見習い義肢装具士ルカの決闘(デュエル)

ノバト

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1章 ローヌの決闘

3.初勝利

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 身軽みがるになったところで、不利ふりな状況は変わっていなかった。
 トカゲの毒吹どくふきはなんなくかわせるようになったが、逃げ回るだけでこちらには反撃の手段しゅだんがない。

 武器、武器、武器、武器!

 武器置き場に置いてある武器をイメージして攻勢こうせいてんじることはできないかと思案しあんめぐらせるが、なかなか良いアイディアがかばない。
 そもそも義肢装具士ぎしそうぐしを目指していたオレの武器とはなんだろう?
 そんなものはない。
 あるとすれば日本で学んだ知識だけだ。義肢装具士ぎしそうぐしの知識と、義務教育&高校で学んだ勉強。。。

 そういえば、トカゲは爬虫類はちゅうるいだったな。。。

 爬虫類はちゅうるいは火をかない。唾液だえきどくが含まれているものはいるが、、、
「こいつも、いまだに火をかないな? 毒霧どくぎりみたいのはくけど、、、」

 大トカゲは、相変あいかわらず笑ったような顔でなんとか間合まあいをめようと近づいてくる。
 だが、そのスピードも、舌を出し入れする回数も減ってきていた。疲れてきたのだろう。
 日本の図鑑にかかれていた爬虫類はちゅうるい生態せいたいが同じなら、このトカゲも変温へんおん動物なので持久力はないはずだ。
 そして、もし同じ動物なら、生命の危険を感じれば戦いをやめるかもしれない。

 オレは再び武器置き場に向かった。
 そして、裸足はだしになった。
 長い槍を二本選び、のない方を地面に立てて、足の親指と人差し指ではさんで槍にのぼった。

 竹馬たけうまである。

 日本でかたがれる古い遊びの一つだった。
 老人ホームのイベントで教わって、「すじがいい」とめられたことが思い出される。

 両手はふさがるし、動きが機敏きびんになるわけでもない。
 攻撃力ゼロと言っていいスタイルだが、視覚認知しかくにんち能力の低い爬虫類はちゅうるいには、どう見えるだろう?
 想像だが、オレの足が突然びて、巨大化きょだいかしたように見えるのではないだろうか?
 爬虫類はちゅうるいも含め多くの動物は、自分よりも巨大なものにはおそれをいだき無理な戦いはけるはず。
 
 オレは二本のやり竹馬たけうまのようにして、大トカゲに向き合った。
 
 王様をバカよばわりできないな。と思った。
 この態勢たいせいでは、トカゲの毒吐どくはきをける自信もない。その上、本当に火吹きのスキルがあるなら、こんがり焼かれてしまうことになるだろう。

 火吹きトカゲは、ピタリと動きを止めた。
 今まで執拗しつように追いかけていたのに…。
 そして、ゆっくり背を向けると小走りではなれていった。

 最後には、闘技場の壁のすみでうずくまって、ついに動かなくなってしまった。

 決闘デュエル決着けっちゃくげるドラがなった。
「勝者、シュブドー王国のルカ!」

 オレは二本のやりから降りるとことまでは記憶があったが、目が冷めたときは、闘技場の治療ちりょう室のベットの上だった。
 緊張の中で気づいていなかったが、脱水だっすい症状と体力の限界を迎えていた。


 ここが日本の自分の家のベットの上ならどんなにいいかと思ったが、世界はシュブドー王国のままだった。

 ガイドのロゼが明るい笑顔でむかえてくれた。
「勝っちゃいましたね! すごいです!すごいです!」

 疲れのせいかひど頭痛ずつうがした。

「魔王軍は?」

撤退てったいしました。騎士団も返還へんかんされました♪」

「あんな戦いでも認められるんだな…」

「なんでもいいのです。魔王軍の『火吹きトカゲ』は戦意喪失せんいそうしつ。勝ちは勝ちです!」

「運がよかっただけ。二度とごめんだ」
 オレは身を起こそうとしてもう一度ベットに倒れた。身体がだるい。

 次も同じように戦えるかと言われれば、もちろんNOだ。こんなことを繰り返していたら、いつかは死んでしまうだろう。生きて終えられたとしても無事では済まない。
 日本で流行はやっていたゲームのように、宿屋で休めば完全回復!なんてことにはならないのだ。

「王様はよっぽどうれしかったみたいで『もう一度決闘デュエルしよう!』と魔王に言っていたそうですよ」

「……」
 一刻いっこくも早く、日本に再留学しなければ!

「ところで、
 褒美ほうびとかないのか? 褒美ほうびはいらないから、日本に戻してもらえないかな?」

 ガイドに留学の可否かひを決定する権限けんげんがないことくらいわかっていたが、王様にオレの希望を伝えるくらいはできると思った。なんてったって、オレはこの王国をピンチから救ったのだから。

「えー。それは無理ですよー」

「なぜ?」

「だって、みんなルカさんは死ぬと思ってましたから~。
 大番狂おおばんくるわせで勝っちゃいましたから、王様も大喜びでしたし、そう簡単に手放てばなさないと思いますよ」
 ニッコリ満面の笑みである。

「おい。おまえもオレに感謝してるんだよな?」

「なんの話ですか?」

「魔族のコールになりたくないって言ってただろ? 婚活こんかつだっけ?」

「ああ、あれ言った後で思ったんですけど、シュブドーにこだわるのも良くないと思うんですよね。
 この国ってかたむいていると思うんですよね。そんなところで結婚けっこんしても将来不安でしょう? 思い切って魔族の国で新しいタイプの殿方とのがたを探すのもいいかも♪ って」

 絶句ぜっくしかなかった。
 だから、このロゼという女は油断ゆだんできないんだ。
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