フツメンを選んだ筈ですが。

イセヤ レキ

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第二章 カップル(ABC)編

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結局私はイチゴパフェ、山田さんは抹茶パフェを注文した。お互いの星座には全く関係ないパフェになってしまったけれど、お陰で山田さんの誕生日が十二月だということを知る事が出来た。
山田さんはどんな物をプレゼントしたら喜ぶだろう?企業の合同説明会は三月からだし就職活動もまだ本格化する前だから、バイトを辞めるにしても十二月までは働いて稼いで何かプレゼントを渡したい。
「誕生日が十二月だと、イベントが続くよね」
「そうそう。俺は誕生日が十二月でも前半の十一日だから、クリスマスとは合同にされないんだけどね。二十三日生まれの友人は、よくクリスマスと一緒にパーティーが催されるって言ってたな」
「そうなんだ~、確かに、ケーキ連続になると太りそうだもんね」
そんな会話を繰り広げながら、私は気が早くもプレゼント選びに心を馳せていた。出来たら身につけてもらえるものがいい。
これから就職活動だからネクタイ?冬だからマフラー?季節関係ない方がいいから靴とか?もしくは時計とか……。
ふと、目の前でスプーンを操りパフェの山頂を崩しにかかる山田さんの手首に装着された腕時計が目に入った。
……あれ?腕時計の値段ってよくはわからないけど……なんか、高そう??
「家族全員が同じ月の誕生日だって人はどうしているんだろうね」
「四人家族だったら、その月に一気にケーキ食べるのかなあ?だったら三か月おきに誰かの誕生日とかが理想だよね」
「確かに」
いや、私が唯一知っている高級時計のメーカー名が書かれている訳ではないし、高いものだと五十万とか百万とか余裕でするらしいから普通の大学生がそんなものを持っている訳がない。だとしたらよくできたイミテーションなのだろう。私は興味を隠し切れずに、結局山田さんに聞いてしまった。
「山田さんの腕時計、なんだか凄くお洒落だね」
「……!あ、ああ、これ?デザインが好みだったから買っちゃったんだ。……安物、だよ?」
山田さんが腕時計を隠すように右手で触る。
「そうなの?でも安物には全然見えないよ!本当に素敵、格好いい腕時計だね」
「ありがとう」
ひとまず腕時計は誕生日プレゼントから除外しよう。
「戸枝さんの誕生日はもう過ぎちゃったよね」
「うん」
山田さんの誕生日のことばかり考えていたら、急に自分の誕生日の話を振られてびっくりする。
私の誕生日はゾロ目で六月六日なのだけど、山田さんとお付き合いをする前に二十一歳を迎えていた。
「何のお祝いも出来なかったから、今度のデートに何かプレゼントさせて欲しいな」
「えっ?……うーん、でも……」
「俺が何かプレゼントしたいんだけど……駄目?」
駄目かと聞かれれば、全く駄目ではない訳で。
「じゃあ、プレゼント……欲しいな!」
いいね、誕生日のプレゼント交換。カップルのイベントって感じがする。
「ありがとう。一緒に選んで買うのと、俺が選んだものを渡すのと、戸枝さんはどっちが嬉しい?」
私がありがとうなのになぁ、と思いながら、私は悩む。一緒に選んで買えば、間違いなく自分の好みの物が貰えるけれども、値段とか気になって本当に欲しい物はお願い出来なくなりそう。そもそも、相場がわからないし……普通一万円位かなぁ?それだと高過ぎ??
山田さんの腕時計のデザインは私も凄く好みだし、だったら山田さんのセンスでプレゼントを選んで貰うというのも楽しいかもしれない。
「えとね、欲しいのはネックレスなんだけど……出来たら、山田さんに選んで貰いたいかも」
「わかった。戸枝さんに似合いそうなネックレス、次回のデートで渡すから楽しみにしててね」
「うん、ありがとう!楽しみにしてる」
今回のデートで、お洒落をしたかったけどまともなアクセサリーがなくて付けてこなかったのだ。彼氏もいなかったから、自分の好きなデザインの安物ばかり買っていたことを今日ほど後悔したことはない。しかも、当日までその現実に気付かなかったし。
「山田さんの誕生日も、何が欲しいか十二月までにじっくり考えておいてね」
「随分先の話だけどね」
「そうだね、半年間悩んでてね」
二人で笑い合って、大分形を崩したパフェを完食した。お互いのパフェをちょっと交換したりして、カップルあるあるに胸がキュンキュンする。付き合う前にレストランでパスタとピザをシェアした時は当然取り皿を使ったけれども、今日は違う。お互いのスプーンで、相手のパフェを掬っているのだ。流石に「あーん」は恥ずかしすぎて出来なかったけど、十分間接キスになるんじゃないだろうか?
私は内心キャーキャー言いながら、店を出る前にお手洗いへ寄った。いつもはしないお化粧直しをしたくて。
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