元公女の難儀な復讐

イセヤ レキ

文字の大きさ
上 下
19 / 32

19 予想外の結末

しおりを挟む
「──エフィナ! 戻って来い、エフィナ!!」
「……」
ロイアルバ?
私は瞬きをする。
私はどれだけの時間、狂っていたのだろう??

悪夢の中で、ロイアルバに何度も殺された。
家族も殺された。
そして、ロイアルバの隣には絶世の美女がいて、その腰を抱きながら彼は私に「公女など必要ない」と言い放った。

「……ロイアルバ、私……」
てっきりベッドの中にいるのかと思ったのだが、何かおかしいことに気付く。

ここは……まだ、魔窟の中?
あれ? 何故? 時間があまり、経ってない??
最低、半年は狂ったままなのでは……もしかして、まだ悪夢の最中?

「ああ、良かった、無事で……!!」
「ロイアルバ様、公女様が戸惑われています。ひとまず馬車に戻りましょう。戻りながら、色々説明されては如何ですか」
「ああ、そうだな。そうしよう」

ロイアルバは私を抱きかかえると、そそくさと魔窟から出て、馬車に乗った。
精鋭部隊の騎士たちも一緒で、やはり時が経ったようには見えない。

「ロイアルバ、魔石はよろしいのですか?」
皇帝は、魔石の為に私を闇堕ちさせろと言っていたのに、目的を果たさないロイアルバに首を傾げる。

「ああ、魔石を生成していた悪魔は私が殺したからな。もう新しい魔石は作られない」
「……え??」
「やはり、思った通りだった。リンダンロフの王族と悪魔が手を組んだんだろう」
「どういうことか、説明して下さい」

人に何かを説明するのは苦手なんだが、とボヤくロイアルバを私は急かす。

狂う覚悟で悪夢に身を委ねた私の覚悟はなんだったのか。
一瞬で終了してしまった復讐に呆然としながらも、説明を受けなければ納得も先に進むことも出来ないと私は仏頂面になった。

そして私は、衝撃的な話を聞かされた。
魔石を作っていたのは魔窟に住まう悪魔であり、その悪魔は人々の闇を食べることで、力を増していたらしい。
皇帝は魔石欲しさで、悪魔の餌となり力となる闇を魔窟に捧げる。
悪魔は人間が抱える闇の力欲しさに、魔石という人間には生み出せない餌をぶら下げて、人間から力を得る。
悪魔に闇の力が満ちれば、魔窟から出て行ける。
あとに待つのは、帝国の破滅のみだ。

そしてそんな悪魔を、野望ごと粉砕したのがロイアルバ。
私が気を失っていたのは、僅か五分程らしい。

「ロイアルバは、なぜ魔窟に入ったにも関わらず、悪夢を見なかったのですか?」
「いや、悪夢は見た。何回も、君を殺された」
「自分が殺されたのではなく?」
「私が恐ろしいのは、君が私の手の届かないところへ行ってしまうことだからな」
「そうですか……」
「ただ、私は悪夢を見ても囚われなかったから、悪魔を倒せただけだ」
「悪魔を倒したのですか?」
「ああ」

これは賭けだった、とロイアルバは笑って言う。
悪魔と取引をした百年前の皇帝も、悪魔の力を恐れたはずだと。
だから、皇帝はその力に魅入られながらもひとつだけ条件を出していた。
皇帝の血を引く者は、悪魔の力の支配が及ばないという契約を結んでいたのだ。

「けれども……リンダンロフは国益をもたらした魔石を失い、再び不便な生活に戻って……国民も不満が募るのではないですか?」
「最初のうちは、そうだろうな」

しかし、その不便な中でも文明を発展させた国があるから、そこから知恵を借りれば良い、とロイアルバは笑う。

「まぁ、そんな国が……」
「はは、何を言ってるんだ。君の国だよ、公国だ」
「え?」
私は驚きに目を見張る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

獣人公爵のエスコート

ざっく
恋愛
デビューの日、城に着いたが、会場に入れてもらえず、別室に通されたフィディア。エスコート役が来ると言うが、心当たりがない。 将軍閣下は、番を見つけて興奮していた。すぐに他の男からの視線が無い場所へ、移動してもらうべく、副官に命令した。 軽いすれ違いです。 書籍化していただくことになりました!それに伴い、11月10日に削除いたします。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます

刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

平凡令嬢の婚活事情〜あの人だけは、絶対ナイから!〜

本見りん
恋愛
「……だから、ミランダは無理だって!!」  王立学園に通う、ミランダ シュミット伯爵令嬢17歳。  偶然通りかかった学園の裏庭でミランダ本人がここにいるとも知らず噂しているのはこの学園の貴族令息たち。  ……彼らは、決して『高嶺の花ミランダ』として噂している訳ではない。  それは、ミランダが『平凡令嬢』だから。  いつからか『平凡令嬢』と噂されるようになっていたミランダ。『絶賛婚約者募集中』の彼女にはかなり不利な状況。  チラリと向こうを見てみれば、1人の女子生徒に3人の男子学生が。あちらも良くない噂の方々。  ……ミランダは、『あの人達だけはナイ!』と思っていだのだが……。 3万字少しの短編です。『完結保証』『ハッピーエンド』です!

処理中です...