男を惑わせる女狐の娘ですが、母娘共々監禁される未来を回避して幸せを掴みます

イセヤ レキ

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2 監禁と逃亡

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母は私の様子にうーん、と少し考えたあと、私の頭を撫でて「少し待っててね」と言い、旦那様の部屋に籠った。
そして、それからすぐに、夢で見た問題の使用人が屋敷からいなくなったのである。


私はホッとした。
そのあと、母に話があると呼ばれて、驚くべき話を聞かされた。

母は元々、新華族である家門の生まれだったそうだ。
占術を得意とする妖狐の家門で、要人相手に吉凶の占いをする家柄だったという。

そんな母だったが、他家との見合い話が進んでいる中、平民の父を愛して私を身籠ることになった。

残念ながら父はすぐに他界したらしいが、実家に戻ることも出来ずに困ってるところ、旧知の仲だった旦那様から連絡があり、以来ずっと母娘共々この斑目家にお世話になっているとのことだった。

「私も、十歳を過ぎた時にその能力が発現したの。そして、貴女を産むまでは夢を見たものよ。けれども、私達の視る未来は本来の手順を踏んでいないから、確定した未来ではなく、いくらでも変わる可能性がある不安定な予見なの。だから、あまり思い悩まないで」

母はそう言って、微笑んだ。


それ以来、私は必死で良い未来を選び取るように頑張ってきた。

母に自分の夫を寝取られたと勘違いした女性が母を襲って捕まり、牢屋で自害する未来も変えた。

若様が「自分は父から愛されていない」と勘違いして、父から愛されている母を恨み毒殺する未来も変えた。

ところが最近は、どんな働きかけをしても変えられずにいる夢を見ていた。

私と母が別々のお座敷牢に入れられるという、嫌な夢である。
私のところに訪れるのは、牢に入れた当人である若様だけだ。


若様は誤解を解いた日以来、私を姉のように慕ってくれているから、そんなことは起こらないと思いたい。
しかし、その嫌な未来の予見は徐々に短い期間で訪れ、私を悩ませていた。

町医者である班目家にはお座敷牢なんて存在しないが、班目家の直ぐ隣には町奉行所が存在しており、あり得ないと断言するだけの判断に欠けた。

斑目家の裏稼業を考えれば、なくもない話だとすら思ってしまう。

長年お世話になった屋敷を去るのは惜しいが、現実になり取り返しがつかなくなる前に母娘共々早く逃げなければと、焦燥感は増すばかりだった。
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