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第六章 親分はボディガード
窓を開けて
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深夜三時を回ったころ、健悟はとうとう寝るのをあきらめた。それまでスマホ二台を交互に弄りながら、この一日、柳川や小雪とやり取りしたLINEのメッセージを読みかえして、水上にしてやった追加の儀式を忘れようとしていた。思い出すだけでもヒヤヒヤものだ。相棒はやる気満々だったが、健悟は理性でその衝動を抑えたのだった。
素っ裸かの水上に訓練を与えながら、同時に頭に甦ってくる柳川の素っ裸かを忘れようとした。うまくやれそうだったが、なかなかそうはいかなかった。背恰好も年齢もふたりは近く、また軀の反応も——若い男なんかみんな同じようなものだとわかっていても——変わらなかった。唯一異なる水上の声に耳を傾けなければ、北海道にいるはずの柳川と戯れているような錯覚さえ起きるほどだった。
集中放水から二分後——水上は、健悟の手にふさがれた口から、くぐもった声を上げ、と同時に鏡面を派手に汚した。
「親分、気持ちよかったっす!」水上は、あっけらかんと笑った。
「ああん? それじゃあ訓練になんねえだろ。もう一発だ」健悟は、こんどは水上を四つん這いにさせた。
水上は、はいっ、と快活に返事して、健悟の指令に従った。何もかも丸見えだ。情けない姿であるはずのに、それでも清々しく見えるのは、彼の若さゆえだろうか。健悟は、シャワーを冷水に変えると、シャワーヘッドを水上の股のあいだに差し入れ、下から勢いよく放水した。水上は、後ろから健悟に見られているのにも関わらず、身を捩り、尻を派手に振りたてた。
ったく、色気のないやつだ。これが柳川だったら……。
結局、四つん這いでもまだ若い水上の相棒はおさまるようすもなく、最後に仰向けに寝かせてトドメを刺してやったのだった。
風呂から上がり、健悟は脱衣場でそそくさと着替えると、まだタオルで股間の水気を拭っていた水上の肩を小突いて、
「おめえは、ああやって派手にケツ振ってるから五分ともたねえんだよ」
「でも親分みたいに年代物じゃないっすから」水上は照れくさそうに頭を掻いた。
「ちっ。酒じゃあるまいし」健悟は鼻を、ふんっ、と鳴らした。
「甘い匂いがするんすよね、親分って」水上は鼻を、くんくん、と鳴らした。「立派な酒樽ぶら下げてますもんね……」
「飲ませてやろうか?」
「悪酔いしそうなんで、遠慮しておくっす」
健悟が吹き出し、水上もつられて笑った——。
健悟は、ベッドに寝転がったまま両腕の匂いを交互に嗅いだ。
なるほど、自分でもわかるくらいに雄のフェロモンが駄々洩れになっている。個室には空調が効かせてあるが、全身が熱く燃え滾るような気がしてならない。
ベッドから起きあがって窓辺まで行き、カーテンを開き、換気のために窓を開けた。
外はまだ真っ暗だ。生温い風が、すうっ、と這入ってきて、室内の空気をかき混ぜながら混じりあう。いつもならそろそろコンビニの配送車が近くを通る時刻だが、今のところ辺りはひっそりと静まりかえっている。
健悟はズボンの股間に手をやった。
——おい、相棒。まだ起きてんのかよ。さっさと寝やがれ。
——ムラムラがおさまらねえんだよ。云わせんな。
——風にあたって頭冷やすんだな。
風呂に這入るときのように、活動服のズボンを、下着と一緒にずり下ろした。貞操帯から自由になった相棒が思いっきり伸びをする。そこへ待ってましたとばかりに生温かい夜風の舌がねっとりと舐めあげる。ちっ、逆効果だったか。相棒はますます猛々しくなって、ちょっとやそっとのことでは寝てくれそうにない。
——おい、健悟。あの写真があっただろ。柳川が送ってきたやつ。
——塔子とのツーショットか?
——ホテルの風呂で撮ったやつに決まってんだろ。
確かにあれなら使えそうだ。
健悟は腰から上を後ろに捻って手を伸ばし、枕許のスマホを手に取った。柳川とのLINEのやり取りを開き、その写真をタップした。男子中学生や男子高校生が、修学旅行の風呂の時間に仲間内のノリで撮るような可愛らしいものではない。女性誌のセックス特集にサービスで附いてくる、イケメン俳優やアイドル歌手がセミヌードで撮ったグラビアに匹敵するものだ。健悟なら流出させることはない、と柳川が信頼しているからこそのセクシーショットが送られてきたのだった。
> 親分、ソープランドってこんな感じですか?
この無邪気なメッセージに健悟は、あらためて吹きだしてしまった。可愛いやつだ。明後日、帰ってきたら……。
健悟は、柳川のセクシーショットを目に焼き付け、それから相棒を握りしめた。少しずつ手筒を上下に動かしながら気分を高めてゆく。いい具合だ。放水は窓の外にしよう。
突然、窓の外で男の呻き声がした。それは健悟が窓辺に歩を進めようとしたのとほとんど同時だった。
健悟は手作業を続けながら、顔だけをそっと窓の外に出して周囲を窺った。呻き声の主は、左にみっつ離れた部屋の隊員だった。彼は窓の外に下半身をすっかり出して、健悟と同じように手筒を激しく動かしていた。上体を反らしているので顔は見えないが、部屋割りが決まっているので誰かはすぐにわかった。
——水上のやつ……。
健悟も限界が来ていた。水上にバレないように窓から離れた。柳川のセクシーショットを思いだし、今しがた目にした水上の姿を柳川のそれに塗りかえる。
——柳川、いくぞ!
心のなかでこう叫んで健悟は達した。ブッ、という鈍い音と倶に夥しい量の白濁液が迸った。それは長い弧を描き、月の光に照らされて銀色に輝いた。
素っ裸かの水上に訓練を与えながら、同時に頭に甦ってくる柳川の素っ裸かを忘れようとした。うまくやれそうだったが、なかなかそうはいかなかった。背恰好も年齢もふたりは近く、また軀の反応も——若い男なんかみんな同じようなものだとわかっていても——変わらなかった。唯一異なる水上の声に耳を傾けなければ、北海道にいるはずの柳川と戯れているような錯覚さえ起きるほどだった。
集中放水から二分後——水上は、健悟の手にふさがれた口から、くぐもった声を上げ、と同時に鏡面を派手に汚した。
「親分、気持ちよかったっす!」水上は、あっけらかんと笑った。
「ああん? それじゃあ訓練になんねえだろ。もう一発だ」健悟は、こんどは水上を四つん這いにさせた。
水上は、はいっ、と快活に返事して、健悟の指令に従った。何もかも丸見えだ。情けない姿であるはずのに、それでも清々しく見えるのは、彼の若さゆえだろうか。健悟は、シャワーを冷水に変えると、シャワーヘッドを水上の股のあいだに差し入れ、下から勢いよく放水した。水上は、後ろから健悟に見られているのにも関わらず、身を捩り、尻を派手に振りたてた。
ったく、色気のないやつだ。これが柳川だったら……。
結局、四つん這いでもまだ若い水上の相棒はおさまるようすもなく、最後に仰向けに寝かせてトドメを刺してやったのだった。
風呂から上がり、健悟は脱衣場でそそくさと着替えると、まだタオルで股間の水気を拭っていた水上の肩を小突いて、
「おめえは、ああやって派手にケツ振ってるから五分ともたねえんだよ」
「でも親分みたいに年代物じゃないっすから」水上は照れくさそうに頭を掻いた。
「ちっ。酒じゃあるまいし」健悟は鼻を、ふんっ、と鳴らした。
「甘い匂いがするんすよね、親分って」水上は鼻を、くんくん、と鳴らした。「立派な酒樽ぶら下げてますもんね……」
「飲ませてやろうか?」
「悪酔いしそうなんで、遠慮しておくっす」
健悟が吹き出し、水上もつられて笑った——。
健悟は、ベッドに寝転がったまま両腕の匂いを交互に嗅いだ。
なるほど、自分でもわかるくらいに雄のフェロモンが駄々洩れになっている。個室には空調が効かせてあるが、全身が熱く燃え滾るような気がしてならない。
ベッドから起きあがって窓辺まで行き、カーテンを開き、換気のために窓を開けた。
外はまだ真っ暗だ。生温い風が、すうっ、と這入ってきて、室内の空気をかき混ぜながら混じりあう。いつもならそろそろコンビニの配送車が近くを通る時刻だが、今のところ辺りはひっそりと静まりかえっている。
健悟はズボンの股間に手をやった。
——おい、相棒。まだ起きてんのかよ。さっさと寝やがれ。
——ムラムラがおさまらねえんだよ。云わせんな。
——風にあたって頭冷やすんだな。
風呂に這入るときのように、活動服のズボンを、下着と一緒にずり下ろした。貞操帯から自由になった相棒が思いっきり伸びをする。そこへ待ってましたとばかりに生温かい夜風の舌がねっとりと舐めあげる。ちっ、逆効果だったか。相棒はますます猛々しくなって、ちょっとやそっとのことでは寝てくれそうにない。
——おい、健悟。あの写真があっただろ。柳川が送ってきたやつ。
——塔子とのツーショットか?
——ホテルの風呂で撮ったやつに決まってんだろ。
確かにあれなら使えそうだ。
健悟は腰から上を後ろに捻って手を伸ばし、枕許のスマホを手に取った。柳川とのLINEのやり取りを開き、その写真をタップした。男子中学生や男子高校生が、修学旅行の風呂の時間に仲間内のノリで撮るような可愛らしいものではない。女性誌のセックス特集にサービスで附いてくる、イケメン俳優やアイドル歌手がセミヌードで撮ったグラビアに匹敵するものだ。健悟なら流出させることはない、と柳川が信頼しているからこそのセクシーショットが送られてきたのだった。
> 親分、ソープランドってこんな感じですか?
この無邪気なメッセージに健悟は、あらためて吹きだしてしまった。可愛いやつだ。明後日、帰ってきたら……。
健悟は、柳川のセクシーショットを目に焼き付け、それから相棒を握りしめた。少しずつ手筒を上下に動かしながら気分を高めてゆく。いい具合だ。放水は窓の外にしよう。
突然、窓の外で男の呻き声がした。それは健悟が窓辺に歩を進めようとしたのとほとんど同時だった。
健悟は手作業を続けながら、顔だけをそっと窓の外に出して周囲を窺った。呻き声の主は、左にみっつ離れた部屋の隊員だった。彼は窓の外に下半身をすっかり出して、健悟と同じように手筒を激しく動かしていた。上体を反らしているので顔は見えないが、部屋割りが決まっているので誰かはすぐにわかった。
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健悟も限界が来ていた。水上にバレないように窓から離れた。柳川のセクシーショットを思いだし、今しがた目にした水上の姿を柳川のそれに塗りかえる。
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心のなかでこう叫んで健悟は達した。ブッ、という鈍い音と倶に夥しい量の白濁液が迸った。それは長い弧を描き、月の光に照らされて銀色に輝いた。
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