはお菓子の包みから、ひとつ取りだすと口に含み、そのまま両手両脚を投げだして仰向けになった。
「ねえ、ソルブ?」
「私たち異教徒がこれを口にすると、罰を受けるまで動けなくなるのです。あなた方の神の力です」
「ぼくは君を傷つけたりしたくないよ。悪いことしていないのに」
ソルブの中心で、異教徒のペニスだけが息づいている。それは、罰を受けるのを待っているように見えた。
「辱めを……」
ソルブの声は掠れていた。
ノモクにもその言葉の意味が理解できた。一度、寝台から脱けだして、窓を閉めてカーテンを引き、扉の閂を確認すると、また寝台に戻った。大きく展かれた両脚のあいだに屈みこんで、戦慄いている異教徒のペニスを両手でそっと包みこんだ。
「ソルブ、すぐすませるからね。ほんの少しだけ我慢して」
素裸かの男奴隷は、すでに眠ったように動かなかった。
少しだけ扉を開けて、隙間から腰布を渡してあげよう。ノモクは部屋の扉の前でこう考えて腰布を袖から取りだしてから、木札の鍵を受け口に差しこんだ。
扉をそっと開けて顔だけ覗きこむと、ソルブがノモクに背を向けて、正面の窓辺に立っていた。部屋の片付けを了えて束の間の休息をとっているのだろう。彼は、日光浴をするように両手を窓枠の上部につけて大きく伸びをしている。全身の体毛が朝陽を受けて、金いろの輪廓を輝かせた。
その光りに包まれた彼の肉体は、エシフほど大柄ではなかったが、均整のとれた美しいものだったので、ノモクは思わず見惚れてしまい、もう一度声をかけるのを忘れてしまった。それからソルブは心持ち前屈みになって顔を下ろし、しばらくそのままでいた。やがて彼のたくましい右腕が窓枠から離れ、手がゆっくりと肉体の中心部へと運ばれた。
まさか!
そのまさかだった。右腕が大胆に動きはじめた。くつろいでいた両脚が肩幅に広げられた。しっかりと踏ん張っているので、それが尻の双丘に深く抉られたようなへこみを作った。腰が円を描くように緩やかに揺れる。窓枠をつかむ左腕の筋肉が泛きあがり、かすかな震えを見せる。
見てはいけない。ノモクが気付かれないように扉を閉めようとした拍子に、ギィギィと軋む音が立った。ソルブの全身がその音にびくりと反応し、動きをとめた。ノモクは、まだ開いている隙間から腰布を部屋に辷りこませて扉を閉じた。一瞬だけ、ふり返ったソルブの顔が見えたような気がした。
ノモクは頃合いを見計らって、おそるおそる扉を開いた。両目を閉じ、下を向いて部屋に這入ると、くるりと回って、すかさず閂を掛けた。目を開けて、ゆっくりとふり返ると、腰布が床に落ちていた。
「王子、お赦しを……」
腰布の先でソルブが両脚を折って床に跪き、両手を腰の後ろに回してこうべを垂れていた。巨きくなった異教徒のペニスがノモクの目の前に姿を現した。ノモクは慌てて腰布を拾いあげ、ソルブの腰に掛けてあげた。
「ソルブ、ぼく、あっちを向いているからね。それから部屋の片付け、ありがとう。少し休んだらどうだい? 司祭様がお菓子を下さったんだよ」
ノモクはベッドサイドのテーブルにお菓子の包みを置いて、窓辺に立った。湯屋の方を見ると、交代の時間だろうか、誰も居なかった。
「私に罰を与えてください」ソルブが落ちつきはらった口調で云った。
「罰だなんて……。男なら皆、ひとりのときにすることなんだよね? それを邪魔したのは、ぼくのほうだよ」ノモクは背を向けたままで云った。『男なら皆、ひとりのときにする』。身代わりのギーフの口癖だった。
「ですが……」ソルブが立上る気配がした。「ノモク王子、ここはあなたのお部屋です」
ソルブは、ノモクの背後に近づいて、ノモクの右手をそっと取った。
ノモクはゆっくりとふり向いてソルブの顔を見た。「ソルブ、これはぼくと君の秘密にしよう。ぼくは何も見なかった。君もこの部屋で何もしなかった」ソルブを安心させようと、差しだされた手を両手で握りかえした。
「どうか。今、ここで罰を……」
ソルブはノモクの両手を屹立したペニスに導き、包みこませた。ソルブのそれは、太く、熱く、そして力強く脈を打っている。
罰だって? 一体、どうしたら……。
気づけばソルブに導かれ、寝台のうえにあがっていた。ソルブはお菓子の包みから、ひとつ取りだすと口に含み、そのまま両手両脚を投げだして仰向けになった。
「ねえ、ソルブ?」
「私たち異教徒がこれを口にすると、罰を受けるまで動けなくなるのです。あなた方の神の力です」
「ぼくは君を傷つけたりしたくないよ。悪いことしていないのに」
ソルブの中心で、異教徒のペニスだけが息づいている。それは、罰を受けるのを待っているように見えた。
「辱めを……」
ソルブの声は掠れていた。
ノモクにもその言葉の意味が理解できた。一度、寝台から脱けだして、窓を閉めてカーテンを引き、扉の閂を確認すると、また寝台に戻った。大きく展かれた両脚のあいだに屈みこんで、戦慄いている異教徒のペニスを両手でそっと包みこんだ。
「ソルブ、すぐすませるからね。ほんの少しだけ我慢して」
素裸かの男奴隷は、すでに眠ったように動かなかった。
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