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第二章 カップル(ABC)編
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そう言えば、よく考えたら私は良ちゃんのこと、自分の友達だと思っている人には「彼氏だよ」って紹介しているのだけど、その逆はほぼない。山岳部のサークルは他のキャンパスがメインで活動しているみたいだから仕方がないにしても、良ちゃんのお友達に紹介して貰ったのって、今までないかも。
「キララ?」
私が思いを巡らせていると、良ちゃんが声を掛けてきた。顔を上げると、そこには既に増田さんの姿は見当たらない。
「あれ?増田さんは?」
私が聞くと、「用事があるって、もう行ったよ」と言われて焦る。良ちゃんのお友達だと言うのに、私挨拶もせずにボーっとしてた!
「ご、ごめんね……」
「ん?何が?」
良ちゃんはきょとんとしている。
「増田さんに挨拶も出来なかったから」
「俺がさっさと行かせただけだから、キララが気にすることはないよ」
「うん……」
良ちゃんは、私の手を取り人気のなくなった廊下を歩く。大学の中でも、そこまで人がいなければ、私達はこうして手を繋いで歩けるようになっていた。人が来ると、つい離してしまったりもするけど。
「それよりどうだった?座談会出て、実際の業界の感触掴めたかな?」
「うん、その会社とか業界のメリットデメリットを教えて貰えたことが良かったけど……何だかそこの会社で働けて凄く毎日楽しいって言っていた先輩が印象に残ってるかな。どんな会社なんだろうって気になった」
「ああ、それは俺も思った。ああいうのって生の声だから、やっぱり心に残るよね」
「うんうん」
今日の座談会の感想を言い合いながら、私は少し緊張しながら良ちゃんに聞く。
「あの、良ちゃん」
「ん?」
「良ちゃんの誕生日、もうすぐだから……あの、一緒にお祝いしたいな、と思って……」
私がそう言えば、良ちゃんは目を少し開いて「覚えててくれたの?嬉しいな」と言った。
「当たり前だよ」
私は、自分の胸元で光るムーンストーンをそっと触る。良ちゃんにプレゼントされて以来、毎日付けているネックレスだ。私も、良ちゃんに毎日身に付けて貰える物をプレゼント出来たら嬉しい。
「じゃあ、一つお願いがあるんだけど」
「なぁに?」
「前、料理が得意だって言ってたよね?誕生日プレゼントに、キララの手作りケーキが食べたいんだけど、作れたりする?」
「うん、勿論良いよ!家で作って、持って行くね」
良ちゃんのお家に初めてお邪魔した時、いつか手作りの料理を食べて貰いたい、と思いながら結局これまで機会に恵まれていなかった。料理じゃなくてケーキになってしまったけど、それでも心を込めて作りたいと思う。
「良ちゃんは何のケーキが好きなの?」
「うーん、作って貰うなら王道のショートケーキかな。買うのは抹茶が多いけど、チョコとかティラミスとかミルフィーユとかも好きだよ」
「そっか~」
聞きながら、ショートケーキのホールじゃなくて、カップケーキで色んな種類を作って食べて貰おう、と想像を膨らませる。
「料理も作って持って行こうか?」
「……いいの?」
「うん。良ちゃんのお家だと一口コンロで流石に作業がしにくいから、こっちも家で作ってタッパーに詰めていく感じになっちゃうけど……」
「凄く嬉しい、楽しみにしてる」
「プレゼントはどうする?一緒に買いに行く?」
私が聞けば、良ちゃんはびっくりしたような顔をした。
「いや、手料理で十分だから!むしろ普通にプレゼント買うよりずっと時間掛かることお願いしてるだろうし……でも、キララの作ってくれたもの食べられるなんて、俺、幸せ……」
本気でそう思っているようで、私の心は温かくなる。良ちゃんも、こう……いつか夫婦になった時のこととか、想像してくれたりするのだろうか?
「うん、わかった。じゃあ、お口に合うかわからないけど頑張って作るね」
プレゼントは私が一人で買って行って、サプライズにしよう。
そう決めて、私は当日のことを想像して一人ウキウキと心を弾ませた。他人の誕生日が、こんなに楽しみだったことなんてない。好きな人と付き合うって、本当に色々知らなかった感情を教えてくれるのだなと改めて感じた。
結局良ちゃんの誕生日プレゼントにはお財布を買って、手料理と一緒にプレゼントした。良ちゃんは凄く喜んでくれて、数年後に私が新しい財布をプレゼントするまでずっと使い続けてくれた。バイトを十二月まで頑張っていれた甲斐があったというものだ。
ただ、その代わりにクリスマスシーズンもバイトを入れなくてはならなくなってしまって、バイト上がりに迎えに来てくれた良ちゃんと短い時間だけれどもイルミネーションとディナーを楽しむだけのクリスマスになってしまった。……と思っていたのだけど。
「キララ?」
私が思いを巡らせていると、良ちゃんが声を掛けてきた。顔を上げると、そこには既に増田さんの姿は見当たらない。
「あれ?増田さんは?」
私が聞くと、「用事があるって、もう行ったよ」と言われて焦る。良ちゃんのお友達だと言うのに、私挨拶もせずにボーっとしてた!
「ご、ごめんね……」
「ん?何が?」
良ちゃんはきょとんとしている。
「増田さんに挨拶も出来なかったから」
「俺がさっさと行かせただけだから、キララが気にすることはないよ」
「うん……」
良ちゃんは、私の手を取り人気のなくなった廊下を歩く。大学の中でも、そこまで人がいなければ、私達はこうして手を繋いで歩けるようになっていた。人が来ると、つい離してしまったりもするけど。
「それよりどうだった?座談会出て、実際の業界の感触掴めたかな?」
「うん、その会社とか業界のメリットデメリットを教えて貰えたことが良かったけど……何だかそこの会社で働けて凄く毎日楽しいって言っていた先輩が印象に残ってるかな。どんな会社なんだろうって気になった」
「ああ、それは俺も思った。ああいうのって生の声だから、やっぱり心に残るよね」
「うんうん」
今日の座談会の感想を言い合いながら、私は少し緊張しながら良ちゃんに聞く。
「あの、良ちゃん」
「ん?」
「良ちゃんの誕生日、もうすぐだから……あの、一緒にお祝いしたいな、と思って……」
私がそう言えば、良ちゃんは目を少し開いて「覚えててくれたの?嬉しいな」と言った。
「当たり前だよ」
私は、自分の胸元で光るムーンストーンをそっと触る。良ちゃんにプレゼントされて以来、毎日付けているネックレスだ。私も、良ちゃんに毎日身に付けて貰える物をプレゼント出来たら嬉しい。
「じゃあ、一つお願いがあるんだけど」
「なぁに?」
「前、料理が得意だって言ってたよね?誕生日プレゼントに、キララの手作りケーキが食べたいんだけど、作れたりする?」
「うん、勿論良いよ!家で作って、持って行くね」
良ちゃんのお家に初めてお邪魔した時、いつか手作りの料理を食べて貰いたい、と思いながら結局これまで機会に恵まれていなかった。料理じゃなくてケーキになってしまったけど、それでも心を込めて作りたいと思う。
「良ちゃんは何のケーキが好きなの?」
「うーん、作って貰うなら王道のショートケーキかな。買うのは抹茶が多いけど、チョコとかティラミスとかミルフィーユとかも好きだよ」
「そっか~」
聞きながら、ショートケーキのホールじゃなくて、カップケーキで色んな種類を作って食べて貰おう、と想像を膨らませる。
「料理も作って持って行こうか?」
「……いいの?」
「うん。良ちゃんのお家だと一口コンロで流石に作業がしにくいから、こっちも家で作ってタッパーに詰めていく感じになっちゃうけど……」
「凄く嬉しい、楽しみにしてる」
「プレゼントはどうする?一緒に買いに行く?」
私が聞けば、良ちゃんはびっくりしたような顔をした。
「いや、手料理で十分だから!むしろ普通にプレゼント買うよりずっと時間掛かることお願いしてるだろうし……でも、キララの作ってくれたもの食べられるなんて、俺、幸せ……」
本気でそう思っているようで、私の心は温かくなる。良ちゃんも、こう……いつか夫婦になった時のこととか、想像してくれたりするのだろうか?
「うん、わかった。じゃあ、お口に合うかわからないけど頑張って作るね」
プレゼントは私が一人で買って行って、サプライズにしよう。
そう決めて、私は当日のことを想像して一人ウキウキと心を弾ませた。他人の誕生日が、こんなに楽しみだったことなんてない。好きな人と付き合うって、本当に色々知らなかった感情を教えてくれるのだなと改めて感じた。
結局良ちゃんの誕生日プレゼントにはお財布を買って、手料理と一緒にプレゼントした。良ちゃんは凄く喜んでくれて、数年後に私が新しい財布をプレゼントするまでずっと使い続けてくれた。バイトを十二月まで頑張っていれた甲斐があったというものだ。
ただ、その代わりにクリスマスシーズンもバイトを入れなくてはならなくなってしまって、バイト上がりに迎えに来てくれた良ちゃんと短い時間だけれどもイルミネーションとディナーを楽しむだけのクリスマスになってしまった。……と思っていたのだけど。
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