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15 言い掛かりと本物の強さ

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私の言葉に、リナートは無表情で頷く。
「その言葉が聞けたので、十分です。それに、オレリア嬢の気持ちもわかります。今、私が誰かほかの女に言い寄られたとしたら、私は同じ言葉を使うでしょう」

目を細めてこちらを見るリナートの視線をまっすぐに受け止められず、私は赤くなって俯いた。

リナートがほかの誰かとデートしているところを想像して、胸の奥がモヤモヤとした。
自分勝手で、浅ましい。

百日前まではほかの男性が好きだったのに、今は目の前の男性が気になっているなんて、自分の心は人を好きになりやすく、また移ろいやすいのだろうかと心配になった。




二人で喉を潤したあと、露店がたくさん並んで賑やかな街の散策に向かった。
一年前にマクシムに恋をしたのが、ずっと遠いことのように思えた。

「失礼」
ぐっと肩を引かれ、私の真横を馬車が通る。
背中越しに触れたリナートの身体は、ずっと書類とにらめっこするような職種についているにもかかわらず、とても硬い筋肉に覆われているように感じて驚いた。

キャロットに好みの男性を尋ねられたとき、マクシムを思い出しながら答えていたから、「笑顔が素敵」だの「筋肉質な人」だの「強い人」だの答えていた記憶があるが、もしかしてリナートも鍛えたのだろうか、と思って口を開いたときだった。


「おい、あんた!! オレリアって言ったっけ?」
急に名前を呼ばれ、何事かと私はそちらを振り向いく。

「あなた方は……マクシム様の、お知り合いの方々ですね」
そこには、以前一度食事をしたことのある、マクシムのお友達が三、四人、腕を組んでこちらを睨んでいた。
こうして改めて見ると、皆屈強そうで、柄が悪そうだ。

「お前だろ。マクシムのことを、上にチクった奴は」
「仮にも恋人だったのに、恥ずかしくないのか」
「おい、にーちゃん、ちょっとこの女置いてどっかに行っててくんない?直ぐにすむからさ」
リナートにそう言って、彼らは私の腕を引っ張った。

このままだと、リナートを巻き込んでしまう。そう思った私はこの場を離れようとしたのだが、もう片方の腕をリナートに引っ張られて、引き止められてしまう。

「リナート様、私は大丈夫ですから……」
「今すぐ彼女の腕を離せ。そうでなければ、その腕を斬る」
「はあ? なんだ、痛い目を見ないとわからないかー、そうか、そうか……」

やっちまえ、とその人たちがリナートに一斉に襲い掛かり、そして制圧されたのは一瞬のことだった。

リナートの足元にはマクシムの友人たちが転がり、私は驚きのあまり腰を抜かしてしまう。
「リ、リナート様、お怪我はございませんか……?」
「ええ、全く問題ありません。それと、あなたを怖がらせてしまって申し訳ありません。警ら隊を呼んだので、この場から離れましょうか」

その場にはリナートの護衛らしき人たちが残り、私はリナートに軽々と抱えあげられて、その場をあとにした。
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