9 / 14
9
しおりを挟む
「きゃああああっっ!!」
マリーナの悲鳴が鼓膜を震わせた途端、ヴォルは走り出していた。
ザザザザ、と木々を掻き分けて声のした方へと猛進する。
「降ろして!離して!!」
「後でな、お嬢ちゃん」
「なぁ、こいつヴォルの獲物じゃねーよなぁ?」
「ああ?獲物は皆で分ける掟だろうが」
「いや、そうだけどよおおおおっ!?」
バキッと音がして、一体のオークが宙に吹っ飛んだ。
「お前ら……俺の縄張りに入ったな?」
「ヴォ、ヴォルっ!!俺だよ、仲間だろ!!」
マリーナを肩に担いだオークは、慌ててヴォルに向かって手を振った。
「……お前なんて、知らないな。他の群れの獲物に手を出したら、殺されても文句は言えないことしか、知らない」
ヴォルはそう言うなり、拳を振り上げた。
鈍い音がして、「んぎゃあ!!」とオークが苦痛にのたうち回る。
ヴォルは、オークの肩から振り落とされたマリーナを、大事そうにそっと抱き止めた。
「大丈夫か?マリーナ」
「う、うん」
助けられたは良いものの、マリーナは素っ裸で心もとなく、自分の両腕で胸と下半身を隠す。
「怖かったよな、本当にすまない……」
「な、何で?何でヴォルさんが謝るの?関係ないでしょう?」
「いや、あいつらは多分……俺を訪ねてきたあの女をここまで追い掛けて来たんじゃないかと思うし……」
「し?」
マリーナは先を促す。
「マリーナから見れば、俺達は皆、同じ顔してるだろうから……」
今は自分を見ても怖いだろうと、ヴォルは顔が見えないように頭を下げる。
「……似てる、というのは否定しませんが。あの二人とヴォルさんの顔が同じとは全く思いませんよ」
「そ、そうか」
「ヴォルさんだけは、特別です」
「……」
ヴォルは結局、マリーナを抱えたまま、露天風呂まで戻って来た。
マリーナの身体を見ないようにしてそっと降ろし、「俺が見張ってる。寒かっただろうから、もう一度温まるといい」と言って、後ろを向いた。
マリーナを安心させる為に、見えないところに行くつもりはないらしい。
「……ヴォルさん」
「何だ?」
マリーナは、湯船に浸かることなくそのまま出ると、タオルを身体に巻きつけ、大きな大きなヴォルの背中にぴと、とくっついた。
「ヴォルさん」
「な、な、なな何だ!?」
背中にマリーナの胸の感触を感じたらしいヴォルは、ギシギシと身体を強張らせる。
マリーナは、一度深呼吸をした。
「……ヴォルさんが、好きです。私を彼女にしてくれませんか?」
「……え?」
マリーナがヴォルの前に回り込んで見上げると、ヴォルはわかりやすく固まっていた。
マリーナの悲鳴が鼓膜を震わせた途端、ヴォルは走り出していた。
ザザザザ、と木々を掻き分けて声のした方へと猛進する。
「降ろして!離して!!」
「後でな、お嬢ちゃん」
「なぁ、こいつヴォルの獲物じゃねーよなぁ?」
「ああ?獲物は皆で分ける掟だろうが」
「いや、そうだけどよおおおおっ!?」
バキッと音がして、一体のオークが宙に吹っ飛んだ。
「お前ら……俺の縄張りに入ったな?」
「ヴォ、ヴォルっ!!俺だよ、仲間だろ!!」
マリーナを肩に担いだオークは、慌ててヴォルに向かって手を振った。
「……お前なんて、知らないな。他の群れの獲物に手を出したら、殺されても文句は言えないことしか、知らない」
ヴォルはそう言うなり、拳を振り上げた。
鈍い音がして、「んぎゃあ!!」とオークが苦痛にのたうち回る。
ヴォルは、オークの肩から振り落とされたマリーナを、大事そうにそっと抱き止めた。
「大丈夫か?マリーナ」
「う、うん」
助けられたは良いものの、マリーナは素っ裸で心もとなく、自分の両腕で胸と下半身を隠す。
「怖かったよな、本当にすまない……」
「な、何で?何でヴォルさんが謝るの?関係ないでしょう?」
「いや、あいつらは多分……俺を訪ねてきたあの女をここまで追い掛けて来たんじゃないかと思うし……」
「し?」
マリーナは先を促す。
「マリーナから見れば、俺達は皆、同じ顔してるだろうから……」
今は自分を見ても怖いだろうと、ヴォルは顔が見えないように頭を下げる。
「……似てる、というのは否定しませんが。あの二人とヴォルさんの顔が同じとは全く思いませんよ」
「そ、そうか」
「ヴォルさんだけは、特別です」
「……」
ヴォルは結局、マリーナを抱えたまま、露天風呂まで戻って来た。
マリーナの身体を見ないようにしてそっと降ろし、「俺が見張ってる。寒かっただろうから、もう一度温まるといい」と言って、後ろを向いた。
マリーナを安心させる為に、見えないところに行くつもりはないらしい。
「……ヴォルさん」
「何だ?」
マリーナは、湯船に浸かることなくそのまま出ると、タオルを身体に巻きつけ、大きな大きなヴォルの背中にぴと、とくっついた。
「ヴォルさん」
「な、な、なな何だ!?」
背中にマリーナの胸の感触を感じたらしいヴォルは、ギシギシと身体を強張らせる。
マリーナは、一度深呼吸をした。
「……ヴォルさんが、好きです。私を彼女にしてくれませんか?」
「……え?」
マリーナがヴォルの前に回り込んで見上げると、ヴォルはわかりやすく固まっていた。
21
お気に入りに追加
233
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる