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で、改めて周囲を見回してみる。と。
「この召喚が成功したのは、吾等コーデル家の力だ!」
「何を言うか! 吾等がヴィンバル家の力こそ!」
「いやいや最強はやはり吾等エムーベ家だ! だから大魔導士を好きに動かす権利は吾等にある!」
「貴様ら脳筋が大魔導士の力をうまく使えるとは思えん。あの者の身柄は、魔道一族のコーデル家で預かる!!」
「……わー…。好き勝手言われてるぅー」
「ほんとにねー」
思わずつぶやくと同時に、足元のフェレットが首をかしげた。なごむ。
……しかし、いつまでもこうしているわけにもいくまい。
どんな事態も、対処するには、まず現状確認が必要。
とりあえず、ここがどんな場所か、把握するとこから始めてみよう。
……ふむふむ?
現在地は、水晶をくりぬいて作られたかのような、透明なドーム型の建物の中。
そこにいるのは、わたしとしゃべるフェレット。それと、……人が五十人ほど。女性が数人いるほかはほぼ男性か。
騒ぎを遠巻きに見ている女性はみんな薄い布のドレスを着てる。同じく遠巻きにしている男性のうち数人は、チュニックを身に着けていた。
……まるで中世ヨーロッパの世界に入り込んだみたいだ。
今度はいさかいあってる人を見てると、わたしと同じような足元まで届くローブを着ているグループと、鎧兜をつけているグループ。そして、赤青黄色緑に紫と、それぞれが色とりどりの豪華な衣装を身に着けているグループに分かれている。
……話の内容で分析するとー、ローブをつけてる人たちがコーデル家で魔術師一族、鎧兜がエムーベ家で脳筋一族。でもって、金銀財宝を体にはりつけてるヴィンバル一家が政治に特化してるってとこかな。
で、
そして、ここにいるのはみな同じヘルマール一族。
要するに、領土を広げるために一族で協力し合ってはいるものの、スキあらば自分の家…あるいは自分が一族の頂点に立とうと画策している連中の集まりだね。
「え、ちょっと待て。そんな身勝手なお話に巻き込まれて、異世界転移なんかしちゃったの? わたし」
「うん?」
わたしの言葉に反応して、フェレットが首をかしげる。なごむ。けど。
「勝手な事を言うな!!」
「貴殿こそ!!」
「そもそも! 大魔導士を異世界から召喚できるのを突き止めたのは我がウィンバル家だ! 我が家にこそ大魔導士を意のままに動かす主導権がある!!」
………ぷちん。
頭の中で、何かが切れた音がした。
これが堪忍袋の緒が切れるってヤツか? できればこんな腹立たしい経験したくなかったよ?
「へー、ほー」
メラメラと。心の中の怒りが燃える。そんなわたしの耳に、フェレットの子供じみた能天気な声が聞こえる。
「ちなみに、ここにいる人たちの討伐ランクは、一番高い人でもSだよ?」
「………」
最強な人でも、わたしより二つ下のランクか。
「……ねえ」
「ん?」
「この世界のステータスの差って、わたしがやってたゲームと同じと思っていいんだよね?」
「うん。だいじょうぶ」
フェレットがこっくりとうなずくので、わたしは少し自信が持てた。
「なら…勝てるか」
自覚できるほどのあくどい笑みを浮かべながら、ゆっくりと、怒鳴り合う連中に近づいて行く。
「この召喚が成功したのは、吾等コーデル家の力だ!」
「何を言うか! 吾等がヴィンバル家の力こそ!」
「いやいや最強はやはり吾等エムーベ家だ! だから大魔導士を好きに動かす権利は吾等にある!」
「貴様ら脳筋が大魔導士の力をうまく使えるとは思えん。あの者の身柄は、魔道一族のコーデル家で預かる!!」
「……わー…。好き勝手言われてるぅー」
「ほんとにねー」
思わずつぶやくと同時に、足元のフェレットが首をかしげた。なごむ。
……しかし、いつまでもこうしているわけにもいくまい。
どんな事態も、対処するには、まず現状確認が必要。
とりあえず、ここがどんな場所か、把握するとこから始めてみよう。
……ふむふむ?
現在地は、水晶をくりぬいて作られたかのような、透明なドーム型の建物の中。
そこにいるのは、わたしとしゃべるフェレット。それと、……人が五十人ほど。女性が数人いるほかはほぼ男性か。
騒ぎを遠巻きに見ている女性はみんな薄い布のドレスを着てる。同じく遠巻きにしている男性のうち数人は、チュニックを身に着けていた。
……まるで中世ヨーロッパの世界に入り込んだみたいだ。
今度はいさかいあってる人を見てると、わたしと同じような足元まで届くローブを着ているグループと、鎧兜をつけているグループ。そして、赤青黄色緑に紫と、それぞれが色とりどりの豪華な衣装を身に着けているグループに分かれている。
……話の内容で分析するとー、ローブをつけてる人たちがコーデル家で魔術師一族、鎧兜がエムーベ家で脳筋一族。でもって、金銀財宝を体にはりつけてるヴィンバル一家が政治に特化してるってとこかな。
で、
そして、ここにいるのはみな同じヘルマール一族。
要するに、領土を広げるために一族で協力し合ってはいるものの、スキあらば自分の家…あるいは自分が一族の頂点に立とうと画策している連中の集まりだね。
「え、ちょっと待て。そんな身勝手なお話に巻き込まれて、異世界転移なんかしちゃったの? わたし」
「うん?」
わたしの言葉に反応して、フェレットが首をかしげる。なごむ。けど。
「勝手な事を言うな!!」
「貴殿こそ!!」
「そもそも! 大魔導士を異世界から召喚できるのを突き止めたのは我がウィンバル家だ! 我が家にこそ大魔導士を意のままに動かす主導権がある!!」
………ぷちん。
頭の中で、何かが切れた音がした。
これが堪忍袋の緒が切れるってヤツか? できればこんな腹立たしい経験したくなかったよ?
「へー、ほー」
メラメラと。心の中の怒りが燃える。そんなわたしの耳に、フェレットの子供じみた能天気な声が聞こえる。
「ちなみに、ここにいる人たちの討伐ランクは、一番高い人でもSだよ?」
「………」
最強な人でも、わたしより二つ下のランクか。
「……ねえ」
「ん?」
「この世界のステータスの差って、わたしがやってたゲームと同じと思っていいんだよね?」
「うん。だいじょうぶ」
フェレットがこっくりとうなずくので、わたしは少し自信が持てた。
「なら…勝てるか」
自覚できるほどのあくどい笑みを浮かべながら、ゆっくりと、怒鳴り合う連中に近づいて行く。
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