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第三章 親分の長い非番日 ※【地雷:男女恋愛】
レッドライト・ブルーライト ※【地雷:男女絡み】
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日曜の昼下がり、健悟は、風俗街のラブホテルの一室で赤々としたLEDライトに照らされ、全身にどっぷりと汗をかきながら、女のうえで旺んに尻をふり立てていた。耳に聞こえるのは自分の荒々しい鼻息と咽喉の奥から絞り出される咆哮、相手の息も絶え絶えな喘ぎ声、裸かの肉と肉とがぶつかりあう鈍い音、そして絶え間ないベッドの軋む音だけだ。
ベッドの周囲は、エアコンの効果も虚しく熱帯夜のような息苦しさに包まれ、空気清浄機の効果も虚しくデパートの化粧品売り場よりも濃厚なセックスの匂いが充満している。それが健悟と女をいっそう昂らせた。傍から見れば、体格差のある男女の影像が、ひとつに結ばれ、そして解かれをくり返し、その姿態をさまざまに変えながら蠢いているように見えることだろう。
やがて、天をひき裂く雷鳴のような唸り声を上げて、健悟は女のうえに、どさりと倒れこんだ。女は圧迫感と恍惚感に悲鳴を上げた。ふたりの動きがとまった。
しばらくして健悟が固い結び目をほどくようにもぞもぞと動き、女に覆いかぶさっていたその巨軀を横にずらして仰向けに寝転がった。左隣りで息を整えている女の顔を見ないように左腕で両目を覆って、
「シャワー浴びて化粧を直して来いよ。可愛い顔が台無しだぜ」
「それ、誰のせい?」
「おれのせいだ」
「たいへんよくできました!」女は、くすくすと笑い、それから健悟の左の腋窩に顔を埋めた。そして左腕を健悟の胸に回し、汗に濡れそぼった胸の剛毛を細い指で撫でつけた。「わたし、毛深い男って大嫌いだったんだけどなあ。むさ苦しいし、不潔っぽくて。でもなんでだろう。お兄さんは嫌じゃないんだよね。いい匂いがするし」
健悟は両目をきつく閉じ、そのうえに左腕を置いたまま、
「リップサービスだとわかっていても、そんなふうに云われると嬉しいもんだな」
「ホントだよ。それにリップサービスってのは――」
女は、健悟の巨軀にその顔を擦りつけながら股間まで下がった。丸太のような健悟の脚のあいだに腹這いになり、コンドームを勢いよく引っ剥がし、その根元を結びもせずに暗がりのどこかに投げ捨てるが早いか、健悟の相棒を口に含んで顔を上下させた。観念して大の字になった健悟がほどなくして呻き声を上げると、女は勝ち誇ったように、放たれたものを音を立てて啜った。
「お兄さん、いっぱい出たね」
「おまえ、初めてじゃないだろ。今までどこの店にいた?」
「初めてだよ。それじゃあ、シャワー浴びてくるね」
女はベッドをおり、モンローウォークでバスルームに消えた。すぐにシャワーを使う音が聞こえてきた。
健悟は、寝転がったまま手探りでナイトパネルを調節し、照明を眩しくない程度に明るくした。起きあがってヘッドボードに背を預ける。皺くちゃのシーツに血みどろの闘いの痕跡を見つけ、ため息を吐いた。
「おいおい、そっちの初めてかよ」
健悟はベッドから脱け出し、行方不明のコンドームを探し、その根元をつまんでプロペラのようにブンブンと回しながら戻ってきた。
ベッドの側面の壁に大きな鏡が張ってある。健悟はふと立止った。我ながら惚れ惚れとする裸かだ。試みにLEDライトをレッドに調節する。
「ほう」
自然に声が溢れた。夥しい毛が黒煙のように広がり、肉の凹凸の影が煤のようにこびりついている。焔と闘う消防士の姿がそこに映っていた。
「まんざらでもねえようだな、てめえも」
健悟は、出動態勢の相棒にコンドームをひょいと引っ掛けた。ポーズを二つ、三つ取り、毛並みを整えるかのように両手で胸と腹を撫でて肌肉の感触を確認した。
「さてと……」自分の男っぷりに満足した健悟は、LEDライトをブルーに切り替えた。「一服するか」
サイドテーブルのうえに、ホープとジッポと灰皿がある。健悟は、コンドームを逆さにして灰皿のなかに精液を搾りだした。そして用済みのコンドームをゴミ箱にぶち込み、ホープを一本取りだしてジッポで火をつけた。
立ったまま、ゆっくりと吸いこみ、ゆっくりと吐く。
「よりによって、ミユキちゃんかよ」
シャワールームをちらりと見遣って、健悟は、ぼそりと呟いた。
ベッドの周囲は、エアコンの効果も虚しく熱帯夜のような息苦しさに包まれ、空気清浄機の効果も虚しくデパートの化粧品売り場よりも濃厚なセックスの匂いが充満している。それが健悟と女をいっそう昂らせた。傍から見れば、体格差のある男女の影像が、ひとつに結ばれ、そして解かれをくり返し、その姿態をさまざまに変えながら蠢いているように見えることだろう。
やがて、天をひき裂く雷鳴のような唸り声を上げて、健悟は女のうえに、どさりと倒れこんだ。女は圧迫感と恍惚感に悲鳴を上げた。ふたりの動きがとまった。
しばらくして健悟が固い結び目をほどくようにもぞもぞと動き、女に覆いかぶさっていたその巨軀を横にずらして仰向けに寝転がった。左隣りで息を整えている女の顔を見ないように左腕で両目を覆って、
「シャワー浴びて化粧を直して来いよ。可愛い顔が台無しだぜ」
「それ、誰のせい?」
「おれのせいだ」
「たいへんよくできました!」女は、くすくすと笑い、それから健悟の左の腋窩に顔を埋めた。そして左腕を健悟の胸に回し、汗に濡れそぼった胸の剛毛を細い指で撫でつけた。「わたし、毛深い男って大嫌いだったんだけどなあ。むさ苦しいし、不潔っぽくて。でもなんでだろう。お兄さんは嫌じゃないんだよね。いい匂いがするし」
健悟は両目をきつく閉じ、そのうえに左腕を置いたまま、
「リップサービスだとわかっていても、そんなふうに云われると嬉しいもんだな」
「ホントだよ。それにリップサービスってのは――」
女は、健悟の巨軀にその顔を擦りつけながら股間まで下がった。丸太のような健悟の脚のあいだに腹這いになり、コンドームを勢いよく引っ剥がし、その根元を結びもせずに暗がりのどこかに投げ捨てるが早いか、健悟の相棒を口に含んで顔を上下させた。観念して大の字になった健悟がほどなくして呻き声を上げると、女は勝ち誇ったように、放たれたものを音を立てて啜った。
「お兄さん、いっぱい出たね」
「おまえ、初めてじゃないだろ。今までどこの店にいた?」
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女はベッドをおり、モンローウォークでバスルームに消えた。すぐにシャワーを使う音が聞こえてきた。
健悟は、寝転がったまま手探りでナイトパネルを調節し、照明を眩しくない程度に明るくした。起きあがってヘッドボードに背を預ける。皺くちゃのシーツに血みどろの闘いの痕跡を見つけ、ため息を吐いた。
「おいおい、そっちの初めてかよ」
健悟はベッドから脱け出し、行方不明のコンドームを探し、その根元をつまんでプロペラのようにブンブンと回しながら戻ってきた。
ベッドの側面の壁に大きな鏡が張ってある。健悟はふと立止った。我ながら惚れ惚れとする裸かだ。試みにLEDライトをレッドに調節する。
「ほう」
自然に声が溢れた。夥しい毛が黒煙のように広がり、肉の凹凸の影が煤のようにこびりついている。焔と闘う消防士の姿がそこに映っていた。
「まんざらでもねえようだな、てめえも」
健悟は、出動態勢の相棒にコンドームをひょいと引っ掛けた。ポーズを二つ、三つ取り、毛並みを整えるかのように両手で胸と腹を撫でて肌肉の感触を確認した。
「さてと……」自分の男っぷりに満足した健悟は、LEDライトをブルーに切り替えた。「一服するか」
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立ったまま、ゆっくりと吸いこみ、ゆっくりと吐く。
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