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結婚相手を交換したいと言いますが、あの男はやめた方がいいですよ?

1 いつものおねだり?

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二歳年下の可愛い妹ミランダは、家に帰るなり両手を組み、潤んだ瞳で私を上目遣いで見た。



私の長年の経験が告げる。

──嫌な予感しかしない。



「あのね、お姉様。お願いがあるの」

「なぁに、ミランダ。今月のお小遣いアップはもう駄目よ?」

「ううん、もっと大事なことなんだけど……」

「ドレスは先月に手配したでしょう?宝飾品も合わせたいかもしれないけれど、今月は諦めてね」

「うん、でも、それでもなくて……」



私はミランダの今月と来月の予定を頭に並べた。

「今日、お見合いに行ったでしょう?」

「そうよミランダ、帰宅早々におねだりから入るからすっかり大事なお話を聞き忘れてしまっていたわ。ひとまず、お帰りなさい。……それで、どうだった?」



我がヒラクスナ男爵家は、爵位はあれども家計は年中火の車で、使用人の一人も雇えない貧乏貴族だ。



しかし、幸いにも才女と呼ばれた私はつい最近とある伯爵家に呼ばれ、家門立て直しの為に一人息子と結婚してくれとお願いされた。

本人との面会はまた後日ということで、そのうち手紙が届くらしい。



そして私の自慢の妹は、目出度くも今をときめくやり手のジェントルマンと名高いザイック商団の跡取りと見合いが決まり、私はここ最近貯め込んでいたへそくりを全額投入して妹の全てを磨き上げ、今日のお見合いへと送り出したのだ。


妹は散財するのが大好きだから、爵位はなく平民だったとしても金持ちに嫁ぐに限ると考えている。

残念なことに妹は結構天然ちゃんなので、色々自分が仕切らなければならない貴族の妻よりも商団の妻の方が妹の結婚生活に負担が少ないと思ったのだ。



妹は、女神のように整った顔に、眉根を寄せた。

ああ、その憂いを帯びた表情も素敵だけど、嫌な予感が確信に変わりそうで早くも目眩がする……!



「ええ、それなのだけど……お姉様から今をときめくやり手のジェントルマンと聞いてお見合いの場であるカフェへ向かったのだけど」

「うんうん」

「椅子に座っていたのは、チビハゲデブの脂っぽい方だったの」

「うんうん」

「だからこの話はなかったことにして、お姉様のお見合い相手と会ってきたのだけど」

「……うん?」



ちょっと待って、ミランダちゃん。



「ええと、ザイック商団の……クルト様へのご挨拶は……」



おかしいわね、大事な妹と見合いをさせるのだから、情報ギルドから先に仕入れた情報によると皇太子顔負けのイケメンという話だった筈だけど。

私は心の中で首を傾げながら、ひとまず尋ねた。
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