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第二章 カップル(ABC)編

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その間にも、私の下半身は蜜を垂れ流し続けて良ちゃんの膝とシーツを汚していく。
良ちゃんの舌は、しばらく交互に両胸を堪能した後、その役目を両手に引き継ぎゆっくりとお臍まで下りて行った。更にそのままお腹、そして茂みへ向かった時、私は堪らずストップを掛ける。
「りょ、良ちゃん……」
いくら部屋が暗くても、性器を見られるのは流石に恥ずかしい。だから、もう戻って来て、という意味を込めて良ちゃんを呼ぶ。
「ん」
良ちゃんは直ぐに下がっていた身体を戻し、私の鎖骨にキスをした。
「キララ……」
~~♪♪♪~~
良ちゃんが丁度何かを言い掛けた時、私のスマホが軽快なメロディを発した。これはメッセージアプリの音ではない。
「……」
「……ごめん、電話だ……」
折角の雰囲気をぶち壊し、メロディは流れ続ける。マナーモードにするんだった、と後悔しても遅い。どうしよう、とオロオロしていると、良ちゃんは私の上から横にずれて、「キララ、電話どうぞ」と笑顔で促してくれた。
「うん、ありがとう」
私は起き上がって手を伸ばし、クローゼットの取っ手に引っ掛けていた鞄の中からスマホを取り出す。画面の時刻は十九時。電話は母からだった。
「もしもし?」
私が電話に出ると、
『もしも~し、キララちゃん?今日ってお夕飯外で食べるって言ってたっけ?』
声優なみのきゃるるんとした声が私の耳に入ってくる。
「うん、そうだよ」
夕飯を外で食べる、とか言っておきながら、夕飯を食べずに不純な行為をしている自分。ちょっとの後ろめたさを感じながら返事をした。
『良かったぁ~!あのね、今日マリリンはこれから彼氏さんと遊ぶ約束したから、明日の午後までいないんだけど……キララちゃん、一人で大丈夫かしら?』
「うん、大丈夫」
『そっかぁ、良かった!じゃあ、気を付けて帰って来てね!また明日!』
「うん、マリリンも気を付けて」
『は~い♪』
電話を切ると、スマホの光が消えて部屋の中は真っ暗になった。映画を見終わった時にはもっと外は明るかったが、それなりに時間は経ったということだ。
「お母さん?」
良ちゃんの質問に、「うん」と苦笑いしながら答える。
私が自分の名前にコンプレックスを持っていること、母が脳内お花畑の女性であることなんかは既に良ちゃんに話していた。
母の名前は戸枝真理だ。母はその名前を「普通で嫌」と言い、ついでにママともお母さんとも呼ばせず、自分のことをマリリンと私に呼ばせていた。勿論それも私にとってかなり苦痛を伴ったが、私の顔が元々日本人離れしていることと、母がロリ……年齢的には奇抜といえるファッションで登場することもあり、そのうち友達も「ああ……」と察してくれるようになった。
大学生になって、実家に誰かが遊びに来たりすることも授業参観というものもなくなって、私が母のことを「マリリン」と呼んでいる姿を誰にも見られずに済んでいたのに、本日良ちゃんに見られることとなってしまった。変な顔されてもおかしくないのに、からかうこともせずに普通に受け止めてくれる良ちゃんがやっぱり好きだ。いつかはバレてしまうだろうから、早い段階で知って貰えることが出来て逆に良かったのかもしれない。
「お母さん、なんだって?」
「ああ、今お付き合いしている男性と遊ぶから、今日は帰らないっ……て……」
そう答えながら、自分の顔にぶわっと熱が集まった。
「そう。……じゃあ、今日は遅くなっても平気、かな?」
良ちゃんが私の髪を一房掬い上げながらこちらの様子を伺っているのがわかった。真っ暗なのに、良ちゃんの誘うような色気が伝わってくる、気がする。
「……う、うん」
お互いに、わかっている。良ちゃんの言葉はこのまま先に進みたいと言っているし、私はそれに同意した。
私は今度こそ、スマホをマナーモードにして、鞄の中に戻す。
「キララ……」
「良ちゃん」
私達はお互いの声と微かな気配を頼りに、一度ベッドに座ったまま貪り合うようなキスを交わした。良ちゃんの舌に必死で自分のそれを絡めて、どれだけ良ちゃんを好きなのかわかって貰えれば嬉しいと願いながら。
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