フツメンを選んだ筈ですが。

イセヤ レキ

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第二章 カップル(ABC)編

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「で?まーだ手を出してこないの?山田君、キララを大事にしてるのは凄くわかるけどヘタレなのか?こんな彼女いたら、私だったら一週間以内に手を出すけどなぁ」
「ちょ、繭ちゃん!しー!しー!!」
私は、一人暮らしをしている繭ちゃんの部屋でそんな事を大声で言われ、二人っきりだというのに恥ずかしすぎて思わず彼女の口を両手で覆った。
「普通、彼女が出来たら一週間で……その、やっちゃうものなの?」
「いやごめん、それは言い過ぎた。まぁ、キス位ならあるんじゃないかな、とは思うけど」
「ふーん……そっか」
山田さん……良ちゃんとのお付き合いがスタートして、早三か月。私の胸元には、二回目のデートで良ちゃんから誕生日プレゼントとして貰った大事なホワイトゴールドのネックレスが光り輝いている。真ん中にピンクの大きなムーンストーン、周りには小さく透明なムーンストーンが散りばめられているとても可愛いデザインだ。茂木さんに「これ、ホワイトゴールドじゃなくてプラチナじゃない?ムーンストーンというよりピンクダイヤに見えるけど!?」と言われたけど、ゼロが一桁変わるらしいからそんな訳がない。良ちゃん本人から「キララの誕生日石がムーンストーンだったから、石はムーンストーンにしてみたよ」と言われたし。ムーンストーンの石言葉は調べるサイトによっても少しずつ違うけれど、「恋」とか「純粋な愛」とかで、希望とか若さなんかが秘められた女性的なエネルギーを持つ、女性のお守りに最適な石とのことだった。
そんな素敵なネックレスをプレゼントされた私は、当然益々良ちゃんラブ状態に陥っている……のだけど。
二人で普通のデートは何度も重ねているのに、まだそういう関係には至っていなかった。
大事にして貰えて嬉しいような、もどかしいような思いが胸に巣くってきたから、今回繭ちゃんに相談している。
以前は付き合うだけで満足していたのに、人間の欲望は果てがない。人間と言うか私だけど。
「普通、大学生はどのくらいで初エッチとかするのかな?」
「えー?どのくらいって言うより、雰囲気とかタイミングとか勢いじゃない?まぁ、人によってそれぞれだと思うよ。お互いに初めてかそうじゃないかでまた変わってくると思うしねぇ」
「そっかぁ」
私は良ちゃんが初めて付き合った相手だから、色々考えて遠慮してくれているのかな?
でも、出来たらそろそろ良ちゃんといちゃいちゃしてみたい、というのが私の本音だったりする訳で。
デートで手を繋ぐだけでドキドキしていた頃を思えば、やっぱり随分と貪欲になっている。下着なんて気にしたことなかったのに、良ちゃんと付き合うようになってから、清楚系も可愛い系もセクシー系も結局全部購入し、上下お揃いの可愛い下着を着けるようになったりして。
「山田君も一人暮らししてるんでしょ?家に行ってみたいって言っちゃえばいいじゃん。後はなんとかなるでしょ。てか、それで何も進展なかったら逆に引くわ山田君」
「家に行ってみたいなんて言って良いのかなぁ?迷惑じゃない?」
「まさか!男なんて、実家暮らしだったとしても自分の部屋にさっさと彼女連れ込んでやる事やっちゃいたい方が大半だと思うよ?だから、山田君はキララのこと本当に大事にしてるんだなー、ってむしろ感心するけど。キララから家に行きたいって言えば、逆に覚悟は出来てるってことになるから山田君としても手を出しやすいと思うし」
「覚悟は出来てるってことになるの!?」
「なるでしょ!キララの中で覚悟出来てないなら、言わない方が良いよ。絶対誤解されるだろうから、もし家まで行って逃げたら山田君すんごく可哀想」
「ううう……」
まさか、告白と同じくらいハードルの高いことが、付き合い出した後もあろうとは!
でも、良ちゃんはいつも穏やかでガツガツしてないし、このままだといつまでたってものんびりしてそう……。
「わ、わかった……!アドバイスありがとう、今度聞いてみる……!!」
「おー、頑張れ」
そして翌日、私は意を決して良ちゃんにその旨お願いしてみたのだった。
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