2 / 8
2 監禁と逃亡
しおりを挟む
母は私の様子にうーん、と少し考えたあと、私の頭を撫でて「少し待っててね」と言い、旦那様の部屋に籠った。
そして、それからすぐに、夢で見た問題の使用人が屋敷からいなくなったのである。
私はホッとした。
そのあと、母に話があると呼ばれて、驚くべき話を聞かされた。
母は元々、新華族である家門の生まれだったそうだ。
占術を得意とする妖狐の家門で、要人相手に吉凶の占いをする家柄だったという。
そんな母だったが、他家との見合い話が進んでいる中、平民の父を愛して私を身籠ることになった。
残念ながら父はすぐに他界したらしいが、実家に戻ることも出来ずに困ってるところ、旧知の仲だった旦那様から連絡があり、以来ずっと母娘共々この斑目家にお世話になっているとのことだった。
「私も、十歳を過ぎた時にその能力が発現したの。そして、貴女を産むまでは夢を見たものよ。けれども、私達の視る未来は本来の手順を踏んでいないから、確定した未来ではなく、いくらでも変わる可能性がある不安定な予見なの。だから、あまり思い悩まないで」
母はそう言って、微笑んだ。
それ以来、私は必死で良い未来を選び取るように頑張ってきた。
母に自分の夫を寝取られたと勘違いした女性が母を襲って捕まり、牢屋で自害する未来も変えた。
若様が「自分は父から愛されていない」と勘違いして、父から愛されている母を恨み毒殺する未来も変えた。
ところが最近は、どんな働きかけをしても変えられずにいる夢を見ていた。
私と母が別々のお座敷牢に入れられるという、嫌な夢である。
私のところに訪れるのは、牢に入れた当人である若様だけだ。
若様は誤解を解いた日以来、私を姉のように慕ってくれているから、そんなことは起こらないと思いたい。
しかし、その嫌な未来の予見は徐々に短い期間で訪れ、私を悩ませていた。
町医者である班目家にはお座敷牢なんて存在しないが、班目家の直ぐ隣には町奉行所が存在しており、あり得ないと断言するだけの判断に欠けた。
斑目家の裏稼業を考えれば、なくもない話だとすら思ってしまう。
長年お世話になった屋敷を去るのは惜しいが、現実になり取り返しがつかなくなる前に母娘共々早く逃げなければと、焦燥感は増すばかりだった。
そして、それからすぐに、夢で見た問題の使用人が屋敷からいなくなったのである。
私はホッとした。
そのあと、母に話があると呼ばれて、驚くべき話を聞かされた。
母は元々、新華族である家門の生まれだったそうだ。
占術を得意とする妖狐の家門で、要人相手に吉凶の占いをする家柄だったという。
そんな母だったが、他家との見合い話が進んでいる中、平民の父を愛して私を身籠ることになった。
残念ながら父はすぐに他界したらしいが、実家に戻ることも出来ずに困ってるところ、旧知の仲だった旦那様から連絡があり、以来ずっと母娘共々この斑目家にお世話になっているとのことだった。
「私も、十歳を過ぎた時にその能力が発現したの。そして、貴女を産むまでは夢を見たものよ。けれども、私達の視る未来は本来の手順を踏んでいないから、確定した未来ではなく、いくらでも変わる可能性がある不安定な予見なの。だから、あまり思い悩まないで」
母はそう言って、微笑んだ。
それ以来、私は必死で良い未来を選び取るように頑張ってきた。
母に自分の夫を寝取られたと勘違いした女性が母を襲って捕まり、牢屋で自害する未来も変えた。
若様が「自分は父から愛されていない」と勘違いして、父から愛されている母を恨み毒殺する未来も変えた。
ところが最近は、どんな働きかけをしても変えられずにいる夢を見ていた。
私と母が別々のお座敷牢に入れられるという、嫌な夢である。
私のところに訪れるのは、牢に入れた当人である若様だけだ。
若様は誤解を解いた日以来、私を姉のように慕ってくれているから、そんなことは起こらないと思いたい。
しかし、その嫌な未来の予見は徐々に短い期間で訪れ、私を悩ませていた。
町医者である班目家にはお座敷牢なんて存在しないが、班目家の直ぐ隣には町奉行所が存在しており、あり得ないと断言するだけの判断に欠けた。
斑目家の裏稼業を考えれば、なくもない話だとすら思ってしまう。
長年お世話になった屋敷を去るのは惜しいが、現実になり取り返しがつかなくなる前に母娘共々早く逃げなければと、焦燥感は増すばかりだった。
172
お気に入りに追加
254
あなたにおすすめの小説

ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません
下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。
旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。
ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも?
小説家になろう様でも投稿しています。

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。


軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

逃げて、追われて、捕まって (元悪役令嬢編)
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で貴族令嬢として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
*****ご報告****
「逃げて、追われて、捕まって」連載版については、2020年 1月28日 レジーナブックス 様より書籍化しております。
****************
サクサクと読める、5000字程度の短編を書いてみました!
なろうでも同じ話を投稿しております。

寒い夜だから、夫の腕に閉じ込められました
絹乃
恋愛
学生なのに結婚したわたしは、夫と同じベッドで眠っています。でも、キスすらもちゃんとしたことがないんです。ほんとはわたし、キスされたいんです。でも言えるはずがありません。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる