8 / 8
8 溺愛ルートに入りました
しおりを挟む
「ロロは、もしかしてマリーネさんに会いに行ったの?」
私が尋ねると、ロロは首を横に振る。
私はヒーローの過去を知ってから読むのをやめてしまったから、何故私とロロが出会うようになったのか、知らない。
「お告げがあったんだ。異世界からきた女性が、私の番だと。あの森に現れると」
私は黙って、続きを促す。
「初めは、兄上が私を始末するために嘘のお告げをしたのかと思ったが、違った。兄上はお告げを利用しただけで、お告げ自体は本物だった」
お城の中庭は綺麗な花々が咲き誇る庭園で、ロロはそのベンチのひとつに私を座らせた。
「では、なんでずっと、犬……じゃない、狼の姿でいたの?」
「アイルが異世界人かどうかがわからなかったからだ。アイルはこの世界に馴染みすぎていて、ポポに教えて貰っても確信が持てなかった。だが、傍にいてわかったよ」
「異世界人だということが?」
「いや、異世界人じゃなくても、私がこれから愛する、たった一人の番であることが、だ」
ただ、アイルがほかの言語を話した時に、やはり異世界人なのだと感じたが、とロロは笑って言う。
「本当は、あの家が居心地よすぎたのかもしれない。城に戻れば、兄上と争わなければならないことがわかりきっていたから」
精神をすり減らすような日々を生きてきて、あの生活ほど心が穏やかだったことはない、と続ける。
そしてロロは私の身体に自分の両腕をまわし、ぎゅう、と抱きしめた。
私もロロをこうして何度も抱きしめたものだが、その時とは明らかに自分の鼓動の速さが違うことに気付いてしまう。
「アイルが私を選んでくれるよう、努力する。二ヶ月も離れている間は、本当に辛かった。だからどうかこれからは、私と一緒にいてくれないか?」
ロロに懇願されて、私の心は揺れる。
原作と異なり、生き残った私は、そしてヒロインちゃんは、どうなるのだろう?
ヒロインちゃんは、執着幼馴染ヒーローと結ばれることになるのだろうか?
しかし今更、死にたくはない。
「……わかりました。お告げとは別にして、ロロのことはきちんと考えさせていただきます」
私が覚悟を決めて言葉を紡げば、ロロの尻尾は私の視界の中で振り切れんばかりに左右に振られた。
そして連れて行かれたのは、ロロの隣の部屋。
ポポはその部屋でヒロインちゃんに遊んで貰っていた。
……もしかしなくても、囲い込まれている。
そういえばロロは溺愛一途属性だったなと思いながら、ポポと一緒にフカフカのベッドで眠りについた。
――ロロの溺愛ルートに入ったらしい私は、結局その一年後には絆され、ロロの番になったのだった。
私が尋ねると、ロロは首を横に振る。
私はヒーローの過去を知ってから読むのをやめてしまったから、何故私とロロが出会うようになったのか、知らない。
「お告げがあったんだ。異世界からきた女性が、私の番だと。あの森に現れると」
私は黙って、続きを促す。
「初めは、兄上が私を始末するために嘘のお告げをしたのかと思ったが、違った。兄上はお告げを利用しただけで、お告げ自体は本物だった」
お城の中庭は綺麗な花々が咲き誇る庭園で、ロロはそのベンチのひとつに私を座らせた。
「では、なんでずっと、犬……じゃない、狼の姿でいたの?」
「アイルが異世界人かどうかがわからなかったからだ。アイルはこの世界に馴染みすぎていて、ポポに教えて貰っても確信が持てなかった。だが、傍にいてわかったよ」
「異世界人だということが?」
「いや、異世界人じゃなくても、私がこれから愛する、たった一人の番であることが、だ」
ただ、アイルがほかの言語を話した時に、やはり異世界人なのだと感じたが、とロロは笑って言う。
「本当は、あの家が居心地よすぎたのかもしれない。城に戻れば、兄上と争わなければならないことがわかりきっていたから」
精神をすり減らすような日々を生きてきて、あの生活ほど心が穏やかだったことはない、と続ける。
そしてロロは私の身体に自分の両腕をまわし、ぎゅう、と抱きしめた。
私もロロをこうして何度も抱きしめたものだが、その時とは明らかに自分の鼓動の速さが違うことに気付いてしまう。
「アイルが私を選んでくれるよう、努力する。二ヶ月も離れている間は、本当に辛かった。だからどうかこれからは、私と一緒にいてくれないか?」
ロロに懇願されて、私の心は揺れる。
原作と異なり、生き残った私は、そしてヒロインちゃんは、どうなるのだろう?
ヒロインちゃんは、執着幼馴染ヒーローと結ばれることになるのだろうか?
しかし今更、死にたくはない。
「……わかりました。お告げとは別にして、ロロのことはきちんと考えさせていただきます」
私が覚悟を決めて言葉を紡げば、ロロの尻尾は私の視界の中で振り切れんばかりに左右に振られた。
そして連れて行かれたのは、ロロの隣の部屋。
ポポはその部屋でヒロインちゃんに遊んで貰っていた。
……もしかしなくても、囲い込まれている。
そういえばロロは溺愛一途属性だったなと思いながら、ポポと一緒にフカフカのベッドで眠りについた。
――ロロの溺愛ルートに入ったらしい私は、結局その一年後には絆され、ロロの番になったのだった。
456
お気に入りに追加
371
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
白猫は異世界に獣人転生して、番に愛される
メリー
恋愛
何か大きい物体に轢かれたと思った。
『わん、わん、』と言う大きい音にびっくりして道路に思わず飛び込んでしまって…。
それなのにここはどこ?
それに、なんで私は人の手をしているの?
ガサガサ
音が聞こえてその方向を見るととても綺麗な男の人が立っていた。
【ようやく見つけた。俺の番…】
ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません
下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。
旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。
ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも?
小説家になろう様でも投稿しています。
ホストな彼と別れようとしたお話
下菊みこと
恋愛
ヤンデレ男子に捕まるお話です。
あるいは最終的にお互いに溺れていくお話です。
御都合主義のハッピーエンドのSSです。
小説家になろう様でも投稿しています。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
私の好きなひとは、私の親友と付き合うそうです。失恋ついでにネイルサロンに行ってみたら、生まれ変わったみたいに幸せになりました。
石河 翠
恋愛
長年好きだった片思い相手を、あっさり親友にとられた主人公。
失恋して落ち込んでいた彼女は、偶然の出会いにより、ネイルサロンに足を踏み入れる。
ネイルの力により、前向きになる主人公。さらにイケメン店長とやりとりを重ねるうち、少しずつ自分の気持ちを周囲に伝えていけるようになる。やがて、親友との決別を経て、店長への気持ちを自覚する。
店長との約束を守るためにも、自分の気持ちに正直でありたい。フラれる覚悟で店長に告白をすると、思いがけず甘いキスが返ってきて……。
自分に自信が持てない不器用で真面目なヒロインと、ヒロインに一目惚れしていた、実は執着心の高いヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、エブリスタ及び小説家になろうにも投稿しております。
扉絵はphoto ACさまよりお借りしております。
あなたのそばにいられるなら、卒業試験に落ちても構いません! そう思っていたのに、いきなり永久就職決定からの溺愛って、そんなのありですか?
石河 翠
恋愛
騎士を養成する騎士訓練校の卒業試験で、不合格になり続けている少女カレン。彼女が卒業試験でわざと失敗するのには、理由があった。 彼女は、教官である美貌の騎士フィリップに恋をしているのだ。
本当は料理が得意な彼女だが、「料理音痴」と笑われてもフィリップのそばにいたいと願っている。
ところがカレンはフィリップから、次の卒業試験で不合格になったら、騎士になる資格を永久に失うと告げられる。このままでは見知らぬ男に嫁がされてしまうと慌てる彼女。
本来の実力を発揮したカレンはだが、卒業試験当日、思いもよらない事実を知らされることになる。毛嫌いしていた見知らぬ婚約者の正体は実は……。
大好きなひとのために突き進むちょっと思い込みの激しい主人公と、なぜか主人公に思いが伝わらないまま外堀を必死で埋め続けるヒーロー。両片想いですれ違うふたりの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
逃げた先の廃墟の教会で、せめてもの恩返しにお掃除やお祈りをしました。ある日、御祭神であるミニ龍様がご降臨し加護をいただいてしまいました。
下菊みこと
恋愛
主人公がある事情から逃げた先の廃墟の教会で、ある日、降臨した神から加護を貰うお話。
そして、その加護を使い助けた相手に求婚されるお話…?
基本はほのぼのしたハッピーエンドです。ざまぁは描写していません。ただ、主人公の境遇もヒーローの境遇もドアマット系です。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる