セフレ、のち、旦那

イセヤ レキ

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「さっき、お義父さんから妹さんの話、軽く聞いたよ」
「……そっか」
会った初日で話すなんて、よっぽど士楼を気に入ったのか、酔ったのか、両方か。
どちらにしろ、私の口から話さないで済んだことに、幾分安堵したことは否めない。


私の妹は、高校三年生の時に見知らぬ男性に性的暴行をされ、璃空汰を妊娠した。
妹は真面目で、私はどちらかというと問題児で。
でも、私は高校三年間ずっと同じ人……先生が好きだったから、見た目は派手にしていたけど、セックスの経験はなかった。

妹は、塾の帰り道で自分が乱暴されたことを誰にも言えずに一人で抱えていた。
妹がつわりで体調不良が続き、それに気付いたのは私が一番始めだったが、その時には既に既に子供をおろすことが出来ない時期に入っていた。

恐怖で産婦人科に一人で行けなかった妹に付き添い、妊娠が発覚した。
私は根気強く何度も父親のことを聞いて、実は妹が大分前に乱暴されていたことを知ったのだ。

妹の妊娠を知った両親は当然取り乱したが、「何でよしかが……!!」という叫びは私の心に突き刺さった。
私は両親の叫びを、「何でよりによって、ありかじゃなくよしかが」と曲解したのだ。

両親から遊んでいるように見えただろうから、当然経験豊富な姉の方が、同じことをされたとしてもそこまでのダメージにはならなかっただろうと。
また、将来のことを考えて真面目に塾に通っていたよしかと違い、遊び呆けていた私。私がよしかと一緒に塾に通っていれば、また状況は変わっていたかもしれないと考えたのは私だけではないだろう。


将来の夢が保育園で働くことだったよしかは、シングルマザーの道を選んだ。
選んだ後のよしかは、璃空汰が生まれる前から母の顔をしていて、お前に子育ては無理だ、施設に預けなさいという両親も結局説き伏せた。
私は、よしかが誰か良い人と結ばれるまで、絶対的な味方になろうと心に決めた。

よしかが安心して私に子供を任せられるように、保育士の資格をよしかの代わりに取ることにした。
そうして、よしかと璃空汰を他人の好奇の目から守り、その成長を見守り続けて、三年。
よしかは、同じく高校を卒業してもずっとよしかを支えてくれていた、今の旦那さんとのお付き合いをスタートさせた。

よしかが幸せになるまでずっと見守り続けるという私の役目は終わり、私は大学四年で、実家から離れた職場を希望することに決めた。
誰よりもよしかには幸せになって欲しかったのに、六年間想い続けた男性が、よしかと一緒にいるところを見続けるのは、流石に辛かった。

保育士になる予定だったけど、実習で行った、障害を持ったお子さんが集まる療育センターが気になり、職種希望を変更した。

大学の時に合コンとかで出会った男性とお付き合いしたけれども、私はセックスが出来なかった。セックスというのは、妊娠に繋がるのだ。
私は、自分でも気付かないうちに性行為に対してトラウマを抱えていた。
けれども、失恋した私は、誰かとぬくもりを分け合う行為を欲していたのだ。

そして、その歪みは結局、特殊な性癖へと変化した。
ただ、そのお陰で今がある。隣に、士楼がいてくれる。
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