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ヴォルは、自分の変化に悩んでいた。
最初の頃は、近付かれても問題なかった。
ただ、マリーナの為に作った露天風呂に、彼女が入っているのを、誤って見てしまった時。
幸せそうな彼女を見た時に初めて、「孕ませたい」という欲望が胸に巣食ったのに気付いた。
ショックだった。
自分が一番嫌っていた感情を抱えることも、友人として慕ってくれるマリーナを邪な目で見てしまうことも。
ヴォルは群れから抜けてから、ただ「生きていた」。
何の目的もなく、嫌なこともなければ楽しくもない時間をただ消化していたのだ。
それが、マリーナと出会ったことで変わってしまった。嫌で苦しいことはほぼなく、喜びや楽しみだけが二倍、四倍と増えていった。
「明日」や「明後日」という、約束をした日を待ち遠しく感じるのも本当に久しぶりだった。
マリーナが、自分をオークとしてではなく、「ヴォル」という個人として扱うことに慣れすぎて、一度人間と遭遇した時の相手の態度に、戸惑った時すらあった。
ヴォルはマリーナに対して好意を抱いていることは理解していた。だからこそ、自分がマリーナに対してそんな劣情を抱いたことに、怒りすら覚えた。
マリーナとの心地好い時間は次第に、綱渡りのような危うさを秘めているとヴォルは感じた。
いつか理性に本能が勝ってマリーナを襲ってしまうかもしれないと日々恐怖し、マリーナを正面から見ることが出来なくなってしまった。
マリーナの傍にいない方が、彼女を傷付けないで済むと思う一方、孤独だった彼女の唯一の友人である自分が去れば、別の意味で傷付くのは目に見えている。
マリーナが笑い掛ける度に自分の雄の部分は反応し、毎日が地獄のようだった。
自分にはない感覚だからと、オークの女を襲う衝動性を馬鹿にしていたツケが、周ってきたのだとヴォルは理解した。
幸か不幸か、マリーナ以外の女には自分の下半身が反応することはなく、一番傍にいたい女性なのに、傍にいると相手に害を及ぼしかねないという矛盾した状態が続いていた。
抗い難い、性的衝動。
懸命に抑え込みながら、それでもマリーナの傍にいることを選んだ。
決定的に無理だ、と思ったのは、マリーナの甘い血を舐めた時。
頬が朱に染まり、ぴくんと可愛らしい反応をされ、ヴォルは白旗を上げた。
ヴォルは、マリーナが三人の男エルフに襲われ、酷く恐怖していたことをハッキリと覚えている。
だからこそ、彼女にとって自分までもがその三人の男エルフと同類になることは嫌だった。
マリーナに、信じてもいい男もいると教えたかったのに、それが出来なくなってしまった。
ヴォルはずっと、これから先、仲間の元に戻ることもなく、他種族と行動を共にすることもないと思っていた。
一人、朽ちるまでただ生きるだけなのだと。
そんな自分に、自分の性格が好きだと、オークであることも、オークらしくないところも好きだと、出会った時からずっと言い続けてくれた、マリーナ。
その身体は小さいのに、気付けば自分の心はすっぽりと彼女に包み込まれていて。
(もう、誤魔化せない……)
後少しでも傍にいれば、きっと自分は彼女の服をビリビリに引き裂いて、その狭い膣道に何度も自分の剛直を突っ込み、溢れんばかりの子種を子宮に注ぎ込んでしまうだろう。
……だから。
「俺達、少し距離を置いた方がお互いに良い、と思う」
ヴォルは、マリーナを見たことを後悔した。
彼女はその見開いた瞳いっぱいに涙を浮かべ、悲しそうな表情をしたのだった。
最初の頃は、近付かれても問題なかった。
ただ、マリーナの為に作った露天風呂に、彼女が入っているのを、誤って見てしまった時。
幸せそうな彼女を見た時に初めて、「孕ませたい」という欲望が胸に巣食ったのに気付いた。
ショックだった。
自分が一番嫌っていた感情を抱えることも、友人として慕ってくれるマリーナを邪な目で見てしまうことも。
ヴォルは群れから抜けてから、ただ「生きていた」。
何の目的もなく、嫌なこともなければ楽しくもない時間をただ消化していたのだ。
それが、マリーナと出会ったことで変わってしまった。嫌で苦しいことはほぼなく、喜びや楽しみだけが二倍、四倍と増えていった。
「明日」や「明後日」という、約束をした日を待ち遠しく感じるのも本当に久しぶりだった。
マリーナが、自分をオークとしてではなく、「ヴォル」という個人として扱うことに慣れすぎて、一度人間と遭遇した時の相手の態度に、戸惑った時すらあった。
ヴォルはマリーナに対して好意を抱いていることは理解していた。だからこそ、自分がマリーナに対してそんな劣情を抱いたことに、怒りすら覚えた。
マリーナとの心地好い時間は次第に、綱渡りのような危うさを秘めているとヴォルは感じた。
いつか理性に本能が勝ってマリーナを襲ってしまうかもしれないと日々恐怖し、マリーナを正面から見ることが出来なくなってしまった。
マリーナの傍にいない方が、彼女を傷付けないで済むと思う一方、孤独だった彼女の唯一の友人である自分が去れば、別の意味で傷付くのは目に見えている。
マリーナが笑い掛ける度に自分の雄の部分は反応し、毎日が地獄のようだった。
自分にはない感覚だからと、オークの女を襲う衝動性を馬鹿にしていたツケが、周ってきたのだとヴォルは理解した。
幸か不幸か、マリーナ以外の女には自分の下半身が反応することはなく、一番傍にいたい女性なのに、傍にいると相手に害を及ぼしかねないという矛盾した状態が続いていた。
抗い難い、性的衝動。
懸命に抑え込みながら、それでもマリーナの傍にいることを選んだ。
決定的に無理だ、と思ったのは、マリーナの甘い血を舐めた時。
頬が朱に染まり、ぴくんと可愛らしい反応をされ、ヴォルは白旗を上げた。
ヴォルは、マリーナが三人の男エルフに襲われ、酷く恐怖していたことをハッキリと覚えている。
だからこそ、彼女にとって自分までもがその三人の男エルフと同類になることは嫌だった。
マリーナに、信じてもいい男もいると教えたかったのに、それが出来なくなってしまった。
ヴォルはずっと、これから先、仲間の元に戻ることもなく、他種族と行動を共にすることもないと思っていた。
一人、朽ちるまでただ生きるだけなのだと。
そんな自分に、自分の性格が好きだと、オークであることも、オークらしくないところも好きだと、出会った時からずっと言い続けてくれた、マリーナ。
その身体は小さいのに、気付けば自分の心はすっぽりと彼女に包み込まれていて。
(もう、誤魔化せない……)
後少しでも傍にいれば、きっと自分は彼女の服をビリビリに引き裂いて、その狭い膣道に何度も自分の剛直を突っ込み、溢れんばかりの子種を子宮に注ぎ込んでしまうだろう。
……だから。
「俺達、少し距離を置いた方がお互いに良い、と思う」
ヴォルは、マリーナを見たことを後悔した。
彼女はその見開いた瞳いっぱいに涙を浮かべ、悲しそうな表情をしたのだった。
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