元公女の難儀な復讐

イセヤ レキ

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22 家族との対面

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「何度も上の方たちに相談したのですが、水がなくても育つ作物に切り替えろというご指示しか頂けず……」
「ふむ」
ロイアルバの隣で話を聞いていた私は、首を垂れる。

公国民たちが大変な目に遭っていたにも関わらず、私は毎日美味しいものを食べて、美しい物で着飾られ、贅沢な生活を当たり前に享受していたのだ。

元公国の民の話を聞いて回っては、部下たちに色々指示をしながら、行きよりもずっと時間を掛けて、私たちは元グシャナト公国の宮殿に戻った。

煌びやかだった宮殿は派手な装飾が取り払われ、すっかり落ち着いた色味の物へと手が入れられている。
私たち二人が宮殿に到着すると、臣下たちは皆並んで歓迎してくれた。
家臣たちは顔に疲れを見せてはいるものの、以前のように怯えた様子はなく、皆生き生きとして見えた。

「エフィナ公……エフィナ様、よくぞご無事で。長旅お疲れでしょう、お部屋を準備しております」
「ロイアルバ様、エフィナ様をお守りいただき、ありがとうございました」
私付きだった侍女たちは目に涙を浮かべ、私の手を取り、再会を喜んでくれた。

「ロイアルバ様、ご指示通りに宮殿の物を処分して国庫に入れ、公共事業を進めさせていただきました。落ち着いた頃に、報告書へ目を通していただると助かります」
「わかった。エフィナ、私は少し彼らと話があるから、先に部屋へ行って休んでくれ」
「はい」

ロイアルバに指示された侍女たちは、私を以前とは違う部屋のほうへと案内する。
家族が殺されていた謁見の間は建物ごと取り壊されて、鍵のついた温室に変わっていた。
それを見て、私は足を止める。

「……ひとつだけ聞いてもいいかしら」
「はい、何でしょうか?」
「両親と兄の亡骸は、どこにあるの?」

私が尋ねると、侍女たちは顔を見合わせる。
国を堕落させ、他国に攻め落とされた君主の躯の所在なんて、誰も知らないのかもしれない。
もしくは宮殿の門にその遺体が晒され、公民たちから石を投げつけられて、鳥が死肉を啄んだかもしれない。
よくてどこかの森にでもぽいと投げ捨てられ、大地の栄養になったのかもしれない。
それでも、聞かずにいられなかった。

私は家族と、その死とまだ向き合っていないから。

「お疲れでなければ、ご案内いたしますが」
私の母と同い年くらいの侍女長は微笑みながらそう進言し、私は驚きに目を少し開く。
「お願いしたいわ」
「かしこまりました。どうぞこちらへ」

案内された場所は、百年続いたグシャナト公国の君主が代々眠る地下の墓所だった。

華美でもなくみすぼらしくもなくただ事務的に、新しく綺麗な棺が三つ並んでいる。
「少し、ひとりにして」
「はい、エフィナ公……エフィナ様」
侍女長は墓所へと続く階段を上り、私を一人にしてくれた。
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