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8 溺愛ルートに入りました

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「ロロは、もしかしてマリーネさんに会いに行ったの?」

私が尋ねると、ロロは首を横に振る。

私はヒーローの過去を知ってから読むのをやめてしまったから、何故私とロロが出会うようになったのか、知らない。


「お告げがあったんだ。異世界からきた女性が、私の番だと。あの森に現れると」
私は黙って、続きを促す。

「初めは、兄上が私を始末するために嘘のお告げをしたのかと思ったが、違った。兄上はお告げを利用しただけで、お告げ自体は本物だった」

お城の中庭は綺麗な花々が咲き誇る庭園で、ロロはそのベンチのひとつに私を座らせた。


「では、なんでずっと、犬……じゃない、狼の姿でいたの?」
「アイルが異世界人かどうかがわからなかったからだ。アイルはこの世界に馴染みすぎていて、ポポに教えて貰っても確信が持てなかった。だが、傍にいてわかったよ」
「異世界人だということが?」
「いや、異世界人じゃなくても、私がこれから愛する、たった一人の番であることが、だ」
ただ、アイルがほかの言語を話した時に、やはり異世界人なのだと感じたが、とロロは笑って言う。

「本当は、あの家が居心地よすぎたのかもしれない。城に戻れば、兄上と争わなければならないことがわかりきっていたから」
精神をすり減らすような日々を生きてきて、あの生活ほど心が穏やかだったことはない、と続ける。


そしてロロは私の身体に自分の両腕をまわし、ぎゅう、と抱きしめた。

私もロロをこうして何度も抱きしめたものだが、その時とは明らかに自分の鼓動の速さが違うことに気付いてしまう。


「アイルが私を選んでくれるよう、努力する。二ヶ月も離れている間は、本当に辛かった。だからどうかこれからは、私と一緒にいてくれないか?」
ロロに懇願されて、私の心は揺れる。


原作と異なり、生き残った私は、そしてヒロインちゃんは、どうなるのだろう?
ヒロインちゃんは、執着幼馴染ヒーローと結ばれることになるのだろうか?

しかし今更、死にたくはない。


「……わかりました。お告げとは別にして、ロロのことはきちんと考えさせていただきます」

私が覚悟を決めて言葉を紡げば、ロロの尻尾は私の視界の中で振り切れんばかりに左右に振られた。


そして連れて行かれたのは、ロロの隣の部屋。
ポポはその部屋でヒロインちゃんに遊んで貰っていた。

……もしかしなくても、囲い込まれている。


そういえばロロは溺愛一途属性だったなと思いながら、ポポと一緒にフカフカのベッドで眠りについた。



――ロロの溺愛ルートに入ったらしい私は、結局その一年後には絆され、ロロの番になったのだった。
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