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第一章 海軍の男
1 オリエンテーション最終日
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四月、金曜日の夜――。
都内某体育大学で行われている新入生オリエンテーションの最終日だった。新入生たちの宿舎となった大学構内の研修センターは、二週間にわたるこの行事のあいだに、全国から集まった新入生の持ち込んだ風と土の薫りをたっぷりと吸い込んで、爽やかで活気に満ちた雰囲気に包まれていた。
林康太と杉野健司は、宿舎の相部屋で入浴の準備をしていた。
着替えの入ったバッグを背負い、洗面道具を詰め込んだ小さなかごを片手に下げて、ふたりは立上がった。
「まさか相部屋まで健司と一緒だったとはね」康太が室内を見まわしながら笑った。
健司も笑い返して、
「保育園のときからの附合いだもんな。そして同じ大学で、しかも――」
「全額免除の特待生!」幼馴染のふたりは声をあわせ、互いの右腕をクロスさせた。
「さ、康太。風呂に行くぞ」
健司はクロスを解くや否や、踵を浮かせて右の手で康太の首根っこをがっしりと捉えると、ぐいっと自分の目線まで引き下ろした。そして康太の顔を覗き込んで、
「今夜は最終日だから最初から最後までいないとな」
「う、うん……」
康太は躊躇いがちに云った。
都内某体育大学で行われている新入生オリエンテーションの最終日だった。新入生たちの宿舎となった大学構内の研修センターは、二週間にわたるこの行事のあいだに、全国から集まった新入生の持ち込んだ風と土の薫りをたっぷりと吸い込んで、爽やかで活気に満ちた雰囲気に包まれていた。
林康太と杉野健司は、宿舎の相部屋で入浴の準備をしていた。
着替えの入ったバッグを背負い、洗面道具を詰め込んだ小さなかごを片手に下げて、ふたりは立上がった。
「まさか相部屋まで健司と一緒だったとはね」康太が室内を見まわしながら笑った。
健司も笑い返して、
「保育園のときからの附合いだもんな。そして同じ大学で、しかも――」
「全額免除の特待生!」幼馴染のふたりは声をあわせ、互いの右腕をクロスさせた。
「さ、康太。風呂に行くぞ」
健司はクロスを解くや否や、踵を浮かせて右の手で康太の首根っこをがっしりと捉えると、ぐいっと自分の目線まで引き下ろした。そして康太の顔を覗き込んで、
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