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第三章 貫通式
5 風呂掃除
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康太は浴室に這入ると、すぐに後ろ手でドアを閉めた。
——結構、広いんだなあ。お父さんと昔、いっしょにお風呂に……。
と回想しかけて、かぶりを振った。ここは上級生である大樹しか使うことを許されていないスペースだ。ゆったりと足を伸ばせそうな余裕のあるバスタブも、両手を伸ばして、ぐるりと一回転しても十分余裕のある広い洗い場も、最新式の——少なくとも康太にはそう見えた——シャワーも、康太には関係ないものだ。
康太は後ろをふり返った。曇りガラスの向うに、こちらに背を向けて両脚を拭いている大樹の姿が見える。その大樹が横に向きを変えて片方の脚を大胆に上げ、踵を洗面台に乗せた。そして大胆に展かれた両脚の付け根にある、あの大きなものを……。
——見ちゃいけない!
康太は慌てて向きなおった。
気づけば湯気が康太の全身にまとわりついていた。ここは、さっきまで大樹がシャワーを浴びていた場所だ。だからこの湯気は、大樹がその肌に受け、弾き、迸らせたシャワーの湯が、彼の残り香をたっぷりと含んで微細な粒になったようなものだ。康太は、全身の毛穴という毛穴から大樹が浸透してくるような気分になって、尻をきゅっと窄めた。すでに大樹が自分のからだに這入りこもうとしていた。
康太は、栓を捻ると、片手にシャワーヘッドを持ち、もう片方の手で切り替えレバーを水の印へ回した。湯はすぐに水に変わった。康太は、浴室内に籠った熱気を冷ますため、シャワーを右の壁一面に掛けようとした。
そのとき、背後でドライヤーの音がした。康太は、シャワーヘッドを手にしたまま、顔だけを脱衣室のほうへ向けた。大樹が洗面台の前で髪を乾かしている姿が見えた。まだ腰にタオルを巻いてはいない。横向きの朧げな裸體の中央から黒いものが突きだしていた。ガラスの曇り加工に暈されて、はっきりとは見えないけれども、その存在感は康太の目を惹いた。
康太は慌てて向きを変え、こんどは湯気で曇っている目の前の全身ミラーにシャワーの水を掛けた。その表面を水が滝のように流れおちる。康太は、シャワーをいったん止め、棚から水切りワイパーを手に取ろうとした。
ふいに全身ミラーをちらりと見た。
勃起しかけている。
——ぼく、どうしちゃったんだろう。
そこへ、突然、大樹の声がした。
「康太、出るときに換気扇回しておけよ。あと、寝る前の歯磨きも忘れるな」
康太は、ほとんど反射的に、はい、と短く応えた。ワンテンポ遅れて、恐る恐るふり向くと、大樹はすでに脱衣室からいなくなっていた。
康太は、ひとまずシャワーを冷水にして勃起を鎮めた。
——これから貫通式かあ。
棚にボディソープのボトルがあった。大樹の私物だ。康太はそれを手に取ってしばらく眺めた。使っても好いのかな。大樹は何も云わなかった。すでに風呂はすませているけれど、もう一度、ちゃんと洗ったほうが……。
康太は、ソープ液を少しだけ手に取った。ミルクいろのとろりとした液体だった。康太は両手をあわせて手のひらに塗りひろげ、自分のものを叮嚀に洗った。
——森先輩はコンドームを使うけど、汚したらマズいよな……。
康太はもう一度ソープ液を手に取った。その手をそっと尻に運んでゆく。尻の谷間にソープ液を塗りたくり、これから使われる部分に、中指をそっと触れさせた。洗わなきゃ、まずは表面だけでも。周囲からゆっくりと円を描くように指の腹を這わせる。こそばゆいような、むずむずするような、何とも云えない感覚だ。
「あ」
バランスを崩しそうになって、康太はもう片方の手を正面の全身ミラーについた。目を閉じて、尻の中指をくるくると動かした。なかを洗わないと。けれども勇気が出ない。大樹の大きなものが頭に泛んだ。康太は中指を立ててみた。ゆっくりと息を吐きながら、尻のちからを抜く。早くしなければ。ここでぐずぐずしていたら、あの犬笛が鳴る——。
康太は浴室から出ると、換気扇のスイッチを入れ、そして歯磨きをした。濡れたからだをどうしようかと思っていると、洗濯かごのなかに大樹が使っていたバスタオルがあったので、それを使った。最後に鏡の前に立ち、両手で頬を数回叩いて気合いを入れた。
——結構、広いんだなあ。お父さんと昔、いっしょにお風呂に……。
と回想しかけて、かぶりを振った。ここは上級生である大樹しか使うことを許されていないスペースだ。ゆったりと足を伸ばせそうな余裕のあるバスタブも、両手を伸ばして、ぐるりと一回転しても十分余裕のある広い洗い場も、最新式の——少なくとも康太にはそう見えた——シャワーも、康太には関係ないものだ。
康太は後ろをふり返った。曇りガラスの向うに、こちらに背を向けて両脚を拭いている大樹の姿が見える。その大樹が横に向きを変えて片方の脚を大胆に上げ、踵を洗面台に乗せた。そして大胆に展かれた両脚の付け根にある、あの大きなものを……。
——見ちゃいけない!
康太は慌てて向きなおった。
気づけば湯気が康太の全身にまとわりついていた。ここは、さっきまで大樹がシャワーを浴びていた場所だ。だからこの湯気は、大樹がその肌に受け、弾き、迸らせたシャワーの湯が、彼の残り香をたっぷりと含んで微細な粒になったようなものだ。康太は、全身の毛穴という毛穴から大樹が浸透してくるような気分になって、尻をきゅっと窄めた。すでに大樹が自分のからだに這入りこもうとしていた。
康太は、栓を捻ると、片手にシャワーヘッドを持ち、もう片方の手で切り替えレバーを水の印へ回した。湯はすぐに水に変わった。康太は、浴室内に籠った熱気を冷ますため、シャワーを右の壁一面に掛けようとした。
そのとき、背後でドライヤーの音がした。康太は、シャワーヘッドを手にしたまま、顔だけを脱衣室のほうへ向けた。大樹が洗面台の前で髪を乾かしている姿が見えた。まだ腰にタオルを巻いてはいない。横向きの朧げな裸體の中央から黒いものが突きだしていた。ガラスの曇り加工に暈されて、はっきりとは見えないけれども、その存在感は康太の目を惹いた。
康太は慌てて向きを変え、こんどは湯気で曇っている目の前の全身ミラーにシャワーの水を掛けた。その表面を水が滝のように流れおちる。康太は、シャワーをいったん止め、棚から水切りワイパーを手に取ろうとした。
ふいに全身ミラーをちらりと見た。
勃起しかけている。
——ぼく、どうしちゃったんだろう。
そこへ、突然、大樹の声がした。
「康太、出るときに換気扇回しておけよ。あと、寝る前の歯磨きも忘れるな」
康太は、ほとんど反射的に、はい、と短く応えた。ワンテンポ遅れて、恐る恐るふり向くと、大樹はすでに脱衣室からいなくなっていた。
康太は、ひとまずシャワーを冷水にして勃起を鎮めた。
——これから貫通式かあ。
棚にボディソープのボトルがあった。大樹の私物だ。康太はそれを手に取ってしばらく眺めた。使っても好いのかな。大樹は何も云わなかった。すでに風呂はすませているけれど、もう一度、ちゃんと洗ったほうが……。
康太は、ソープ液を少しだけ手に取った。ミルクいろのとろりとした液体だった。康太は両手をあわせて手のひらに塗りひろげ、自分のものを叮嚀に洗った。
——森先輩はコンドームを使うけど、汚したらマズいよな……。
康太はもう一度ソープ液を手に取った。その手をそっと尻に運んでゆく。尻の谷間にソープ液を塗りたくり、これから使われる部分に、中指をそっと触れさせた。洗わなきゃ、まずは表面だけでも。周囲からゆっくりと円を描くように指の腹を這わせる。こそばゆいような、むずむずするような、何とも云えない感覚だ。
「あ」
バランスを崩しそうになって、康太はもう片方の手を正面の全身ミラーについた。目を閉じて、尻の中指をくるくると動かした。なかを洗わないと。けれども勇気が出ない。大樹の大きなものが頭に泛んだ。康太は中指を立ててみた。ゆっくりと息を吐きながら、尻のちからを抜く。早くしなければ。ここでぐずぐずしていたら、あの犬笛が鳴る——。
康太は浴室から出ると、換気扇のスイッチを入れ、そして歯磨きをした。濡れたからだをどうしようかと思っていると、洗濯かごのなかに大樹が使っていたバスタオルがあったので、それを使った。最後に鏡の前に立ち、両手で頬を数回叩いて気合いを入れた。
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