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3 どこかで聞いた話だと思いました
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ロロがポポの面倒を見てくれるお陰で、街には一人で行くことも多くなった。
以前はちらほらとしか見かけなかった兵士がやたら多くなったな、と思いながら常連さんの家まで薬を届ける。
「まだヒューバート様は見つからないのかしら」
「こんな田舎の街なのに、最近は物々しいわね」
そんな話をしている顔見知りに何かあったのかと声を掛けると、この国の第二王子であるヒューバート殿下が行方不明なのだという。
そして、行方不明になった場所が、この街の近くの山だとか。
「絶対にもうこんなところにはいらっしゃらないわ」
「崖崩れにあったとか山賊に襲われたとか、色々な噂があるけど、絶対に第一王子の仕業よ」
「真っ白な耳の獣人なんて見ていないしねぇ」
どうやら後継者争いによって第二王子は殺されたのだと、街の者達は考えているようだった。
第一王子と第二王子は母親が違い、第一王子の母親が亡くなったあと、第二王子の母親が今の王様の後妻になったらしい。
街で多くの兵士を見たが、第一王子による追手と第二王子の派閥の兵士の両方がそろっており、一発触発という緊張感が高まっていた。
「ポポ、ロロ、ただいま~。なんだか街が大変なことになってきたよ」
私は軽くなった籠を出入り口に置いて、駆け寄って来た二人を滅茶苦茶撫でまくって可愛がる。
ぶんぶんと振られる尻尾が愛しい。
クゥン、とロロが私に話の続きをせがんだので、「この国の第二王子様を探しに、第一王子の兵士と第二王子の兵士が来てるんだって」と靴を脱ぎながら言った。
この世界では海外と同じく土足だが、私はおばあちゃんが亡くなってから土足禁止にしている。
「ふたりとも、お待たせ。ご飯にしようか」
私はそう言って今日の夕飯に取りかかりながら、どこかで聞いたことのある話だなあ、とぼんやり考えていた。
ヒューバート。人狼の治める国。第二王子。
『……あれ?』
つい、日本語がポロリとこぼれる。
あれ、待って。
私、そんな異世界恋愛小説を読んだ気がする。ただし、途中まで。
何故ならば、途中から私的に許せない要素が盛り込まれたからだ。
そう、『ヒーローが過去に本気で愛した人』という、溺愛一途な恋愛話には超不要な要素が途中から爆弾のように投げ込まれたからである。
以前はちらほらとしか見かけなかった兵士がやたら多くなったな、と思いながら常連さんの家まで薬を届ける。
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そして、行方不明になった場所が、この街の近くの山だとか。
「絶対にもうこんなところにはいらっしゃらないわ」
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どうやら後継者争いによって第二王子は殺されたのだと、街の者達は考えているようだった。
第一王子と第二王子は母親が違い、第一王子の母親が亡くなったあと、第二王子の母親が今の王様の後妻になったらしい。
街で多くの兵士を見たが、第一王子による追手と第二王子の派閥の兵士の両方がそろっており、一発触発という緊張感が高まっていた。
「ポポ、ロロ、ただいま~。なんだか街が大変なことになってきたよ」
私は軽くなった籠を出入り口に置いて、駆け寄って来た二人を滅茶苦茶撫でまくって可愛がる。
ぶんぶんと振られる尻尾が愛しい。
クゥン、とロロが私に話の続きをせがんだので、「この国の第二王子様を探しに、第一王子の兵士と第二王子の兵士が来てるんだって」と靴を脱ぎながら言った。
この世界では海外と同じく土足だが、私はおばあちゃんが亡くなってから土足禁止にしている。
「ふたりとも、お待たせ。ご飯にしようか」
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ヒューバート。人狼の治める国。第二王子。
『……あれ?』
つい、日本語がポロリとこぼれる。
あれ、待って。
私、そんな異世界恋愛小説を読んだ気がする。ただし、途中まで。
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