高級娼館の解消屋

イセヤ レキ

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高級娼館の解消屋

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──誰もが報われる想いを抱く訳ではない。


愛しい人が近親者であったり、同性であったり。
幼児であったり、伴侶がいたり。
様々な理由で想いを遂げるどころか、げるのさえ憚られる人もいる。


自分だけではどうにも出来ないその想いを受け止め、特に相手に対する性的欲求を解消してくれる高級娼館があると、貴族の間でまことしやかに噂になっていた。


今日もまた、大枚たいまいはたいてその想いを解消させたいと願う客がひとり……



***



「お写真とかはお持ちでございますか?」
「……ああ、これだ」
「……本当に可愛らしいお嬢様ですね」
「日に日に、亡くなった妻に似ていくんだ……娘はもうすぐ結婚をする。私の手元から離れる。そう考えると、夜中に私のおぞましい感情が膨れ上がって、もう自分でも何を仕出かすか……!!私は自分で自分が恐ろしい……」
「誰にも相談出来ず、辛い想いをお抱えでしたね。わかりました、私が代わりにその想いを受け止めて差し上げましょう」
「頼む……頼む!!」
「準備をして参りますので、こちらを一気に飲み干して下さいませ。勿論、身体に害のある薬ではございません。貴方様の一助となるだけの飲み物ですわ」
「ああ……わかった」


高級娼館の、奥深くにある最高級の贅を尽くした部屋。
そこでは、一人の女が一晩にたった一人だけを相手していた。
その部屋はトップシークレットとなっており、依頼人も目隠しをされて方向感覚が狂う程に回廊を何回にもわたって曲がるものだから、部屋の場所が特定出来ない。
たった一晩のその値段は他の部屋の女が10人を相手にするよりも高い。
それでも、客が客を呼び、予約で毎晩埋まる程に人気があった。


客は、殆どが身分のある者だったり、それなりの成功者である。
だからこそ、醜聞を恐れてこの部屋をノックするのだ。
この部屋は、本番はなしとされている。
口淫のみ。
それでも、客足は途絶えず、その値段に文句を言う者はない。

自らの性欲に悩んでいた客達は、その悩みが解消される事で自分を取り戻し、世間で自信を持って更なる活躍の場を広げるのだ。



客達の相手をするのは、淫魔である女だ。
この娼館に拾われてから、源氏名をヴェルーリヤとつけられた。
安直に、瑠璃色の瞳から取られた名前だ。

ヴェルーリヤは、両親の顔を知らない。
淫魔ではあるが、「異端」だからだ。

淫魔を含む様々な魔族は、魔族の胎内から生み出されて生を受ける「血脈」と呼ばれる者達と、ヴェルーリヤの様な、空間の歪みからぽっと生まれる「異端」と呼ばれる者達とに分類される。

「血脈」は幼少期が存在するが、「異端」は生まれた時から身体的には成人している。
ヴェルーリヤも、ある日空間の歪みから成人女性の姿で生まれたが、「異端」である彼女は、「異端の中でも異端」であった。


この世界の全てである一つの巨大な大陸は、その上下を遮断するかの様に大陸の端から端へと山脈が連なっており、魔族の支配する北側の土地と、人間の支配する南側の土地とにしっかり分かれている。

普通、空間の歪みは魔族の支配する北側で発生するが、ヴェルーリヤの場合、人間の支配する南側で発生してしまった。
更に奇異な事として、ヴェルーリヤは前世の記憶を所持していたのだ。
違う世界の、人間の女性としての記憶だ。


なので、いきなり町のど真ん中で成人女性が素っ裸で発見されたらどんな扱いを受けるか……想像出来てしまった。

良くて、公然猥褻罪で捕まり、けれども出自を言うことも出来ずに牢屋行きだ。
悪くて、レイプや人身売買、奴隷堕ち等々。

ヴェルーリヤは、心から願った。
せめて、姿形だけでも乳児……つまり、赤ん坊になれないかと。
この世界の人間の価値観はわからないが、赤ん坊を今すぐどうこうする事はない、……と信じたい。


ヴェルーリヤは願い、そして実際に……赤ん坊になっていた。
「血脈」の淫魔なら誰でも知っている事だが、淫魔は効率良く食事をする為に、相手に合わせて性別や年齢など見た目をコントロール出来るのである。
ただ、「異端」はそれを教えて貰う機会に恵まれなければ、自らが何者なのかも知らずに生きていく事になるのだが。

元々人間で、淫魔の習性を知らないヴェルーリヤは酷く混乱していた。
混乱ついでに、赤ん坊らしく泣き叫んでいたらしい。

「おやおや、酷いねこんなところに……全く、赤ん坊を裸で置き去りにするなんてねぇ」
優しく抱き上げられて、ヴェルーリヤはその相手を見る。

(ひぃ……っっ!!)

「あらあら、泣き止んだわぁ。可愛らしいお顔だことっ!高級娼館みせの皆で可愛がって育ててあげるから、安心なさいねぇ」

筋肉ムキムキの、明らかな女装した男が、剃っても濃いとわかる顔に絵画の様な化粧を施し、菩薩の様な笑みをヴェルーリヤに向けていた。



***



その男女おとこおんなこそ、高級娼館のオーナーだった。
赤ん坊として何とか路上ストリップを免れたヴェルーリヤは、娼婦達の部屋に寝かされ一人にされた途端、姿を戻して娼婦達の服を拝借し、先程拾ってくれた人の後を追いかけた。
「赤ん坊の服とぉ、ミルクや哺乳瓶も必要よねぇ。あ、あとオシメもだわぁ」と言っていたから、余計な出費をさせない為だ。

運良く探し当て目を丸くするオーナーに、一生懸命説明した。
結局、「信じてあげたいけど、赤ん坊をさらった疑いが拭いきれないのよぉ」と言う事で、部屋をかりてオーナーの目の前で赤ん坊になったところで、やっと信じて貰えたのだ。

「とは言っても、ここは高級で変な客は来ないとは言え、娼館だしぃ……他の子の手前、何もさせないで置いてあげる訳にもいかないしねぇ……けど、また追い出すのも気が引けるし……」
私の身の上をどうするか悩んでいるオーナーに、一人の娼婦が声を掛けた。
「姐さん、その子、男の子とかにもなれるの?」
「どうなの?」
オーナーが目をぱちくりさせて聞いてくるので、ヴェルーリヤは試してみた。
結論から言うと、なれた。

色々試して見て、結局瞳の色以外は年齢性別問わずに変えられる事がわかったのだ。

「魔族……だよね?で、姿形を自在に変えられる魔族って言うと……淫魔?かなぁ?」

こうして、元人間であるヴェルーリヤは、やっと自分の正体を知ったのだった。



***



「ヴェルーリヤ、悪いんだけどぉ、また今日もあの人・・・のお相手をして欲しいのよぉ」
「……また、ですか」
「うん、お得意様だから、お願いねぇ?」
オーナーが、両手を合わせて身体をくねらせる。

淫魔であるヴェルーリヤの食事は、精液を始めとした、人の体液である。
生まれたその日、何回も変身?して魔力を使ったのに、人の体液を摂取しなかったヴェルーリヤは、空腹により見事に倒れた。

人の体液を摂取しないといけない事を知らないヴェルーリヤが、とうとう水分補給もままならない……という事態に陥った時、「ごめんなさいねぇ」とオーナーが口移しで薬を飲ませてくれた。
人間用の薬が、淫魔に効くわけがなかった……が、ヴェルーリヤは本能でオーナーの太い首に両手を回し、その広い咥内に舌を滑らせ、唾液を思う存分すすり、味わった。

「……生き返ったー!!」
ヴェルーリヤが口を離した時には、オーナーが「ちょ、ちょっと……!あまりの舌技に、この私が女に勃っちゃったじゃないのよぉ!!屈辱的だわぁ!」と目に涙を浮かべて恨みがましく言ってきた。

淫魔は人の体液を、甘露にも似た非常に美味しい物に感じる。
元人間のヴェルーリヤは、自分が淫魔であるという事実を信じたくなかったが、倒れたヴェルーリヤにとって一番美味しく感じたのが、オーナーが運んできてくれたどんな豪華な食事や、瑞々しい果物や、甘い菓子でもなく、オーナーの唾液であった事に衝撃を受けながらも、それを受け入れた。

唾液があれだけ美味しい……と、言う事は。
つつつ、とヴェルーリヤの視線がオーナーの下半身に下がる。
「ちょ、何考えてるのよ!」
「……食事、したいな、と」
「わ、私は嫌よぉ!!何だか搾り取られそうなんだものっ」
「……少しだけ、駄目ですか?」
「嫌よぉ!!あんた、淫魔なんでしょっ!?絶対、ごっそりイかされそう!!」

ヴェルーリヤとオーナーの騒がしい言い合いに、客がついていなかった娼婦が面白そうに部屋まで見物に来る。
「ええ!?オーナーが女相手に勃ったって!?」
「どんな女がくっついても微動だにしないオーナーの息子が!!」
「オーナー、良かったじゃない!!お礼にあげなよ、精液くらい」
「何が精液くらい、よぉ!!」
「オーナー、拾ってきた子の面倒くらい、責任持って見なきゃ」
「うう……」
「ヴェルーリヤちゃん、後でオーナーきちんとイけたか教えてね~♪」
「楽しみ楽しみ♪淫魔の巧みな技にはオーナーも負けるかな?」

好き勝手にヴェルーリヤの応援をしながら、嵐の様に全員がいなくなる。
しかし、扉の向こうで全員がニマニマしながら中の様子を伺っている事は間違いなかった。

「……何だか、すみません。やっぱり大丈夫です」
「……仕方ないわねぇ。そんな青白い顔で、大丈夫って言われてもねぇ……」
オーナーは、覚悟を決めて、少し勢いを失った逸物をズルリと引きずり出した。

勢いを失っていた筈だが、それは普通よりも、些か……いや、だいぶ。
「……おっき……」
ヴェルーリヤは、恐る恐る、逸物に触れた。
ぴくん、と反応したそれを、可愛い、なんて思ってしまうのも、淫魔になってしまったからかもしれない。

笠の部分をぺろ、と舐めてみる。
何の味もしない。
先っぽをぺろ、と舐めてみる。
じんわり滲んだ精液を舌先感知した瞬間
「……すっごい、美味しい……!!」
ヴェルーリヤは、空腹を満たすべく、その肉棒が力を失うまで、何度も何度も繰り返し食事を続けた。



精液の美味しさを知ったヴェルーリヤは、淫魔である事をやっと受け入れて、口淫で食事をする事だけを自分に許した。
とはいえ、高級娼館が本番なしというのは多少問題だ。
そこで、オーナーの提案で、淫魔だからこそ出来る付加価値をつけたのだ。

すなわち、本来なら結ばれない相手との情事だ。

ヴェルーリヤは、瞳の色だけは変更出来ない為に、様々な色のコンタクトレンズを部屋の奥に準備している。
客に単なる飲み物を飲ませている間に、ヴェルーリヤは相手の望む姿になって、サービスを開始するのだ。

最初は、客の性的欲求を更に増幅させてしまうのではないかとヴェルーリヤは恐れたが、精液を放つ前に、少しの魔力をこちらから流して「対象に対する情欲」をも一緒に放出させ、それをこちらで引き受けてしまえば、「愛情」のみを残せる事を、客を取るようになって早々に理解した。

その為、ヴェルーリヤの客は2~3回程来れば満足して、以来足を運ばなくなるのである。
……が。

ただ一人だけ、何度も……それこそ10回以上、ヴェルーリヤを訪れる男性客がいた。



***



その客は、本当に無口だ。
毎回同じ写真を渡され、ヴェルーリヤは毎回同じ女に化ける。
服のイメージが違うのかと、貴族の服、町娘の服、裸同然の服まで色々試してみたが、反応はさほど変わらない。

かなり値の張る貴族の衣装を身に纏っており、それを少しも着崩す事はないが、その服の下にはオーナーの様な隆々とした筋肉がついている事がうかがえる。

「……」
無言で写真を渡し、無口でパンツの前を寛げる。
「……失礼致します」
オーナーなみの大きな男根が既に臨戦態勢で待機していた。

男は、規定時間の一時間の間に、何度も何度も……5、6回は白濁液を吐き出していく。
所謂、絶倫というやつだった。

何時も通り、男の喜ぶ様に竿を片手で扱きながら、喉奥が当たるように咥えこみ、もう片手で袋を優しく握りこむ。
男の肉棒は直ぐにビクビクと痙攣し、ヴェルーリヤの喉目掛けて精液が飛ばされた。
極上の甘露を、ヴェルーリヤは嬉々として飲み込んでいく。
けれども、男はまだまだ元気なままだ。


その状態が、嬉しくもあり、悲しくもある。
──何が、駄目なんだろう?
男の、写真の女に対する性欲は、何度飲み込んでも湧水の様に溢れ出るものなのか。

ヴェルーリヤは、試したいけど試したくない手段を取るかどうか、悩んでいた。

つまり、本番だ。

他の客ではそんな気にならないのに、何故か男のペニスを口に咥えているだけで……いや、男の姿を見ただけで、自分の下半身が濡れる事にヴェルーリヤは気付いていた。

オーナーには、誰相手とは言わずに「口淫で無理だったら、本番をしても良いか」と事前に許可を取っている。

意を決して、ヴェルーリヤは声を掛けた。
「……もし。もし、お客様がよろしければ、ですが……本番で、試してみますか?」
男は驚きに目を見開いた。
そして、ゆっくりと首を縦に振り、肯定する。

「こちらは、全てのお客様にしている事ではございませんので……他言無用で、お願い致します」
ヴェルーリヤは、大丈夫だろうと思いながらも形式上お願いをした。

さて、本番である。
ここは娼館であるから、本来であればヴェルーリヤがリードするのが好ましい。しかも、ヴェルーリヤは淫魔でもある。
だが、同時にヴェルーリヤは処女でもあった。

どうしよう、と悩んで……結局、聞いた。

「あの……私が上にのるのと、」「いや、私がしたい」
男は、言うなりヴェルーリヤに深く口付けながら、着ていた服を剥ぎ取っていく。
(おいし……)
男と……いや、客と口を合わせたのは初めてだが、その唾液は初めて味わった味を彷彿とさせた。
自分が淫魔であると自覚させた味である。

男の舌が、ヴェルーリヤの舌に絡まり、くすぐり、歯列をなぞる。
ヴェルーリヤを全裸にさせると、男の手は胸へと滑り落ちた。
たぷたぷと乳房の重みを楽しみ、乳首の周りをくるくると指先でなぞる。
刺激を受けた乳首がぴん、と勃ちきったタイミングで口を離し、唾液をふんだんに含んだままの口内へ乳首を沈めた。
「んはぁ……っっ」
乳首があっという間に粘液を纏い、その刺激に歓喜する。
もう片方の乳首は、男の指先でくりくりと捏ねられ、伸ばされ、先端を弄られていた。
あまりの気持ち良さに、ヴェルーリヤは腰を反らす。
男はゆっくりとヴェルーリヤの上半身をそのままベッドの上に優しく倒し、もう片方の手を股の間に滑らせた。

くちゃり

自分の期待の音に、ヴェルーリヤの顔が紅く染まる。

「頼みが、ある……」
男が苦しむ様に、声を発した。
「はい」
男は、ヴェルーリヤの恥丘をなぞり、蜜を絡めながら懇願した。
「……元の姿に……なって、くれないか」
「は、はい」
ヴェルーリヤは、慌てて変装を解く。
男は嬉しそうに笑った。
「ありがとう」
「いいえ……ぁんっ!!」
男は、つぷりとヴェルーリヤの膣に太い指を入れた。
「痛かったら、言うんだ」
「はい……」

男はゆっくりゆっくりと、ヴェルーリヤの膣壁をまさぐりながら奥へ奥へと探求していく。
一度奥まで差し込まれた指が、角度をつけて入り口付近まで戻ってきた時、「ひゃん!」
快感のポイントを押されたヴェルーリヤはつい声をあげてしまう。
それも、自分が聞いてもわかる程に甘い声で。

「……気持ち良くても、言ってくれ」
「……はぃ……ぁ、そこ……!!」
ぐちゅ、ぐちゅ、と男の指が意志を持って、膣壁の一点を撫で押す。
びりりとした快感と、むずむずした尿意みたいな感覚がヴェルーリヤを襲い、少し怖くなった。

ぎゅ、と未だ服を着たままの男の胸を握ると、気付いた男が優しく頭をなでてくれる。

しかし、指の動きは止まらない。

ぐじゅ、ぐじゅ、ぐじゅ、ぐじゅ、
指が一本ではなく、二本に増やされた。
ぐち、ぐちゅん!ぱちゅ、ぱちゅ、
二本の指が、一番奥まで突き入れられ、その先で指をバラバラに動かされる。
「ひゃ、あ、あ、あ……っっ」
秘豆の存在を思い出した親指が、ぬるぬるの愛液を纏いながら、それを左右に揺らす。
「ゃ、なんか、きちゃう、きちゃうぅ……っっ」

相手が客である、という事も忘れて、ヴェルーリヤは叫んだ。
男は、淫核を弄りながら膣をほじくり、ヴェルーリヤの口を自らのそれでふさいだ。

「んんぅ、んん~~~っっ!!」

男の唾液が、ヴェルーリヤの脳を溶かす。
男の手に恥部を擦り付ける様に腰が更に反り、ヴェルーリヤの足が突っ張った。

ぷしゃ!!ぷしゃ、ぷしゃ……

ヴェルーリヤが潮を吹き、やっと男の指が動きを止めた。
男の指に、ヴェルーリヤの複雑に蠢く膣が、圧を掛ける。

ぬぽ、とヴェルーリヤの蜜壺から指を抜いた男は、天井に向けて勃ち上がった自らの肉槍をひくりひくりと欲しがる穴に向けて、一気に突いた。

「……っっ!!」

息が出来ない程の、衝撃。
淫魔であるからか、破爪の痛みなど微塵もなく、普通の処女……いや、娼婦でさえも苦しむだろう、太く逞しい男のペニスが根元まで咥え込まれた。

「くっ……」
「あぁ……美味し、ぃ……」

初めて膣で味わうペニスに、ヴェルーリヤは我を忘れ、淫魔の本能で腰を揺らす。

「ちょ、……待て」

直ぐにでも搾り取られそうなその動きに慌てた男は、ヴェルーリヤの両足を抱えて腰を動かしにくくキープした。

「私が、動く……」

男は宣言し、ヴェルーリヤの膣奥へ叩きつける様に真上からペニスを出し入れする。

ぶちゅ、びちゃ、ばちゅ、ばちゅん!!

愛液が恥ずかしい淫猥な音を奏で、ペニスが奥へ奥へと更に侵入していくのを手伝った。
男が腰を動かす度に、亀頭が子宮にぷちゅぷちゅと遠慮なくキスをする。
ペニスが引かれれば、嫌だと言うようにヴェルーリヤの肉襞が絡み付いて離さない。

「凄い、な……」
「凄い、ですぅ……っっ!ふぁ!」

二人して、セックスの気持ち良さに酔いしれ、無我夢中になった。
先に我慢出来なくなったのは、先程指で男にイかされたばかりのヴェルーリヤだった。

「だめ、また何か……きちゃう、イっちゃう、イっちゃうぅ……!!」
「あぁ、イけ、ヴェルーリヤ……」

男が最奥を突いた状態で腰を回し、ペニスの先端を使ってぐりぐりと子宮口を攻めたタイミングで、ヴェルーリヤは昇り詰めた。

肉棒が締め付けられ、ぐにゅりぐにゅりと蠢いて子種を吐き出させようと欲しがる膣内に、男も注ぎ込む。


その後、男とヴェルーリヤは時間いっぱい、交わりあった。



***



「困ったわねぇ……」

オーナーは、店で一番の売上を誇るヴェルーリヤを想って、ため息をついた。

元々、大きすぎるペニスで三人の恋人達に逃げられた過去があり、彼はEDだった。
幸い、勃つ事がなければ娼婦に手を出す事もないし……と、元々上級貴族だったが領内で質の悪い娼館の取り締まりを片手間に始めたのが、運のツキ。
最初は娼館そのものをなくそうとしたが、そこでしか働けない娘達がいるという事実と、性犯罪の軽減に繋がるという利点から、モデルタイプになる娼館の立ち上げに至った。

ヴェルーリヤが現れるまでは、それで上手くいっていたのだ。

まさか、淫魔とは言え、ただのキスで勃起するとは思っていなかった。
口でして貰うのは、本当に嫌だった。
一度期待してしまって、また無理だった時の落胆も。
ヴェルーリヤに対して、特別な感情を抱きそうになる自分も。

嫌だったけど、結局期待が勝ってしまった。

ヴェルーリヤにとって、精液を飲むのは単なる食事だ。
それでも、オーナーにあるまじき独占欲がむくむく湧いて、とうとう客に扮してヴェルーリヤの時間を買ってしまった。

写真は、ヴェルーリヤと同じ瞳の色をしていた何の思い入れもない女の写真を使った。
ヴェルーリヤに対しての邪な気持ちしかない自分が何度彼女に抜いて貰っても、性欲が減退する訳もなく。
結局、何度も何度も客として足を運んでしまい、その度にヴェルーリヤへの想いは募る一方だ。

「うーん、客のフリして、身請けさせちゃおうかしら……」

自分がこんなに嫉妬深いとは思わなかった。
が、ヴェルーリヤが他の男のモノを膣は勿論、口で咥える事でさえそろそろ我慢出来そうにない。






オーナーは、知らない。
ヴェルーリヤが、精液や唾液の味で初回から男がオーナーであるとわかっていた事を。

知るのは、ヴェルーリヤを妻として迎え入れた後。
「あの、オーナー。私は貴方を何と呼べばいいでしょうか?決めないと、つい、オーナーって呼んじゃいそうです」
と笑顔で言われた時であった。
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