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第一章 海軍の男
3 結界が張られているらしい
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脱衣場にはすでに学生たちが数名来ていた。誰もが見事な脱ぎっぷりだ。真裸かのまま互いの筋肉自慢をしながら談笑する者たちもあれば、洗面台の鏡に裸身を映して筋肉の各部位をチェックしている者たちもあった。ここは体育大学の風呂だ、筋肉こそがユニフォームだ、と云わんばかりだった。
康太と健司は左の隅っこに歩いていった。
「不思議だなあ」康太は周囲を見まわした。「二週間ずっと此処だけ空いているよね。まるで予約席みたいに」
「昔、此処で不幸があったとか。ああ、くわばらくわばら」
「そんな縁起でもないこと云うなよ」
「結界でも張ってあったりして」
「怖い鬼が封じ込められてるってこと? そのときは健司の出番だね。背負い投げ一本でバシッと決めてよ」
「鬼に金棒、野球部にバット。でも柔道部は素手なんだよな」
「冗談だよ。まあ、でも新入生だから、いちばんしたの棚を使わないとね」
康太はさりげなく、死角となりそうな棚を選んだ。
健司は、筋肉のユニフォームにあっさりと早着替えをした。そして康太に向って、
「さあ、脱いだ脱いだ。それとも、おれが脱がしてやろうか?」
と云って、最後の一枚を脱がす素振りをした。
「わかったよ。脱ぐから。自分で脱ぐってば」
康太は、目をつぶって下着の両端をつかみ、深呼吸してから、一気に足許まで下ろした。目を開けて急いで足先を引き抜いた。今日こそは、と念じて、すぐさまタオルを手に取ろうとしたところへ健司の手が伸びてきて、タオルを取り上げられてしまった。足許に抜け殻のような白のトランクスが残された。
「返せよ」康太は云った。
「はい、御守り」健司は笑って洗面道具の入ったかごを康太に手渡した。「帯は今日もおれが預かる」
「なんでだよ」
「おれは黒帯より重いの持ったことないんだ。おまえはバットとかボールとか――」
「まったくもう……」
康太は仕方なしに御守りを両手に下げた。
康太と健司は左の隅っこに歩いていった。
「不思議だなあ」康太は周囲を見まわした。「二週間ずっと此処だけ空いているよね。まるで予約席みたいに」
「昔、此処で不幸があったとか。ああ、くわばらくわばら」
「そんな縁起でもないこと云うなよ」
「結界でも張ってあったりして」
「怖い鬼が封じ込められてるってこと? そのときは健司の出番だね。背負い投げ一本でバシッと決めてよ」
「鬼に金棒、野球部にバット。でも柔道部は素手なんだよな」
「冗談だよ。まあ、でも新入生だから、いちばんしたの棚を使わないとね」
康太はさりげなく、死角となりそうな棚を選んだ。
健司は、筋肉のユニフォームにあっさりと早着替えをした。そして康太に向って、
「さあ、脱いだ脱いだ。それとも、おれが脱がしてやろうか?」
と云って、最後の一枚を脱がす素振りをした。
「わかったよ。脱ぐから。自分で脱ぐってば」
康太は、目をつぶって下着の両端をつかみ、深呼吸してから、一気に足許まで下ろした。目を開けて急いで足先を引き抜いた。今日こそは、と念じて、すぐさまタオルを手に取ろうとしたところへ健司の手が伸びてきて、タオルを取り上げられてしまった。足許に抜け殻のような白のトランクスが残された。
「返せよ」康太は云った。
「はい、御守り」健司は笑って洗面道具の入ったかごを康太に手渡した。「帯は今日もおれが預かる」
「なんでだよ」
「おれは黒帯より重いの持ったことないんだ。おまえはバットとかボールとか――」
「まったくもう……」
康太は仕方なしに御守りを両手に下げた。
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