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「こんな新鮮な食材を……!!命に対する冒涜です!!」
「す、すまない」
小さな女の横で、巨体のオークは申し訳なさそうに女の様子をただ眺めていた。
何故か、オークの家の台所で、助けられた女は調理をし直している。
お腹を空かせた女に、オークは善意で「よければ食べていけば良い、だが味は保証しない」と言って食事をご馳走しようとした。
先程嗅いだ良い匂いに期待を膨らませて、女は有難く頂戴することにした。
オークの家には、全て一人分のものしかないことを知らない女は、まだオークが食事に口をつけていないことも知らずに、オークが譲った大きな椅子に座って、大きなテーブルに差し出された大きなお皿に並々と注がれたスープに口を付けた。
──それは、吐かなかったのが奇跡と思える程、不味かった。
「私、出された食事に殺されると思ったのは流石に初めてです……!!」
女は基本的に人に怒りをぶつけることのない温和な性格ではあったが、唯一許せないことがあった。
それは、食材を無駄にすることである。
「えっ……?食器も食具も、全て一人前しかなかったのですか?」
「ああ」
けれども、このことは二人の距離をぐっと縮める出来事となった。
オークは、女がお願いした葉っぱや枝を文句も言わずに取りに行った。
女は葉っぱを自分用の皿に、枝に手を加えてお箸に、女が手直しして格段に美味しくなった食事を一緒に取った。
「……美味い!こんなに美味いものは、生まれて初めて食べたぞ!!」
オークは女を絶賛しながら、ガツガツと食を進めていく。
そんなオークを、ちらり、と女は観察した。
下から伸びる、鋭い牙。低い鼻。鋭い目付き。尖った爪。緑掛かった肌に、何よりその逞しい身体。
どこからどう見ても、醜悪で凶暴、他の種族から忌み嫌われるオークであるにも関わらず、女を見る視線は優しく、動く時は女を怖がらせないように気遣い、話し方は知的さを感じさせる程穏やかだ。
オークは相手が女であれば犯すのが当たり前で、そこには野蛮な行為しか存在しないと聞いていたのに。
(……こんなオークもいたのね)
口を動かしながら、初対面で恐怖のあまり気絶するという、オークに対して失礼な反応を見せたことを反省する。
「あの、私……オークは怖いものだと教わっていて、本当に失礼な態度を取ってしまい、すみませんでした」
(見た目で判断されて、いつも嫌な思いをしてきたのは私なのに……)
女が頭を再び下げると、オークは本心から気にしていないというように首を振った。
「いや、この見た目だからな、当然の反応だ。それに、その判断は正しい。オークを見たら、とにかく逃げろというのは間違いではない」
「けれども、貴方は違います……よね?」
「俺は、オークとしては……欠陥品なんだ」
「えっ?」
「嫌がる女を犯すことが、苦痛で仕方ないんだ」
「えっ……どういう……意味ですか?」
食事中の話題としてはあまり相応しくなかったが、女に問われてオークは自分のことを話し出した。
「す、すまない」
小さな女の横で、巨体のオークは申し訳なさそうに女の様子をただ眺めていた。
何故か、オークの家の台所で、助けられた女は調理をし直している。
お腹を空かせた女に、オークは善意で「よければ食べていけば良い、だが味は保証しない」と言って食事をご馳走しようとした。
先程嗅いだ良い匂いに期待を膨らませて、女は有難く頂戴することにした。
オークの家には、全て一人分のものしかないことを知らない女は、まだオークが食事に口をつけていないことも知らずに、オークが譲った大きな椅子に座って、大きなテーブルに差し出された大きなお皿に並々と注がれたスープに口を付けた。
──それは、吐かなかったのが奇跡と思える程、不味かった。
「私、出された食事に殺されると思ったのは流石に初めてです……!!」
女は基本的に人に怒りをぶつけることのない温和な性格ではあったが、唯一許せないことがあった。
それは、食材を無駄にすることである。
「えっ……?食器も食具も、全て一人前しかなかったのですか?」
「ああ」
けれども、このことは二人の距離をぐっと縮める出来事となった。
オークは、女がお願いした葉っぱや枝を文句も言わずに取りに行った。
女は葉っぱを自分用の皿に、枝に手を加えてお箸に、女が手直しして格段に美味しくなった食事を一緒に取った。
「……美味い!こんなに美味いものは、生まれて初めて食べたぞ!!」
オークは女を絶賛しながら、ガツガツと食を進めていく。
そんなオークを、ちらり、と女は観察した。
下から伸びる、鋭い牙。低い鼻。鋭い目付き。尖った爪。緑掛かった肌に、何よりその逞しい身体。
どこからどう見ても、醜悪で凶暴、他の種族から忌み嫌われるオークであるにも関わらず、女を見る視線は優しく、動く時は女を怖がらせないように気遣い、話し方は知的さを感じさせる程穏やかだ。
オークは相手が女であれば犯すのが当たり前で、そこには野蛮な行為しか存在しないと聞いていたのに。
(……こんなオークもいたのね)
口を動かしながら、初対面で恐怖のあまり気絶するという、オークに対して失礼な反応を見せたことを反省する。
「あの、私……オークは怖いものだと教わっていて、本当に失礼な態度を取ってしまい、すみませんでした」
(見た目で判断されて、いつも嫌な思いをしてきたのは私なのに……)
女が頭を再び下げると、オークは本心から気にしていないというように首を振った。
「いや、この見た目だからな、当然の反応だ。それに、その判断は正しい。オークを見たら、とにかく逃げろというのは間違いではない」
「けれども、貴方は違います……よね?」
「俺は、オークとしては……欠陥品なんだ」
「えっ?」
「嫌がる女を犯すことが、苦痛で仕方ないんだ」
「えっ……どういう……意味ですか?」
食事中の話題としてはあまり相応しくなかったが、女に問われてオークは自分のことを話し出した。
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