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第五章 ワン・モア・チャンス
2 ふざけあって泡まみれ
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——ウルフ流のシャカシャカだって……?
康太は口をぽかんと開けて大樹を見た。脅すふうでもなく、やわらかな顔をしている。襲いかかろうとしているのではなく、ふざけあいっこを始めようとしているようだった。
「よし、始めよう」大樹が云って両腕を上げた。
康太は、さっき勝利にやられたことを思い出し、いったん大樹の胸にあてていた左手を引っこめた。そして考えを巡らせ、大樹に湯槽のふちに坐ってもらおうと、自分は壁側に回った。
「森先輩、こっちのほうに——あっ!」
「捕まえた!」
大樹が楽しそうに云った。
気づけば壁ドンの状態だ。大樹が康太の真正面に立ちはだかり、壁に背をつけた康太を囲うように両手を壁についている。ふたりのあいだには十分な間隔が空いているものの、肉體の檻に閉じこめられたも同然で、抜けだすことは不可能だった。
「おれもおまえも、シモの毛でシャカシャカする必要はないんだ」
大樹の云うとおりだ。目の前に豪奢な体毛がある。胸の谷間だけでなく、両の腋窩も使えそうだ。
「森先輩、両手で失礼しても——」
大樹の胸の谷間から、まだ緩い泡液が滴り落ちようとしている。「——あっ、落ちる!」康太は、思わず両手を大樹の鳩尾あたりに着けた。突き飛ばすような形になったが、大樹はビクともしなかった。
「おっと! びっくりした」大樹は余裕のある声で戯けた。「そのまま上まで持ってこい」
「あの……森先輩の胸をさわっちゃうことになりますけれど……」康太はおずおずと云った。
「男同士だろ? 胸なんかどうってことないさ」大樹は、あっけらかんと云った。「それよりさっさとしないと、シモの毛まで垂れ落ちてしまうぞ」
「はっ、はい!」
康太は、大樹の裸かの肌の上で両手をゆっくりと辷らせた。たくましい筋肉だ。少し脂肪がのっているのか弾力もある。
康太の両手は、自然と大樹の胸全体を撫でるように動きはじめた。
——谷間だけじゃなくて、周りからも泡を集めないと……だよね?
ふと目線を大樹に向けると、目を閉じて心地よさそうにしている。
——さわっても好い、って云ってたし、ここは大胸筋のマッサージだということにして……。
康太は両の手のひらを、大樹の胸の周囲でぐるりと辷らせながら、
「森先輩、すごい筋肉ですね」
「ああ、そうだろ?」
大樹はこう応えて、ふぅ、とため息を洩らした。
——もうちょっと続けてから自然にシャカシャカにもっていこう。
こう考えたそのとき、康太は自分のバズーカ砲に異変を覚えた。明らかに硬くなろうとしている。胸の手を止めて下を覗くと、それは、あろうことか大樹のバズーカ砲の先端を目指して持ちあがろうとしていた。
——しまった! シャカシャカに集中しないと!
康太は無心になろうとした。両目をかたく閉じ、胸の谷間で豊饒の毛をこするように指先で泡立てる。ときおり薄目を開けて垂れ落ちそうにないか確認した。
「おっ、出来上がったみたいだな」
と大樹の声がして、康太は手を止めて目を開けた。白い泡がこんもりと立って、大樹の胸の谷間をおおっている。康太は、いつの間に、と驚いた。
大樹は泡を胸から手のひらにすくいとり、出来具合を確かめた。「いい出来だ」
康太は胸をほっと撫でおろした。いつの間にか股間のバズーカ砲も落ち着いている。
「じゃあ、つぎは——」大樹は泡を両肩に乗せてから、康太を見下ろした。両手はすでに壁から放しているが、大きな裸かの肉體が康太の目の前で壁のように立っている。「——おまえの番だ」
「え」
大樹は康太の裸かをさっと見て、
「大野さんと今井に教えてもらったんだよな?」
康太はこくりと頷いた。
「それじゃあ、シモの毛でやんなきゃな。カミの毛はまたこんどだ」
大樹はこう云うと、棚に手を伸ばした。ボディソープのボトルを手に取ると、バズーカ砲を構えるかのように横向きに倒し、ノズルの先を康太の臍に向けた。ポンプをプッシュする。白いソープ液が康太の臍の穴を直撃した。
「うわぁっ、森先輩!」康太はお腹をおさえてその場でうずくまった。その拍子に尻もちをついてしまう。立上ろうとして顔を上げると、大樹のバズーカ砲が目に飛びこんできた。「うわっ!」
「康太、もう見慣れとるやろ」大樹が、しょうがないなあ、といった口調で云った。素の状態らしく、言葉づかいに博多弁とそのイントネーションが混ざっている。「風呂にだって何度も一緒に行っとるやろ? あんまり驚かれるとこっちが恥ずかしくなるやんか」
大樹は両手を康太の腋窩に辷りこませると、そのまま康太を軽々と持ちあげ、そして立たせた。「オリエン合宿んときも、こうやったなあ」
康太は、あっ、と小声を洩らした。あのときの状況がフラッシュバックする。脱衣場で尻もちをついて……。恥ずかしいが認めるしかない。
「そ……そうでしたね」康太は、少しぎこちないハニカミ顔を泛かべた。
大樹は、じゃれつくような、けしかけるような顔つきになって、もう一度康太に向けてポンプをプッシュした。爽やかに笑いながら云った。「こら、康太。よけるな。凝っとしてろ!」
そして、もう一度プッシュ。そしてさらにワン・プッシュ——康太の、胸と云わず腹と云わず肩と云わず、上半身にソープ液が迸った。
「森先輩!」康太は少しだけ勇気を出して、口をとんがらせた。深刻な状況ではない。大樹は自分と遊びたがっているのだ。「ぼくばっかりドロドロになって、ひどいです」
康太は、ボディソープのボトルを大樹から奪いとり、そのノズルをイタズラな狼の胸に向け、ポンプを三度プッシュした。「ズドーン! ズドーン! ズドーン!」
大樹の毛深い胸に白い液体が飛び散った。
大樹はお道化た口調で、
「うっ! やられた……」
と云って、床に胡座をかいた。「さあ、康太。おまえも坐れ」
康太も床に胡座をかいた。
大樹は、胸と腹を両指でシャカシャカし、手のひらが泡まみれになると、その泡を康太にピッと飛ばした。「キャッチボールだ」
康太も笑って同じようにした。「ぼくのボールのほうが大きいですよ」
ふたりは笑いあった。
そして泡まみれになって、ひとしきりキャッチボールを楽しんだ。
康太は口をぽかんと開けて大樹を見た。脅すふうでもなく、やわらかな顔をしている。襲いかかろうとしているのではなく、ふざけあいっこを始めようとしているようだった。
「よし、始めよう」大樹が云って両腕を上げた。
康太は、さっき勝利にやられたことを思い出し、いったん大樹の胸にあてていた左手を引っこめた。そして考えを巡らせ、大樹に湯槽のふちに坐ってもらおうと、自分は壁側に回った。
「森先輩、こっちのほうに——あっ!」
「捕まえた!」
大樹が楽しそうに云った。
気づけば壁ドンの状態だ。大樹が康太の真正面に立ちはだかり、壁に背をつけた康太を囲うように両手を壁についている。ふたりのあいだには十分な間隔が空いているものの、肉體の檻に閉じこめられたも同然で、抜けだすことは不可能だった。
「おれもおまえも、シモの毛でシャカシャカする必要はないんだ」
大樹の云うとおりだ。目の前に豪奢な体毛がある。胸の谷間だけでなく、両の腋窩も使えそうだ。
「森先輩、両手で失礼しても——」
大樹の胸の谷間から、まだ緩い泡液が滴り落ちようとしている。「——あっ、落ちる!」康太は、思わず両手を大樹の鳩尾あたりに着けた。突き飛ばすような形になったが、大樹はビクともしなかった。
「おっと! びっくりした」大樹は余裕のある声で戯けた。「そのまま上まで持ってこい」
「あの……森先輩の胸をさわっちゃうことになりますけれど……」康太はおずおずと云った。
「男同士だろ? 胸なんかどうってことないさ」大樹は、あっけらかんと云った。「それよりさっさとしないと、シモの毛まで垂れ落ちてしまうぞ」
「はっ、はい!」
康太は、大樹の裸かの肌の上で両手をゆっくりと辷らせた。たくましい筋肉だ。少し脂肪がのっているのか弾力もある。
康太の両手は、自然と大樹の胸全体を撫でるように動きはじめた。
——谷間だけじゃなくて、周りからも泡を集めないと……だよね?
ふと目線を大樹に向けると、目を閉じて心地よさそうにしている。
——さわっても好い、って云ってたし、ここは大胸筋のマッサージだということにして……。
康太は両の手のひらを、大樹の胸の周囲でぐるりと辷らせながら、
「森先輩、すごい筋肉ですね」
「ああ、そうだろ?」
大樹はこう応えて、ふぅ、とため息を洩らした。
——もうちょっと続けてから自然にシャカシャカにもっていこう。
こう考えたそのとき、康太は自分のバズーカ砲に異変を覚えた。明らかに硬くなろうとしている。胸の手を止めて下を覗くと、それは、あろうことか大樹のバズーカ砲の先端を目指して持ちあがろうとしていた。
——しまった! シャカシャカに集中しないと!
康太は無心になろうとした。両目をかたく閉じ、胸の谷間で豊饒の毛をこするように指先で泡立てる。ときおり薄目を開けて垂れ落ちそうにないか確認した。
「おっ、出来上がったみたいだな」
と大樹の声がして、康太は手を止めて目を開けた。白い泡がこんもりと立って、大樹の胸の谷間をおおっている。康太は、いつの間に、と驚いた。
大樹は泡を胸から手のひらにすくいとり、出来具合を確かめた。「いい出来だ」
康太は胸をほっと撫でおろした。いつの間にか股間のバズーカ砲も落ち着いている。
「じゃあ、つぎは——」大樹は泡を両肩に乗せてから、康太を見下ろした。両手はすでに壁から放しているが、大きな裸かの肉體が康太の目の前で壁のように立っている。「——おまえの番だ」
「え」
大樹は康太の裸かをさっと見て、
「大野さんと今井に教えてもらったんだよな?」
康太はこくりと頷いた。
「それじゃあ、シモの毛でやんなきゃな。カミの毛はまたこんどだ」
大樹はこう云うと、棚に手を伸ばした。ボディソープのボトルを手に取ると、バズーカ砲を構えるかのように横向きに倒し、ノズルの先を康太の臍に向けた。ポンプをプッシュする。白いソープ液が康太の臍の穴を直撃した。
「うわぁっ、森先輩!」康太はお腹をおさえてその場でうずくまった。その拍子に尻もちをついてしまう。立上ろうとして顔を上げると、大樹のバズーカ砲が目に飛びこんできた。「うわっ!」
「康太、もう見慣れとるやろ」大樹が、しょうがないなあ、といった口調で云った。素の状態らしく、言葉づかいに博多弁とそのイントネーションが混ざっている。「風呂にだって何度も一緒に行っとるやろ? あんまり驚かれるとこっちが恥ずかしくなるやんか」
大樹は両手を康太の腋窩に辷りこませると、そのまま康太を軽々と持ちあげ、そして立たせた。「オリエン合宿んときも、こうやったなあ」
康太は、あっ、と小声を洩らした。あのときの状況がフラッシュバックする。脱衣場で尻もちをついて……。恥ずかしいが認めるしかない。
「そ……そうでしたね」康太は、少しぎこちないハニカミ顔を泛かべた。
大樹は、じゃれつくような、けしかけるような顔つきになって、もう一度康太に向けてポンプをプッシュした。爽やかに笑いながら云った。「こら、康太。よけるな。凝っとしてろ!」
そして、もう一度プッシュ。そしてさらにワン・プッシュ——康太の、胸と云わず腹と云わず肩と云わず、上半身にソープ液が迸った。
「森先輩!」康太は少しだけ勇気を出して、口をとんがらせた。深刻な状況ではない。大樹は自分と遊びたがっているのだ。「ぼくばっかりドロドロになって、ひどいです」
康太は、ボディソープのボトルを大樹から奪いとり、そのノズルをイタズラな狼の胸に向け、ポンプを三度プッシュした。「ズドーン! ズドーン! ズドーン!」
大樹の毛深い胸に白い液体が飛び散った。
大樹はお道化た口調で、
「うっ! やられた……」
と云って、床に胡座をかいた。「さあ、康太。おまえも坐れ」
康太も床に胡座をかいた。
大樹は、胸と腹を両指でシャカシャカし、手のひらが泡まみれになると、その泡を康太にピッと飛ばした。「キャッチボールだ」
康太も笑って同じようにした。「ぼくのボールのほうが大きいですよ」
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